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フリースケール、中部圏の自動車向け技術拠点を強化

説明にあたったフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの幹部。左から代表取締役社長の高橋恒雄氏(米国本社のシニアバイスプレジデントを兼務)、オートモーティブセールス&マーケティング本部ジェネラルマネージャーの林章氏、技術本部本部長の友部昭夫氏

5月19日 発表



 フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン株式会社は19日、名古屋市内で記者説明会を開催し、中部圏における自動車分野向け技術拠点の強化策を発表した。新しい世代のアナログ半導体に対応した検査装置と、マイコンの不良解析用検証設備を導入するとともに、世界標準に準拠したマイコンシステムの開発を支援する。

 フリースケールは自動車分野に非常に力を入れており、2005年3月には外国系半導体ベンダーとして初めて、自動車用半導体の信頼性品質保証を担当する拠点「名古屋品質・テストセンター」を愛知県安城市に設立していた。出荷先(顧客)で自動車用半導体に不具合が生じたときに、解析を迅速に進めるためである。具体的には、不具合が生じた半導体チップを受け取ってから「2時間以内」にテスターによる解析結果を顧客に報告し、「2日以内」に生産工場における製造ロットの状況を報告し、「2週間以内」に不具合の発生原因を報告する、「2-2-2」と呼ぶ体制の構築を目指した。

 「名古屋品質・テストセンター」を設立した効果はきわめて大きく、2005年~2008年の間に中部圏におけるフリースケールの自動車用半導体の売上高は3倍に拡大したという。事業規模の急激な拡大によって顧客サポート体制を強化する必要が生じ、今回の拡張決定へと至った。

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの概要。米国Freescale Semiconductorの日本法人である。Freescaleは、Motorolaの半導体部門が独立した半導体ベンダー フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの拠点一覧。仙台に半導体設計の拠点、名古屋に信頼性品質保証の拠点を有する

 「名古屋品質・テストセンター」の拡張内容は大きく2つある。まず、新しい世代のアナログデジタル(ミックスドシグナル)半導体プロセスに対応したテスターを導入する。従来は1Kゲートと小規模なロジックを混載したミックスドシグナル半導体用のテスターしかなかったが、今回は100Kゲートと大規模なロジックを混載したミックスドシグナル半導体に対応したテスターを設置する。

 2つ目として、マイクロコントローラ(マイコン)の不良解析を目的とした検証設備を設ける。不良解析専用のボードを用意した。不具合が生じたマイコンをこのボードにソケット経由で装着し、ソフトウエアを動かすことで不具合の再現を試みる。恒温槽を使用して不具合が発生した温度環境を再現することもできる。従来は仙台の設計拠点でこの工程を実施していた。顧客の工場に近い名古屋地区で不良解析の初期工程を実施することにより、顧客に解析状況を報告するまでの期間を短縮できる。

「名古屋品質・テストセンター」の拡張内容。なお文面で「初期不良解析」とあるのは「初期不良」のことではなく、「不良解析の初期工程」の意味なので注意されたい 「名古屋品質・テストセンター」の外観。豊通物流株式会社敷地内(愛知県安城市)の建屋を借りている 「名古屋品質・テストセンター」の内部。今回の拡張により、人員と床面積をともに2倍に増やす

 さらに、世界標準に準拠した車載用マイコンシステムの開発を支援する拠点「オートモーティブ・コンピタンス・センター」を5月19日付けで開設した。デュアルコアのマイコンを活用し、機能安全の国際規格「IEC-61508」に準拠したマイコンシステムのリファレンス設計を開発する。また車載マイコン用ソフトウエアの標準規格策定団体「AUTOSAR(AUTomotive Open System ARchitecture)」が定めた技術仕様に準拠したソフトウエアの実装と評価、検証を実施する。いずれもシャーシ制御用とエアバッグ制御用のシステムを想定した。

「オートモーティブ・コンピタンス・センター」を開設した背景。自動車の電子化と安全性を両立させるために、機能によって安全性を高める「機能安全」の考え方が採用されるようになってきた。また自動車の電子化が進んで車載用マイコンが搭載するソフトウエアの規模が膨大になり、ソフトウエア開発の負担が極めて重くなってきた。そこで自動車業界のコンソーシアム「AUTOSAR」が、ハードウエアに依存せずにアプリケーションを流用できるソフトウエア開発環境を構築してきた 「オートモーティブ・コンピタンス・センター」の2008年度における活動内容。機能安全の実装には、デュアルコアのマイコンの活用を考えている。例えば1個のCPUコアをアプリケーション実行用に、もう1個のCPUコアをテスト用に使う。また「AUTOSAR」に準拠し、CMM(Capability Maturity Model)レベル3のソフトウエアスタックを供給する

□フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンのホームページ
http://www.freescale.co.jp/
□AUTOSARのホームページ(英文)
http://www.autosar.org/
□IEC 61508(機能安全)のホームページ(英文)
http://www.iec.ch/zone/fsafety/fsafety_entry.htm
□関連記事
【2007年9月14日】【FTFJ】PCから携帯電話、そして自動車へ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0914/freescale.htm
【2006年4月5日】フリースケール、関西地区の事業を強化
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0405/freescale.htm

(2008年5月20日)

[Reported by 福田昭]

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