大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

なぜ、マイクロソフトは女性を支援するのか
~女性の自立、社会復帰、起業をITで支援




 マイクロソフトは9月12日、「女性のためのUPプログラム全国版」に関する取り組み成果について発表した。

 同プログラムは、全国女性会館協議会、NPO法人全国女性シェルターネットと共同で、2006年1月から実施してきてもので、家庭内暴力(DV)被害女性、シングルマザーなど、経済的、社会的に自立が困難な女性を対象に、ITスキル習得機会を提供することで、女性の自立に向けた自信回復、就労および起業を支援するというものだ。

 2002年から、東京、横浜などの一部女性支援団体に対してのサポートを開始しており、その経験をもとに、2006年から全国規模で展開を開始した。

マイクロソフト社会貢献部・竹原正篤部長

 女性のためのUPプログラム全国版では、全国約70カ所の女性センターなどにおいて、マイクロソフトが、WordやExcelに関するPC講座を行なうとともに、就労に関する知識やスキルを身につける就労応援フェアを開催。「Wordの操作習得についても、単に操作を学ぶだけでなく、自分で履歴書を作成してみるといったように、就労に結びつく内容にしたり、実際に、就職のためのエージェントを紹介したり、具体的な仕事を紹介したりといった、就労そのものにも踏み込んで支援している」(マイクロソフト社会貢献部・竹原正篤部長)という。

 PC講座で使用されるテキストは、それぞれの団体が使いやすいものへと改訂を行ないながら、全国の施設で利用できるようにした。また、無料託児サービスを行ない、子供がいる女性も参加しやすいように配慮したという。

 2008年8月までの受講者数は、5,135人。受講3カ月以内にフルタイムで就労した人は、12.9%と、高い成果をあげている。

 「ITスキルを身につけることで、社会で仕事ができるスキルを持つだけでなく、自信が回復すること、他の受講者やスタッフとの連帯感ができるなど、参加者のモチベーションが上がり、社会復帰を早めることにも寄与しているようだ」(同)という。

 さらに、女性施設のスタッフに対する研修も進めているため、NPO法人などにおけるITスキルの向上にも効果を及ぼしている。

 同日には、東京・四谷の主婦会館プラザエフにおいて、「格差社会における女性支援のありかたを考える」と題して、同プログラムの報告会を行なった。

全国女性シェルターネット共同代表・近藤恵子氏
全国女性会館協議会常任理事・桜井陽子氏

 全国女性シェルターネットの共同代表である近藤恵子氏は、「調査によると、DVを受けている女性は3人に1人、DVにより命を落とした女性20人に1人という結果もあり、社会的に大きな問題となっている。また、こうした女性にとって、経済的自立は課題であり、シングルマザーの平均年収は150万円を切っているという状態。これが、マイクロソフトの支援によって、DVからの回復の速度が速まり、エンパワーメントされ、経済的自立を支援することができた。また、施設のスタッフがPCを駆使することでデジタル化が一気に進展し、シェルターのスタッフ同士がお互いにさまざまな情報交換できるようになり、全国的な運動展開が強化された」とした。

 全国女性会館協議会常任理事の桜井陽子氏は、「母子家庭はいまや123万世帯に達しており、女性の自立支援は重要なテーマである。PCは社会生活に必要なツールであり、女性センターを訪れた女性がPCのスキルを身につけることで、世の中に求められるスキルに追いついたという意識が生まれ、自信の回復につながった。また、全国の女性センターが、地域に役に立つ拠点として再出発できるようになった」などとした。

 マイクロソフトでは、2009年3月までを目処に、資金的援助を行なう体制を取っているが、2009年4月以降も、引き続きなんらかの形で支援をする可能性を示唆している。

 「このプログラムは、マイクロソフトが行なっているさまざまなプログラムと比較しても、最も効果が出ているものの1つといえる。しかし、一定期間、マイクロソフトが資金的援助をして、それでプログラムが終了してしまうというのではなく、支援先が自立して、将来に渡って展開できる仕組みが確立できることを目指している。プログラムそのものを全国で展開しやすいようにパッケージ化し横展開するとともに、その上で、自治体、地元NPO、地元企業との連携を促進してきた。これにより、プログラム終了後も、ITトレーニングの実施が可能な体制が整いつつある」という。

●起業支援や子育て主婦支援も

 マイクロソフトは、「女性のためのUPプログラム全国版」への取り組み以外にも、女性に対する支援を実施している。

 それは、社会的に自立が困難に女性を対象にするものだけでなく、起業を目指す女性のための支援プログラムであったり、子育て主婦を応援するための支援プログラムであったりと、幅広く女性を対象にしたものとなっている。

女性起業UPルーム

 例えば、起業を目指す女性のための支援では、「女性起業UPルーム」がある。

 これは、マイクロソフトと横浜市、財団法人横浜市男女共同参画推進協会が共同で展開しているもので、起業を目指す女性を対象に、「起業準備相談」、「起業セミナー」、「起業家たまご塾」などで構成されている。

 起業したいが、なにから始めたらいいのか、始めてみたがなかなか広がらない、といった起業に関する相談を受けたり、セミナーでヒントを掴んでもらったりすることを目的としたもので、ここでもITを活用することで、起業を成功へと導くことを狙っている。

 なかでも特筆されるのは、起業家たまご塾だ。

 前期として50日間の「事業プラン完成コース」、後期には100日間におよぶ「IT活用販促コース」を用意。それぞれ5万円、10万円の費用で、書類選考を通過した女性を対象に、徹底した起業支援を行なう。

 内容は、ターゲットと競合分析、SWOT分析、セールスプロセス、事業プランおよび資金計画の立案、ネットでの集客、市場調査、メールマーケティングなど、多岐に渡る。

 集中講座は、それぞれ5回、7回に限定されるが、期間中であれば、参加者の起業プランに対する個別相談、メーリングリストへの参加、ルームの占有利用などが受けられる。

 「たまご塾における指導はかなり厳しいものになっているが、その成果は明らかに出ている。2008年2月に終了した第1期では、参加した10人のたまご塾生全員が起業を果たし、現在でも継続的に事業を続けている。Webサイトで受注するビジネスを展開している卒業生の場合、どのサイトもSEO対策が万全で、常に検索上位に顔を出している。これもビジネスを成長させる鍵の1つになっている」という。

 第1期においては、起業セミナーへの参加者を含めて14人が起業。現在、11月を期日とした第2期のセミナーが行なわれているところだ。

 女性起業UPルームのホームページには、月平均12,000件のアクセスがある。たまご塾への参加者は、UPルームが設置されている神奈川県の戸塚市に週1回通えることが条件となっているために、神奈川県の参加者が多いが、中には都内からの参加者もいる」という。

 同様の起業支援の取り組みは、盛岡や山梨でも開始されている。

●地方における女性の社会参加にも寄与

 もう1つの「子育て女性のための支援プログラム」では、子育て中の女性がITスキルを身につけることで、在宅就労など、子育てをしなからても働けるような支援を行なうというものだ。

 具体例の1つが、大分県日出町で行なわれている「大分UPプログラム 子育て女性支援」である。

 NPO法人であるパワーウェーブ日出が中心となり、PC講師養成講座を実施。WordやExcelなどの基礎的なITスキルを習得し、女性が講師として地域のPC講座で教えられるようにするというものだ。また、出産のために離職した女性などが、子育てしながら在宅就労できるITスキルを習得するといった支援も行なっている。

 「ITスキルを身につけることによって、女性が多様な働き方をできるようになり、地方における女性の社会参加を促進するきっかけにもなっている。PC講座への参加者は高齢者が多いため、女性が高齢者とのコミュニケーションを行ない、そこで逆に子育ての知恵をもらったり、講師をしている最中、子育てを高齢者にお願いするという仕組みも出来上がっている。また、子育てしながら就労できる環境が整備できたことにより、日出町の出生率が増加するという結果にもつながり、子育てをする女性が住みやすい町へと変化している」という。

 パワーウェーブ日出では、大分県などと連携して、このモデルを横展開していく準備を進めており、同NPO法人が自立して、事業を運営できる仕組みも確立しようとしている。

●デジタルデバイドの解消に取り組む

 では、マイクロソフトは、なぜ、女性支援に力を注ぐのだろうか。

 同社では、企業ミッションとして、「世界中のすべての人々と、ビジネスの可能性を最大限に引き出すための支援をする」ことを掲げ、さらに、企業市民活動の2本の柱として、安心・安全なインターネット環境の実現、相互運用性の向上、政策課題への取り組みなどによる「責任ある企業活動」、誰もがITの恩恵を享受できる社会の実現を支援する「デジタルインクルージョン」を打ち出している。

 「女性への支援策は、デジタルインクルージョンを実現する上での重要な施策となっている。現在、全世界で約50億人がITの恩恵を受けていない。その多くは、途上国におけるものといえる。だが、先進国において、デジタルデバイドがないかといえば、決してそうとはいえない。日本においても、もっと多くの人たちに、ITを活用していただき、その便益を得ていただきたい。UPプログラムは、Unlimited Potentialに由来するものであり、無限の可能性を引き出すことを狙ったもの。NPOと協力して、ITの活用によって、女性の多様な働き方を支援し、女性の自立を促進することを目指す」とする。

 現在、マイクロソフトでは、ITスキルの習得を支援する「UP-コミュニティITスキルプログラム」を、全国12の非営利団体と、3つの自治体と連携し、個別に14種類のプログラムを実施している。

 その中には、女性への支援だけでなく、高齢者や障害者、日本在住外国人を対象としたもの、さらには、これらを支援するNPOのスタッフに対するITスキルアップ支援も含まれる。

 同様のことは北米を含む、全世界で展開されており、これまでに100カ国以上、1,000以上の非営利団体に対し、約315億円の助成金およびソフトウェアを提供。約4,500万人が、同プログラムの恩恵を受けたとしている。

 マイクロソフトでは、今後もデジタルデバイドの解消に向けた取り組みを継続的に実施していく姿勢だが、女性の社会復帰、自立、起業、子育て支援といった観点からも、「すべての女性の可能性を広げるもの」として、支援体制を継続していく考えだ。

 マイクロソフトの女性支援は、これからも間口を広げながら、強化されていくことになるだろう。

□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□女性のためのUPプログラム
http://www.microsoft.com/japan/citizenship/ca/up/up_woman.mspx
□女性のためのUPプログラム全国版報告会
http://www.microsoft.com/japan/citizenship/ca/up/up_woman/forum.mspx
□女性起業UPルームのホームページ
http://www.uproom.info/

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(2008年9月16日)

[Text by 大河原克行]


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