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【特別レポート】Super Talent「FTM20GK25H」
~10万円を切る120GBの大容量SSD

Super Talent「FTM20GK25H」

実勢価格:79,773~94,800円



 SSDは、高速なデータ転送速度や消費電力の低さ、可動部がないことによる耐衝撃性の高さに加え、大容量化が進んできた。大容量化とともに低価格化も進んでおり、ノートPCにおいてHDDに代わる記憶装置として注目される存在となっている。

 書き換え回数に上限があるフラッシュメモリの性質上、耐久性に不安を持つ向きもあるが、データ書き込み時にフラッシュメモリ内各素子への書き込み頻度を平均化する技術が盛り込まれるようになり、HDDに匹敵する耐久性も徐々に実現されつつあるようだ。

 ただし、SSDが性能面で追いついたと言っても、価格と容量の面では、まだHDDに遠く及ばない。

 しかし、今回登場した、Super Talentの「FTM20GK25H」は、120GBの大容量と、10万円を切る価格(実勢価格は79,773~94,800円)を兼ね備えている。SSDの今後を占う上で、画期的な製品と言って良いだろう。

 さっそく実機を入手したので、詳細な仕様とパフォーマンスを紹介していこう。

●容量120GBで10万円を切る低価格、スピードも十分

 FTM20GK25Hの最大の特徴が容量だ。これまで市販されていたSSDでは64GBが最大容量だったが、FTM20GK25Hは容量120GBと、ついに100GBを突破した。120GBといえば、現在市販されている一般的なノートPCに搭載されるHDDの標準容量に匹敵する。これだけの容量があれば、容量面での妥協はほぼ必要ないはずだ。

 また、容量だけでなく価格も非常に魅力だ。これまで市販されていたSSDは、安いものでも容量32GBの製品が7~8万円ほど、容量64GBの製品が12~13万円ほどと、非常に高価だった。しかしFTM20GK25Hは、容量が120GBにも関わらず、最も安いショップでは79,773円で販売されており、SSDとしては非常に安価なのである。

 もちろんHDDと比較すれば、容量120GBの2.5インチHDDは1万円を下回る製品がほとんどで、まだ大きな隔たりがある。しかし、120GBのSSDが、従来の32GBのSSDとほぼ同じ金額で購入できるのだから、すばらしいことだ。

 ところでFTM20GK25Hでは、容量当たりの単価が安いものの、データ転送速度や書き換え回数の上限でやや不利な「マルチレベルセル(MLC)」タイプのNANDフラッシュメモリが採用されている。

 一般的に、MLCタイプのフラッシュメモリを採用するSSDでは、特に書き込み速度が非常に遅く、HDD代わりとして利用するには非常に厳しい場合も少なくない。しかし公表されているFTM20GK25Hのデータ転送速度は、読み出しが最大120MB/sec、書き込みが最大40MB/secと、MLCタイプのフラッシュメモリを採用するSSDとしてはかなり高速だ。つまり、MLCタイプながら、速度の点を心配する必要がないように見える。これは、のちほどベンチマークテストで検証してみよう。

 ちなみに、1日あたり50GBのデータの書き込み/消去を行なった場合、65.75年の耐久性があるとされている。これならば、実際に利用する上で耐久性が問題なることはまずないと考えていいだろう。

●9.5mm厚2.5インチHDDと同サイズ

 次にFTM20GK25Hの仕様を確認しておこう。

本体サイズは、9.5mm厚の2.5インチHDDと全く同じだ 接続インターフェイスはSerial ATA IIを採用

ネジ穴の位置なども2.5インチHDDと全く同じ 重量は69g(実測値)と軽く、ノートPCの軽量化にもつながる

 本体サイズは、100.2×69.9×9.5mm(幅×奥行き×高さ)と、9.5mm厚の2.5インチHDDと全く同じ。接続インターフェイスはSATA(3Gbps対応)だ。ネジ穴などもHDDに合わせてあるので、特殊な製品を除いて9.5mm厚の2.5インチHDDが搭載できるノートPCなら、問題なく利用可能と考えて良いだろう。

 重量は69g(実測値)と非常に軽量。一般的な9.5mm厚の2.5インチHDDは100g弱ほどなので、ノートPCに搭載した場合には多少ではあるが軽量化にも貢献する。

 消費電力は、HDDと比較して85%少ないとされているが、具体的な数値は公表されてない。とはいえ、HDDよりも消費電力が低いのは間違いなく、ノートPCのバッテリ駆動時間も延びると考えていいだろう。

■■ 注意 ■■

・分解/改造を行なった場合、メーカーの保証は受けられなくなります。
・この記事を読んで行なった行為(分解など)によって、生じた損害はPC Watch編集部および、メーカー、購入したショップもその責を負いません。
・内部構造などに関する記述は編集部が使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません
・筆者およびPC Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

 さて、今回は編集部で購入した製品だったため、分解して内部も確認してみた。中の基板は非常にシンプルで、コントローラと思われるチップと、NANDフラッシュメモリが16個搭載されているだけであった。

 搭載されていたフラッシュメモリはSamsung製の「K9HCG08U1M-PCB0」という64GbitのNANDフラッシュメモリで、表に8個、裏に8個の計16個搭載されていた。また、基板上にはJMicron Technology製の「JMF602」というチップも搭載されている。JMicronのホームページにこのチップの製品情報は掲載されておらず詳細は不明だが、MLCタイプのNANDフラッシュメモリに対応するコントローラチップであることは間違いないだろう。
内部の基板。表にはJMicron Technologyのコントローラチップ「JMF602」と、Samsung製64GbitNANDフラッシュメモリ「K9HCG08U1M-PCB0」が8個搭載されている 基板裏にも「K9HCG08U1M-PCB0」が8個搭載されている 利用可能容量は115,326MBとなっている

●書き込み速度は5,400rpmの2.5インチHDDと遜色なし

 では、パフォーマンスをチェックしていこう。今回は、筆者がメインで利用しているノートPC「FMV-BIBLO MG/A75N」を利用して、搭載されているHDDと交換して各種テストを行なった。環境は下に示したとおりである。

テスト環境
ノートPCFMV-BIBLO MG/A75N
CPUCore 2 Duo T8100(2.10GHz)
チップセットIntel GM965 Express
メモリPC2-5300 DDR2 SDRAM 2GB
OSWindows XP Professional SP3
標準搭載HDDMHY2250BH(5400rpm/Serial ATA/250MB)

 テストは、普段利用されているHDDの内容を、HDD複製ツールを利用してFTM20GK25Hに複製し、全く同じ環境を再現した上で行なっている。また、比較として利用したHDDは、富士通製の「MHY2250BH」(2.5インチ/5400rpm/Serial ATA/250MB)だ。

 以下、わかりやすいように、FTM20GK25Hを“SSD”、MHY2250BHを“HDD”と略称する。

CrystalDiskMark 2.1
FTM20GK25H“SSD”の結果

CrystalDiskMark 2.1
MHY2250BH“HDD”の結果

CrystalDiskMark 2.1結果比較グラフ

 CrystalDiskMark 2.1の結果を見ると、SSDの書き込み速度はHDDとほとんど遜色ないことがわかる。シーケンシャルライトはHDDのほうが若干高速だが、ランダムライトはSSDのほうが上回っており、トータルではほぼ同等の速度と考えていい。もちろん、7,200rpmのHDDとの比較ではHDDのほうが高速になると思われるが、5,400rpmのHDDとほとんど同じ書き込み速度が実現されていることから、書き込み速度の遅さは気にならないはずだ。

 それに対し読み出し速度はSSDのほうが大きく上回っている。これだけの差があれば、実際に利用する上での体感速度はかなりの違いが生じるものと思われる。

●Windowsの起動時間が大きく短縮

 そこで、実際に利用する上での速度をいくつか計測してみた。まずは、Windowsの起動時間だ。今回は、電源が落ちている状態から電源を投入し、デスクトップが表示されて、スタートアップに登録されているドライバソフト類が全て起動するまでの時間を手動で5回計測し、その平均を出した。ちなみに、筆者が利用している環境では、ログオン認証に指紋認証を利用していたが、今回は指紋認証ソフトは削除し、ログオンパスワードも削除して測定を行なっている。

Windows XP環境下での経過時間比較

 結果は、HDDで約1分59秒、SSDで約1分14秒と、45秒も起動時間が短縮された。もともと筆者が利用している環境では、ウイルス対策ソフトやスパイウェア対策ソフト、ファイアウォールなどのセキュリティソフトに加え、メーラ、Windows Live Messengerなどスタートアップに登録されているソフトが非常に多いため、Windowsの起動にかなりの時間がかかっていたが、これだけ短縮されるとかなり気持ちがいい。

 今回は測定していないが、もちろんアプリケーションの起動時間も大幅に短縮されており、Windowsの起動時間短縮とあわせ、数ランクパフォーマンスが優れるマシンを使っているかのような感覚だった。

 次に、USB 2.0接続の外付けHDDからファイルをコピーした時の時間を計測してみた。用意したファイルは、約440MBのファイル1個、および平均2.4MBほどのファイルを200個、約480MBで、それぞれをHDDおよびSSDにコピーする時間を手動で5回計測して平均を出している。結果を見ると、HDDのほうが2割ほど速かった。CrystalDiskMark 2.1の結果で、シーケンシャルライトはHDDのほうが若干速かったが、その差がここに現れているものと思われる。とはいえ、遅いと感じるほどではなく、この程度の違いであれば、ほぼ気にならないレベルだ。

 最後に、休止状態への移行および休止状態からの復帰にかかる時間も計測した。こちらも手動で5回計測し平均を出している。結果は、意外にもHDDのほうが若干速かったが、これは誤差に近いレベルであり、ほぼ同じと言ってしまっても差し支えないだろう。Windowsの起動では大きな差があったのに、休止状態からの復帰で差がほとんどなかったのは、休止状態からの復帰時にOS側の何らかのオーバーヘッドがあるからだろう。おそらく、より高速なSSDを利用してもほとんど差がないものと思われる。

●価格/容量からSSD導入を見送っていた人にもオススメ

 MLCタイプのフラッシュメモリを採用する低価格SSDは、これまでにもいくつか販売されていたものの、速度の面で大きな不利があり、ノートPCにHDDの代わりに搭載するには厳しいという印象が強かった。

 しかしFTM20GK25Hは、MLCタイプのフラッシュメモリを採用しながら、一般的なノートPCで採用されている5,400rpmの2.5インチHDDに匹敵する書き込み速度が実現されており、低価格SSDのイメージを大きく覆す存在だ。容量と価格からSLCタイプのフラッシュメモリを採用する高速SSDの購入に踏み切れなかった人でも、FTM20GK25Hであれば容量・速度・価格の全ての面で十分満足できるはずだ。

 もちろん、120GBで約8~10万円という価格は、HDDと比較するとまだまだ高価なのも事実だが、他社からもMLCタイプのフラッシュメモリを採用し、FTM20GK25Hとほぼ同じデータ転送速度を実現するSSDの登場が既に発表されており、大容量で安価、速度も十分高速なSSDが今後続々登場してくるだろう。そうなると、当然価格もこなれてきて、SSDはより魅力的な存在になっていくはずだ。現時点では自己責任によるアフターパーツの段階で、購入するユーザーを選ぶ製品ではあるが、SSDの現在の技術水準を知らしめたという意味でも、FTM20GK25Hの登場は、近い将来にSSDの普及が一気に加速する予兆であると感じている。

□SuperTalentのホームページ(英文)
http://www.supertalent.com/
□製品情報(英文)
http://www.supertalent.com/products/ssd_detail.php?type=MasterDrive%20MX
□関連記事
【5月24日】容量120GBで8万円の高速/大容量SSD発売、リード120MB/s(AKIBA)
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20080524/etc_stalent.html

(2008年5月26日)

[Reported by 平澤寿康]

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