フリースケール・テクノロジ・フォーラム・ジャパン2007レポート PCから携帯電話、そして自動車へ9月12日 開催 米国の大手半導体ベンダーであるFreescale Semiconductorの日本法人フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは顧客向けの講演会兼展示会「フリースケール・テクノロジ・フォーラム・ジャパン2007(FTFJ2007)」を9月12日に東京の目黒雅叙園で開催した。 フリースケールが日本で顧客向けの講演会を開催するのは、今年で4回目である。昨年(2006年)のFTFJ2006と同様、午前中のジェネラル・セッションでいくつかの基調講演が組まれ、午後には技術講演(テクニカル・セッション)が分野別に並行して開催されるというスケジュールだった。また「ワークショップ」と呼ぶ実技講習会と、「テクノロジ・ラボ」と呼ぶ展示会が同時に催された。 ジェネラル・セッションではまず、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの代表取締役社長を務める高橋恒雄氏がオープニング・スピーチとして挨拶し、フリースケールの最近の状況を説明した。フリースケールは米国Motorolaの半導体部門が独立して2004年に誕生した。発足後すぐに上場し、ほどなくMotorolaとの資本関係を完全に解消した(Motorolaが持ち株をすべて売却した)。ところが2006年9月に、投資ファンドによる買収にフリースケールの経営陣が合意し、2006年12月にはフリースケールは非上場企業となった。高橋社長はこのような経緯を簡単に振り返った後、最近のトピックスに触れた。
オープニング・スピーチに続き、Freescale本社で最高技術責任者(CTO:Chief Technology Officer)を務めるLisa T. Su博士が基調講演を行なった。フリースケールの技術と製品、ソリューションに関する方向性をまとめた講演である。 技術面ではまず、「ムーアの法則」に沿う軸と、「ムーアの法則」を超える軸の2つの軸に沿って技術開発を進めることを示した。「ムーアの法則」に沿う軸では、微細化を進めてシステムオンチップ(SoC:system-on-chip)の集積度を挙げていく。「ムーアの法則」を超える軸では、アナログ/RF、受動部品、高電圧/パワー、センサー/アクチュエータ、バイオチップといった既存のCMOS半導体と異なるデバイスの開発を進め、システムインパッケージ(SiP:system-in-package)の形でCMOS半導体と同じパッケージ内にまとめる。
マルチコア技術に関しては、SoCや大規模マイクロコントローラなどの消費電力を抑制しつつ性能をさらに高めるには、CPUコアの数を増やすだけでは不十分だとの見解を示した。消費電力の増加を抑えるには、ハードウエア・アクセラレータの活用が欠かせない。暗号化処理やパターン・マッチングなどのアルゴリズムが固定した処理は、アクセラレータに処理させた方が合理的だとの考え方である。
次に高橋社長が、フリースケールが提供しているソリューションの実例を紹介した。昨年のFTFJと同様、製品グループごとのジェネラル マネージャーが順番に登壇し、フリースケールの半導体製品が応用分野にどのように貢献しているかを高橋社長に説明するスタイルである。 まず背景説明として、コンピュータと携帯電話機が急速に進化かつ普及してきたことを高橋社長が示した。PCの(CPUクロック周波数×HDD容量×メモリ容量×インターネット契約数)/(本体価格)は、2005年までの20年間に10の13乗倍に増えた。携帯電話機の(加入者数×通信速度×メモリ容量)/(端末価格)は、この10年に1,000万倍(10の7乗倍)に急増したとする。そして今後は、自動車が急激に進化/普及することを示唆した。
そして自動車担当(オートモーティブグループ)のジェネラル マネージャーである林章氏が、自動車(リッターカー)のエンジン(実物)を台車で運びながら登場した。自動車には現在、燃費のさらなる低減が厳しく求められている。排気ガスをなるべく削減することで、地球温暖化に与える影響を軽減するためだ。
燃費を下げる手法は大別すると、車体の軽量化と高効率エンジンの開発に分かれる。林氏はまず、フリースケールの半導体リレー「eSwitch」によって従来のリレーやヒューズなどを置き換えることで、車体の軽量化に貢献できることを示した。一般的な自動車のワイヤーハーネスは総重量が40kgにもなる。「eSwitch」を活用すれば、総重量の約3割、12kg相当を削減できるという。講演では実際に「eSwitch」を使い、エンジンを始動させてみせた。リッターカーのエンジンをスタートさせるには、おおよそ200Aの電流が必要だという。実演には60Aを流せる「eSwitch」を4個、使用した。 高効率エンジン向けには、タイミング制御専用コプロセッサ「eTPU」を内蔵した32bitマイクロコントローラを披露した。「eTPU」はエンジンの燃料噴射タイミングや点火タイミングを制御するので、エンジン制御におけるメインプロセッサの負荷が大幅に減少する。この結果、燃料噴射量の精密な計算やオートマチック・トランスミッションとエンジンの協調制御などにメインプロセッサのリソースを割り当てられるようになる。
続いて、ネットワークインフラ担当(ネットワーク&CEコンソールグループ)のジェネラル マネージャーである伊南恒志氏が登場し、PowerアーキテクチャのCPUコアを最大で32個と数多く内蔵できる組み込み用プラットフォーム(SoC)を紹介した。CPUコアの動作周波数は最大1.5GHzと高い。バスではなく、スイッチド・ファブリックによって各CPUコアを高速に接続する。
それからワイヤレス担当(ワイヤレスグループ)のジェネラル マネージャーである友眞衛氏が、携帯無線端末や家電機器などに向けたリファレンス・デザインを披露した。ウィルコムのPHS端末向けリファレンス・デザインや、DLNA(Digital Living Network Alliance)対応機器向けリファレンス・デザインなどである。
最後にコンシューマ担当(CEポータブル・グループ)のジェネラル マネージャーである薄井明英氏が、新たなUIの事例を紹介した。電界センサー(E-Fieldセンサー)を利用した非接触タッチパネルと、無線通信方式による家電用リモコンである。
□フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンのホームページ (2007年9月14日) [Reported by 福田昭]
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