●設計段階からの環境配慮へも取り組む 富士通は、福島県伊達市の富士通東日本リサイクルセンターを、このほど報道関係者に公開した。 富士通東日本リサイクルセンターは、富士通アイソテックの100%出資子会社である株式会社エフアイティフロンティアが運営する使用済みPCのリサイクル拠点。富士通のデスクトップPCおよびPCサーバーの生産拠点であり、個人向けPCの修理サポートおよび中古PCの再生拠点も、富士通アイソテックのなかに設置されており、同敷地内で、PCの生産から、修理、再生、リサイクルに至るまで、ライフサイクル全般をサポートする体制が整っている。 富士通環境本部長 高橋淳久常務理事は、「富士通では、富士通グループ環境方針、第5期富士通グループ環境行動計画を策定し、すべての事業領域において、地球環境保護ソリューションを提供している。事業系IT機器は全国6カ所、家庭系PCでは全国3カ所でリサイクルを行なっており、これらの取り組みは、廃棄物の適正処理が豊かな循環型社会を形成する意味で重要である。富士通東日本リサイクルセンターは、その役割を担う主要な拠点」とする。 東日本リサイクルセンターでは、回収した富士通製の事業系ITのうち約18%、家庭系PCでは約65%を処理しているという。
●家庭系および事業系のPCをリサイクル エフアイティフロンティアは、富士通アイソテックが行なっていたリサイクルへの取り組みを2002年度から事業化したのにあわせて、2003年に設立。富士通東日本リサイクルセンターは、同社リサイクル事業の中核拠点の1つとして開設された。 PCメーカーが法令で義務付けられているPCの再資源化を行なうための拠点として、富士通ブランドの家庭系PCおよび、企業から排出された事業系PCなどのリサイクルを行なっている。 家庭系PCについては、使用済みとなったPCを、回収を請け負っている日本郵便の最寄りの郵便局、あるいは戸別回収を利用して収集。それがエフアイティフロンティアに持ち込まれ、再資源化される。 また、事業系PCについては、富士通リサイクル受付センターで受け付けたあと、収集運搬会社に持ち込まれ、リサイクルセンターへと持ち込まれる。 また、エフアイティフロンティアが、自主営業の形で、企業などを訪問し、使用済みのIT製品を回収するといったことも行なわれている。 「回収されているのは、当社製品の出荷数量に対して、まだ7%程度だが、家庭系PCにおいては、リサイクルマークを貼付したものの回収が始まっており、これから回収率は高まってくると見ている」(富士通環境本部環境技術統括部・藤井正隆統括部長)という。 ●「分別すれば資源」になるという考え方 持ち込まれた使用済みPCは、センター内に設置された3段式の移動型ラックに置かれる。ここでは、10tトラック20台分の排出品を収容。省スペースでも大量の在庫を保管できるようにしている。 その後、手分解で、プラスチック部品類、フィルムポリ袋、発泡緩衝材、金属部品類、ケーブル類、プリント板、ディスプレーに分別され、それぞれ再資源化される。 「分別すれば資源という考え方をベースに、より細分化するために、手作業で分別するのが、このセンターの特徴。約60種類への分別を行なっている」(エフアイティフロンティア・高橋淳彦取締役)としている。
プラスチック類は、プラスチック材質を的確に判断するための専用機が設置され、約20種類に分別。それぞれの材質ごとによる破砕、溶解などが行なわれる。それらが、破砕フレーク化および溶解ペレット化され、プラスチック原料として、プラ材メーカーで再生ペレットとして生まれ変わる。 ポリエチレン袋、フィルムなどは数mmの粒状にペレット化。また、発泡プラスチックも同様にペレット化される。 一方、廃プラスチック類は、高炉原料として製鉄所などに持ち込まれ、鉄などは金属原料として金属メーカーに持ち込まれる。また、ガラスはガラス原料として、ガラスメーカーに、電子部品や基板は、製錬所で貴金属回収が行なわれる。 「日本では、ブラウン管のリサイクルを行なう施設がないため、韓国のリサイクル業者に委託している。適正なリサイクルが行なわれているかどうかを定期的に視察したり、新たな業者を開拓するといったことも行なっている」という。 ●厳しい管理環境でHDDも破砕 持ち込まれた使用済みPCのなかでも、HDDの管理は重要だ。 富士通東日本リサイクルセンターでは、HDDを機械で穴を開ける「穴開け破壊方式」、専用装置により強制的に着磁し、全データを消去する磁気破壊方式を行なっているほか、磁気テープについては、ケースごとテープを切断し、要望に応じて磁気消去も行なっているという。 さらに、「破壊、消去した後も、次の工程ではすぐに溶解する。これもデータ漏洩防止の1つ」(高橋取締役)としている。 では、富士通東日本福島リサイクルセンターの取り組みを写真で見てみる。
●製品設計、開発にも環境配慮の取り組み 富士通環境本部では、環境配慮型製品の開発や、設計の際にも環境に配慮した取り組みを行なっている。 '93年から自社ガイドラインに基づく製品環境アセスメントを実施し、省エネ、リサイクル、化学物質規制などに対応した環境配慮型製品を開発。'98年には環境配慮型製品の開発をさらに強化するため、グローバルな環境基準を盛り込み、アセスメント評価90点以上としたグリーン製品の開発を開始。現在では、すべての製品がグリーン製品になっているという。また、2004年から、8項目の自社基準をもとに、新規開発のグリーン製品を対象に、環境トップ要素を持つ製品を「スーパーグリーン製品」としており、現在では約20%の製品がこれに該当。2009年度には全製品の50%に引き上げるという。 スーパーグリーン製品の1つであるPCサーバーの「PRIMERGY RX300S4」では、エネルギー消費効率を従来製品よりも75%の省電力化を図っているほか、73%の体積の削減による小型軽量化、部品点数を53%削減することでの効率化などを図っているという。 また、製品開発には、3次元設計シミュレータ(VPS)を採用しており、このなかで、環境に配慮した取り組みも行なわれている。 「解体する際にどれぐらいの解体時間がかかるのかを算出する解体シミュレーションや、素材のリサイクル率の色分け表示、有害物質の含有表示、装置および素材のLCA(環境負荷)評価などをVPSのなかで行なっている。製品解体性の検証も行なっており、ここでは解体順序シミュレーション、同一素材の表示、材料分別の色別表示も行なえるようになっている」(藤井統括部長)。 同社では、こうした結果を解体マニュアルとして整備。現在、約500製品に対応しているという。 「数年後に、どんなPCがリサイクルセンターに戻ってくるのかということを知ることで、それに向けた体制の準備ができるようになる」(エフアイティフロンティア・高橋取締役)としている。 このように、富士通では、開発、設計段階から、リサイクルを視野に入れた取り組みを行なっている。
□富士通のホームページ (2008年9月8日) [Text by 大河原克行]
【PC Watchホームページ】
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