日本ヒューレット・パッカードの液晶一体型PC「TouchSmart」シリーズの新モデルが登場。デザインが一新されるとともに、設置面積が小さくなり、よりスマートなイメージへ進化している。今回は、その新TouchSmartシリーズの中から、上位モデルとなる「TouchSmart PC IQ503jp」をいち早く試用できたので、仕様や使い勝手などを紹介していこう。ただし、今回試用したTouchSmart PC IQ503jpは、最終テストユニットであったため、製品版と異なる点が含まれる可能性があることは、あらかじめご了承願いたい。 ●光学式タッチパネル搭載で、指で操作できる TouchSmart PC IQ503jp(以下IQ503jp)の最大の特徴となるのが、従来モデル同様、液晶パネルに光学式タッチパネルを搭載しているところだ。 一般的なタッチパネルは、液晶パネル表面に感圧シートを取り付け、液晶表面を指やペンで押したときの圧力を検知することでさまざまな操作を可能にしたものだ。それに対し、IQ503jpに搭載されている光学式タッチパネルでは、液晶パネルの隅に光学センサーが取り付けられており、光学センサーによって液晶パネル表面の指やペンの位置を特定し、操作を可能としている。 光学式タッチパネルの操作感は、感圧式タッチパネルよりも電磁誘導方式のデジタイザに近く、指やペンが液晶パネル表面に触れていない状態(1mmほど離れた状態)でも操作が可能だ。そのため、液晶パネル表面を押さえつける必要がなく、感圧式タッチパネルよりもかなり軽快な操作が行なえる。実際に使ってみても、感圧式タッチパネルとは比較にならないほどスムーズな操作が行なえた。 また、光学式タッチパネルにはもう1つ大きな利点がある。それは、液晶パネル表面に余計なパネルを取り付ける必要がなく、液晶が持つ表示能力を一切損なうことがないという点だ。せっかく優れた表示品質を持つ液晶パネルを搭載していても、その前に感圧シートなどが取り付けられていると、どうしてもややくすんだような画像表示となってしまうが、IQ503jpではそういった問題は一切ない。 ちなみに、IQ503jpに搭載されている液晶パネルは、WSXGA+(1,680×1,050ドット)表示対応の22型ワイドBrightView液晶だ。パネル表面が光沢処理されていることもあり、非常に鮮やかな映像が表示される。光沢処理がきつく、映り込みがかなり気になる点は少々残念ではあるが、これだけの表示品質を確保した上で、指やペンを使ったタッチ操作が可能という点は、他の製品にはない大きな魅力だ。加えて、保証期間内に輝点が1つ以上、または黒点(ドット抜け)が6つ以上発生した場合に交換してもらえる「輝点ゼロ保証」が用意されている点も嬉しい。
●オリジナルランチャー「TouchSmartソフトウェア」を搭載 IQ503jpでは、光学式タッチパネルを搭載するだけではなく、指を使って主要な操作が行なえるように、「TouchSmartソフトウェア」と呼ばれるオリジナルランチャーソフトも搭載している。 TouchSmartソフトウェアは、液晶パネル右下に用意されている「TouchSmartボタン」に触れることで起動する。TouchSmartソフトウェアには、音楽や映像ファイルの再生機能、静止画閲覧機能、スケジュール管理機能付きカレンダー、オリジナルWebブラウザ、RSSリーダーなどが用意されており、それらを指で触れて呼び出し機能を活用できる。また、よく利用するアプリケーションを登録しておくことで、そのソフトをワンタッチで呼び出せるランチャー機能も用意されている。 TouchSmartソフトウェアは、指で操作することを前提にデザインされている。画面上表示されるタイル(アイコン)を指で左右に動かせばタイルが移動し、目的のタイルをタップすればその機能が起動する。タイルは上下2段に表示されており、初期状態では、上部にTouchSmartソフトウェアが提供する独自機能の多くが、下部にはあらかじめ登録されている外部アプリケーションなどのタイルが表示されている。これらタイルはユーザーが自由に変更可能なので、頻繁に利用するアプリケーションのタイルを上部に追加することも可能だし、逆に利用しないタイルを下部に移動させることも可能だ。 また、頻繁にアクセスするWebページをタイルとして登録しておけば、そのタイルをタップするだけで独自Webブラウザが起動し、そのWebページが表示される。ちなみに、Webページを登録するときには、Internet Explorerのお気に入りの中から特定のページを指定することになる。また、独自ブラウザ起動時にもInternet Explorerのお気に入りが呼び出され、好きなページを開くことが可能。 他にも、指2本で操作することで、画像の拡大縮小や回転、画面のスクロールなども行なえるようになっている。 TouchSmartソフトウェアは、動作が非常にきびきびとしていて、とても快適に利用できる。頻繁に利用するアプリケーションを登録しておけば、Windows Vista側のUIを使う必要がないと思えるほど便利だ。 ただし、指での操作は少々慣れが必要だと感じた。感圧式タッチパネルなら、画面上から指を離せば反応しなくなるが、光学式タッチパネルでは画面上から指が離れてもまだ反応するため、操作ごとに画面から指をしっかり離さないと、カーソルが飛ぶなどの誤動作につながってしまう場合があるのだ。ただこれは、感圧式タッチパネルと同じような感覚で操作しようとするために起こることで、ある程度操作に慣れてしまえば問題ないと考えていいだろう。
●64bit版Windows Vistaを採用 IQ503jpのもう1つの特徴となるのが、OSとして64bit版Windows Vistaを標準で採用している点だ。家庭での利用が中心となるマシンで64bit版Windows Vistaを採用する利点はそれほどないように思われるが、現在ではアプリケーションの対応も進んできており、実際に使用する上でもはや不都合はないと考えていい。前述のTouchSmartソフトウェアは64bitベースのソフトとなっている。ハードウェアの対応はまだ十分ではないが、IQ503jpではハードウェアの増設の余地はUSB 2.0やIEEE 1394以外になく、こちらもほぼ問題にならないはずだ。 逆に、メインメモリを4GB以上搭載しても、全領域を利用できる点は32bit版Windows Vistaにはない利点となる。実際にIQ503jpでは標準で4GBのメインメモリが搭載されており、動画や映像の編集作業を行なう場合などに特に有利となる。 ●本体は薄くコンパクトで、設置面積も小さい TouchSmart PCの従来モデルは、液晶背面にやや大きな本体部分があり、見た目のイメージも他の液晶一体型PCと大きく変わらず、それほどスマートというイメージは受けなかった。それに対しIQ503jpは、PC本体が液晶背面にすっきりとまとめられており、非常にコンパクトかつスリムになっている。パッと見ただけでは、22型ワイドの液晶ディスプレイと思ってしまうほどで、従来モデルとは見た目の印象は大きく異なっている。 液晶面には、右下にTouchSmartボタンが、上部中央にWebカメラが用意されているだけで、それ以外にボタンなどは全く配置されておらず、ブラックのカラーリングと相まって非常にすっきりとした印象だ。電源ボタンや音量調節ボタン、各種コネクタ、光学式ドライブなどは全て側面に用意されている。とはいえ、それらもなるべく目立たないように配慮されており、横から見てもボタンやコネクタ類でマシンの雰囲気が壊されているということはない。とにかく、どの角度から見ても非常にスマートなイメージなのだ。従来モデルは、リビングに置く少々ためらうデザインだったかもしれないが、IQ503jpならリビングに置いても違和感を感じることはないだろう。 液晶面のチルト角は、背面スタンドの角度を変えることによって調節する。チルト角は、10度から45度ほどの間で調節可能。チルト角が10度の時には奥行きが約223.5mmほどとかなり短く、狭い場所にも設置して利用可能だ。ただし、45度に傾けると奥行きが約442mmほどになるため、使い方によっては設置場所にある程度の余裕が必要になる。 本体下部は数cmのすき間が空いているが、この部分は付属のキーボードを収納するためのスペースとして利用できる。また、本体底面にはダウンライトが取り付けられており、イルミネーションとして光らせるだけでなく、キーボードライトとしても活用できる。ちなみにこのダウンライトは左側面のスイッチを利用して3段階に明るさを調節できる。
●基本スペックはSanta Rosaベース IQ503jpの基本スペックは、チップセットがIntel GM965 Express、CPUがCore 2 Duo T7250と、ノートPC向けプラットフォーム(いわゆるSanta Rosa)がベースとなっている。 メインメモリは、PC2-6400 DDR2 SDRAMを標準で4GB搭載(最大4GB)。マザーボードにはSO-DIMMが2基用意されており、2GBのSO-DIMMが2個取り付けられ、デュアルチャネル動作を実現している。 グラフィック機能は、チップセット内蔵機能を利用するのではなく、NVIDIA GeForce 9300M GSを別途搭載している。最新3Dゲームが快適にプレイできるほどではないものの、Windows Aeroや軽量な3Dゲーム程度であれば十分なパフォーマンスが得られる。ビデオメモリは256MBで、MXMカードによって増設されている。 ネットワーク機能は、Gigabit Ethernet対応の有線LANと、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANを標準搭載。また、Bluetooth 2.0+EDRも標準搭載となっている。 HDD容量は750GBと、このクラスのマシンとしてはかなり大容量だ。ドライブは、3.5インチのSATAドライブを採用。光学式ドライブは、スロットインタイプのDVDスーパーマルチドライブを搭載する。 キーボードおよびマウスは、ワイヤレス方式のものが付属する。キーボードは非常に薄く、キーのタッチも比較的軽いため、ノートPCのキーボードに近い使用感だ。マウスは、スクロールホイール付きの一般的な3ボタンマウスだ。無線方式はBluetoothではなく、2.4GHz帯のRF方式を採用しており、本体底面に用意されているUSBコネクタに専用レシーバが取り付けられている。さらに、Media Centerリモコンも標準添付となる。 本体に電源は内蔵しておらず、比較的大型のACアダプタを利用する。ACアダプタの置き場所にやや困る可能性もあるが、ノートPCのように持ち歩くわけではないため、机の下などの隙間を活用すればいいだろう。
●スタイリッシュな省スペースマシンとしておすすめ では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。ちなみに、今回より利用するベンチマークソフトを若干変更し、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.0」と「3DMark Vantage Build 1.0.1」を採用した。また、比較的軽量な3Dゲームソフトのパフォーマンス指標として「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」も利用。Windows Vistaパフォーマンス評価の結果も加えてある。さらに今回は、OSが64bit版Windows Vistaということもあり、「PCMark Vantage x64 Build 1.0.0」の結果も合わせて掲載する。ちなみに、比較用として掲載したマシンは、筆者がWindows Vista Home Premiumをインストールして利用している自作マシンだ。 結果を見ると、省スペースマシンとしては必要十分以上のパフォーマンスが得られている。メインメモリも4GB搭載されているため、付属のTouchSmartソフトウェアを始め、どのアプリケーションも非常に快適に利用できる。3D描画能力は飛び抜けているわけではないため、最新の3Dゲームをプレイするには少々厳しいものの、その他の用途であれば、パフォーマンスに不満を感じることはほぼないはずだ。
IQ503jpで唯一足りないものといえば、やはり地デジチューナなどのTV機能だ。前モデルでは地デジ搭載モデルも用意されていたため、この点は少々残念に思う。ただし、年内を目途に地デジチューナの搭載が計画されているようなので、この点もいずれ解決することになるだろう。 販売価格は、日本HPの直販サイト「HP DirectPlus」で199,500円。TV機能を搭載しない液晶一体型マシンとしてはやや高価なように思うかもしれないが、22型ワイドという大型の液晶を採用し、さらに光学式タッチパネルが搭載されていることを考えると、この金額でも十分満足できるはずだ。スタイリッシュかつ大型液晶を搭載する省スペースマシンを探している人にオススメしたいマシンだ。 □日本ヒューレット・パッカードのホームページ (2008年7月4日) [Reported by 平澤寿康]
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