アップルのシェアが首都圏以外の地域で上昇し始めている。以前、本コラムでMacのシェアが、首都圏で上昇しはじめていることをレポートしたが、その傾向が、他の大都市圏へと少しずつ波及しはじめているのである。 とくに、ここにきて、iPodの動きが顕著なのだ。 全国の量販店のPOSデータを集計しているBCNによると、首都圏におけるiPodの販売台数は、今年(2008年)に入ってから前年同月比90%台で推移している。首都圏においては、iPodのみならず、携帯オーディオプレーヤー全体が前年割れとなっており、iPodの落ち込みは、それに比べると減少幅は少ない。 それに対して、同社の集計カテゴリーで、大阪圏、名古屋圏とする関西、東海でのiPodの伸張は目覚ましい。 大阪圏における今年4月の携帯オーディオプレーヤー全体の伸び率は、前年同月比3.5%増。中でも、アップルは26.1%増と高い成長率となっている。名古屋圏では、市場全体が3.4%減のマイナス成長であるのに対して、アップルは17.3%増と、メーカーとしては唯一プラス成長となっている。 同様に、東京、名古屋、大阪を除いたその他地域においても、携帯オーディオプレーヤーが1.4%減であるのに対して、アップルは19.7%増となっているのだ。 トップシェアのiPodがこれだけ高い成長を遂げているということは、他社との差をさらに広げたということになる。 【表1】2008年1月~4月(月次)
携帯オーディオ エリア、メーカー別販売台数前年同期比推移
●PC分野では高い成長率が目立つ 一方、PCの領域においては、以前レポートしたような、首都圏のデスクトップ市場において、1位に躍進するといった動きはまだ見られておらず、順位は5~6位に甘んじている。だが、成長率という点では、特筆できるものがある。 4月の実績を見てみると、大阪圏では、PC市場が7.3%増であるのに対して、Macは96.6%増。名古屋圏では市場全体が3.6%増であるのに対して40.2%増となっている。その他地域でも、PC全体が前年並みとなっているのに対して、Macは77.6%増と、いずれも2桁増の極めて大きな成長を遂げているのだ。 【表2】2008年1月~4月(月次) PC(デスクトップ+ノート) エリア、メーカー別販売台数前年同期比推移
●売り場を拡張する名古屋の量販店 実際、首都圏以外の動きを確かめるべく、名古屋を訪れてみた。 最初に訪れたのが、JR名古屋駅前にあるビックカメラ名古屋駅西店だ。同店では、4月25日からMac売り場の拡充に乗り出し、約2,300種類に及ぶMacおよびiPod関連製品の展示を行なっていた。 2階オーディオ売り場は、iPodのコーナーを50平方mの売り場に拡充。さらに、4階のMacコーナーも、従来の2倍となる120平方mへと拡大したのだ。
ビックカメラ名古屋駅西店の植田忍副店長は、「昨年(2007年)後半からiPodの売れ行きが明らかに上昇してきた。売り場を拡充することで、さらに販売を加速できると判断し、今回のリニューアルに踏み出した」と語る。 iPod本体の展示数を増やすとともに、iPod対応スピーカーやケースなどの周辺機器の展示を強化。iPodユーザーの購入選択肢を広げるととも、リピーターが訪れやすい売り場とした。 「他社の携帯オーディオプレーヤーは、20~30代が中心だが、iPodは、老若男女を問わず、幅広いユーザーを獲得している。ここにきて、50代の購入者も増加しはじめている。また、買い換え、買い増しといった購入も増加しており、iPodユーザーの広がりを感じる」と語る。 4階のMac売り場についても、エスカレータ横という好立地にコーナーを設置していることから、同店がMacに力を入れていることがわかる。Windows PCの売り場に行くには、必ず横目でMacを見ながら売り場に向かわなくてはならないからだ。 しかも、手前側にiPodを置き、その先に話題のMacBook Air、そして、BootCampによるMacでのWindows環境のデモ、そして、一番奥には、Mac Proをはじめとするよりプロフェッショナルな機器というように、ユーザーにとって身近に感じるもの、興味があるものから、エスカレータ寄りに配置していることも見逃せない。 「Windowsユーザーが、Macに興味を持ち始めているのは事実。Macの展示スペースを拡大することで、魅力を訴求できる環境を整えれば、さらにMacの販売は増加するだろう」と、植田副店長は語る。 今年夏には、Mac売り場で独自セミナーなどを開催することで、より訴求を高めていく考えだという。
●名古屋のアップルストアでも販売が増加 ビックカメラ名古屋駅西店に続いて訪れたのが、アップルストア名古屋栄だ。 平日にも関わらず、多くの来店客が訪れていることを見ても、MacおよびiPodが注目を集めていることがわかる。 アップルでは、アップルストアの販売実績について、具体的な数値を明らかにしていないが、アップルストア限定で発売したご当地iPodケースは、名古屋の店舗が、最も早く初期出荷分が売り切れたという。 さらに、名古屋栄店が、iPodの売れ行きや、Macの売れ行きについてアップルストアのなかでも高い成長率を達成しているようだ。 名古屋では、地元紙の中日新聞が、中日スポーツ「電子号外版」を、iPod touch向け専用に情報配信するという試験的な取り組みも行なっており、こうした動きもiPodの認知度向上に影響しているといえそうだ。
●大阪でも音楽を切り口に情報発信力高める 一方、大阪では、ゴールデンウィーク中に、アップルストア心斎橋で音楽を中心としたイベントを積極的に開催。「大阪を1つの発信基地として、全国規模でのiPod、iTunesによる音楽利用を訴求していく手法を展開した」とアップルでは説明する。 アップルストア心斎橋では、地元インディーズバンドと連携した取り組みを積極的に展開しており、こうした活動も、関西におけるiPodの需要拡大につながっているようだ。 アップルストア以外でも、関西地区の店舗において、Macコーナーの拡大に乗り出すといった動きがあり、名古屋同様に、アップル製品の売れ行きが加速しているという。 アップルでは、今後、アップルストアが出店している地域に加え、AppleShopと呼ばれる量販店と協業した、ショップインショップ形式のアップル専用売り場を増やすことで、首都圏以外でのiPodおよびMacの販売拡大に乗り出す考えを示している。 今後、iPodやMacが、首都圏以外でどんな売れ行きを見せるのか。首都圏以外の地域でも、徐々に存在感を増していることは確かなようだ。 □関連記事 (2008年5月30日) [Text by 大河原克行]
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