CESは「Consumer Electronics Show」の名の通り、家電製品中心の展示会であり、出展しているPC関連メーカーの数はさほど多い訳ではない。しかし、PCと家電の融合が注目されている現在ではPC関連のメーカーとて、多くの来場者が訪れるCESを無視できず、注目される展示を行なっているPC関連メーカーもある。今回はそうしたなかからIntel、AMDに関連した展示を紹介する。
●多数のコンシューマ向け製品を展示したIntel
最近のIntelは単にPCメーカーに対してCPUを供給するだけの半導体メーカーから、エンドユーザーに対しても様々なサービスや製品を提供する会社に変わろうとしているように見える。例えば、マテルと共同で子供向けのUSB顕微鏡を出荷するなどはその最たる例と言える。今回のCESでも、そうしたIntelの新しい顔が伺える展示がいくつかあった。
来場者の注目を最も集めたのは、Intelが米国時間5日(日本時間6日)に発表したWeb Appliance(インターネット専用端末)だろう。このWeb ApplianceはCeleronをベースに作られたもので、OSにはLinuxが採用されている。ユーザーインターフェイスはIntelが独自に開発したもの。説明員によるとこのWeb ApplianceにはUSBポート、スマートカード(ICカード)を利用するためのスロット、赤外線通信ポートなどが用意されており、OSも含め非常に低コストで提供できるという。上部には電話も用意されており、インターネットと電話が融合した機器として利用することが可能という。なお、本製品は今年の夏頃に、ISPやE-コマースなどのサービスプロバイダー経由でエンドユーザーに提供されるという。
Intelのブースに展示されていたWeb Appliance。この試作機ではCPUにCeleron 300A MHzが採用されていたが、そうとは思えない軽快な操作はLinuxを採用した恩恵だろう。キーボードはUSB接続で、スマートカード用のスロット、USBポート、赤外線通信ポートなどが用意されている。日本ではBIGLOBEなどから提供される予定 |
また、Intelは同じくLinuxを採用したセットトップボックスも展示していた。展示されていたセットトップボックスは、インタラクティブなテレビ放送、ウェブサーフィン、Eメールなどが楽しめるようになっており、やはりCPUにはCeleronが採用されているという。Web ApplianceはIntelが独自に開発したインターフェイスなのに対して、こちらはMozilla(Netscapeがオープンソースとして開発中のWebブラウザ)を利用したHTMLベースで、OSやブラウザにオープンソースのものを利用することでコストを下げているのが特徴だ。
Intelのセットトップボックス。テレビを見たり、Webサイトを見たり、E-メールの送受信などを行なうことができる。OSはこちらもLinux、WebブラウザはMozilla。また、USBポートも用意されておりUSB機器で機能の拡張も可能 |
このほかにも、Intelはマテルとの協力による子供向け製品の第2弾として「Intel Play Me2Cam Computer Video Camera with Fun Fair CD-ROM」のデモを行なった。一見すると単なるUSBのPC用カメラにしか見えないのだが、付属のCD-ROMに秘密が隠されている。このゲームはスノーボーダーが斜面をすべりおりる簡単なものだが、この時にカメラがユーザーの動きをキャプチャして画面に表示し、ゲームでのプレーヤーは実際にユーザーの動きとシンクロする。このため、上手く滑るには体全体を上手く使う必要があり、これまでのゲームにはないユニークなものだ。3月に出荷が開始される予定で、価格は99ドル。
Play Me2Cam付属のゲームで遊んでいるところ。右の画面にキャプチャされたプレーヤーが表示されていて、体を動かすとゲームの中のプレーヤーもシンクロして動作する。やっている本人は至って真剣だが、周りで見ていると非常に滑稽ではある |
●Compaq Computerは独自の色に塗られた1GHzのAthlon搭載マシンを展示
Athlon搭載PC「PRESARIO 5900Z」。これにAthlon 800MHzを搭載したPCの販売はCompaqのオンラインストアで既に開始されている |
Intelブースではx86プロセッサに関する展示は、唯一モバイルPentium IIIのみで、盛り上がっているはずの800MHz戦争などどこ吹く風というありさまだったが、Compaq Computerのブースではもう一方のx86プロセッサであるAthlonに関する興味深い展示が行なわれていた。
実は、Compaq Computerのブースには1GHzで動作しているAthlonを搭載したPresarioのデモ機が展示されていたのだ。といっても、もちろんAMDの現時点での最高速は昨日発表されたばかりのAthlon 800MHzであり、1GHzで動作するAthlonは存在していない。では、この展示されていたマシンは何か言えば、COMDEX/Fall '99でAMDのスイートに展示されていたKryotechのSuperGそのものだ。PRESARIOと同じ色に塗られているものの(SuperGは白)、基本的にはSuperGにCompaqのロゴがつけられただけだ。展示員にきいてみたところ「このデモはあくまでテクノロジデモ。Compaqがこのマシンを発売するということはない」とのことで、特にCompaqがこのマシンをリリースするという予定はないようだ。
Compaq Computerのブースに展示されていた強制冷却のAthlon 1GHz搭載PC。燦然と輝く「COMPAQ」と「Presario」のロゴが誇らしげ? 右端はCOMDEX/Fallでの展示
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なお、隣にはCompaqのAthlon搭載マシンである「PRESARIO 5900Z」が展示されていた。展示員によると展示品のCPUは残念ながらAthlon 750MHzで、Athlon 800MHzではないという。しかし、Athlon 800MHzを搭載した「PRESARIO 5900Z-800」も外見は全く同じで、今回展示されていたものとCPUやメモリ、HDD容量などだけが違うだけになるという。既に同社のWeb上で注文は開始されているそうで「40日程度の納期」で購入できるそうだ(ただ、現時点では日本法人であるコンパックコンピュータでは扱っていない)。
今回はDELLやGATEWAYといった800MHzのPentium III搭載PCをリリースしているメーカーは出展していないため、「800MHz戦争勃発!」とはならなかったが、再び(強制冷却とは言え)1GHzのAthlonが公開されたことで、「1GHzのCPUをどちらが先に出すか」にさらに注目が集まることは間違いないだろう。このあとも1月の後半にPlatform 2000、2月の頭にISSCC 2000、2月の半ばにIntel Developer Forum(IDF)、2月の終わりにCeBITと注目のカンファレンスや展示会が目白押しだ。そのあたりでさらに何らかの動きがある可能性もあり今後とも注目していきたい。
□2000 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□関連記事
【'99年11月16日】COMDEX/Fall '99 CPUレポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991116/comdex07.htm
(2000年1月7日)
[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]