大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

デスクトップPC生産拠点の富士通アイソテックを見る
~国内生産へのこだわりで高い品質を維持




 富士通アイソテックのデスクトップ生産ラインでは、個人向けPCのDESKPOWERシリーズ、企業向けデスクトップPCのESPRIMOシリーズの生産が行なわれている。

 富士通アイソテックは、福島県伊達市にある。JR福島駅から阿武隈急行で約20分の保原駅から徒歩約10分の立地だ。

 本誌でも以前紹介したように、今年(2008年)から社内に限定しているものの、「富士通のこだわり 福島県伊達産」の小さな看板をショールーム内のデスクトップPC横に設置。国内生産による品質の高さを訴求している。

富士通アイソテック・増田実夫社長

 富士通アイソテック・増田実夫社長は、「国内でのモノづくりにこだわる富士通が、生産だけでなく、リサイクルまでカバーする拠点が富士通アイソテック。設計段階に、生産現場の意見を取り入れるといった、開発と生産拠点との距離を縮めた取り組みを、さらに加速させることで、日本ならではのモノづくりをより推進していきたい」と語る。

 現在、富士通アイソテックにおけるPCの年間生産台数は、デスクトップPCで約100万台、サーバーで約9万台。

 2002年には、富士通アイソテックにおけるFMVシリーズの累計生産台数が1,500万台に到達していることから、来年度以降には、累計生産2,000万台の達成が見込まれている。

生産したPCは「福島県伊達産」。国内生産のこだわりをみせる 2002年度には累計生産1500万台を達成している 第5組立棟の1階ではPCサーバーが生産されている

●柔軟な生産体制を実現

 PCの生産が行なわれているのは、第5組立棟。同工場で最も建屋面積が大きい場所だ。

 1階では、PCサーバーであるPRIMERGYを生産。2階で、DESKPOWERシリーズおよびESPRIMOシリーズを生産している。

 今回、報道陣に公開したのは、企業向けのデスクトップの生産ライン。1つ1つの製品仕様にあわせた形で、生産できる体制をとっているのが特徴だ。

 同社では、2007年度の段階で、混流生産が可能なフレキシブルラインを1ライン設置し、試験的な稼働を開始していたが、これを今年度から4ラインへと増強した。

 基本的には、2階フロアを企業向けPC生産ラインエリア、個人向けPC生産ラインエリアというように区分けをしているが、これらが混流で生産できる体制としており、個人向けPCの繁忙期には、企業向けPCを生産しているラインでも、個人向けPCの生産を行なうといったことが可能になり、今回、公開した企業向けPC生産ラインも、部品投入から、組み立て、エージング、梱包までのすべての工程において、個人向けPCの生産が行なえるようになっている。

 同社では、年度内を目標に、フレキシブルラインをさらに倍増させる計画である。

 また、トヨタ生産方式による改善によって、昨年は18ラインあった生産ラインを、今年は14ラインへと減少させながら、生産台数を維持。加えて、生産ラインの間締めによって、この1年間で、ラインの長さは、従来の3分の2程度に短縮。さらにこれを短くしていく考えだという。

 一方、同工場内には、工場内には、ORT(オンゴーイング・ランニング・テスト)システムを導入し、経年変化などのシミュレーションを行なっているほか、ダミー発注品を各生産ラインのなかに投入し、工程内の作業者が、通常製品と区別できない環境で、抜き取り検査を行ない、品質を維持するといったことも行っている。これも品質へのこだわりの1つだといえる。

 では、写真で、富士通アイソテックのデスクトップPCの生産ラインの様子を見てみよう。

デスクトップPCおよびPCサーバーの生産を行なう第5組立棟 部品や梱包材は1階の搬入口から入庫する
入庫した部品は2階フロアの西側に置かれる。従来は外部倉庫や1階に置かれていたものだ 生産指示は、緑色の仕様書ごとにバーコードで管理される バーコードを読みとると該当部品の場所が緑色に点灯するデジタルピッキング方式を採用
ピックアップされた部品は専用ケースに入れられる ライン最初の工程は、筐体を開け、部品とともにベルトコンベア上に配置 このあと7人で組立を行なう。ベルトコンベアの速度は1人あたり60秒。7分で組立が完成する
一方、筐体部分は5台単位でラインの後方から投入される 組立される部品は、1つのトレイに置かれる 筐体カバーは、作業台の下に置かれている
ボードを組み込んで、各種ケーブルを接続 続いてファンやドライブを搭載 HDDを搭載する作業。これも個別仕様にあわせている
組み込みが完了した段階 筐体に各種ロゴシールを貼る作業もここで行なわれる 筐体のカバーを下の段から取り出してネジを締める
生産が終わると、そのまま基礎機能検査に入る。それぞれ4分程度の検査 次にランニング検査。摂氏40度の高温でのエージングを行なう。約30分かかる 最後に機器を接続した機能検査を行なう。ここは約20分で完了する
検査工程は、かつては一台ずつ手作業で運んでいたが、手作りの機器によって搬送を楽にした 梱包ラインでは、必要な添付品をピックアップ。これもバーコードと棚のランプが連動している ダンボールと緩衝材は、東側からラインに投入する
本体と添付品を梱包。下のプリンタからは各製品ごとの同梱内容を印字して箱に挿入 最終梱包作業。部品のピックアップから梱包までで約2時間 出荷を待つ完成品。出荷地ごとに分類される
1階の出荷口にはエレベータで搬送される 品質検査の様子。生産のなかにダミー発注を入れ、これを抜き取りで検査している

●51年目を迎えた生産拠点

 なお、富士通アイソテックは、'57年に、黒沢通信工業として、富士通通信機製造(現・富士通)と黒沢商店の共同出資会社として大田区蒲田に設立。印刷電信機、電子計算機用端末機の開発および製造を行なっていた。

 その後、東京都稲城市南多摩に本社を移転するとともに、通信機器の製造を開始。'75年には、現在の場所に移転するとともに、プリンタの量産を開始。'85年には現社名への変更、2003年には、本社を現在地に移転した。

 デスクトップPCの生産開始は'95年からで、'99年には企業向けデスクトップPCの生産、2001年にはサーバーおよびワークステーションの生産を開始。2007年に創立50周年を迎えている。

□富士通のホームページ
http://jp.fujitsu.com/
□富士通アイソテックのホームページ
http://jp.fujitsu.com/group/fit/
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(2008年9月22日)

[Text by 大河原克行]


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