ASUSTeK Computer「Eee PC 900-X」
~SLC+MLC SSD搭載のモバイルネットブック




ASUSTeK Computer
「Eee PC 900-X」

発売中

価格:オープンプライス(実売価格49,800円)



 ASUSTeK Computerが2008年1月に発売した「Eee PC 4G-X」はいまやネットブックの代名詞となっている。軽量でモバイルに最適、サブノートとしても十分。カジュアルからパワーユーザーまで愛用する存在ともいえる。その第2世代となる「Eee PC 900-X」は5月に台湾や一部地域で発売され、しばらく日本版のリリースは予定に上がっていなかったが、10月11日に販売が開始された。さっそく入手したので、使い勝手やパワーアップした点などを見ていきたい。

●外観はほぼそのままに液晶が8.9型ワイドに大型化

 まず目を引く存在が7型がワイドから8.9型ワイドになった液晶パネルだ。解像度は1,024×600ドット(WSVGA)となり、スクロール頻度が減り、アプリケーションも使いやすくなった。「Eee PC 4G-X」は額縁部分が約35mmあり、数値以上に画面が小さく感じたが、「Eee PC 900-X」では額縁部分は約15mmとなり、一般的なノート同様になった。インチアップだけでなく、体感でも大きくなったと感じた。液晶ディスプレイはノングレアで蛍光灯などの光源がある環境下でも視認性が高く、「Eee PC 4G-X」よりもバランスのいい発色になっていると感じた。屋外(晴れ・曇り)で試して見たが、見づらいこともなくメールチェックやブラウジングが行なえ、ますます持ち運べる存在になったといえる。

横幅は「Eee PC 4G-X」と同じだが、液晶が大きくなっている ノングレア処理なので思いっきり蛍光灯を近付けないと反射しない 直上に5,000kの蛍光灯が6本ある状態だが、発色はさほど損なわれず、視認性は十分

 また液晶大型化のためか、サイズが少しだけ大きくなっている。「Eee PC 4G-X」は225×164×22~37mm(幅×奥行き×高さ) だったが、「Eee PC 900-X」は225×170×20mm~33.8mm(幅×奥行き×高さ) となっている。液晶が大きくなった分、わずかだか奥行きが長くなった結果だ。重量は920gから990gに増加しているが、ズシリと重さを感じるほどではなく、他のネットブックと持ち比べてみるとやはり軽いと感じる。

 外観やインターフェイスを見てみよう。日本版は光沢処理が施され高級感を演出している。持ち歩くと指紋が気になってしまうが、軽く拭けば落ちるので、あまり意識しなくていいだろう。

天板は思いっきり光沢処理がなされている。撮影用の電球がきれいに写りこむほど Webカメラとマイクの場所は変化なし。Webカメラは30万画素から130万画素に変更されている

 USBなどのインターフェイスは「Eee PC 4G-X」から劇的な変化はなく、左側面にEthernet、USB、マイク・ヘッドフォン端子、右側面にミニD-sub15ピン、USB×2、SDカードスロット(SDHC、SD、MMC)、そして背面に電源コネクタとなっている。贅沢をいえばマルチカードリーダにして欲しかったが、そつなく押さえたインターフェイスだと思う。またハードウェアスイッチは電源だけで、キーボードの右上付近にある。ノートを閉じた状態でも電源スイッチは露出しているが、閉じたままでの電源投入はできない。バッグの中で誤入力が発生しないための処理だろう。

左側面にはEthernet、USB、ヘッドフォン/マイク端子がある 右側面にはミニD-sub15ピン、USB×2、SDカードスロットがある 電源は背部にあり、取り回しがしやすくなっている
ソケット内部保護のためにダミーが挿入されている。細かい配慮がうれしい 本体中央、右側に電源スイッチがある
ノートを閉じた状態でも電源スイッチは露出するが、反応はしない仕組み インジケータはシンプル。左から電源、バッテリ、HDDアクセス、無線LANとなっている

 背面からメモリやSSD(Dドライブ)へのアクセスは簡単だ。背部パネルのネジを1本開けるだけで、メモリとSSDが露出するためスムーズに換装が行なえ、これならパワーユーザーでなくても換装できると感じた。「初めての換装」にもってこいだが、秋から冬にかけては空気が乾燥し、静電気が発生しやすくなるので、その点だけ注意しておけばクリティカルなエラーにつながることはないだろう。

まず背面の中央にあるカバーを開ける SSDはネジ止めされているので、ネジを外す
ネジを2つはずすと自動的にSDDが跳ね上がる。取り外しはカンタンだ 換装したいSSDをネジ止めする。取り外したときの動作を逆からするだけでこれもカンタンだ

●2つのSSDで大容量化

 「Eee PC 4G-X」ではストレージ容量の少なさがネックとなっていたが「Eee PC 900-X」ではデュアルSSDストレージにすることで、ある程度の解消に成功している。オンボード8GB、Mini PCI Express準拠の増設SSD 8GBを搭載したのだ。オンボード側がCドライブ、増設がDドライブとなっているため、OS用、データ用という使い分けが可能となっている。

 オンボードSSDはPhison製のCF/IDE-NANDフラッシュコントローラ「PS3006-L」、SLC NANDフラッシュメモリSamsung製「K9WAG08U1A」、増設SSDはPhison製のCF/IDE-NANDフラッシュコントローラ「PS3006-L」、MLC NANDフラッシュメモリはSamsung製「K9F8G08U0M」となっている。

 Dドライブは901Xと同じ形状なので、バッファローから発売されているEee PC 901-X専用のSSDを試した。今回はMLC 64GBのバッファロー「SHD-EP9M64G」も含めてCrystalDiskMark 2.2でベンチマークをしてみた。なおバッファロー「SHD-EP9M64G」はNANDフラッシュコントローラはPhison製「PS3006-L」、MLC NANDフラッシュメモリは東芝製「TH58NVG6D1DTG20」だ。

オンボードSSDはPhison製のCF/IDE-NANDフラッシュコントローラ「PS3006-L」、SLC NANDフラッシュメモリSamsung製「K9WAG08U1A」 外付けSSDはPhison製のCF/IDE-NANDフラッシュコントローラ「PS3006-L」、MLC NANDフラッシュメモリはSamsung製「K9F8G08U0M」 バッファロー「SHD-EP9M64G」。NANDフラッシュコントローラはPhison製「PS3006-L」、MLC NANDフラッシュメモリは東芝製「TH58NVG6D1DTG20」だ

【表1】CrystalDiskMark 2.2の結果
  Eee PC 900-X オンボードSSD Eee PC 900-X 増設SSD バッファロー「SHD-EP9M64G」 Eee PC 4G-XオンボードSSD
Read (MB/sec)
シーケンシャル 34.056 33.587 40.268 30.16
ランダム 512KB 33.956 33.63 40.216 28.21
ランダム 4KB 8.872 7.891 8.989 7.799
Write (MB/sec)
シーケンシャル 28.533 11.66 14.176 12.99
ランダム 512KB 6.146 2.139 2.401 6.336
ランダム 4KB 0.059 0.021 0.021 0.093

 比較サンプルとして第1世代である「Eee PC 4G-X」のスコアも入れてみた。まずオンボードSSDはネックであった書き込み速度が大幅に上昇し、「Eee PC 4G-X」の2倍以上の結果となった。また、オンボードと増設で、とくに書き込み速度に差が生まれている。いずれにせよ、書き込み速度はかなりマシになり、アプリケーションのインストール以外ではあまり待ち時間を気にすることはなかった。ちなみにベンチマークで使用したFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のイスントールには、インストーラーをダブルクリックしてから完了するまで約4分ほどだった。

 予算に余裕があるのならバッファロー「SHD-EP9M64G」を導入すればいいし、少額の予算で済ませたいならSDカードにしてしまえばよく、この辺の選択肢の多さは好ましい。もちろん、トリプルストレージでHDDと同じ容量の確保もできるため、使うデータだけ持ち歩くという考えをしなくていいのもよくなった点だといえる。

●キーボード+マルチフィンガー・ジェスチャーで快適

 キーボードは「Eee PC 4G-X」と変わりなく、84キー日本語キーボードだ。配列やキーの大小も同じで、買い替えの場合、あまり意識せずスペックアップだけで移行できることになる。

 A~Zや数字など頻繁に使用するキーの幅は15.29mm、キーストロークは約2.5mm。またキーとキーの間に約1mmのスペースが取られている。逆にあまり使用しないキーの幅は11.50mmでタッチタイプするには慣れが必要だ。

「Eee PC 4G-X」と同じキー配列。いまではすっかりネットブックの基本レイアウトとなった感がある A~Zなど頻繁に使うキーの幅は15.29mm
縦は12.92mmで小さい 「。」などEnterキー付近のキーの幅は11.50mmと極小。縦幅は他のキーと同じく、12.92mm

 タッチパッドは4G-Xで指摘されていた狭さを解消している。37.3×63.40mm(縦×横)となり、手持ち状態でも楽に操作することができるようになったのだ。クリックバーも押しやすくなったが、左右一体型で中央部はボタンとして機能しないので、その点だけ気をつければよく、あとは指の滑りもほどほどによく、反応もいいため、すぐれたタッチパッドだと思う。またマルチフィンガー・ジェスチャーは慣れるほど便利な機能で、とくに片手持ちで操作しているときに効果を発揮する。

縦幅は「Eee PC 4G-X」と同じだが、横幅が63.40と大きくなり操作性が向上した 百円玉を載せてみると意外とタッチパッドの面積が大きいとわかる タッチパネルは外側へ行くほど下方向へ傾斜しており、親指で上から下に、下から上に動かすときなど「引っかかる」感じがしない

 マルチフィンガー・ジェスチャーとは、指が2本以上触れている状態で、指2本によるアクションでスクロールや拡大縮小、ページの移動などが行なえるというもの。マウスカーソルの移動以外のよく使う動作をマルチフィンガー・ジェスチャーで行なうため、慣れてくるとマウスがまったく不要になる。この機能は使ってみないとその有用性がわからないので、店頭で見かけたなら、ぜひ試してほしい。

●ベンチでわかる正常進化

「Eee PC 4G-X」から大きく変わったところはCPUである。「Eee PC 4G-X」はCeleron M 353を630MHzにクロックダウンして使用していたが、「Eee PC 900-X」では定格の900MHzとなった。またメモリもDDR2-400になり、動作はとても快適なものとなっている。

 ベンチマークは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と、HDBENCH.NETの「HDBENCH Ver3.40beta6」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」で行なった。なお、PCMark05は、解像度が足りないため、外部ディスプレイに接続し、1,024×768ドットに設定しての測定。

【表2】ベンチマーク結果
  Eee PC 900-X Eee PC 4G-X Eee PC 4G-X メモリ変更時
CPU Celeron M 353(900MHz動作) Celeron M 353(630MHz動作) Celeron M 353(630MHz動作)
ビデオチップ Intel 910 GML Express内蔵 Intel 910 GML Express内蔵 Intel 910 GML Express内蔵
メモリ 1GB 512MB 1GB
PCMark05 Build 1.2.0
PCMarks 1135 818 814
CPU Score 1439 997 983
Memory Score 1601 1111 1095
Graphics Score 477 326 336
HDD Score 1720 1411 1421
HDBENCH Ver3.40beta6
All 24628 17745 18419
CPU:Integer 52458 38270 29949
CPU:Float 31087 30121 29949
MEMORY:Read 27380 24421 24558
MEMORY:Write 25783 22511 23791
MEMORY:Read&Write 44507 22511 23791
VIDEO:Recitangle 12142 14389 15564
VIDEO:Text 8872 8142 6989
VIDEO:Ellipse 3876 2933 2873
VIDEO:BitBlt 149 82 173
VIDEO:DirectDraw 29 29 29
DRIVE:Read 28001 28001 28861
DRIVE:Write 16672 9594 12601
DRIVE:RandomRead 26310 25491 25396
DRIVE:Read 6399 4299 5192
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
LOW 1336 961 981

 ほとんどのスコアで「Eee PC 4G-X」を上回っている。CPUのクロックアップが効いている結果だ。当然のことながらグラフィックが910GMLであるため、3D性能は期待するほどではなく、オマケに近い。また「Eee PC 900-X」はメモリ2GBまで増設可能である。メモリを増設した状態のスコアは、1GBのときと大差なかったが、やはり体感速度の上昇が大きく、よりきびきびと動いてくれたので、快適なモバイルには必須だろう。

●内部も変わっているかもしれないので分解してみた

■■ 注意 ■■

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まずバッテリを外す 背面にある6本のネジを外す キーボード上部にある3か所の詰めをマイナスドライバーで押して、キーボードを外す
写真は勢い余って破ってしまった状態だが、中央にある警告シールを外すと保証は無効になる。ヒートシンク周辺のネジを外していく。キーボードのハーネス近くにもネジがあるので、先にハーネスを抜いていておくといい シリンダー部分が少し硬いので強く引っ張ることになるが、タッチパッドのハーネスは長いので断線の可能性は低い。ヒートシンク側では熱伝動シートも確認できる マザーは四方からツメで固定されているので、ボディを少し押して取り外す
マザーボードに接続されているケーブルやハーネスは細いので慎重に取り外すこと キーボードなどがあるパーツ背面のほぼすべてにヒートシンクが取り付けられている 排気ファンは低速で回転するため、高周波など気にならない
スピーカーはパームレストの直下にある。分解しないと存在がわからない ノートの開閉に直結するシリンダ部分。安っぽくなく、手堅く作られている

 大きな変更点はNANDフラッシュメモリがSamsung製「K9WAG08U1A」になったくらいで、あとの作りはやはり同じだ。

●やはり持ち運びに強い

 付属するバッテリは7.2V 5,800mAhリチウムイオンバッテリで、重量は204gと軽い。公称のバッテリ駆動時間は約4.3時間となっており、「Eee PC 4G-X」よりも1時間ほど駆動時間が延びたことになる。

バッテリは実測で204g 電源ケーブルは208g。ネットブックのなかでは軽いほうである

 遠出の取材先で使用してみた。バッテリ駆動時間のチェックも兼ねて、輝度を50%下げた状態でテキストやPDFを開くなどの車中で作業をしてみたところ、駆動時間は約3時間40分でスタンバイモードへとシフトした。途中で音楽を再生したので、4時間を切ってしまったと思われるが、公式スペックの約4.3時間に近しい結果となったので満足している。ただ実際には無線LANをONにしていたり、ブラウジングをしていたりとパワーを使うため、3時間程度のモバイルを意識しておくとよさそうだ。また輝度を最大にしている場合は「Eee PC 4G-X」と同じく、3時間程度のバッテリ駆動となるので、バッテリ駆動時間の延長はなされていないに等しいというか、そのままといった印象だ。第3世代への課題に間違いはないだろう。

このくらいの机だと妙に打ちやすく感じた。個人差かもしれないが、一度試してもらいたい

 また熱だが、分解記事でも紹介した通り、全面にヒートシンクが広がっているため、特定の部分だけ熱いということはない。全体の温度が上昇している感じで、あまり気にならなかった。強いていえば、背面左側の周辺が他所よりも温度が高いようだ。これは排気ファンがあり、暖かくなった空気が移動しているからだと思われる。

 実は移動中にしていた作業は今回の原稿作成である。ガリガリと打鍵していた感じは、やはり「Eee PC 4G-X」と同じキーレイアウト、キーピッチなので少し打ちづらく感じた。結局、ハイフンや句読点は辞書登録してこなす形となったが、サイズからすれば当然で我慢できる範疇だった。

●これから買う人や買い換えにおススメ

 第2世代のEee PCということで、Atom搭載を期待していた人も多いのではないだろうか? Atom搭載901-Xとの差別化や、「Eee PC 4G-X」並のコストを維持し、エントリー価格にするために、Celeron Mにしたものと思われる。バッテリ駆動時間が惜しく感じるが、やはりエントリー機種として、サブノートとしての作りはよく、室内でも社内でもどこでも気軽に扱えるノート作りはさすがといったところだ。日本版はSSDを合計16GBに増やしてきたところも評価したい。「Eee PC 4G-X」を持ち歩きすぎてボロボロな人は当然のことながら、SSDベースなので、ストレージ容量については、使いこなしの知識は必要だが、モバイル性の高いネットブックとしてよくできた製品に仕上がっている。

□ASUSTeKのホームページ
http://www.asus.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.asus.co.jp/news_show.aspx?id=12597
□Eee PCのホームページ
http://eeepc.asus.com/jp/
□製品情報
http://eeepc.asus.com/jp/product4.htm
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【8月29日】ASUSTeK、「Eee PC 900-X」を実売49,800円で国内販売
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【5月1日】本日到着! 第2世代の「Eee PC 900」ファーストインプレッション
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0501/asus.htm

バックナンバー

(2008年10月15日)

[Reported by 林 佑樹]


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