第439回
Windows 7ベータ版をVAIO type Pで試す



 先日、「VAIO type P」がソニーから発表されたのと前後して、マイクロソフトは今年(2009年)年末から来年(2010年)にかけての製品版出荷を予定しているWindows 7のパブリックベータテストを行なうと発表していた。パブリックベータテストとは一般ユーザーもベータテストに参加し、自分のコンピュータに組み込んで試すことができるテストで、つまり一般ユーザーでもテストに参加できる程度に、Windows 7の品質やパフォーマンスが上がってきていることを示すものだ。

 このWindows 7パブリックベータについて、マイクロソフトWindows製品部の関係者は「Atom Zを用いたMID(Mobile Internet Device)向けのプラットフォームでの動作速度感が、Vistaよりも大きく改善されている」と話していた。

 ではどの程度の動きになるのかということで、実際にVAIO type Pの試作モデルを用いて、動作の様子を動画に収めてみた。

●インストールの状況

 テストに用意した機材はVAIO type Pのバイオ・オーナー・メイドモデルで、Atom Z540(1.86GHz)、2GBメモリ、64GB SSD、GPS+W-WAN搭載モデルである。

VAIO type PにWindows 7をインストールした時のExperience Index

 Windows 7は、パブリックベータとして提供されるビルド番号7000の英語版だ。日本語版もすでに配布されているが、ライセンス条件を確実にクリアするため、テスト時点でプレスにも配布済みの英語版を使った。なお、現在、テスト用に配布されているのはUltimate Editionに相当する全部入りのバージョンのみである。

 とはいえ、日本語になると少し重くなるのではないかという意見もあるだろう。そこで日本語ランゲージパックをインストールして、表示言語に日本語を選択することで、日本語Windows 7とほぼ同じ(と考えられる)環境に整えてから実験した。

 クリーンインストールを行なうと、GPSユニットと思しきデバイスなど、2つの不明なデバイス、ドライバが組み込まれていないネットワークアダプタ(有線LAN)が出てくるが、LANに関してはVista用を組み込むことができる。

 また、ディスプレイドライバは一見組み込まれて見えるようだが、ちゃんと組み込まれておらず、汎用VGAドライバで動作していた。こちらはGMA500のドライバを入手して組み込むことで解決したが、ドライバセットアップ用のプログラムはWindows 7をサポート外と判断して動かすことができない。そこでデバイスマネージャからインストール構成ファイルを直接指定してドライバを組み込んだ。

 するとGMA500のディスプレイドライバが動き始めてくれたのだが、今度はWindows 7の起動直後ぐらいに“デスクトップウィンドウエラー”とのメッセージが出る。このメッセージを無視しても動作に影響はなかったが、完全な状態では組み込まれていないのかもしれない。なお、この現象は他の製品でも経験しており、VAIO type Pの不具合というわけではないことは付記しておきたい。

 また省電力関係の何らかのドライバが正常に動いていないようで、ハイバネートやサスペンドに移行する際にハングアップする。このあたりはベータテストであることや、MID向けプラットフォームがマイナー(テストはおそらくまだ行なわれていない)であることを考えれば当然だろう。とはいえ、パブリックベータ版なので、このWindows 7をtype Pにインストールしようという人も現れるかもしれない。現状、クリーンインストールで完全に動かすためのハードルは高そうなので、チャレンジする人は覚悟してトライして欲しい。

 このようにドライバ組み込みが完全ではない状態でのテストとなるが、ご容赦いただきたい。アップグレードインストールであれば、元から組み込まれているVista用ドライバやユーティリティ、各種レジストリチューニングの状態を維持できるハズだが、Windowsのセットアップは、言語が異なるとアップグレードインストールを行なえない。今回試用したVAIO type Pには日本語Windows Vistaが入っているため、残念ながらクリーンインストールのみしか試せなかった。

 アップグレードインストールがどのような結果になるかは、チャンスがあればまた別に行なうことにしよう。

●体感できるほど操作レスポンスは向上

 元々のVAIO type PにはVista Home Basicがインストールされていたが、VAIO専用のソフトウェアがあらかじめ組み込まれており、開封直後の状態では動作がかなり緩慢。特にたくさんの音楽ファイルをコピーしたりすると、12音解析の分析プログラムが動作するなど、かなり動作が遅くなることがある。

 一通りのバックグラウンドの処理が終わってしまえば、そこからはかなりレスポンスが良くなる。このため、あらかじめいくつかの常駐ソフトを外してから動作の評価を行なった。しかし、それでもシステムの起動、各種ソフトウェアの起動といった操作に対するレスポンスはWindows 7になることで体感できるほど上がる。

 もっとも、感じ方は人それぞれ。ここでは掘り下げた詳しい論評は避け、動画にて動作の様子を見てもらうことにしたい。

・【動画】Windowsのコールドスタートから各種アプリケーションの起動(別ウィンドウで開きます)

 電源をONにし、BIOSの初期化プロセスなどを経て操作が完了するまでの時間は約52秒ほど。この後も、若干SSDへのアクセスは続くが、操作処理に対する優先度が高いのか、この時点であまり重さは感じない。

 この直後にWord 2007を起動しているが、特に問題なく素早く起動しているのがわかるだろう。続いて前述したデスクトップウィンドウエラーが出たあと、ピクチャフォルダを開いてスライドショーを開始。サンプル用のサイズが小さな画像ファイルなので速くて当たり前と言えばそうだが、ここでも動きが引っかかるところはない。

 その後、Excelを起動、各アプリケーションを終了させ、今度はWindows Media Playerを起動。さらにバックグラウンドでオンラインストアの画面読みこませつつ、同時にInternet Explorerを起動してウィンドウを最大化。ブラウザの操作を行なうところでビデオは終わる。

 インターネットへの接続がかなり遅い環境でテストしているので、ブラウザの動きが緩慢に見えるかもしれないが、実際の操作感は良い。

・【動画】YouTubeでHD動画を再生、その後に各種ウィンドウ操作(別ウィンドウで開きます)

 通常のYouTube再生には全く問題がないので、YouTubeでHD動画を再生してみた。が、ディスプレイドライバが異なるせいだろうか。理由は不明だが、シーンチェンジの時にはコマ落ちがハッキリと感じられる。CPU負荷のグラフを見るとわかるとおり、単にクリーンインストールした状態ではYouTube HDの再生は厳しい。

 しかし、その後のウィンドウ操作(画面端に押しつけることでウィンドウサイズの制御を行なう操作)はスムーズだ。

・【動画】WMV HDを再生(別ウィンドウで開きます)

 VAIO type Pは1080pサイズのWMV HD再生を行なえることを、1つの開発目標としてしてきたそうだ。このためにドライバや内部レジストリなどのチューニングが行なわれているようだが、Windows 7はクリーンインストールしたばかりなので、それらのチューニングは反映されていない。

 動画でもわかるとおり、途中、所々で動きが止まっている。ハードウェアに違いがあるわけではないので、Windows 7がリリースされればチューニングされたドライバが配布されるだろう。

 Windows 7は操作レスポンスが軽快で、重さを感じさせないようにチューニングしているようだが、かといってプロセッサのパフォーマンスを加速させるわけではない。そもそもCPU負荷が大きすぎて、パフォーマンス不足となっているケースの問題解決にはならない例として掲載した。

 ここまでご覧いただいておわかりのように、まだベータ版ゆえの不満もあるが、ベータテスト初期の状態としては、かなり良い感触だと思う。今後もWindows 7の進歩を見守っていきたい。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□製品情報
http://www.vaio.sony.co.jp/P/
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【1月9日】【本田】「VAIO type P」チェックポイント7題
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【1月8日】【Hothot】ソニー「VAIO type P」
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0108/sony.htm

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(2009年1月14日)

[Text by 本田雅一]


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