ロジクールが、高性能マウス「MX-1100」をリリースした。初のレーザーマウスとしてMX-1000が発売されたのが、ちょうど4年前の2004年夏。さらに、2006年夏にはMicroGearを採用したプレシジョンスクロールホイールを搭載した「MX Revolution」を発売している。今回の、MX-1100は2年ごとに刷新されるその系譜につながるものといえる。 ●マウスボタンを自分流にカスタマイズ 自分専用にカリカリにチューニングして最適化したPC環境というのは実に使いやすいのだろうと思う。 手元の環境でいえば、何の変哲もない自作機をメインの作業環境として使っていて、20型程度のディスプレイを2台接続し、一方を縦、もう一方を横にして使っている。キーボードはユーティリティを使ってキーアサインを多少変更し、CtrlとCapsLockを入れ替え、また、変換キーに半角/全角キーの機能を割り当てている。 たったそれだけのオプティマイズであっても、その有無で、作業の効率は大きく変わる。だから、マルチディスプレイ環境を得られないモバイル時には、作業のストレスがたまる。 長期の出張で、ホテル等に連泊するときにはなおさらで、だからこそ最近の薄型TV導入の動きには期待している。多くのホテルの部屋に、HDMI端子を装備したTVが導入されれば、それを2台目のモニタとして使える可能性があるからだ。実際、先日のIDFで宿泊したホテルの部屋にも薄型液晶TVが設置されていて、持参していたUSBディスプレイアダプタを、DVI-HDMI変換コネクタ経由で利用したが、とても重宝した。 マウスも同様だ。最近のマウスにはとても多くのボタンが用意され、ユーティリティを使って各種の機能を好みに応じて割り当てることができる。だが、これもまた、外出時には、普段使っているのと同じマウスを持ち出さないと、作業効率が落ちてしまう。新たに発売されたMX-1100は、10個のボタンを搭載し自由にカスタマイズすることができる。その配置は実に軽妙で、他のマウスを使わざるを得ないときの違和感を覚悟してでも、常用しようという気にさせるものだ。 ●さよならオートシフト MX-1100とMX Revolutionの大きな違いは、MicroGearプレシジョンスクロールホイールのSmartShift機能の有無だ。いわゆるマウスホイールを回転させたときのクリック感、「クリクリ」と「スルスル」を切り替えるために、MX-1100では、ユーザーが手動でボタンを押す必要がある。MX Revolutionでは、アプリケーションに応じて自動的に切り替わったし、高速にホイールを回すと、自動的に切り替わった。 ロジクールでは、このクリクリを、「クリック・トゥ・クリック」モードと呼んでいる。SmartShiftは便利な機能だったが、スクロールして先頭や末尾に到達し、状態が切り替わる際に、一瞬逆方向に戻るなど、気になる点があった。しかし、2年間改められることはなかった。 MX-1100では、この切り替えを人間のボタン操作に任せることに落ち着いたようだ。ロジクールの説明によれば、あんな贅沢な機構を持ったマウスは、もう二度と作れないかもしれないということで、ちょっと残念ではあるが仕方がないことなのだろう。 ホイールのSmartShift機能は、デフォルトでは、ホイール手前のボタンに割り当てられ、このボタンを押すことで、クリクリとスルスルが切り替わる。高速にスクロールさせたいときには、手動でボタンを押し、モードを切り替えて、ホイールを力強く回すことで、エクセルでも瞬時に数千行のスクロールができる。実用的には、これで不便を感じることはなさそうだ。また、スルスルだけでよいというユーザーなら、このボタンを他の機能に割り当てることもできる。 ●絶妙な配置のステルス・サムボタン ぼくが、マウスを選ぶときの絶対条件は、サイドに親指で操作ができる「戻る」ボタンを備えているかどうかだ。MX-1100のような高級マウスなら、当然備えているボタンではあるが、一部のモバイル用マウスなどでは、このボタンがないものもある。そういうマウスは使えないなと思って敬遠していたのだが、最近は、スクロールホイールを左右に傾けることで、戻ると進むを実行できれば、それでもいいのかなと思うようになってきている。自分のPCの使い方では、巨大な表を横スクロールをする機会は、それほど多くはないので、それもいいかもしれない。もちろん、MX-1100では、その割り当ても可能だ。 特筆すべきは分解能の切り替え機能だ。MX-1100は、400dpiから1,600dpiの間で2つの分解能を設定しておき、+ボタンと-ボタンで設定した値に切り替えることができる。広いデスクトップでダイナミックにポインタを動かすときには分解能を低い状態にしておき、小さな領域で注意深くマウスを動かさなければならないときには分解能を高める使い方ができる。これは、マウスポインタの加速度設定がどうもうまく自分の感覚にマッチしないユーザーにとってはうれしい機能だと思う。 悩ましいのは、ホイールそのものを押し下げたときの機能だ。Internet Explorerの標準機能では、ホイールの押し下げは、そのポインタ位置のリンクを新しいタブで開くようになっている。だが、ロジクールでは、この操作に、デフォルトでズーム機能が割り当てられている。そして、これはこれで便利だ。もし、標準通り、新しいタブでリンクを開きたいなら、汎用ボタン機能を割り当てておけばいい。 個人的にうれしいのは、マウスを手のひらで包んだときに、右手親指のスカート部分にあるボタンだ。このボタンは、ステルス・サムボタンと呼ばれ、見た目にはボタンとは気がつかない。知らなければ、そこを押せると思わないだろう。そして、マウスを包む手のひらを、ほとんど動かさないでも押せるという絶妙なポジションに装備されている。 デフォルトではこの部分は、ドキュメントフリップに割り当てられれている。Vistaであれば、Windowsキー+TABで機能する「フリップ3D」が呼び出される。ただ、ぼくは、それよりも、ウィンドウを閉じる操作に使ってもいいかなと思っている。Windowsで、かなり頻繁に使う機能であるにもかかわらず、ショートカットキーではAlt+F4と、ファンクションキーまで手を伸ばさないとならないキー操作であり、クリック操作の場合も、小さな×ボタンにポインタをあわせるのはめんどうなので、それがマウスボタンの押し下げだけでできるのはうれしい。 ●高機能マウスで得られる別世界のPC体験 こうして、高機能マウスを自分の使いやすいようにカスタマイズしていくと、本当に、他のマウスを使ったときの効率の悪さを実感する。たまに、公共の場所に設置されたPCを使ったり、他人のPCを操作する機会があるのだが、そんなときには、まるで素人に戻ってしまう。マウスを操作する手つきがぎこちなくなってしまうのだ。だからこそ、究極までカスタマイズできるMX-1100のようなマウスは、普段使いとは別に出張時用にも欲しいと思わせる。願わくば、nanoレシーバー版やBluetooth版も用意してほしいところだ。 マウスに関する話題としては、マイクロソフトが「レーザーにさよなら」ティザー広告を公開するなど、この秋は、新たな展開がありそうだ。このページのアニメーションを見ると、9月9日に、何らかの発表が行なわれるようだ。 ちなみに、マウスの父、ダグラス・エンゲルバート氏は、まさか、自分の発明したデバイスが、これほど長い間使われるとは思ってもいなかったということで、最近は、マウスについて聞かれることを、あまり、うれしく思っていないらしい。以前、お会いしたときには、ロジクールの米国法人であるLogitechの本社にオフィスを構え、毎日、元気に通勤しておられると聞いていたのだが、現在は、オフィスを引き払い、自宅におられると現地法人勤務の方からうかがった。その健康状態も気になるところだ。 □ロジクールのホームページ
(2008年9月5日)
[Reported by 山田祥平]
【PC Watchホームページ】
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