東芝のB5モバイルノートPC「dynabook SS RX1」シリーズは、東芝が22年にわたって蓄積したさまざまな技術を搭載し、“究極のモバイルノートPC”と呼んでもいいほどの魅力を備えた製品だ。 そのdynabook SS RX1シリーズに、Web直販専用の最新モデル「dynabook SS RX1 W7E」が登場した。従来モデルよりもスペック面を強化し、さらなる魅力向上を実現している。 ●薄型/軽量筐体と堅牢性を両立し、優れたモバイル性を実現 dynabook SS RX1シリーズの特徴は、何と言っても薄型/軽量筐体と、優れた堅牢性を両立しているところにあるが、もちろんdynabook SS RX1 W7E(以下RX1 W7E)にもそのまま受け継がれている。 本体サイズは、283×215.8×19.5~25.5mm(幅×奥行き×高さ)。フットプリントの大きさはA4用紙とほぼ同じだ。厚さは、MacBook Airが登場した今となってはあまり目立たなくなっているかもしれない。ただ、dynabook SS RX1ではDVDスーパーマルチドライブを内蔵する2スピンドルマシンでありながらこの薄さを実現していることを考えると、MacBook Airに負けない魅力を備えていると言っていいだろう。
また、重量は1,099g。64GBのSSDおよび軽量バッテリ(バッテリパック2900)を搭載する初代モデル「dynabook SS RX1/T9A」の約848gと比較すると250gほど重いが、これはRX1 W7Eでは標準で大容量バッテリ(バッテリパック5800)が搭載されているからだ。 RX1 W7Eには軽量バッテリは付属せず、オプションとしても用意されていないため、残念ながらさらなる軽量化は行なえないが、大容量バッテリを搭載した状態でも2スピンドルノートとして十分に軽い。もちろん、大容量バッテリを搭載しているため、駆動時間はWindows Vista Business時で約11時間、Windows XP Professional時で約11.5時間と、かなり余裕がある。重量と駆動時間のバランスを考えると、十分満足できるはずだ。
ところで、本体サイズが薄く軽くなると、心配になるのが堅牢性だが、dynabook SSでは当然モバイル利用を想定した優れた堅牢性も兼ね備えている。 まず、液晶パネル背面の天板は、天板から側面までを一体成形したバスタブ構造を採用。これにより、0.45mmと非常に薄いマグネシウム合金板を利用していながら、ねじれやたわみに対する優れた強度を実現。加えて、本体の角を曲面加工したり、HDD取り付け部の底面にドーム型の構造を配置するなどして外部から加わる力を分散する仕組みを取り入れることなどによって、75cmからの落下試験をクリアする堅牢性を実現している。 ただし、最近の堅牢性をウリとするモバイルノートPCでおなじみの、耐圧性能については公表されていない。実際に天板部分を押したりねじったりてみると、比較的弱い力でも液晶面がたわんでしまい、液晶パネル部分の強度に不安を感じるのも事実だ。平均的に圧力が加わるような場合には特に問題はないと思われるが、局所的に強い力が加わると少々危ないかもしれない。もちろん、この点を解消するには天板部分の厚さを増すなどの措置が必要となり、せっかくの薄型ボディが失われてしまう。薄さの中で最大限の堅牢性を実現していることは間違いないと思うが、ユーザーの判断材料にもなるため、できれば耐圧性能も公表してもらいたい。 ●CPUと無線LANの強化でスペックも充実 RX1 W7Eは、基本的な仕様は従来モデルをベースとしているが、一部スペックが強化されている。 まず、CPUが超低電圧版Core 2 Duo U7700(1.33GHz)に強化されている。従来モデルではCore 2 Duo U7600(1.20GHz)が搭載されていたため、パワーアップの幅はそれほど大きなものではないが、強化されたこと自体はもちろん歓迎だ。 また、無線LANモジュールが「Intel Wireless WiFi Link 4965AGN」に変更されたことで、IEEE 802.11nドラフト2.0に対応した。IEEE 802.11nは、現時点では正式に策定されている規格ではないが、アクセスポイントの普及が徐々に進んでいることを考えると、当然こちらも歓迎できる変更だろう。無線機能としてはBluetooth Ver2.0+EDRも標準搭載。そして、無線LAN/Bluetoothは右側面のスライドスイッチで機能をOFFにできるので、病院や航空機内などで利用する場合も安心だ。 これら以外のスペックに関しては、従来モデルをほぼそのまま継承している。チップセットはIntel 945GMS Expressを採用。つまり、Santa RosaベースではなくNapaベースである。Intel GM965 Expressを採用せずにIntel 945GMS Expressの採用を継続させたのは、おそらく発熱を考慮してのことだろう。Intel GM965 Exprssを採用した方が描画能力が向上し、Windows Vistaもより快適に利用できるようになるはずだが、RX1 W7Eのような薄型ボディのマシンでは余裕のある放熱機構を搭載することが難しいため、安定動作を重視してIntel 945GMS Expressの採用を継続させたのだろう。パフォーマンスだけでなく、携帯性やバッテリ駆動時間なども重視されるモバイルノートPCならではの判断であり、ユーザーにとってもメリットが大きいと考えていいだろう。 メインメモリは、PC2-5300 DDR2 SDRAMを2GB搭載する(動作はPC2-4200相当となる)。メインメモリ増設用のSO-DIMMスロットは1スロット用意されているが、標準で1GBのSO-DIMMが取り付けられ、最大搭載量となっている。
内蔵HDD容量は120GBだ。RX1 W7Eでは、HDDに1.8インチHDDではなく2.5インチHDDを採用しており、160GBや200GBなど、より大容量のHDDを搭載することも不可能ではない。120GBという容量に不満を感じるわけではないが、他のモバイルノートでも160GB超のHDDを搭載する例が増えていることを考えると、やはり見劣りしてしまう。Web直販専用モデルの利点として、より大容量のHDDを選択できても良かったように思う。 DVDスーパーマルチドライブは、本体右側面に内蔵されている。対応メディアは2層メディアを除く全CD/DVDメディアだ。採用されているドライブは、厚さ7mmのパナソニック製「UJ-844S」で、従来モデルと同様となっている。
●半透過型の12.1型ワイド液晶を採用 RX1 W7Eに搭載される液晶は、1,280×800ドット(WXGA)表示対応の12.1型ワイドTFT液晶だ。この液晶は一般的な透過型液晶ではなく半透過型となっており、バックライトによる利用に加え、バックライトを消し外光だけでの利用にも対応している。そのため、キーボード右上にはバックライトを点灯/消灯させるボタンが用意されている。 半透過型液晶は、暗い室内だけでなく、直射日光下の野外でも高い視認性を確保できるという点が特徴だ。実際に直射日光下で使用してみたが、室内でバックライトを点灯させて利用している場合と変わらない視認性が確認できた。 従来の半透過型液晶では、透過型または反射型に特化した液晶に比べ表示品質が劣るという欠点があったが、RX1 W7Eに搭載されている半透過型液晶は、透過型、反射型のどちらの使い方でも比較的高い表示品質が確保されているように思う。特にバックライトを点灯させた反射型時の表示品質は、一般的な反射型液晶と比較しても全く遜色ないと感じた。 ただし、視野角はやや狭いようで、液晶を見る角度を少し変えただけで色合いが変化する点は少々気になる。また、直射日光下では液晶表面のパネルがやや白く光ってしまい、色合いが変わってしまう。それでも、直射日光下での視認性の高さは他のモバイルノートには真似のできない部分であり、視野角の狭さや直射日光下での色合いの変化などを差し引いても、十分魅力がある。
●キーボードやタッチパネルも扱いやすい キーボードは、ピッチが19mm、ストロークが2mmとなっており、デスクトップ用キーボードに匹敵する扱いやすさが実現されている。Enterキー付近の一部のキーでピッチが若干狭くなっているものもあるが、実際に使っていてその点が気になることはない。もちろん、無理な配列も全く見あたらない。薄型ノートでは、キーボード全体がしなることがあるが、RX1 W7Eのキーボードではそういったこともなく、とにかく扱いやすさは抜群だ。 ポインティングデバイスは、タッチパッドを採用。基本的な使い勝手は問題ないが、パームレストとの段差がほとんどなく、特にパッドの縁を利用したスクロール機能の使い勝手はやや厳しく感じた。また、クリックボタンがガタつく点も少々気になった。 クリックボタン中央には、指紋認証用のセンサーが搭載されている。Windowsログオン認証などに活用でき、高いセキュリティ性が確保できる。また、TPMチップも標準で搭載しており、ビジネスシーンで求められるセキュリティ機能はほぼ網羅している。
●携帯性/使い勝手ともに優れるノートを探している人におすすめ では、いつものようにベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したソフトは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と「3DMark05(Bulid 1.3.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」の3種類だ。Windows Vistaに用意されているパフォーマンス評価の結果も加えてある。
【表】ベンチマーク結果
結果を見ると、同じCPUを搭載する「Let'snote R7 プレミアムエディション」と比較すると、かなり数値が悪くなっている。これは、チップセットにIntel 945GMS Expressが採用されており、内蔵グラフィック機能の描画能力が低いことに起因していると考えていいだろう。実際、PCMark05のGraphics Score、3DMark05/06の結果を見ると、かなり数値が悪い。もちろん、高い3D描画能力を必要としないビジネス系アプリケーション、Webブラウザ、メーラーなどの利用が中心であれば、特に問題になることはない。とはいえ、Windows Vistaパフォーマンス評価のグラフィックスの結果もかなり低くなっており、Windows Vista利用時に描画能力の低さが多少影響する可能性は否定できないだろう。 ちなみに、RX1 W7Eには、「Windows XPダウングレード用リカバリメディア」が標準で付属しており、Windows XP Professionalにダウングレードして利用できるようになっている。今回の試用機にはこのリカバリメディアは付属していなかったため、Windows XPにダウングレードして試用することはできなかったが、Windows Vista利用時のパフォーマンスに問題を感じるようであれば、Windows XPにダウングレードして利用するとよいだろう。 RX1 W7Eは、基本的には従来モデルをベースとしたマイナーバージョンアップモデルであり、特に特徴となる機能が追加されているということもない。それでも、CPUや無線LAN機能の強化によって、魅力は向上している。HDD容量が120GBとやや少ない点や描画能力が低い点は少々残念だが、充実したセキュリティ機能もあわせ、モバイルノートPCとしての死角はほとんど見あたらないと言っていい。 常に持ち歩くのをためらうことのない優れた携帯性と、大型ノートに匹敵する優れた使い勝手を両立している点や、薄型/軽量ながら十分優れた堅牢性を実現している点、豊富なセキュリティ機能など、完成度は非常に高い。特に、ビジネスシーンで常に持ち歩いてバリバリ使えるモバイルノートPCを探している人に特におすすめしたい。販売価格は277,600円とやや高価だが、その金額に十分見合う満足感が得られるはずだ。
□東芝のホームページ (2008年2月14日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
|