●クライアントOS部門の収益が悪化 1月22日(現地時間)、Microsoftは2009年度第2四半期(2008年10月~12月)の決算を発表した。それによると売上げは166.3億ドルで、10月時の予想(173億ドル~178億ドル)に届かなかったものの、前年同期比で2%の成長を維持している。営業利益は59.4億ドルで、純利益も41.7億ドルを確保したものの、それぞれ前年同期比で8%および11%の減少となっている。この増収減益の決算を受けて、Microsoftは最大5,000人規模の人員削減による経費削減を打ち出した。 部門別に見ると、好調だったと言えるのはサーバーOSと開発ツールを手がけるServer and Tools部門で、増収増益を達成している。ほぼ横ばいなのがサーバーアプリケーション等を手がけるMicrosoft Business部門。オンラインサービス部門は売上げこそ横ばいだったものの、赤字幅が拡大した。
ゲーム機のXbox 360やマウスを受け持つEntertainment and Devices部門は、季節要因(クリスマス商戦を含む)もあり前期比では売上げが躍進したものの、前年同期比では3%の成長にとどまった。その一方で、利益は3億7,500万ドルから1億5,100万ドルと半分以下に減少している。Microsoftはヨーロッパ地区におけるXbox 360の売上げが倍増したこと、米国市場においてライバルであるPLAYSTATION 3との販売比率が2対1(PS3が1台売れる間にXbox 360が2台売れる)になったとしているが、その効果が利益の面からは見えてこない。 さて、最も注目されるのがクライアント向けWindowsを手がけるクライアント部門だが、対前年比、対前期比のいずれにおいても、減収減益となっている。売上げは1年前の43億3,400万ドルから39億8,200万ドルへと8.13%のダウン、利益は33億8,600万ドルから29億4,600万ドルへと13%のダウンとなっている。
この理由としてMicrosoftは、経済環境の悪化によるPC市場全体の不調を真っ先に上げている。これにより全体のライセンス数が減少しただけでなく、ライセンスに占めるプレミアム版の比率が71%から64%に低下した。その一方で、ネットブックにバンドルされるWindowsが80%まで増加した(言い替えればLinuxのバンドル率は20%程度)、としている点も見逃せない。つまり通常のWindowsのライセンスが伸び悩み、低価格なライセンスが増える一方で、ネットブックを対象とした、さらに安価なULCPCライセンスが膨らんでいるわけだ。 ●Microsoftの不調がULCPC版の制限につながる Microsoftにとっては何とも困った状況だが、自らの手で打てる対策はあまりない。米国経済がいつ回復するのか予測することは現状では困難だし、ULCPC/ネットブックという市場のハシゴを今さら外すわけにもいかないからだ。しかし、こうした傾向が続くのであれば、Microsoftが打つであろう手は何となく見えてもくる。 現在ULCPCライセンスの対象となっているのは、一部の例外を除き、Windows XP Home Editionである。このXP Homeは、以前に市販されていたもの、あるいはコンシューマ向けPCにバンドルされていたものと基本的に変わらない。MicrosoftはこのWindows XPをWindows 7で置き換えたいと考えているが、おそらくそのWindows 7は、上位のSKU(品目)に対し何らかの機能制限を加えたものになるのではないだろうか。 ご承知のように、MicrosoftはULCPCライセンスを提供する前提として、ハードウェアの構成に制限をかけている。初期に比べれば緩和されたとはいえ、メモリが最大1GBであったり、SSDの容量が16GBまで、といった制約が設けられていることに変わりはない。が、今のところOSそのものの機能については、特に制約は設けられていない。これは、ライセンスされるOSが一世代前のものであることが大きな理由だろう。 しかしWindows 7がリリースされ、ULCPCにライセンスされるOSと一般のPCにライセンスされるOSが同じ世代のものになった時、ULCPC向けに安価にライセンスするOSが、一般のPC向けにライセンスされるOSと同じ機能を持つとは考えにくい。そんなことをしたら、ますます売れるのはネットブックばかり、ということになってしまう。それがMicrosoftの収益に大きな影響をもたらすであろうことは、この決算からも容易に見て取れる。 仮に「Windows 7 ULCPC Edition」と呼ぶべき製品に、どのような機能制限が設けられるのかは、このSKUの存在そのものが筆者の想像の域を出ない現状、予測することは不可能だ。が、新興国向けに提供されているStarter Editionに800×600ドットというディスプレイ解像度の制限が設けられていたように、ULCPC Editionには現在主流となっている1,024×600ドットをディスプレイ解像度の上限に設定するということはあり得るかもしれない。メモリやストレージスペースを制限するより、分かりやすく効果的であるからだ。また、Windows Vista Home Basicのように、ユーザーインターフェイスなどの面で、機能差をつけられてしまうという可能性もある。 もちろん、ユーザーにとって見れば、こうした制限はないに越したことはないが、おそらく避けられないだろう。Microsoftが不調であればあるほど、その可能性は高くなると思われる。現状のベータ版の段階ではフル機能が使えるWindows 7だけに、SKUの構成も気になるところだ。
□関連記事 (2009年1月23日) [Reported by 元麻布春男]
【PC Watchホームページ】
|