CES取材で米国に来たところ、会場を回って気になったデバイスや展示がいくつかあった。メジャーなものは、すでにニュース記事になっているので、ここでは、ニュースにならなかったようなものを中心に紹介することにしよう。 ●myloに2世代目登場 ソニーブースには、日本でも発売されたmyloの第2号機「COM-2」が展示されていた。大きな変化としては、液晶が3.5型800×480ドット(WVGA)表示と大型化/高解像度化し、さらにタッチパネルを装備したこと。このため、デザインは、前回の丸を2つ繋げた形から矩形に近くなり、少し大きくなったが、かなりPDAっぽくなった。 また、正面パネルは着せ替えが可能なようだ。本体正面、左側には、スティック状のナビゲーションキーがあるほか、液晶の左右はボタン領域になっていて、左右それぞれに3つのボタンがある。 筐体色は前回同様、白と黒の2色が用意され、着せ替えパネルはオプションになっている。また、展示では、クレードルも展示してあった。これも付属ではなくオプションのようだ。 初代myloは、日本語のWebページを表示させるにはちょっと液晶が小さすぎたので、今回の改良により使いやすくなりそうだ。米国では2月から発売開始で、日本ではまだアナウンスがないようだが、やはり国内販売もあるのではないかと想像する。
この連載で以前紹介したソニーのブックリーダー「PRS-500」は、後継機種として「PRS-505」が登場している。こちらは筐体デザインを変更し、より高速な表示が可能な電子ペーパーディスプレイが搭載された。日本語フォントを埋め込んだPDFファイルの表示が可能な点も同じで、ソフトウェア的にはほぼ同等なのではないかと思われる。これについては、別途詳しくレポートする予定だ(実は買いました)。 ●スマートフォンで存在感を出すHTC 国内でも、ソフトバンクやNTTドコモが販売しているスマートフォンを開発したHTCは、米国でも携帯電話ネットワーク会社で採用が続いている。このため、MicrosoftのWindows Mobileブースなどでも、展示の大部分がHTCの製品となっており、いまやスマートフォンでは大きな存在になりつつある。 米国では、AT&T Wirelessが「Tilt」と呼ばれる製品を出している。これは、ソフトバンクやNTTドコモに採用されたHermes(X01TやhtcZ)に似た、スライドキーボード搭載機器だが、液晶部分をスライドさせたあと、角度をつけて立ち上げることができる。このため、机などにおいてタイプするときに液晶が見やすくなっている。
また、IAプロセッサを採用するUMPCとして、HTCは「Shift」を発表しているが、これもMicrosoftブースに展示されていた。どうもこのデバイス、Windows Mobileも動いているようである。ボタンを押すと、画面が一瞬にして時計などを表示する画面に切り替わる。予定表を表示させると、Windows Mobile付属のOutlook Mobileの画面とそっくりだ。予定の管理などは、Windows Mobile側で行ない、必要なときのみIAプロセッサでWindows Vistaを動かせば、バッテリ駆動時間の点で有利だからだと思われる。まあ、Windows Mobileのスマートフォンを作り続けているHTCらしい製品ともいえる。
●Nokiaブース Nokiaの「N810」は、以前紹介したN800の後継機種である。いま、流行のスライド式キーボードを備えた筐体で、フルキーボードが付いた。また、GPSを内蔵しており、地図表示やナビゲーションが可能なソフトが付属する(ただし、ナビゲーション機能などは有償になるようである)。EU圏では、2007年末ぐらいに出荷され、まもなく米国での販売が開始されるという。 このサイズになれば、本格的なメールの作成も可能なので、フルキーボードが組み込まれると便利そうである。筆者は、N800とBluetoothキーボードの組み合わせで使っているが、これなら本体のみで、長文のメモやメールが書ける。また、WebブラウザがFirefoxと同じくMozillaベースになり、Flashもサポートされているという。Ajax系のサイトや、動画サービスなど、これまでより広い範囲のサイトを利用できそうだ。 ●そのほか、気になったもの
CESのメイン会場から少し離れたSandsのホールには、ちょっとクセのある出展が多い。以前、HPの電卓についてレポートしたが、米国では、技術者向けの関数電卓といえば、Hewlett-Packard(HP)とTexas Instruments(TI)が有名。CESのサウスホールには、ひと味変わった展示が多いが、TIの電卓ブースもあった。 展示されていたのは、「Nspire」と呼ばれる、教育向けの電卓。キーボード部分が差し替えられるようになっており、このキーボード部分にソフトウェアが組み込まれているため、関数電卓(TI-84 Plus相当)と、数学教育用に数式処理のできる電卓を切り替えて利用できる。教育用の電卓(というよりもハンドヘルドコンピュータ)は、たとえば、図形とその面積を表現するグラフ、表を表示させ、図形を変形させることで、グラフや表を自動的に更新することができ、図形と面積の関係を視覚的に把握できるような機能を持つ。 同社は、同じ機能を持つPC用の教育ソフトも販売しているが、この機種は、PCよりも低価格なので、クラス全員用に購入でき、高学年になれば関数電卓を使っての学習も可能と、広い学年で利用できるという特徴を持つ。主に学校の備品用を狙い、教育機器のディーラーが扱うようだが、一般販売も行なっているという。 もう1つ見つけたのは、米Mattelの着せ替え人形「Barbie」ブランドの、PCを利用した玩具「iDesign」。これは、PC用のソフトだが、付属のカードリーダ(Style Swiperという)を使い、透明なシート(Fashion Cardという)に印刷された洋服をスキャンして取り込むもの。シートの裏側にはバーコード状のものが印刷されている。これで、洋服や靴などを指定して着せ替えを行なう。説明員の操作を見ていると、実際には、洋服などはマウスでも指定でき、カードの意味がないじゃん、って感じだが、セガの「オシャレ魔女 ラブandベリー」にかなりインスパイアされているように思える。ただし、対決するようなものではないという。同じブランドで、着せ替えできる人形型MP3プレーヤーや着せ替えオプションなどもある。パッケージの絵はアメリカオモチャの感じがあるが、ブースのイラストや人形型のMP3プレーヤーなど、ちと日本のアニメっぽい雰囲気がある。 韓国のiriverは、日本でもMP3プレーヤーを販売しているが、そのブースは、自動車用の電子機器(いわゆるカーナビとかカーステレオなど。米国では、これらをモバイルエレクトロニクスと呼ぶ)関係を集めたノースホールに出展し、なぜかMP3プレーヤーや韓国語の電子辞書などを展示していた。 出展されている電子辞書「Dicple D5/D30」は、わりと良いデザインで、住所録やスケジューラなどのPIM機能や動画や音楽のメディア機能、Flash Player、PDFビューアなどが搭載されているが、通信機能がまったくないのが痛いところ。これに対して、「Wing」は、Wi-FiとBluetoothを搭載、オプションで日本のISDB-T(地上波デジタル)を含む各国のデジタル放送(DVB-Hなど)や韓国版モバイルWiMAXであるWiBroにも対応。こちらは完全なネットワークデバイスになっている。 2004年のCESでMicrosoftが発表した“Spot”こと「MSN Direct」だが、最近ではずいぶんと様変わりしてきた。今回は、米国でも普及しつつあるPNDに搭載し、交通情報やガソリンスタンドの情報、ホテルやレストラン案内をMSN Directで提供するサービスを開始し、GarminなどのPND(パーソナルナビゲーションデバイス)がこれに対応している。MSN Directは、片方向のサービスであり、FM受信機+ARMプロセッサで実現が可能。渋滞情報など地域性のある情報を提供するところは、日本のカーナビのVICSに似た感じである。 しかし、これまでMSN Directとして提供してきた映画や天気などの情報も提供される点で情報にバラエティがある。これらのPNDは、Windows Mobileを採用していないので、不思議に思って聞いたところ、外部に接続するMSN Dirct受信機の側でSPOTと同じく.NET Micro Frameworkが動作しており、PND本体は、そこから情報を貰って表示するだけという。このため、どんなアーキテクチャのPNDでもMSN Dirctサービスを組み込めるのだという。 腕時計といえば、LG電子のブースには、腕時計型携帯電話「LG Watch Phone」の展示があった。日本では、腕時計形PHSが登場したが、こちらは「Mobile Phone」だという。ただし、試作品であり、詳細スペックは教えてもらえなかった。
□2008 International CESのホームページ(英文) (2008年1月17日) [Text by Shinji Shioda]
【PC Watchホームページ】
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