発売中 実売価格:249,800円 富士通の2009年春モデルとして発表された「FMV-BIBLO NW」シリーズは、地上/BS/110度CSデジタルチューナーを搭載したAVノートPCである。この製品は、同社初の水冷システムを搭載、さらに日本初のタッチパネル対応サブディスプレイを搭載するなど、非常に意欲的な製品だ。 FMV-BIBLO NWシリーズは、店頭モデル「FMV-BIBLO NW/C90D」と、仕様のカスタマイズが可能な直販専用モデル「FMV-BIBLO NW/C90N」の2モデルがあるが、ここでは、店頭モデルのFMV-BIBLO NW/C90D(以下NW/C90D)を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、細部やパフォーマンスなどは製品とは異なる可能性があることに注意してほしい。 ●16型ワイド液晶搭載のフラッグシップモデル NW/C90Dは、富士通のFMV-BIBLOシリーズの中でも、フラッグシップとして位置づけられるハイスペックAVノートPCであり、16型ワイドの大型液晶を搭載する。CPUは、Core 2 Duo P8600(2.4GHz)で、チップセットは、グラフィックス統合型のIntel GM45 Expressである。メモリは、標準で2GBのDDR3メモリを搭載しているが、標準で装着されている1GB SO-DIMM2枚の代わりに、2GB SO-DIMMを2枚装着することで、最大4GBまで増設が可能だ。HDD容量も320GBと大きい。単体GPUを搭載していないため、最新の3Dゲームを快適にプレイしたいという用途には向いていないが、それ以外の用途なら余裕で対応できるスペックである。 サイズは385×276.5×36.9~49.4mm(幅×奥行き×高さ)と大きく、重量も約3.4kgあるが、本製品は持ち歩くための製品ではないため、問題とはならないだろう。
●新開発の水冷システム搭載で高い静音性を実現
AVノートPCで、DVDやBD、録画したTV番組などを楽しむ際に、障害となるのが本体から発する騒音だ。ノートPCの最大の騒音源はCPUファンだが、静かな部屋で作業をしている場合など、AV機能を利用していなくても、騒音が耳障りに感じることも多い。そこで、NW/C90Dでは、新開発の水冷システムの採用によって動作時の騒音を大きく低減している。この水冷システムは、CPUとチップセットを冷却することができ、非常に薄くできている。すでに水冷システムを搭載したノートPCを発売しているメーカーもあるが、富士通のノートPCとしては、今回のBIBLO NWシリーズが初搭載となる。BIBLO NWに力を入れていることの1つの現れといえるだろう。 その効果は絶大で、TV視聴時の公称騒音レベルは、ささやき声よりも低い約25dBとのことだ。実際に、ベンチマーク中などに耳を傾けてみたが、通常のノートPCとの距離(数十cm)では、ほとんど騒音は聞こえなかった。耳を筐体のすぐそばまで近づけると、ファンの音が多少聞こえるが、日常の生活音よりも騒音レベルは低いので、ノートPCの騒音が気になるという人にもお勧めだ。 ●タッチパネル対応サブディスプレイ「タッチスクエア」が非常に便利 NW/C90Dの最大の特徴が、キーボードの奥中央にタッチパネル対応のサブディスプレイ「タッチスクエア」を搭載したことだ。ノートPCで、タッチパネル対応サブディスプレイを備えた製品は、これが国内初となる。タッチスクエアのサイズは4型ワイドで、解像度は480×272ドットである。このタッチスクエアは、Windows上からはセカンダリディスプレイとして認識されており(ただし、Windows上では、解像度が縦横2倍の960×544ドットとして認識されており、表示時に半分に縮小されている)、さまざまな活用が可能になっている。タッチスクエアの活用方法としては、「スタートモード」「フォトビューアーモード」「コンパクトTVモード」「コンパクトDVDモード」「ミニリモコンモード」の5つのモードが用意されている。 NW/C90Dを起動すると、タッチスクエアは「スタートモード」になり、アプリケーションランチャーとして利用できる。ワンタッチボタンなどと異なり、アプリケーションのアイコンがそのまま表示され、そのアイコンを指でタッチするだけでアプリケーションを起動できるので、初心者にもわかりやすい。スタートモードでは、最大15個のアプリケーションの登録が可能で、アプリケーションの登録や修正などは、専用ユーティリティで行なうことができる。 フォトビューアーモードは、画像をスライドショー形式で見ることができるモードだ。一定間隔で画像が切り替わるように設定できるが、タッチスクエアの画面上を指で左右にスライドさせることでも、画像の切り替えが可能だ。
コンパクトTVモードは、タッチスクエアでTV放送のライブ試聴を楽しめるモードであり、コンパクトDVDモードは、同じくタッチスクエアでDVDタイトルやBDタイトルの再生を楽しめるモードだ。タッチスクエアは、感圧式タッチパネルが液晶表面に貼られているため、やや表示のコントラストが低く、白っぽく感じられることがあるが、ニュースなどの番組を視聴するには十分だ。メインディスプレイでTVやDVD/BDを視聴すると、タッチスクエアが自動的にミニリモコンモードに切り替わり、TVやDVD/BDの再生操作が行なえる。メインディスプレイの視聴画面を、ワンタッチでタッチスクエアに切り替えることも可能だ。 前述したように、タッチスクエアは、Windows上からはセカンダリディスプレイとして認識されているため、アプリケーションのウィンドウなどをタッチスクエア内に表示することもできる。また、ペイントなどをタッチスクエア内で起動すれば、ペンで描き込むことも可能だ(ペンは付属していない)。 このように、タッチスクエアはさまざまな場面で便利に活用でき、非常に便利だ。特に、コンパクトTVモードは、メインディスプレイの表示エリアを占有せずに、TV番組を視聴できることが気に入った。仕事をしながら、ニュースなどをながら見するには最適だ。
●ノートPC初の3波対応デジタルチューナーを搭載、BDドライブも装備 NW/C90Dは、地上/BS/110度CSデジタルの3波対応デジタルチューナーを搭載していることも魅力だ。デスクトップPCでは、3波対応デジタルチューナーを搭載した製品が登場しているが、ノートPCで3波対応デジタルチューナーを搭載したのはやはりBIBLO NWシリーズが業界初となる。地上デジタル放送だけでなく、BSデジタルや110度CSデジタルの視聴や録画が可能なことは高く評価したい。ただし、チューナー自体はあくまで1系統なので、2番組同時録画などはできない。TV視聴録画ソフトは、ピクセラの「DigitalTVbox」を利用する。もちろん、EPG(電子番組表)を利用した録画予約が可能だ。リモコンも付属しており、家電感覚で操作できる。ダビング10にも対応しており、HDDに録画した番組をBlu-ray DiscやCPRM対応DVDにコピー9回+ムーブ1回が可能だ。 光学ドライブとしてはBDドライブを搭載。BD-ROMドライブではなく、BD-RやBD-REへの記録にも対応したフルスペックのBDドライブであり、市販のBDタイトルを楽しむことはもちろん、録画した番組をハイビジョン画質のままコピーしたり、データのバックアップなどにも利用できる。
●16:9の16型ワイド液晶を搭載
液晶ディスプレイとしては、16型ワイドのスーパーファインDXII液晶を搭載。表示可能な色域がNTSC比約72%と広く、TV番組はもちろん、DVDやBDなどのタイトルも色鮮やかに表示できる。いわゆる光沢タイプの液晶なので、コントラストも高い。解像度は1,366×768ドットで、アスペクト比は16:9になる。一般的なワイド液晶に比べてより横長であり、デジタル放送やDVDやBDなどのアスペクト比16:9のコンテンツを、黒帯なしに画面一杯に表示することが可能だ。液晶サイズの割に解像度が低いことがちょっと残念だが、液晶の表示品位は高い。 ●テンキー付きキーボードで数字入力もラクラク BIBLO NWは、ボディサイズが大きいため、キーボードも余裕があって使いやすい。国内メーカー製ノートPCとしては比較的珍しい、テンキーも搭載。キーピッチも18.4mmと広く、配列も標準的なので、快適にタイピングが可能だ。テンキーを備えているので、数字入力も効率よく行なえる。キーボードの右上には、「Supportボタン」が用意されており、ワンタッチで「FMサポートナビ」を呼び出すことができるので、初心者にも優しい。 ポインティングデバイスとしては、パッドタイプのフラットポイントを搭載。こちらの操作性も良好だ。フラットポイントは、ジェスチャー機能に対応しており、ピンチやモーメンタムなど、iPhoneのような操作が可能だ。さらに、USBレーザーマウスも付属している。一般的なLEDタイプの光学マウスに比べて、利用場所を問わず安定したトラッキングが可能なことが特徴だ。
●HDMI端子やeSATA端子を備えるなどインターフェイスも充実 BIBLO NWは、インターフェイス類も充実している。USB 2.0ポートを4基備えるほか、IEEE 1394端子やeSATA端子、HDMI端子も装備している。また、ExpressCard/54スロットとダイレクト・メモリースロット(SDメモリーカードとメモリースティックに対応)も備えている。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11nドラフト2.0対応無線LAN機能を搭載。ワイヤレススイッチも備えている。 バッテリパックは14.4V/2,000mAhの4セル仕様で、公称バッテリ駆動時間は約1.1時間とされている。バッテリ駆動時間は短いが、基本的にデスクトップ代わりに使うマシンなので、特に問題はないだろう。
●3D描画性能以外は十分なパフォーマンス ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark Vantage 1.0.0.0」と「PCMark05(Build 1.2.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」、「フロントミッションオンラインオフィシャルベンチマーク」、「モンスターハンターフロンティアオンラインベンチマーク」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」だ。また、Windowsエクスペリエンスインデックスも計測した。比較対照用に、パナソニック「Let'snote F8」とソニー「VAIO type T VGN-TT90S」、レノボ「ThinkPad X61 Tablet」の結果もあわせて掲載している。 単体GPUを搭載していないため、3D描画性能はあまり高いとはいえないが、CPU周りのスコアは優秀だ。ほとんどの用途に十分なパフォーマンスを持っているといえるだろう。 FMV-BIBLO NW/C90Dのベンチマーク結果
●この仕様で実売25万円はお買い得 NW/C90Dは、ノートPCで初めて3波デジタルチューナーやタッチスクエアに搭載に加え、水冷システムやBDドライブも搭載した、非常に高機能なAVノートPCである。富士通の春モデルの中でも、BIBLOシリーズのフラッグシップとなるマシンだが、実売価格が25万円前後と比較的安く設定されていることも魅力だ。BDドライブやHDMI端子も搭載しているので、大画面TVに接続して、BDタイトルを大画面で楽しむことも可能だ。タッチスクエアは、非常に便利なデバイスであり、中上級者はもちろん、初めてパソコンを買う人にもお勧めだ。今後、タッチスクエア搭載機のバリエーションが増えることを期待したい。 □富士通のホームページ (2008年12月26日) [Reported by 石井英男]
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