相性診断回路「ラブ・アナライザ」




 今回はパーティーの余興に最適な回路を作ってみましょう。

 手をつないだ男女の相性を測定します。'69年に任天堂が発売した「ラブテスター」とたぶん同じ原理ですが、こちらは表示がデジタルです。「ラブ・アナライザ」と名付けました。

ラブ・アナライザ全体の写真です。2つの球はセンサーです。ふたりの被験者がこれを1つずつ握ります
センサー球を握ったら、空いているほうの手でコンタクトします。心が通い合っていない場合、LEDは点灯しません。「気がある」ふたりならLEDは1つ点灯します
ふたりの間に「ラブ」がある場合は、LEDが2つ点灯します

 測定の原理は単純です。被験者ふたりを1つの抵抗器と見なして、そこに電流を流し、電圧を比較します。ふたりがどの程度強く電気的に接触しているかで、関係が読み取れます。

 触れあう強さ、接している面積、皮膚の状態などが影響します。とくに、汗で皮膚が湿ると抵抗値が低下し、電気が通りやすくなります。緊張や興奮による発汗を検出して、それをラブの度合いとして表示するシステムといっていいでしょう。

完成したブレッドボード部。6本の抵抗、2本のLED、そしてナショナル・セミコンダクタのLM339というICで構成されるシンプルな回路です
センサ部はピンポン球にキッチン用のアルミホイルを巻いて作りました。電気を通すものならば他の材料でも構いませんが、大きさはこのくらいがベストです。皮膚に触れる部分がある程度広くないと抵抗が大きくなりすぎ、測定できません。アルミホイルの端をワニグチ・クリップで咥え、ブレッドボードへつなぎました
黄色い部分がLM339です。この回路図ではLM339の電源(V+とGND)が省略されています。写真と次の図を参照して、忘れずに接続してください。電源は3Vです(乾電池2個使用)。LEDは赤色(Vf=2.0V程度)を想定しています
この回路の主役はコンパレータです。2つの入力端子の電圧を比較して、+側が大きければV+と同じ電圧を出力し、-側が大きければGNDと同じ電圧を出力します。アナログの値をデジタル(HiとLow)に変換する素子と見なすことができます
LM339にはコンパレータが4個入っています。ラブ・アナライザでは、そのうちの2つを使用しています。この図はICを上から見たもので、それぞれのコンパレータがどのピンにつながっているか示しています。回路図のピン番号と照らし合わせて正しく接続してください。また、コンパレータの端子だけでなく、V+とGNDのピンも忘れずに接続してください。回路図では、この2つのピンは省略されています

 部品の数は少ないので組み立てはすぐ済むはずですが、LM339の接続が少しわかりにくいかもしれません。回路図とピン配列の図を見比べながら、正しく配線してください。もちろん、写真のとおりに接続すれば動作します。

 LM339のように、1つのICに複数の素子が入っているものは他にもあります。第20回で使用した74HC14には、シュミット・トリガが6個入っていました。オペアンプと呼ばれるICの場合、2つの素子がセットで入っているものが一般的です。そうしたICを使うときは、回路図とICのピン配列表を照らし合わせて作業する必要があります。また、忘れがちなのが電源ピンの配線です。素子のピンをつなぐだけでは動作しません。かならずICの電源端子を電池のプラスとマイナスにつなぎます。

 完成後の動作テストは、まず2つのセンサー球を直接くっつけたときにLEDが2つとも点灯するかをチェックしてください。点灯しない場合は、センサーとブレッドボードの配線をよく確認してください。

 ラブ・アナライザが的確に人間関係を表示することができるかどうかは、R3とR4の2本の抵抗器の値にかかっています。我々が試験したときには、どちらも220kΩで妥当と思える結果がでました。

 しかし、被験者のコンディションによっては、いくら気持ちを込めてもいっこうにLEDが点灯しないとか、逆によそよそしい乾いた接触で2個とも点灯してしまうといったことが起こる可能性もあります。そういうときは、R3とR4の値を増減させて、状況にあった動作に変更してください。どのように変更すれば、点灯しやすく、あるいは、しにくくなるかは説明しないでおきましょう。「調整のためだから」と言って、意中の彼女/彼と何度も手を繋ぐという使い方もあります。

 さて、コンパレータの違う使い道をもう1つ紹介します。オーディオ用のレベルメータを作ってみましょう。

【動画】iPhone 3Gのヘッドフォンジャックにつないでみました。表示が4段階しかありませんが、音量をおおまかに把握することはできます
回路の構成はラブ・アナライザとよく似ています。コンパレータが4段重ねになっていて、入力電圧を4段階で比較しLEDに反映させます
完成した状態の写真です。LM339の4つのコンパレータをすべて使っています。値の異なる抵抗器をたくさん使うので、接続位置を間違えないよう注意してください。使用した四角いLEDは秋葉原の日米商会で購入した古いもので、メーターの表現に適した形状です。もちろん、ふつうの砲弾型LEDも使えます。いろいろな形のLEDを試してください
今回初めて登場する部品はダイオードです。すでに発光ダイオード(LED)や可変容量ダイオード(バリキャップ)は使いましたが、ふつうのダイオードはまだでした。ロームの1SS133という製品を使用しました。共立電子では1本5円です。ときどき必要になりますので、少し余分に持っておいてもいいでしょう。ガラス・パッケージの表面に帯が印刷されています。帯に近い足がカソードです

 複数のコンパレータで入力電圧を測っています。LM339には4つのコンパレータが内蔵されているので、4段階の表示ならばIC 1つで実現できます。

 R2~R6の値によって、メータの振れ具合が変化します。とくに1番上のR6の値が感度に大きく影響します。自分のオーディオセットと組み合わせたときにちょうどいい振れとなるよう、抵抗値を調整してください。はじめから半固定抵抗器にしておくと、便利かもしれません。

第10回で製作したヘッドフォンアンプにつないだところです。2セット作ればステレオ対応になります
双方の回路で多用されているのが、抵抗分圧と呼ばれるテクニックです。2つの抵抗を直列につなぐことで、抵抗値の比に応じた中間の電圧が取り出せます。抵抗分圧で作った電圧と、入力された電圧をコンパレータで比較することで、測定回路を実現しています
3Vを1kΩと2kΩで分圧し、テスターで測ってみたところ。非常に高い精度の値が出ました。電池の電圧は変動しますし、抵抗器には誤差がありますからこれは偶然でしょうね

品名 型番/仕様 数量 参考単価
コンパレータ LM339 2 84
ダイオード 1S133 1 5
赤色LED
6 21
カーボン抵抗器 470kΩ 2 1
カーボン抵抗器 220kΩ 2 1
カーボン抵抗器 100kΩ 1 1
カーボン抵抗器 10kΩ 1 1
カーボン抵抗器 1kΩ 1 1
カーボン抵抗器 470Ω 1 1
カーボン抵抗器 220Ω 1 1
カーボン抵抗器 100Ω 7 1

 両方の回路で必要となる部品をまとめました。価格は共立エレショップのものです。抵抗の値を調整することを考えて、半固定抵抗器を少し用意しておいてもいいかもしれません。1kΩ、10kΩ、100kΩ、1MΩあたりを揃えておくと融通がききます。カーボン抵抗器を直列または並列につなぐことで調整する方法もあります。

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【9月18日】【武蔵野】ヘッドフォン・アンプを作ろう(前編)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0918/musashino010.htm
【11月27日】【武蔵野】7セグLEDの数字を動かしてみよう
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1127/musashino020.htm

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(2008年12月11日)


船田戦闘機、スタパ齋藤、上杉季明によるユニット。電子工作からバンド演奏までさまざまな活動を行なうが、各活動に共通するテーマは“電気が通ること”としている。電子部品・電子回路の玄人ではなく、それらに対して強い興味を抱いている。ブレッドボーダーズは、そんな立ち位置から電子部品・電子回路に触れていくプロジェクトである。


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