ネットブックのAspire oneを使っていて悩むことの1つは、ポインティングデバイスをどうするか、ということだ。内蔵のタッチパッドも使えないわけではないが、左右に分かれたボタンが、配置、クリック感とも今ひとつシックリとしない。 当初はロジクールのV550 Nanoを組み合わせていたのだが、Aspire oneには少々大きすぎる。マウス底面に設けられたプッシュ式の電源スイッチも、付属のクリップ&ゴードックでマウスをノートPCの天板に貼り付けて使うにはとても便利だと思うのだが、ネットブッククラスにマウスを貼り付けるのはバランスが悪い。やはり14型クラスのノートPCを抱えて、社内を移動するユーザーに最適なマウスだという気がする。 それならということで、マウスはBluetoothにすることにした。単純に手元に購入したものの使っていなかった小型のBluetoothマウス、BLUETAKEのBT500が余っていたことが理由の1つ。これなら見た目的にもAspire oneにマッチする。最近BluetoothのUSBドングルが小型化しており、あまり出っ張らなくて済むようになったこともまた理由の1つだ。さらにもう1つ、興味深いBluetoothデバイスが登場したこともAspire oneでBluetoothを使いたくなった理由である。
その興味深いデバイスは、ロジクールのPure-Fi Mobileと呼ぶポータブルスピーカーだ。実は6月にAppleのWorld Wide Developer Conferenceに出かけた際、たまたま現地で見た新聞(USA Today)に、このPure-Fi Mobileが取り上げられていて、興味を惹かれていた。 Pure-Fi Mobileは、アナログ接続、USB接続に加え、Bluetoothによる無線接続(プロファイルはA2DP)をサポートした携帯用のスピーカーだ。バッテリを内蔵しており、フル充電で最大12時間の再生ができる。気が利いているのは、充電がACアダプタだけでなく、USB充電も可能なことだ。付属の専用ACアダプタは小型だが、持ち歩かなくて済むならそれに越したことはない。PCで充電しなくても、コンビニで売っている汎用のUSB充電器で充電でき、他のデバイスと充電器を共用できるから、旅の荷物を減らせる。 Pure-Fi Mobileは、ほかにもハンズフリープロファイル(HFP)をサポートしており、Bluetoothをサポートした携帯電話と組み合わせて、スピーカーフォンとして利用することもできる。A2DPによるステレオスピーカー機能も含め、携帯電話との組合せで活用できる仕組みだが、SCMS-Tをサポートしていないため、筆者が持つauの携帯電話では音楽再生ができない。 それはともかく、Bluetoothで利用できるスピーカーなら、いちいちケーブルを接続する必要もないから、寝モバにも適している。指先程度の大きさのドングルを1つ追加するだけで、マウスの接続もスピーカーの接続も可能なのだから、Bluetoothとはなんと便利なものよと思うのは筆者だけだろうか。 ●Aspire oneにBluetoothアダプタを装着してみる というわけで都内の量販店で、Bluetoothの小型USBドングル(アダプタ)を探してみた。量販店の店頭調べなので、全製品を網羅しているわけではないと思うが、見つかったのはおおよそ表1に示したような製品だ。とりあえず購入したのがコレガのCG-BT2USB02CBである。決めた理由は次の4点だ。 表1:市販の小型Bluetoothドングル
1. 価格が1,480円と安いこと 購入して早速インストールして使ってみたが、すんなり使えて全く問題ないと思った。のだが、ある制約に気づくのにそう時間はかからなかった。ドングルを挿すUSBポートとドライバのインストールがヒモ付けされるのである。 Aspire oneには本体左側面に1つ、右側面に2つの計3つのUSBポートがある。たとえば左側のポートにドングルを挿してドライバのインストールを行なったとすると、右側のポートにドングルを挿してもドライバが認識してくれない。実際には右側のポートに挿したドングルは新しいデバイスとして認識され、Windowsの標準Bluetoothドライバが自動的に組み込まれる。Windows XP SP2以降のOSでBluetoothは標準的にサポートされており、これが使われるのだ。 問題は、このWindows標準ドライバがサポートしているプロファイルが限られることだ。Windowsの標準ドライバがサポートするプロファイルは表2の5つ。HIDが含まれているからマウスを使う分には平気だし、DUNがあるからたとえばBluetooth携帯をモデムに使う、といった用途には問題ない。が、Pure-Fi MobileのようにA2DPを必要とするデバイスを、標準のドライバで利用することは不可能だ。 表2:Windowsの標準ドライバがサポートするBluetoothプロファイル
そこでもう1度、付属の東芝スタックをインストールしようとすると、すでにインストールしてある分をまずアンインストールするという。これでは、ドングルを挿すUSBポートを変えるたびに、ソフトウェアスタックのインストールをしなければならない。これは不便だ。試しに東芝スタックがバンドルされた別の製品、プリンストンのPTM-UBT3Sも試してみたが、ソフトウェアスタックの動作は同じだった。どうやら東芝スタックの仕様なのではないかと思う(すべての製品を試したわけではないが)。固定されている内蔵Bluetoothデバイスで利用する分には何の問題もなかった東芝スタックだが、外付けのドングルでは不便な仕様だ。ドングルを挿すUSBポートを固定してしまえば良いのだが、なかなかそうもいかない。 そこで最後の希望を託して、唯一ソフトウェアスタックにBlueSoleilが添付されているプラネックスのBT-MicroEDR2を試してみることにした。BlueSoleilは比較的昔からある老舗のソフトウェアスタックなのだが、ちょっとクセがあるというか、他社のソフトウェアスタックと使い勝手が違うため、筆者は敬遠しがちだったが、この際ぜいたくは言っていられない。 BlueSoleilが東芝と異なることはインストールの時点で気づいた。いずれのソフトウェアスタックも、ドングルを差し込む前にソフトウェアのインストールをする必要があるが、その途中でドングルをUSBポートに挿さねばならない東芝(おそらくどのUSBポートを利用しているかチェックしている)に対し、BlueSoleilはドングルを挿すことなくインストールが完了する。そして初回利用時にデバイスの発見とドライバのインストールが行なわれる。 こういう仕様だから、ドングルを別のUSBポートに挿すと、そこでデバイスを検出し再度ドライバのインストールが行なわれるが、そこでインストールされるドライバはBlueSoleilのもの。ペアリング情報等はすべて生きており、ペアリングをやり直す必要はない。もちろん、1度インストールを行なったポートであれば、2回目以降はソフトウェアのインストールは行なわれないから、3つのUSBポートにそれぞれ1回ずつドングルを挿してインストールを完了しておけば、後はいつでも好きなポートに挿すだけで利用できる。BlueSoleilは、ユーティリティとしては一風変わったユーザーインターフェイスで、東芝スタックの方が使いやすいと思うのだが、この便利さには代えられない。 こうしてBlueSoleilがバンドルされていたBT-MicroEDR2を常用するようになったが、1つ気づいたことがある。それは、Aspire oneの本体左側のUSBポートにドングルを挿すと、ハッキリと分かるほどBluetoothの感度が低下することだ。マウス程度なら何とかなるが、Pure-Fi Mobileで音楽を聞くとなると、距離や角度に気をつけないと音が途切れ途切れになってしまうほどである。 これが右側のUSBポートであれば、Pure-Fi Mobileは、どこか適当にころがしておけば良いし、Class 2規格の10mはともかく5mくらいなら余裕で離すことが可能だ。無線LANとの干渉も考えて、無線LANをOFFにしてみたりもしたが、改善は見られなかった。 その一方で2ポート用意された右側のUSBは、光学ドライブなど比較的消費電力の大きなデバイス用に、できれば空けておきたい(信号と電源の二股ケーブルに対応するため)。普段はBluetoothのドングルを右側に挿すとしても、左側に移さなければならない状況もあり得る。上でドングルを挿すUSBポートを固定するのが難しい、と書いたのにはこういう事情もある。やはりどのポートにも挿せるBT-MicroEDR2は重宝だ。
とはいえ、小型のドングルではあるものの、やはり本体から出っ張ってしまうのも確か。やはりBluetoothは、筐体内に他のデバイスと干渉しない位置に内蔵されているのがベストだ。単体で販売されるアダプタでさえ1,500円前後で売られているのだから、内蔵するコストがたいしたものでないのは間違いない。モバイルをうたう製品にはぜひ標準搭載して欲しいと思う。と同時に、Bluetoothのマウスがもっと積極的にリリースされるように願いたい。 □関連記事 (2008年9月29日) [Reported by 元麻布春男]
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