DELL Inspiron Mini 12は、発表された時、個人的に非常に興味をもったノートPCだ。ただメモリ1GB固定でWindows Vista Home Basicだったこともあり、店頭で少し触り「やっぱり動きが鈍い」と思い、「そのうちXPモデルが出るだろう……。」と様子を見ていた。 ●DELL Inspiron Mini 12の仕様など 同社の純粋なネットブックとして「Inspiron Mini 9」があるため、このInspiron Mini 12、仕様的にネットブックと呼んでいいのか微妙なポジションであるが、Atomプロセッサ搭載ノートPCとしては12.1型と最大級の液晶パネルを搭載し、解像度は1,280×800ドット(WXGA)と申し分ない。デザインもご覧のように非常にシンプルで薄型、MacBook Airっぽいと言えば褒め過ぎであるが筆者的には好みである。BTOなのでいろいろなバリエーションを選べ、今回届いたのは「プラチナパッケージ」となっている64,980円のモデル。スペック的には以下の通りだ。
また、Atom Zシリーズ搭載機種について、XPのリリースがVistaよりも遅れたのは、Intelが提供するチップセットドライバのリリースが遅れたためと言われている。いずれにせよ、1GBのメモリとAtomプロセッサでVistaを動かすよりXPの方が間違いなく軽いので、XPが選択できるようになり嬉しい限りだ。 ほかにBTOの組み合わせとしては、OS:Windows Vista Home Basic SP1、Ubuntu 8.04(DELL カスタマイズ版)、CPU:Z520(1.33GHz)、HDD:40GB、60GB、バッテリ:6セルリチウムイオンバッテリ(駆動時間:最大7時間22分)も選択できる。一番安価な組み合わせだと思われる、Z520、Ubuntu 8.04、40GB HDDだと39,980円だ。 また、カラーバリエーションも非常に豊富で、今回届いた「パール・ホワイト」の他に「チェリー・レッド 」、「プリティ・ピンク」、「オブシディアン・ブラック 」、そしてTristan Eaton氏がデザインした「Stickers 1 in Green」、「Stickers 1 in Black」、「Stickers 2 in Blue」、「The Muse in Orange」、「The Muse in Purple」の5種類も選べ、楽しめるBTOとなっている。
ハードウェアとしての仕上がり具合はなかなか良く、安っぽい部分は見当たらない。全体的にスリム&クールでかっこいい。重量はEee PC 901-Xと比較して約140g重たいが、片手で持ち上げた感覚としてはサイズが大きい分、逆に軽く感じる。キーボードは少しクリック感があり、ストロークは深め。若干たわむものの、キーピッチも十分確保され、変な場所に変なキーがあるようなことになっておらず、扱い易い。更にファンレスなので、静かな場所で操作してもなかなか快適。ボディが熱を持つことも無い。この点についてはTDPが有利なAtomプロセッサのZシリーズとチップセットの特徴が出ている。もちろん液晶パネルは12.1型のWXGAなので欲求不満なくいろいろな情報を一度に表示可能だ。総じて第一印象は非常に良く、これで64,980円なのだから嬉しい価格と言える。余談になるが、たまたま事務所に遊びに来た友人が一目惚れしたらしく、真剣に(購入しようか)悩んでいる姿は興味深かった。それだけインパクトのあるノートPCなのだろう。 ●軽く中身拝見 どのような構成なのか中身を見たかったので、いろいろ調べたところ、第一段階までは簡単そうだったためトライした。その結果がご覧の通りだ。実は裏のネジを16本外し上部のカバーまで取り去ると、CPUモジュールやHDDにまでアクセスできるのだが、ネジを外してもうまくカバーが取れなかったこともあり、今回はここまでとした。分解するのが本来の目的ではないのでお許し願いたい。
仮に全て外しても1.8型PATAのHDDとCPUモジュールにアクセスできる程度。HDDを交換できると言ってもPATAのHDDなのでSSD化してもインターフェイスがボトルネックとなりパフォーマンスの向上はあまり期待できない。メモリはCPUモジュールに直付けなので増設も不可。苦労の割りに効果は薄そうだ。また、冒頭では触れなかったが、このInspiron Mini 12の気に入らない点の1つとして「スピーカーの音量が小さく音が悪い」ことが挙げられる。分解してみて納得の結果だ。スペース的にはまだ余裕がありそうなので、是非もう少し音量・音質共に改善して欲しい。ビジネス用であればまだ許せるが、趣味で使うノートPCとしては難があるかもしれない。 ●Windows XPでの使い勝手など さて筆者的に興味のあるのは、CPUが1.6GHzのZ530、チップセットにIntel システムコントローラ Hub US15W、グラフィックにGMA 500の組み合わせでどの程度動くのかだ。ネットブックで一般的なN270に945GSE Express、GMA 950のノートPCはもう飽きるほど触ったものの、このタイプを手元で長期間使うのは今回初めて。Vista Home Basicの入ったものを触ったとき、あまり印象が良くなかったので、OSがXPになってどう変わったが、重要なポイントとなる。 まずVista Home BasicからXPになっての印象が「これは厳しい。使いたくない」から「これならそれなりに使える」に変わった。Vistaでは不足となる1GBのメモリもXPなら十分な容量。グラフィックもズルズル引きずる感じは無くなり、割とスムーズだ。ただ、それでもネットブックとして一般的なGMA 950と比較すると体感的には明らかに遅く切れが悪い。この点はベンチマークテストの結果を見れば一目瞭然だろう。またGyaOなどで動画を見ると一瞬横に長細いノイズが走ることがある。CPUの使用率も40~50%の間を行ったり来たり。GMA 500の仕様としては、HDビデオの再生支援機能、DirectX 9、OpenGL 2.0に対応しているものの、XPのドライバがまだ完全にインプリメントされてない可能性がある。 1.8型PATA接続のHDDはベンチマークテストからもわかるようにあまり速くない。これは4,200rpmと言うのも遅い理由の1つだ。しかし我慢できない速度でもなく、用途的に考えてもこれがウィークポイントになることはあまり無いだろう。知らなければ普通に使える速度だ。バッテリに関しては数日使った感じでは、3セルのバッテリだと約3時間程度しか持たなかった。長時間バッテリ駆動するのであれば6セルタイプを選びたい。 意外だったのは、画面の明るさや音量などオンスクリーンで状態を表示する仕掛けが無いことだ。ファンクションキーとのコンビネーションで、これらの操作を行なっても、その変化は画面の明るさや音量などを実際に見て(聞いて)確認するしか手がないのだ。ソフトウェアだけで出きるので、是非対応して欲しい。 さてこのZ530、N270と比較すると、クロックやキャッシュ、FSBも同じ。Hyper-Threadingにも対応している。ところが右の CrystalCPUIDを見ると、Intel 64はOFFでVTがONになっている。これはN270や330とは逆だ。もっとも、このクラスのCPUでVTや64bitをONにしてもあまり意味がない。 話が横にそれてしまったが、Vista Home BasicからXPにOSが変わり、それなりに使えるようになった。ただ印象としては、CPUはそこそこ速いのにI/Oが足を引っ張っているのが残念なところ。これはネットブック全体にも当てはまる話なのだが、このUS15WとGMA 500のコンビネーションは更にそう思ってしまう。時代にマッチした省エネでそれなりの処理能力、そして安価と、ユーザーから見れば良いCPUを作っているのにも関わらず、自社のチップセットがそれを台無しにしていると言う、もったいない構図だ。 加えて不安要素があるとすれば、メモリが1GBに固定され増設ができないことにある。もうすぐそこにWindows 7が見えているこの時期に、XPと心中するしかないノートPCを今購入するのは、個人的に抵抗を感じてしまう。特にWindows 7の前評判がいいだけに、なおさらだ。とは言え仮に2GBを搭載してもGMA 500でWindows 7が快適に使えるかと聞かれると、これはこれで悩ましい問題だ。 ●総論
Windows XPを搭載したDELL Inspiron Mini 12。グラフィックのパフォーマンス、そしてスピーカーがイマイチであるが、それでもこの解像度とパネルのサイズは、日頃狭いWSVGAの画面を見ている人にとって、気になる部分を吹き飛ばしてしまうほど魅力的なAtomプロセッサ搭載ノートPCだ。デザインもかっこいい。テキスト処理が中心のビジネス用途であれば特に不満になることもないだろう。筆者的にはもう一点、EthernetをGbEにして欲しい。そうすればNASとのデータのやり取りも高速に行なえる。
□関連記事 (2009年2月10日) [Reported by 西川和久]
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