2009年1月中旬 出荷 価格:205,000円 2005年に対Let'snoteとしてNECが投入した「VersaPro UltraLite」シリーズは、Let'snoteを上回るモビリティを目指した意欲的なモバイルノートだった。そして現在、軽量かつ長時間駆動、かつ作業性に優れた12.1型モバイルノートにはパナソニックと東芝「dynabook SS RX2」などがあり、2009年モデルとしてNECが投入する新「VersaPro UltraLite タイプVC」がそろそろじゃないかと思っていた読者も多いことだろう。今回はその試作品であるVC-6を入手したので、外観はもちろん、ベンチマークや内部構造などを見ていこう。なお、今回は試作機のため量産品とは細部が異なる可能性もある。 VC-6は重量1kg以下、BTOの選択肢にSSDが追加、バッテリ駆動時間最長約12.5時間と正常進化したといっても過言ではない。またフラット天板や対衝撃性能、FeliCa/指紋認証などにより、より持ち運びやすくなったといえる。 ●最軽量構成は約868g モバイルノートを選ぶ上でプライオリティの高い要素の1つは「重量」だ。カバンのなかにはノートPCのほかに書類などが入るため、頻繁に動き回る人ほど「1kg以下」にこだわる傾向が強い。実際、1kgちょっとと1kg以下では体感重量に大きな違いを感じる人が多く、筆者も体験からカバンの中身の総重量はなるべく1.5kg以下にしたいと思っている。 新しい「VersaPro UltraLite タイプVC」の重量は、最小構成で約868g。ファーストモデルが最小構成で約996gであったことを考えると、NECのやる気がよく伝わってくる。この最小構成はSSD搭載時となっており、今回、入手した試作モデルは2.5インチHDD 160GB搭載モデル。それでも重量は実測で996g。ファーストモデルの最小構成と同様で、現行のVJ10A/C-5の最小構成958gと38gしか変わらない。
軽いと不安になるのが堅牢性だ。NECはネットブック「LaVie Light」でも面加圧150kgfの堅牢を実現するように「持ち運び」を強く意識したデザインを採用している。もちろん、「VersaPro UltraLite タイプVC」も例外ではなく、面加圧150kgfとなっている。経験のある読者もいると思うのだが、カバンの中のノートPCにとって脅威となるのは、人混みや満員電車、接触などによる加圧だ。会社に着いたら液晶が無残な状態に……というケースをなるべく回避できるようマグネシウムダイカストボティを採用している。とくに液晶パネルフレームは堅牢性が重視されており、天板側と液晶側の両方からフレームを二重に重ねる方式を採り、ゆがみから液晶パネルを保護。その結果、液晶全体の強度が高まった。また液晶パネルは高密度ウレタンスポンジで支えられており、接触などの衝撃にも強くなっている。 これは天板だけでなく、キーボードやパームレストも同様で、点加圧25kgfとなっている。過去にうっかりパームレストに手をついて、見事にノートを破壊したことのある筆者なので、この点はとてもありがたい。 次に外観。最近のNECのモバイルノートはフラットである。その外観デザインは定着しつつあり、見るだけで「NECらしい」と思ってしまうほどだ。本製品も従来のボンネット構造からフラットな構造に改められた。これはカバンへの出し入れのしやすさを意識したもので、実際に出し入れしてみると、引っかかりもなくとても快適だ。薄さは最薄部約25mm、最厚部で29.8mmとなっており、現行モデルよりも8.8mm薄くなった。
VJ10A/C-5でも採用されているショックアブソーバ構造、高密度ウレタンスポンジ製「Support Rubber」でHDDを16カ所からホールドし、衝撃を吸収する仕組みは健在だ。またハードディスクセーバーもすっかりお約束で、今回も採用されている。落下試験はHDD非動作時に76cmの高さからの落下に耐えるよう設計された。これは机の高さを想定しており、オフィスで見かける机の高さとほぼ同じだ。なおショックアブソーバについては分解時にも触れているので確認してもらいたい。 ●キーボード、液晶モニタ、駆動時間ともに良好 12.1型ノートはネットブックと比べるとやはり面積に余裕があるため、キーボードレイアウトも標準的で、かつパームレストも大きく、作業性が高くなっているので、まず打ちにくいとは思わないだろう。キーピッチは実測約17mm、キーストロークは約2.5mm。デスクトップのキーボードと比べてもさほど違和感を感じることなく打鍵でき、またファンクションキーもF4とF5の間にスペースがあって扱いやすい。強いていえば、半角/全角がもう少し大きければよかったと思う。
そしてキーボード面の温度。書類作成や起動させっぱなしで数時間放置したくらいではまったく温度が上昇せず、不快になることはなかった。Tabキー周辺にCPUやチップセットがあるため、気持ち温度が高いと感じる程度。ベンチマークを6時間連続で行なったところ、触っているのも辛いくらい熱を帯びたが、用途を考えるとそういったシーンはまずあり得ないのでキーボード面の温度は大きく気にする必要はないだろう。またパームレストも同様でまったく温度を意識することはなかった。あとで触れるが、パームレスト直下には熱源となる要素が少ないためだ。 液晶は12.1型でノングレアタイプ。バックライトはLEDで低消費電力化の一助を担っている。また液晶パネルのガラスは0.2mmとA4ノートの0.5mmよりも薄い。これはフレーム強度が増したためで、最終的に軽量化につながった形だ。 発色はフラットで特定の色の発色が強いとは感じず、ノングレアも良好で映り込みが多少あっても視認性に問題を感じることはなかった。また蛍光灯(6灯)の下でも、輝度を4~5段階まで上げていれば十分。もちろん太陽光の下でも同様で、出先で少し取り出して確認といったことならなんら問題はない。参考までに異なる輝度での見え方を撮影したので確認してもらいたい。
バッテリ駆動時間を見てみよう。試作機のバッテリは標準タイプのリチウムイオンバッテリでWindows XP Professionalの場合はカタログスペックでは最大約8.3時間、大容量タイプの場合は約12.5時間となっている。標準タイプでも十分なくらいだが、とにかく動きまくるというなら大容量タイプがベストだ。 試作機にはWindows Vista Businessがインストールされており、カタログ上にバッテリ駆動時間が掲載されていなかったため、原稿作成をしたり、画像を開いたり、動画を見る、音楽を聴くといったよくある用途で調べてみた。Eco設定ツールでEcoモードでの計測で、その結果は約5時間30分。放置状態では約7時間とVistaインストール時であっても不便は感じないといったところだ。またDVD内蔵のVMタイプでも最長約12時間なので、バッテリ駆動時間を気にしてDVDドライブを外付けにする必要もないだろう。なおバッテリ本体にスペックが記載されていなかったため、製品版では駆動時間が変化するかもしれない。 ●ベンチマーク 試作機のスペックは、CPUにCore 2 Duo SU9300(1.20GHz)、メモリ3GB、チップセットにグラフィック内蔵のIntel GS45、HDDは富士通製2.5インチ7,200rpm(MHZ2160BJ)となっている。ベンチマークは以下の通りで、「PCMark Vantage 1.0.0.0」と「PCMark05(Build 1.2.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」、「フロントミッションオンラインオフィシャルベンチマーク」、「モンスターハンターフロンティアオンラインベンチマーク」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」を使った。また、Windowsエクスペリエンスインデックスも計測した。比較として、ソニー「VAIO type T VGN-TT90S」とパナソニック「Let'snote F8」の結果もあわせて掲載した。なお試作品のため、製品版とは仕様などが異なる場合がある。
CPUのクロック差が露骨に出てしまっているが、1.20GHzであることを考えると十分なスコアといえる。さすがに「Let'note F8」と比べるとHDDスコアでは圧倒しているものの、それ以外はクロック通りといったスコアだ。ほぼ同クロックの「VAIO type T VGN-TT90S」と比較してみると、SSDとHDDの違いが明確なだけで、あとはやはりクロック分パワーダウンしたといったところだ。とはいえ、実作業ではほとんどネックとなることはなく、エンコードなどの処理をしなければまずストレスを感じることはないだろう。 ●軽量構造の中身を見てみよう
試作品であるため、製品版とは作りが異なる可能性があるとのことだが、分解をしてみた。分解してまず目を引くのが高密度小型マザーボード。2段ビルドアップ構造の10層基板で、現行モデルよりも小型化に成功した。またDVD外付けタイプということもあり、内部スペースに余裕がたっぷりある状態となっている。これも軽さの要因の1つだ。また見てわかる通り、左右ほぼ均等に重量配分されているため、片手時のホールド感がすこぶるいい。
●自宅から会社に、頻繁に外を動くならオススメ ビジネス用途、出先で快適にメールやブラウジング、パワーポイントなどを活用したいという人にオススメだ。さらに自宅に持ち帰る、自宅から持ち出す頻度が高く、満員電車や人混みに行かざるを得ない人ならなおのこと強く推奨したい。やはり面加圧性能の高さは安心感を与えてくれる。価格はCore 2 Duo搭載モデルで205,000円と高めだが、性能とモバイル性能からすればその価値はある。毎日の通勤時、カバンの中のノートPCが不安だという人はぜひ手にとってほしい。 □NECのホームページ (2008年12月10日) [Reported by 林 佑樹]
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