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【WWDC 2008レポート】基調講演詳報 前編

iPhoneのソフトウェアはバージョン2.0へ
〜サードパーティアプリも解禁

会期:6月9日〜13日(現地時間)

会場:米San Francisco「Moscone Center West」



 iPhone 3Gが発表されたWWDC 2008の基調講演は1時間45分程を要し、ここ数年ではもっとも長い時間が費やされた講演となった。本稿では速報版では伝えきれなかった部分と基調講演後に発表されたリリースの内容もまじえて、WWDC 08基調講演の詳細をほぼ時系列に沿ってお届けする。

5,200人のデベロッパーが参加した2008年のWWDC

 WWDC 2008では参加チケットの完売がアナウンスされたこともあって、基調講演を聴講する参加者の出足も早いものとなった。例年もメイン会場の定員から溢れてしまった参加者は、別室で中継映像を見ることになる。特に日本をはじめとする米国外からの来場者は「せっかく海をわたって来たのだから、中継映像ではもったいない…」という意識もあってか、メイン会場へと確実に入場するべく午前3時過ぎには入場を待つグループが形成されていたということである。

 一方、筆者を含めた報道関係者だが、日本からはNHKと民放キー局のすべてがTVカメラを持って取材に訪れており、これらすべてが揃ったのはWWDC史上初めてのこととなる。映像メディアの過熱ぶりは日本に限ったことではないようで、TVカメラ向けに設置されたプラットフォーム付近は、Macworld Expoや過去のWWDCではかつて見たことがないほどの混雑ぶりとなっていた。一方で記者などペンのみや手持ちのカメラでの撮影が可能な取材席は、例年並みかやや余裕があった。こちらは更なる混雑が事前に見込まれたためか、あらかじめ人数の調整が行なわれていたものと推測される。

 このようにデベロッパー、報道関係者の期待が溢れるなか、開始予定の午前10時を5分ほどまわって、米Appleのスティーブ・ジョブズCEOがステージへと登場した。ジョブズCEOによれば今年の参加者は5,200人。つまりこれが現在のWWDCにおける定員ということになる。昨年は5,000人超とコメントされていたが、今回はチケット完売によって参加を見送ったデベロッパーもいることから、潜在的には1〜2割増しといったところだろう。

 WWDC 2008の期間中に開催される総セッション数は147セッション。Mac関連が85でiPhone関連が62とのこと。わずか1年でiPhoneがMac OSに肩を並べるプラットフォームへと成長しつつあることが伺える。そのほかハンズオンラボの設置と、会場内には1,000人のもAppleのエンジニアが訪れていることを告げ、充実した1週間を過ごして欲しいと参加したデベロッパーにメッセージを送った。

 最初にジョブズCEOは、三本足のスツールのスライドを示し、Appleを支える3つの部分と紹介した。それぞれMac、Music(iPod + iTunes)、そして3番目がiPhoneだという。以前はAppleTVがその1つに数えられることがあったが、今回は特に言及されなかった。そしてこの日のスピーカーとして、3人の上級副社長を紹介した。1人目は先日iPhone Software担当の上級副社長に就任したScott Forstall氏。同氏はここ数年のWWDCにおいてはジョブズCEOと一緒にLeopardのデモを行なうなど、プレゼンテーションの機会が増えている。ほか、お馴染みのプロダクトマーケティング担当Phil Schiller上級副社長、OS X担当Bertrand Serlet上級副社長が紹介された。

Mac関連が85、iPhone関連が62で総計147セッションのほか、ハンズオンラボも提供される。来場しているAppleのエンジニアにはテクニカルな質問もできるほか、開発資金を得るためのiFundやIntelのセッションも開催される 現在のAppleを支える3つの要素としてスライドに使われた三本足のスツール。それぞれMac、Music(iPod + iTunes)、そして3番目がiPhoneだという 同日の講演者の1人として紹介されたOS X Software担当のBertrand Serlet上級副社長。ただし基調講演には登場せず、午後のセッションでデベロッパー向けに次期Mac OS Xとなる「Snow Leopard(雪豹)」を説明したらしい

 Mac OS Xに関しては、この時点でジョブズCEOの口から次期バージョンのコードネーム「Snow Leopard(雪豹)」が明らかにされた。ジョブズCEOのコメントでは「あとで、Serlet副社長がデモを行なう」ということだっだ。しかし基調講演を終えてみれば講演内では「Snow Leopard(雪豹)」に関する紹介はなく、「あとで」という言葉は、『このあとのセッションで』を意味することが分かった。残念ながら、基調講演以外のセッションで公開される内容はNDA(Non Disclosure Agreement:機密保持契約)に抵触するため、本稿ではコードネーム以上の情報をお伝えすることができない。その後、Appleからニュースリリースが出されて1年後の完成を目指すことや、大幅な新機能の追加は見送って基盤の充実が中心になることなどが文書で明らかにされた。このリリース文がベースとはなるが、「Snow Leopard」については別途お伝えする機会をもちたい。

●iPhone 2.0アップデートの3つのポイント

 iPhoneのソフトウェアは2.0にバージョンアップする。同日発表された製品がiPhone 3Gということで数字的には混乱するかもしれないが、この2.0は搭載されるOSのバージョンを意味している。ちなみに現行のiPhone(とiPod touch)には、1.1.xというバージョンが搭載されており、そのメジャーアップグレードにあたる。

 2.0では「企業向け機能のサポート、iPhone SDKの提供、そして新機能追加の3つが重要なポイントになる」とジョブズCEOは説明した。3月6日から行なわれているiPhone SDKのβリリースは、95日間で25万ダウンロードを記録。有料のβプログラム(登録によりiPhoneにインストールできる2.0ソフトウェアのβ版が提供される)には25,000件の登録申請があり、現時点で4,000件が登録済みと明らかにした。

 このβプログラムに参加している企業はFortune誌による500のトップ企業のなかの35%を占め、銀行の上位5社すべて、セキュリティ関連上位5社すべて、航空会社の上位7社中の6社、製薬会社、エンターテインメント系企業それぞれ上位10社中の8社が含まれているとし、iPhoneに対しての特に企業からのニーズの高さとそれに応える姿勢を明確にした。

 企業向け機能はMicrosoft Exchange Serverに対応し、プッシュ式のメール、カレンダー、コンタクト、グローバルアドレスリスト機能などをサポート。セキュリティ部分でもCiscoとの連携で、IPsec VPNなど企業が求めるあらゆるセキュリティ要素に対応するという。

 iPhone SDKの詳細に関しては、Scott Forstall上級副社長へとバトンタッチ。提供されるSDKではすべてのAPIが公開されて、Apple社純正のiPhoneアプリケーションと同等のものが開発可能だという。そして、APIやフレームワーク、そしてカーネルなど多くの部分が、OS XとしてMac OS X Leopardとの共通要素が多いことをあげ、現在の開発スキルやノウハウがiPhone向けアプリケーションの開発に生かせる点を強調した。

 同氏は提供されているSDKから、Xcode、Interface Builderなどを紹介。Mac OS Xで動作するiPhoneシミュレータや、パフォーマンス解析ツールなども、自らの手で実際にデモを行なって見せた。

iPhone 2.0の3つの強化ポイント Furtune誌によるTop500に含まれる企業の35%が、iPhone SDKのβプログラムに登録済み 企業ユースで求められる機能をすべて網羅
iPhone SDKの詳細はScott Forstall上級副社長によって紹介とデモンストレーションが行なわれた OS X Leopardとの共通要素が多く、蓄積されたノウハウが生かせる iPhone SDKに含まれる開発用のiPhoneシミュレータを使ってデモ

 そして実際にiPhone SDKを使って開発されたサードパーティ製のiPhone向けタイトルの数々を紹介。基調講演で紹介されたのは11社12タイトルにもなった。それぞれの開発者が壇上へあがり、直接デモを披露している。これらのデモにはおおよそ30分が費やされた。

 最初に登場したのはSEGA。iPhoneに搭載されている加速度センサーを使って本体を傾けて操作する「Super Monkey Ball(スーパーモンキーボール)」を移植した。説明にあたったEthan Einhom氏によれば「SDKの公開直後に手探りの2週間ほどで4ステージを仕上げ、それから8週間ほどで100ステージ余りが完成に至った」と、開発のしやすさを代弁した。App Storeのローンチにあわせて、9.99ドルでダウンロード販売される。

「Super Monkey Ball(スーパーモンキーボール)」

 続いてはeBay。商品検索やマイリストの管理、入札も簡単に行なえるという。ローンチにあわせて無償で提供される予定。また、looptは位置情報を使ったソーシャルネットワークサービスを提供。今、自分の近くにいる友人を把握し、合流や待ち合わせなどの利便性を高める。無償提供。

eBay loopt

 ブログ大手Six ApartはTypePadのブログ投稿、管理アプリケーションを開発。AP通信(Associated Press)は、同社の配信するニュース映像、記事を簡単に見ることができるアプリケーションを開発した、いずれも無償で提供されるという。

TypePad Associated Press

 2タイトルを紹介したのはPangea。ちょうど10年前、初代iMacにバンドルされていた3Dゲーム「Dinasar」を覚えている人もいるだろう。その開発会社がiPhoneにも、ゲームアプリケーションを提供する。1つは滴る水を反射させ、目的のツボへと導くパズルゲーム、もう1つは原始時代のカーレースで、こちらは昔遊んだことがあるというユーザーもいるかも知れない。いずれもコントロールは、iPhone本体を傾けて操作する。

Pangea Software

 CowMusicの音楽ソフト。数種類の楽器をiPhoneにタッチする操作で演奏することができる。ベース演奏では弦の微妙な動きなども再現され、会場は大盛り上がりだった。

Cow Music

 MLB.comは、米大リーグの公式サイト。試合状況やハイライト映像などに簡単にアクセルできるアプリケーションを開発した。無償提供となる。医療関連のデータサービスは2社。MADALITY、MMvistaがそれぞれのアプリケーションを紹介した。

MLB.com MADALITY MMvista

 最後もゲームアプリケーション。スペインの開発会社、DIGITAL LEGEND Entertainmtはヒロイックなアクションゲームを披露。本体を傾けて操作する仕組みで、主人公の移動や剣を振るうなどのアクションを行っている。内容に加えて操作のやり方にも興味が惹かれるアプリケーションになりそうだ。9月頃に提供が開始されるという。

DIGITAL LEGEND Entertainmt

 いずれの会社も、コメントに「開発の容易さ(開発期間の短さ)」をあげ、iPhone SDKが既存の開発ノウハウや資産を有効に利用できるという点を強調していた。

 11社12タイトルのデモが終わると、Scott Forstall氏がステージへと戻った。そして現在のSDKには含まれていないものの、リクエストが最も多いという機能について言及した。それはインスタントメッセンジャーなどに代表されるアプリケーションの待機状態が必要なアプリケーションへの対応である。

 これについて同氏は、Windows Mobileのタスクマネージャ画面を引き合いに出し、バックグラウンドで動き続けるプロセスがいくつもあることを「(iPhoneのようなポータブルデバイスには)馬鹿げた手段」と断じた。これでは、常時CPUとバッテリを消費し続けているという。

 解決手段として提示したのは、Appleが提供するPush式のNotificationサービス。Appleが用意する単一のサーバーとのみ、エンドユーザーはIP接続を維持し、サードパーティはそれを介してNotificationをエンドユーザーへと送る。これによって多数のプロセスが同時にバックグラウンドで動作したりすることなく、CPU負荷の軽減やバッテリ持続時間にも貢献するという。近日中にSDKをアップデートし9月頃には実際に稼働する予定になっているという。

バックグラウンドに常駐するプロセスが多数あるのは非効率的で馬鹿げた手段 Appleが一元的にNotificationを管理する仕組みを9月に実施予定 Push式のNotificationサービスの提供でバッテリ持続時間の延長やCPU負荷の減少に対応

●既存ユーザーに向けて7月11日には2.0を提供。同時にApp Storeも開始見込み

 ジョブズCEOが再びステージに戻ってiPhone 2.0ソフトウェアについての3番目のポイント、新機能の追加について説明した。まず、コンタクトリストにサーチ機能が追加されること。iTunes StoreやLeopardのサーチ機能と同様に、インクリメンタルサーチに対応する。続いて、各種ドキュメントのサポート。意外にもこれまでは同社のiWork形式のドキュメントはiPhone上で表示することができなかったのだが、2.0からは晴れて、Pages、Numbers、Keynoteのドキュメントを参照することができるようになる。Microsoft Officeについても、従来のWord、Excelに加えてPowerPointの表示がサポートされた。

 また、これまではメールなどの移動や削除は1つ1つ行なう必要があったのだが、2.0からは複数を選択して同時に処理を行なうことが出来るようになる。さらに、メールなどに添付されている写真を、簡単に自分の写真リストに加えることが出来る。さらに、iPhoneにペアレンタルコントロールも追加される。

 また開発者が集まるWWDCの会場ならではという感じで思わぬ歓声があがったのは、電卓機能の強化。縦位置で使うシンプルなスタイルもメモリ機能などの強化が加えられているが、新たに横位置のモードを搭載。横位置にすれば関数電卓に早変わりとういうことで、ここはデベロッパーとしての血が騒ぐ要素なようである。

一部キーワードの入力で一致するリストを表示可能なコンタクトサーチ iWorkのNumbers形式ファイルもiPhone上で参照することができるようになる メールなど、複数項目の同時選択と移動、削除などにも対応
メールに添付された写真などを簡単に自分のアルバムに追加 電卓もメモリー機能などを追加してバージョンアップ プログラマの血が騒ぐ関数電卓。意外? な歓声が会場から巻き起こった

既存のiPhoneユーザーは、7月11日に無償で2.0にアップデートできる。iPod tuochは9.95ドルでの有償アップデートとなる

 2.0では多言語対応がさらに進む。現行の1.1.xでもローマ字かなによる推測変換で日本語の入力は可能だったが、新たに日本の携帯ユーザーにはお馴染みの10キースタイルでの文字入力が実現する。通常の携帯に比べても個々のボタンは大きめに設定されているので、タッチパネル形式とはいえミスタッチはそれほどないものと思われる。また手書き入力による漢字の入力も紹介されたが、これは中国語モード専用ということで日本語入力では手書き入力はサポートされない模様だ。スライドで紹介されなかった言語も含め、2.0では全部で16言語に対応する。

 こうした新機能が含まれる2.0に、既存のiPhoneユーザーは無償でアップデートできる。iPod touchのアップデートは有償となり、米国では9.95ドル。国内のiPod touchユーザー向けの価格は現時点では発表されていないが、米国とほぼ同程度と予測される。

 アップデート時期はこの時点で7月の初旬とコメントされていたが、講演の終盤でiPhone 3Gの発売日が7月11日と明らかにされたことで、ニュースリリースなどではアップデート日時が同じ7月11日と表記されている。この日はApp Storeのローンチ日にもあたり、リリース情報などによればiTunesもバージョン7.7へ更新される見込みだ。

 ジョブズCEOはiPhoneの2.0更新のまとめとして、App Storeによるアプリケーションの配布、企業向けの機能の追加、多言語対応などのメリットを強調し、デベロッパーに対して更なるiPhone向けアプリケーションの開発を呼びかけた。

多言語対応。キリル文字(ロシア語)の入力パッド 日本語入力は国産携帯でお馴染みの10キー形式を採用 中国語は漢字の手書き入力に対応。今回紹介されなかった物も含めて、16言語に対応する
7月11日にはiTunes 7.7が登場して開始の運びになると思われるApp Storeの仕組み。価格はデベロッパーが任意に設定でき、デベロッパーの取り分が7割。無償ソフトの配信も可能。音楽と同じFairPlayのDRMでユーザー管理を行なう アプリケーションはiPhone単体でダウンロード可能。ただし、10MBまでのアプリケーションは、データ通信でも対応するが、10MBを超えた場合、Wi-Fi接続時かあるいはiTunesを介してのダウンロードが必要 アプリケーションの管理はiTunes上で行ない、必要に応じてiPhoneにインストールしておくアプリケーションを設定することが出来る。こうした管理方法は、音楽や映像ファイルと同様で、iTunesユーザーには分かりやすい

□Appleのホームページ(英文)
http://www.apple.com/
□WWDC 2008のホームページ
http://developer.apple.com/jp/wwdc/
□関連記事
【6月10日】【WWDC】iPhone 3Gを7月11日に世界同時発売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0610/wwdc01.htm

(2008年6月11日)

[Reported by 矢作晃]

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