発売中 価格:オープンプライス シチズン・システムズの電子辞書「ED2000」は、健康関連のコンテンツを多数収録した、家庭向けの「健康電子辞書」だ。PCが苦手なユーザでも使える50音配列キーや、独立した電卓キーを採用するなど、他社の生活総合モデルとは一味違った特徴を備える。 ヨドバシカメラでの購入価格は14,800円で、通常の電子辞書よりもずっと安い価格帯の製品だ。 ●健康関連コンテンツを柱にした電子辞書 本製品は、家庭内の健康関係の辞典/辞書類をリプレースするという位置づけの「健康電子辞書」だ。メーカーのプレスリリースに「我が家の健康知識はこれ一冊で/一家に一台! 家庭の常備薬と共に!」とあるように、健康関連のコンテンツに特化していることが特徴である。 シチズン・システムズでは、従来から「電子辞書」と名のつく製品は販売していたものの、これまで本連載で紹介しているような生活総合モデルや学習モデル、英語モデルなど、量販店で売れ筋になっている電子辞書はラインナップしておらず、液晶表示が1~2行のローエンドなモデルを柱としていた。つまり、同じ電子辞書でありながら、製品マトリックス上は重なり合わない商品展開を行なっていたわけである。 今回の「ED2000」は、一般的な電子辞書と同じ折りたたみ方式のハードウェアを採用したほか、収録コンテンツも健康関連辞書にとどまらず、国語/英和/和英など基本辞書を含めるなど、他社の生活総合モデルに近いコンセプトを持った製品に仕上がっている。今回は「健康系のコンテンツを中心とした電子辞書」という観点に加え、一般的な電子辞書としても本製品をチェックしていきたい。 ●電子辞書には珍しい50音配列キーを採用。電卓キーも特徴的 まずはハードウェアから見ていきたい。筐体サイズはハガキ大で、カシオやシャープ、SIIといった他メーカーの電子辞書とほぼ同一。筐体にプラスチック系の素材を採用していることもあり、重厚感、高級感という点では残念ながら他メーカーの製品に及ばない。そのぶん重量は軽く、他社製品のおよそ2/3にあたる約200g(電池含む)という軽さを実現している。 画面サイズは4.5インチ、解像度は320×240ドット。液晶のクオリティはお世辞にも高いと言えず、視野角も狭めだ。スクロールした際の追従性も低いが、むしろスクロールするほどコンテンツの本文が長くない場合が多く、あまり気にならない。
キーボードは珍しい五十音配列。右から左にかけて、あ行→ら行の順にキーが配列されているほか、上3列にはアルファベットがA→Zの順に配されており、QWERTY方式のキーボードに馴染んだユーザは戸惑うだろう。もっとも、一般的な電子辞書から本製品に乗り換えるユーザはいないだろうし、紙の辞書から本製品に乗り換えた場合は、それほど抵抗なく利用できる。 キーボードで1つ特徴的なのは、盤面の右上にテンキーが付属していること。一般的な電子辞書においては、ノートPCなどと同様、キー配列の最上段の一列が数字キーを兼ねている場合が多く、電卓機能を利用する場合に使いやすいとは言えなかった。本製品においては、独立したテンキーを備えていることから、電卓機能が非常に使いやすい。キーサイズこそ小さいが、限られたスペースの中でテンキーとしての配置も正確に再現している点は高く評価したい。 入力インターフェイスはキーボードのみで、他社にあるようなタッチパネル入力や手書き入力対応の子画面は実装されていない。また、SDカードやUSB接続などの拡張機能もないほか、音声系のコンテンツも収録されないなど、他社の生活総合モデルと比べるとハード・ソフトともにかなりの差がある。もっとも、1万円強という実売価格帯を考えると、後述のコンテンツも含め、妥当な仕様であるといえるかもしれない。 なお、電源は単4電池×2本で駆動し、連続駆動時間は70時間と、このクラスの電子辞書としては標準的だ。ACアダプタなどのオプションは用意されていないが、これは製品のコンセプトからして妥当だろう。
●健康関連辞書がメイン。基本辞書コンテンツは本格利用には不向き 続いてコンテンツについて見ていこう。コンテンツ数は合計12で、大きく2つのジャンルに分かれている。「国語辞典」、「英和辞書」、「和英辞典」、「カタカナ語新辞典」、「漢字辞書」の5つから成る基本辞典と、「家庭医学大全科」など7つの健康系コンテンツから成る健康辞典だ。 まず前者の基本辞典についてだが、旺文社の監修によるデータが収録されている。多くのコンテンツは書籍としては市販されておらず、事実上のオリジナル辞書ということになる。余談だが、同社の電子辞書シリーズにおいて、国語辞典などのコンテンツは本製品と同じラインナップで統一されており、「基本辞典」という呼び名もそこから来ているものと推測される。 内容については、例えば国語辞典はおよそ6万語とまずまずの項目数だが、1つの説明文が非常に短いうえ、例文などもほとんど掲載されておらず、学習用途などには不向きだ。一括検索機能、関連検索機能もないわけではないが、収録されている語彙数そのものが少ないため、あまり実用的とは言えない。 後者の健康辞典については、本製品のメインコンテンツとも言える存在であり、全コンテンツの過半数を超える7つのコンテンツがこの健康関連で占められている。コンテンツそのものにオリジナリティがあるわけではないが、これら健康系のコンテンツを前面に押し出した電子辞書がそもそも珍しいと言える。YES/NOチャートで現在の症状の自己診断ができるコンテンツも搭載しており、家庭にある家庭の医学事典などの書籍をリプレースするのに十分な製品と言えるだろう。 難点としては、本製品には履歴機能が備わっていないため、一度参照した見出し語をもう一度見直したい場合、再度検索しなくてはいけない点が挙げられる。特に病名の名前などは、短期間に違った名前を何度も検索することは考えにくいので、これらの使い勝手については改善の余地があると感じた。 なお、これらのコンテンツの呼び出し方法についてだが、本製品では「辞書」、「健康」、「電卓」の3つのキーが装備されており、それぞれを押して各コンテンツの一覧を表示させるようになっている。早い話、一般的な電子辞書のように、全コンテンツを統べるメニューが存在していないのだ。 ターゲットユーザーの年齢が比較的高いであろうことを考慮すると、画面上のタブではなくハードウェアとしてのボタンで切り替えさせる現在の方式は、理にかなっている気もする。ただし、上下キーとボタンを交互に押さなくてはいけない操作性は、あまり誉められたものではないだろう。 ほかにも、入/切ボタンを普通に押すだけでは電源をOFFにすることはできず、長押しが必要となるほか、「辞書」、「健康」、「電卓」のキーを直接押しても電源がONにならなかったりと、ユーザビリティ的に違和感を感じる箇所は数多い。新しいモデルが出るたびにこれらのインターフェイスを改良して使い勝手を向上しているカシオやシャープ、SIIとは、オモテに現れにくい部分での開きがある印象だ。今後、家庭向けのモデルを繰り返し発表していく中で、こうした使い勝手を積極的に追求していってほしいと思う。
●健康関連コンテンツのリプレースには価値あり ざっと見た限りでは、機能・コンテンツなど全般にわたって他社の生活総合モデルとの差はかなりあると感じる。しかし実売価格が1万円台ということを考えれば、価格なりの価値は十分に備わっていると言える。他社の電子辞書のインターフェイスに慣れてしまっているユーザーに積極的に乗り換えをオススメする製品ではないが、手軽な医学事典がほしい場合は、候補として検討してよい製品だ。個人的には、本製品をはじめとする、同社の今後の電子辞書ラインナップの新規展開にも注目していきたい。
【表】主な仕様
□シチズン・システムズのホームページ (2008年9月3日) [Reported by 山口真弘]
【PC Watchホームページ】
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