フル有機LEDキーボード「Optimus Maximus」ソフトウェアレビュー発売中 前回のハードウェアレビューに続き、このキーボードの表示を制御/設定するユーティリティ「Optimus Maximus Configurator」について見てみる。 ●あらゆる画像から動画まで表示可能 このキーボードはSDカードスロットを装備し、付属のSDカードに104英語キーボードのプロファイルが入っている。そのため、ユーティリティをインストールしなくても104キーボードとして動作するし、PCにUSB接続していなくても全てのキーが表示される。 Configuratorをインストールすると、OSの起動時に自動的に立ち上がり、SDカード内のプロファイルに代わって、ユーティリティの設定情報がキーボードに送られる。例えば、SDカードの標準プロファイルではスペースキーに男性の肖像画が表示されるが、Configuratorが立ち上がると、こちらの標準プロファイルにより、スペースキーにはアニメーションするアナログ時計が表示されるといった具合だ。 Configuratorは、OSのキーボード情報を自動的に読み込むので、Windows Vistaならコントロールパネルの「地域と言語のオプション」で、「キーボードの変更」をクリックし、入力言語用サービスを追加すれば、Configuratorにも同じキーボードレイアウト情報が追加される。入力言語の切替ホットキーを指定していれば、ワンタッチで好きな入力言語に変更できる。日本のユーザーで英語、日本語以外の言語を使う人は稀だろうが、たまに遊ぶのにはおもしろい。
これらの入力言語ごとのキーレイアウトと各種ファンクションキー/ホットキーのレイアウトは基本的に上書き不能になっている。ただし、文字キーの背景色、文字色、フォントの種類やサイズは自由に変更できる。
文字の代わりに画像を表示したい、キーの割り当てを変えたい、という場合は、ユーザーレイヤーを追加する。レイヤーは上にあるものほど優先度が高く、ユーザーレイヤーは常に標準レイヤーより優先される。複数のレイヤーを作成した場合は、レイヤーをドラッグして順番を変更できる。 ユーザーレイヤーは、常時有効にする以外に、アプリケーションが起動あるいは最前面にある、Shift/Ctrl/Altを押下、入力言語、Caps/Num/Scrl Lockを押下を条件に有効にする指定ができるので、例えばブラウザを起動した時だけ有効なレイヤーといったものを作成できる。ちなみに、Lockキーの選択肢には「かな」も表示されるが、104キーボードには存在しないキーなので意味がない。
画面右側にはOptimus Maximusの図柄が表示されており、各キーをクリックするとキープロパティのエディットモードになる。ここでは各キーの表示と機能を割り当てられる。 表示については、画像の表示、時計の表示、Gmailの受信通知アイコン、システムモニタ、動画の表示を選択できる。画像と動画については、Windowsが扱える主立ったものなら表示できるようだ。MP4動画も特殊な設定などをしなくても再生できたほか、ローカルファイル以外にも、MMSプロトコルによるストリーミングの表示までできてしまう。ただし、選択肢にはあるものの、アニメーションGIFは静止画でしか表示されない。 ここで注意したいのは、動画を表示させると、普通にMedia Playerなどで再生させたのと同じ負荷がPCにかかるということだ。キーボードに対して動画の生データがそのまま送信されているのかは分からないが、キーボード上では48×48ドットで表示されていても、バックグラウンドではもともとの動画がデコードされている。理論上は113個のキー全てに異なる動画を表示させた、ど派手キーボードも可能だが、そこに行き着く前にPCがパンクしてしまう。 画像については、キーに個別に画像を指定する以外に、キーボード全面をキャンパスにして1枚の絵を貼り付けることもできる。具体的には、レイヤーを選択して、「Paint」ボタンを押し、画像編集ソフトを起動させると、キーボードの絵が表示されるので、手書きで絵を描いたり、大きな画像を貼り付けたりして上書き保存すると、それがそのままに表示される。ただ、実際のキーボードのキーの間隔が、画面に表示されるキーの間隔より広いため、ややばらばらな絵になってしまう。
というわけで、適当にカスタマイズに挑戦してみて思ったのだが、タッチタイプができる人であれば、文字表示にしておく必要はない。どうせやるなら文字のフォントを変えたり、色をつけたりするだけではなく、全てのキーを画像にして、唯一無二のキーボードにしてしまうのがいいのではないかということだ。 なにやら世間では「痛モノ」が流行っていたりするようなので、20万円の萌えキャラ痛キーボードというのも、豪快さすら感じられると思う。各レイヤーはチェックボックスをクリックすることで、有効/無効を切り替えられるので、7パターン作っておいて、日替わりで変えてみるのもいいだろう。 タッチタイプができない場合、その練習用に覚えたキーから表示を消したり、別の画像に変えるのもいいかもしれない。「あれ? これは何のキーだっけ?」という時は、ScrlLockキーを押すと、ちゃんと文字が表示されるようなレイヤーを用意しておけば、大丈夫だ。
なお、Mac版ユーティリティの機能もWindowsとほぼ同じだが、これらに加え、表示内容に「テキスト」や「現在の言語」というのがある。現在の言語は、そこを見るまでもなく、文字が全部変わっているので、普段は有用ではないが、(そんなユーザーがいるのかという話はさておき)、マルチランゲージで表示は全部絵にしているようなユーザーなら使えるといったところか。テキストの方は、文字数に特に制限はなく、フォントサイズも変更できるので、複数行のアスキーアートも表示でき、おもしろく使えそうだ。 画像の表示を選択した場合、そのキーを押下した際のアクションも設定できる。具体的には、何もしない、規定のキーの押下、メディア操作、任意のキーの押下がある。規定のキーというのは、Aのキーならそこにどんな画像を表示させていても、押すとAが入力される。メディア操作は曲の再生や頭出しの操作だ。アプリケーションのパスを指定して、起動させることもできる。 任意のキーをクリックすると、キーの割り当て変更ができる。これは文字だけでなく、ファンクションキーなども自由に変更でき、Shiftキーの位置を変えたり、Windowsキーをなくすこともできる。ただし、割り当てを行なう際は、画面に表示される英語配列のソフトキーボードから選択するため、ここに表示されるキーにしか変更できない。例えば、あるキーに「(」を割り当てたくても、それはできない。 もう1つ、画面上には表示されているのだが、キーシーケンスの割り当てはグレーアウトされていて選択できない。これができると、特定のアプリケーションのショートカットキーを割り当てて、アイコンもそれにあったものにすることができるのだが、今後のユーティリティのバージョンアップを待つしかない。
●ファームウェアに大きな問題 このほかにも、このユーティリティはまだ完成度が低い点が散見される。特に使いやすさの点で、設定を行なうのに一度別のレイヤーを表示させないと操作できなかったり、キーをクリックすると強制的に設定がリセットされたり、アイドル時にディスプレイをOFFにするまでの時間が正確でない(1時間にしても3分で消えるといった具合)という問題がある。ちなみに、これは仕様なのだが、アイドル時間が経過すると表示を消すようにしていない場合、PC本体の電源を切っても、キーボードは点きっぱなしになってしまう。 これはもしかしたら、使い方が分かっていないだけなのかもしれないが、現在のレイアウトをSDカードに保存する機能が使えなかった。これができると、表示速度と対応OSという2つの問題が改善される可能性がある。 表示速度というのは、キーが押されるなどトリガーが発生して、ディスプレイの表示が変更されるまでの時間のこと。例えば、Shiftキーを押して、大文字が表示されるまで1秒近くかかる。これは、トリガーが発生するたびに、新しい画像のデータをキーボードに送っているからだと思われる。 前述の通り、本体内のSDカードにも標準のレイアウトデータが画像とともに納められている。Configuratorを使わずに、本製品をPCにつなぐと、このデータが利用されるので、USB経由でデータを転送する必要がなくなる。実際、この状態では瞬時に画像が切り替わる。 対応OSの問題というのは、一度WindowsかMacにつないでレイヤーを作成し、これをSDカードに保存できれば、対応していないOSのマシンでも、Shiftキーを押した時の画像の変更や、レイアウトの変更といった基本的な機能が利用できるようになる。 そして、OSを問わずユーザーを悩ましているのが、ファームウェアの問題だ。この製品を使っていると、不定期に表示が変わらなくなってしまうことがある。キーの押下は受け付け、入力は問題なくできるものの、スリープ時にこの問題が発生すると、無刻印キーボードになってしまう。 ユーティリティの問題は、使い方で対処できるところもあるが、ファームウェアの問題は目玉の機能が完全停止してしまうので、早急な対応が望まれる。ちなみに、この問題が発生した場合、キーボードの電源を入れ直せば、元に戻る。 ●総評 最後にいくつかの問題を列挙したが、これらについては有志による掲示板で報告されており、開発側も認識している。そのため、遅かれ早かれ、解決はされるだろう。実際、このレビューを書いている間に、Windows版のConfiguratorはバージョンが0.0.0.9から0.0.0.10にバージョンアップし、細かな操作性の部分が改善されていた。 使ってみての感想は、自由にキートップのデザインを変更できるという謳い文句は確かに実現されている。価格が高いか安いかと言われれば、高いと言わざるを得ない。だが、そこに価格分の価値を見いだせるかどうかは、その人次第だ。 ただし、この製品には未来を先取りしている感覚を味合わせてくれるところがある。そこは、単に純金製にしたようなセレブ向け製品と大きく異なる点だろう。 本製品のレビューは今回で最後となるが、今後ユーティリティのアップデートでおもしろい機能などが追加されたら随時お伝えしたい。 □Art.Lebedevのホームページ(英文) (2008年4月22日) [Reported by wakasugi@impress.co.jp]
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