新iPhoneが発表され、日本でもソフトバンクモバイルから発売されることが決まった。7月11日を楽しみにしている方も多そうだ。ぼくはたぶん買わないと思うけれど、ついでにバージョンアップされるiPod touchで、その恩恵が得られるのがうれしい。 ●音楽の聴き方の多様化、あるいは高齢化社会 iPhoneを買わないであろう理由は、おサイフケータイの便利さに、どっぷりとはまってしまった今、もう、Felica非搭載の端末というのはありえないなというのが正直なところだからだ。iPhoneがどんなに優れていたとしても常用することはなさそうだ。だが、音楽を聴くためのデバイスとして、今、使っている携帯電話端末は物足りず、結局は、携帯電話とiPodの二本立て状態が当分続くことになるだろう。 自分が音楽コンテンツを購入し、それを聴くという行為を考えたときに、世の中の一般的なトレンドと、少しづつズレが出てきているのかなと思うことがある。おそらくは、年齢のせいでもあるのだろうけど、音楽を聴くという行為の多様化に、これからも各種のデバイスが追いついてこれるのかを考えるいい機会になりそうだ。 たとえば、音楽CDの買い方。ぼく自身のパターンとしては、10日に1回くらいの頻度で渋谷のタワーレコードに立ち寄り、5階のカントリー、アメリカーナの売り場で新譜を試聴して物色する。気に入ったCDがあればそれをレジに預け3階のロック売り場に降り、やはり新譜を試聴し、気に入ったCDを持ってレジに向かい、5階から降ろしてもらったCDといっしょに会計する。 以前のCD購入は、Amazon依存が強かったが、今は、多くのCDをタワーレコードのリアル店舗で購入するようになった。また、iPodで音楽を聴くようになって、ジャケットを常に確認できるので、すでに持っているCDを重複購入することも、ほとんどなくなった。Amazonは、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」のレコメンドや、ときおり、メールでやってくる「以前に××をチェックされた方に、××のご案内をお送りしています」が、かなりツボにはまるのは便利なのだから、「この商品は以前に購入されています」のアラートくらいは出してほしいものだ。もちろん、これは、タワーレコードなどのリアル店舗にもいえることだ。ポイントカードを見せるのだから、購入者は特定できるはず。そのチェックくらいはしてほしい。 AmazonでのCD購入はどうしても邦楽が多くなる。定期的に新譜をチェックして、予約してしまい、忘れた頃に送られてくることが多い。また、洋楽は音楽関連サイトで話題になっているアーティストを、MYSPACEなどでチェックし、その場でAmazonに直行して購入するパターンだ。 ぼくの世代のCDの買い方は、やはり、アルバム指向が強いんじゃないだろうか。それがあるのかないのかは別にしても、どうしても、アルバム1枚全体に貫かれているはずのコンセプトが気になってしまう。それと、個人的にはアーティストの名前をちっとも覚えられなくなってしまってきている。 購入時にも、まず、アーティストの名前を自分で意識していないようだ。ジャケ買いも少なくない。だから、iPodに入れてしまって、曲を聴いているときに、この人は誰なんだとチェックすることになる。 購入直後は「ここ1ヶ月に購入したCD」といったスマートプレイリストをアルバム単位シャッフルで繰り返して聴くが、ある程度時間がたてば、曲単位のシャッフルに切り替える。そういう意味では、ジャケットが大きく表示されるiPod touchのディスプレイはうれしい。でも、アルバム単位シャッフルができないのがつらい。また、パスコードロックをかけていると、画面上部に表示される情報が、現在再生中の曲名だけなので、アーティスト名がわからない。ちゃんとした情報を表示させるには、パスコードを入力してロックを解除しなければならないのだ。ぼくは、どちらかというと曲名よりも、アーティスト名を知りたいので、この仕様にはちょっと不満がある。 iPod nanoはどうかというと、再生中のiPodをポケットから取り出すと、ディスプレイはバックライトが消え、時計が表示されている。時間が知りたくてiPodをポケットから取り出すわけではないので、ロックを解除し、再生中の曲情報を確認し、再びロックしてポケットに戻す。これもめんどうだ。 iPodに入っている曲が「知っているアーティスト」のものばかりであれば、こんな不満を感じることはないのだが、ぼくの購入パターンでは、結果として自分が知らないアーティストの方が圧倒的に多いのだ。きっと、スポンジのような記憶力を持つ若い人には理解してもらえなさそうだ。自分で書いていてなさけない……。 ●アップルのおもてなしをゆるやかに回避する デジタルメディアプレーヤーは、いってみればコンピュータそのものなのだから、もう少し表示などの点で自由度が高くてもいいんじゃないだろうか。そこで期待したいのがiPhone 2.0ソフトウェアの登場だ。これによってサードパーティ製のソフトウェアが登場し、いわゆるアップルのおもてなしをゆるやかに回避できるんじゃないかと淡い期待を抱いている。アップルの方法論が悪いといっているわけではない。すべての人が満足させられるソリューションを提供できないほどに、多様化の波が押し寄せてきているだけのことだ。 ぼくは、PCでは音楽を聴くためにiTunesを使っている。その完成度は高く、自分としてはベストに近い評価をしている。だが、完全ではない。 仕事のためにPCに向かっているときは、パーティシャッフルをよく使う。ここ3年くらいに購入したCDをスマートプレイリストにし、それをソースにシャッフルする。パーティシャッフルでは一覧形式でのジャケット情報が表示されないし、カバーフローではスペースをとりすぎるので、サイドバーガジェットの「NowPlaying」を常駐させている。このガジェットを使えば、iTunesの再生中の曲のジャケット情報がサイドバーに表示され、そのジャケットにポインタを重ねればアーティスト名、曲名、アルバム名が表示される。文字のサイズも指定できるので、ぼくはアーティスト名を大きく表示するようにしてある。このガジェットを使うようになってから、iTunesは再生を始めたらすぐに最小化してしまうようになった。 iPhone(あわよくばiPod touchも)が、サードパーティアプリケーションを動かすためのプラットフォームとしてうまく機能するようになれば、こうしたかゆいところに手が届くようなソリューションがどんどん揃い始めるだろう。日本の携帯電話でも、探せば、かなり気の利いたアプリケーションが見つかる。それだけに、iPhone用の勝手アプリがどのように扱われることになるのかが気になる。その流通を、どうコントロールするかはアップルの腕の見せ所だろう。 今回の新iPhone登場と同時に、従来の.MACに代わる「Mobile Me」が発表されている。Windowsユーザーとして、Outlookがなければどうにもならない生活をしている身としては、このサービスの詳細も気になる。ほんとうは新iPhoneの発表よりもずっと気になる。ひょっとしたら、マイクロソフトが用意してくれないソリューションを、すべてこのサービスで調達できるかもしれないからだ。こちらに関しては、正式なサービスが始まり次第、改めて取り上げることにしたい。
Law's Sidebar Gadget Development Blog(英文)
(2008年6月13日)
[Reported by 山田祥平]
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