発売中 価格:65,760円(1,000個ロット時) 8月に開催されたIDF 2008において、IntelはSSDの投入を正式に発表。そして、実際に市販されるSSD製品がついに登場した。登場したのは、MLC(マルチレベルセル)タイプのNANDフラッシュメモリを採用する、1.8インチタイプの「X18-M Mainstream SATA SSD」と、2.5インチタイプの「X25-M Mainstream SATA SSD」の2モデル。その中から今回、2.5インチタイプ・容量80GBの製品「SSDSA2SH080G1N」をいち早く試用する機会を得たので、パフォーマンス面を中心に見ていきたいと思う。 ●厚さが約7mmと薄い IDE 2008でIntelは、NANDフラッシュメモリを利用したSSD製品群を発表した。発表されたのは、SLC(シングルレベルセル)タイプのNANDフラッシュメモリを採用する「X25-E」シリーズと、MLC(マルチレベルセル)タイプのNANDフラッシュメモリを採用する「X18-M/X25-M」シリーズの2モデル3ライン。このうち、MLCタイプNANDフラッシュメモリ採用のX18-MおよびX25-Mの製品が、9月8日(米国時間)より出荷開始となった。 今回入手したのは、2.5インチサイズのX25-Mシリーズに属する製品だ。X25-Mシリーズは、容量80GBと容量160GBの2モデルの投入が予定されているが、出荷が開始されたのは、容量80GBの「SSDSA2SH080G1N」で、今回試用した製品もこのモデルだ。 本体サイズは、2.5インチHDDとほぼ同じだ。幅と奥行きは完全に同じで、接続インターフェイスであるSATAコネクタの位置や、固定用のネジ穴の位置なども全く同じだ。それに対し厚さは約7mm(実測値)と、9.5mmよりも薄くなっている。 以前は、厚さが8.45mmのものなど、9.5mmよりも薄い2.5インチHDDも存在したが、現在では9.5mmよりも薄い2.5インチHDDが利用される例はない。しかし、小型化や薄型化のためにスペース確保が厳しいモバイルノートにとって、約7mmと薄いこのSSDは魅力となるはずで、今後このIntel製SSDのサイズをベースに設計されたモバイルノートが登場する可能性も十分に考えられる。 重量は、実測値で約79g。比較として用意した他のSSDや2.5インチHDDの重量は、最も軽かったのがSUPER TALENTのFTM20GK25Hの約67g(実測値)、最も重かったのがWestern Digitalの2.5インチHDD、WD2500BEVSの約98.5g(実測値)で、HDDよりは20gほど軽いものの、SSDの中で飛び抜けて軽いというわけではない。
●32GbitのNANDフラッシュメモリチップを20個搭載 製品を分解して中の基板も見てみることにした。ケースの固定にはプラスのネジが利用されており、分解自体は簡単に行なえる。中の基板は、表側にコントローラチップの「PC29AS21AA0」と、Samsung製128Mbit SDRAMチップ「K4S281632I-UC60」、そして32Gbit NANDフラッシュメモリチップ「29F32G08CAMCI」が10個搭載されている。また裏側にも「29F32G08CAMCI」が10個搭載されており、32Gbit NANDフラッシュメモリは全部で20個搭載されている。基板の構造自体は、他のSSDと同じようにシンプルだ。 ●リード260MB/sec、ランダムライトでも77MB/secと非常に高速 では、パフォーマンスをチェックしていこう。今回は、ベンチマークソフトとして、CrystalDiskMark 2.1.6と、HD Tune 2.55を利用した。また、比較用として、SUPER TALENT製120GB SSD「FTM20GK25H」(容量120GB、Rev.1とRev.2の2種類)、OCZ製120GB SSD「OCZSSD2-1C128G」と、SSDSA2SH080G1Nと同じくMLCタイプNANDフラッシュメモリを採用するSSDを用意するとともに、SDHC×6枚を利用するPhotoFast製「CR-9000」(Transcend製8GB SDHC「TS8GSDHC6」を6枚搭載)、Western Digital製250GB 2.5インチHDD「WD2500BEVS」も用意し、それぞれ同じテストを行なった。また今回は、これらをデスクトップPCに接続してテストを行なっている。テスト環境は下に示す通りだ。
まず、CrystalDiskMark 2.1.6の結果を見ると、SSDSA2SH080G1Nが他のSSDよりも圧倒的に高速であるということがわかる。シーケンシャルリードは260MB/secと、他のSSDの2倍以上の速度をたたき出している。書き込み性能は、シーケンシャルライトは77MB/secほどと、MFT20GK25H Rev.2やOCZSSD2-1C128Gとほぼ同等か若干劣っているものの、512KBランダムライトで77MB/sec、4KBのランダムライトで57MB/secと圧倒的な速度が記録された。 【9月11日追記】ベンチマークテストのバージョンアップに伴い、デフォルト値が異なっているため、この連載の過去の数字とは直接比較できません。
HD Tune 2.55の結果もほぼ同じ傾向で、SSDSA2SH080G1NではTransfer RateのMinimumが188.8MB/sec、Maximumが232.3MB/sec、Averageが231.8MB/secと非常に高速であった。 また、HD Tune 2.55の結果で特に注目したいのがAccess Timeだ。他のSSDのAccess Timeはおおむね0.4~0.5msであるのに対し、SSDSA2SH080G1Nではなんと0.0msであった(発表値では、遅延時間は85マイクロ秒とされている)。つまり、アクセス時の遅延がほとんどないということだ。このように高速なアクセスタイムを実現しているからこそ、SSDSA2SH080G1Nのランダムアクセス性能が飛び抜けて優れているわけだ。
SSDSA2SH080G1Nに搭載されているコントローラは、NANDフラッシュメモリに対して10チャンネル並列でアクセスできるとされている。それに加え、コントローラ自体の処理能力も他のSSDに搭載されているコントローラより圧倒的に優れているからこそ、MLCタイプNANDフラッシュメモリを採用しているにも関わらず、これだけの性能が発揮できているのだろう。 次に、各SSDおよび2.5インチHDDにWindows Vista Ultimate SP1をクリーンインストールし、起動にかかる時間を計測してみた。テスト環境はベンチマークテストと同じで、電源ボタンを押し、「ようこそ」が表示されるとともに、ドライバの起動やサイドバーの表示が完了するまでの時間を、ストップウォッチを使って手動で3回計測し平均を出している。ちなみに、電源ボタンを押して、実際にOSのロードが開始されるまでには約13秒ほどかかっているので、実質の起動時間は結果から13秒を引いたものに相当すると考えてもらいたい。 結果を見ると、HDDとの比較では、実質1/2倍ほどの短時間でWindows Vistaが起動しているのはもちろん、他のSSDとの比較でも2~6秒近く高速であった。OCZSSD2-1C128GやFTM20GK25Hでは、デスクトップ表示後、サイドバーガジェットが全て起動するまでにほんの少しだが待たされる(OCZSSD2-1C128Gでは、ビデオドライバ「Catalyst Control Cente」のアイコンがタスクトレイに表示されるまでに若干時間がかかっていたためFTM20GK25Hより数秒遅くなっているが、ようこそやサイドバーガジェットの起動にかかる時間はFTM20GK25Hとほぼ同等だった)。しかしSSDSA2SH080G1Nでは、デスクトップが表示されると同時に、サイドバーガジェットも全て表示されてしまう。他に常駐ソフトなどを導入していない状態でもこれだけの差が出るため、通常の環境ではさらに大きな差になるはずだ。
IntelはIDF 2008において、同社のSSDが他社の製品よりも圧倒的に高速であるということをアピールしていたが、今回のテスト結果からもその点がしっかり裏付けられた。これだけの速度が発揮されていれば、SLCタイプNANDフラッシュメモリを採用するSSDと比較しても全く見劣りしない。HDDからの置き換えはもちろんのこと、これまでに販売されてきたMLCタイプNANDフラッシュメモリを採用するSSDからの交換でも体感差が感じられるはずだ。 また、SSDSA2SH080G1Nは消費電力や発熱も低いとされている。ワットチェッカーを利用して消費電力を測定してみたところ、他のSSDとの違いはほとんど見られなかったものの、WD2500BEVSとの比較では、リード・ライト時で2Wほど少なかった。また、ベンチマークテストを行なった直後に本体を触ってみても、HDDや他のSSDではそこそこ熱を感じるのに対し、SSDSA2SH080G1Nではほんのり温かい程度しか感じられなかった。このように、消費電力が少なく発熱が小さいという点も、モバイルノートにとって大きな魅力となるはずだ。
速度や消費電力、発熱の面でほぼ死角のないSSDSA2SH080G1Nだが、あえて不安点を指摘するとすればフラッシュメモリの寿命だろう。MLCタイプNANDフラッシュメモリは、SLCタイプのNANDフラッシュメモリより寿命が短いのはご存じの通り。SSDSA2SH080G1Nでは、MTBF(平均故障間隔)が120万時間とされているが、安全に利用できるかどうかは実際に長期間利用してみない限り何とも言えない。とはいえ、この点は十分に検証され、問題ないと判断した上での投入のはずなので、ノートPCのストレージとして利用する範囲内であれば、まず不安はないと考えていいはずだ。 このように、Intel初のSSDであるSSDSA2SH080G1Nは、MLCタイプNANDフラッシュメモリを採用しながら非常に高速なアクセス速度を実現するとともに、低消費電力かつ低発熱で、SSDとしての魅力は他の製品を圧倒している。 1,000個受注時の単価は65,760円。MLCタイプNANDフラッシュメモリを採用する120GBのSSDが5~7万円ほどで入手できる現在、この単価は少々高く感じるかもしれないが、性能差を考えると十分納得できる範囲内。とにかく、Intel製SSDの登場によって、今後SSDの勢力図が大きく塗り変えられることは間違いなさそうだ。 □関連記事 (2008年9月10日) [Reported by 平澤寿康]
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