発表されたばかりの「Inspiron Mini 10」が届いたので早速いろいろ触ってみたい。ただし、今回手元にあるのは、試作機で英語版キーボード、ベンチマークテスト禁止といった条件があるため、その使用感や8.9型モデル「Inspiron Mini 9」との比較を中心としてレポートする。 ●Inspiron Mini 10の仕様 Inspiron Mini 10は、「10」が意味するように液晶パネルのサイズは10.1型となっている。すでに発売中の「Inspiron Mini 9」、「Inspiron Mini 12」のちょうど中間にあたるモデルだ。解像度は1,024×576ドットで、最近10.1型に多い16:9のアスペクト比。ほかの部分は、Atom Z520(1.33GHz/533MHz FSB/512KBキャッシュ) 、Intelシステムコントローラ Hub(US15W)、GMA 500内蔵グラフィックス、メモリ1GB、160GB 2.5インチ 5,400RPM SATA HDD、IEEE 802.11b/g無線LAN、Bluetoothモジュール(V2.1+EDR) 130万画素ウェブカメラ、3セルリチウムイオンバッテリ、そしてWindows XP Home Edition SP3と、Atom Zシリーズを搭載した「Inspiron Mini 12」とほぼ同等のスペックだ。 現在のところBTOで選べるのは、CPUに「Z530かZ520」、HDDに「120GBか160GB」この2点。そしてカラーバリエーションとなる。メモリはCPUモジュールに組み込まれているので増設はできない。 さて、Inspiron Mini 9とInspiron Mini 10(12)は、見た目は似通ったデザインなので、液晶パネルのサイズだけが違うように思うが、実は仕様的に大きく異なる。前者はAtom N270(1.6GHz/FSB 533MHz/512KBキャッシュ)にIntel 945GSE Expressチップセット、内蔵グラフィックはGMA950で解像度は1,024×600ドット。多くのネットブックと同じアーキテクチャだ。メモリも裏のネジを2本外せば簡単に増設できる。後者は先に書いたように同じAtomプロセッサでもZシリーズを搭載し、チップセットもインテル システムコントローラ Hub US15W。例えば、富士通「LOOX U」やソニー「VAIO type P」と同じアーキテクチャとなる。 従ってInspiron Mini 10は、Inspiron Mini 9のパネルなどが大きくなったのではなく、Inspiron Mini 12の小型版に相当する。ちょうど、Windows XPを搭載したInspiron Mini 12の記事があるので、興味のある方はこちらも併せてご覧頂ければと思う。 液晶パネルはグレア処理。それなりに周囲が映り込む。また他の2機種と同様、発色はあまり正確でない。GMA 500の色補正でsRGBに近くなるよう、調整した方が良さそうだ。24ドット縦が少ない16:9のアスペクト比はやはり狭く、更に小型のInspiron Mini 9が600ドットなだけに残念な部分と言えよう。 マウスパッドは、形状が変わった。これまでパッド+ボタンの構成だったが、パッドの下左右がボタンの替りになっている。パームレストに相当する部分にあまり余裕が無いため、この仕様になったと思われるが、実際操作しても特に使い辛いという感じはしなかった。このマウスパッドのドライバには「Elan Smart-Pad」が使われている。タッピングはもちろん、2本指による縦横スクロールや拡大、3本指によるページスワイプなど、iPhoneやMacBookでお馴染のジャスチャー操作で筆者的には使いやすい。
ここで最も注目すべき点はInspiron Mini 9、Inspiron Mini 12にあった、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)が無くなり、替わりに「HDMIポート」になったことだ。これまでネットブックと呼ばれる大多数の製品はアナログRGBポートのみでデジタル出力は無かった。DVIのモニタへ接続する場合は別途変換ケーブルやアダプタが必要となるものの、これはなかなか興味深い変更だ。机の上に置いて高解像度の液晶パネルと組み合わせて使う場合、アナログ出力よりデジタル出力の方がにじみも無く鮮明に映る。ただAV機器としてのプロジェクタはHDMIポート搭載機が増えているが、ビジネス用途のプロジェクターはまだまだアナログRGBやDVIが多い。出先でプレゼンを行なうときには不便かも知れない。 ●Inspiron Mini 9との比較 8.9型の液晶パネルを搭載したInspiron Mini 9との比較を写真を中心に見て頂きたい。パネルが大きい分、Inspiron Mini 10の方が一回り大きくなるものの、17mmのキーピッチが確保され、キーボードは圧倒的に打ち易くなっている。ただ[Home][End]キーがファンクションキーと同列なのは唯一気になる部分だ。 またSSDを搭載したゼロスピンドルのInspiron Mini 9は振動を感じないが、HDDを搭載したInspiron Mini 10は、パームレストに手を置くと少々振動を感じる。ただし、ノイズはボディに耳を当てても聞こえず、静音性が高い。 その他の違いがわかりやすいよう、液晶パネル、解像度、内蔵グラフィックス、バッテリ駆動時間、サイズ/重量などを表にまとめると以下の通りだ。
バッテリに関しては、Atom Zシリーズの特徴から更に省電力。Inspiron Mini 9の32Wh対して24Whと、バッテリの出力は3セルでもInspiron Mini 12と同じになっている。いずれにしても3時間程度のバッテリ駆動は期待できそうだ。 気になるGMA 950とGMA 500の違いは、今回ベンチマークテストを行なっていないものの、やはり後者の方が体感的に遅いと感じる。システムのプロパティ/パフォーマンスで、いろいろな視覚効果をOFFにすると、それほどストレスも無く操作できるようになる。とは言え、Webや動画などを見る分には問題無く扱えるレベルなのでネットブックとしては十分なパフォーマンスだ。 ●まとめ 過去この連載でInspiron Mini 9のレビューを行ない、今回サイズなどを比較。Inspiron Mini 12に関しては量販店などで触ってきた。これらを踏まえた上での感想としては、全般的にInspiron Mini 10が一番扱いやすいように思う。多くの面で一般的なネットブックであるものの、しっかりした打ち易いキーボード、バランスの良いデザイン、デジタル出力としてHDMI、そしてHDD搭載と、非常にうまくまとまっている。 国内では受注時から1,366×768ドット表示対応10.1型液晶も用意され、ウイークポイントを改善できる。楽しみな1台といえよう。 ●追記:日本語キーボードの製品版到着 原稿の掲載直前に、日本語キーボードを搭載した製品版に短時間ながら試用することができたので、試作機との違いなどに触れたい。異なる部分は、キーボードが英語か日本語の違い、またデスクトップの壁紙とプリインストールアプリなどが整備された程度で、大きな変化や仕様変更などは無かった。
日本語キーボードは、[無変換][変換][カタカナ/ひらがな]キーが[Ctrl][Alt][Fn]キーなどを狭くしてそのスペースに配置しているが、これは日本語キーボードとして一般的な手法であり、キートップが小さいとは言え特に打ち辛くはない。不評だったmini 9の日本語キーボードから大きく改善されており、筆者が触ったネットブックの中でも、いろいろな意味で良くできたキーボードになっている。 Atom Zシリーズ、システムコントローラ Hub US15Wの組み合わせは、既にInspiron Mini 12で出荷済み。同社にとっては手馴れたものなのだろう。ベンチマークテストを行なっても、非常に安定して動作した。
□関連記事 (2009年3月30日) [Reported by 本城網彦]
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