デル初となる液晶一体型PC「XPS One」が登場した。XPS Oneは、他のデル製品同様にグローバル展開されるが、日本市場をメインターゲットに、日本で開発され製品化されたモデルで、これまでの製品とは一線を画すデザインが大きな特徴となっている。 今回は、上位モデルとなるXPS Oneプレミアムパッケージを取り上げる。 ●見た目はまるで液晶TV まず、最大の特徴である外観からチェックしていこう。 XPS Oneを一目見ただけでは、液晶画面左右にスピーカーを持つ一般的な液晶ディスプレイとしか思えないほどコンパクトだ。本体サイズは、597×185×405mm(幅×奥行き×高さ)。幅こそ、一般的な20型ワイド液晶ディスプレイよりも大きくなっているものの、それは左右にスピーカを備えているから。また、奥行きに関してはスタンド部分のサイズと考えて良く、本体部分は最も奥行きのある部分でも10cm程度しかない。
液晶パネル周囲のベゼル部分およびスピーカ部はブラックで、正面部分にはデルのロゴが配置されている以外に特に装飾は施されておらず、電源などのボタン類も一切用意されていない(電源ボタンは左側面に配置)。しかも、PCであれば見える場所に用意されてしかるべき電源インジケータやHDDアクセスランプすら側面に配置するという念の入れようだ。また、スタンド部は金属ではなく強化ガラスを採用しており、正面から金属らしさが見られるのはスタンドと本体をつないでいるアーム部分のみ。こういったデザインによって、液晶ディスプレイや液晶一体型PCによくある“PC(の周辺機器)っぽさ”を感じることはない。 電源を投入すると、ベゼル右下にボリュームコントロールやメディアコントロール用のアイコンが青く浮かび上がる。この部分はタッチセンサーとなっており、アイコンをタッチすることで各操作が行なえるようになっている。しかも、アイコンは10秒ほどで消えるようになっており、普段はその存在が全くわからない。そして、操作のために手を近づけると光ってアイコンが浮かび上がる。こういった部分からも、デザインに対する強いこだわりが感じ取れる。
とにかく、大手メーカー製の液晶TVに負けることのないスタイリッシュで気品を感じるデザインが実現されており、まさにこれまでのデルのイメージをいい意味で大きく覆す製品であると言っても過言ではないだろう。もし何も聞かされていなければ、XPS Oneを見て、これが液晶一体型マシンだと感じる人はほとんどいないかもしれない。筆者も、XPS Oneであればリビングに置くことを全く躊躇することはないだろう。 ちなみに、これまでのXPSシリーズのマシンでは、目立つ場所に大きな“XPS”のロゴが記されているが、XPS Oneを正面から見た限りでは、スタンド部分に控えめに記されているだけとなっている。おそらく、この製品が米国で開発されていれば、正面から見える場所に目立つようにXPSロゴが配置されていたのではないかと思うが、日本市場を見据えて日本で開発されたからこそ実現された配慮ではないだろうか。ちなみに、本体背面に回ると、シルバーで大きく”XPS”と記されている。正面からは見えないものの、しっかり主張することを忘れたわけではない。 また、XPS Oneにはもう1つ大きな特徴がある。XPS Oneは、Bluetooth Ver2.0 +EDRが標準搭載されており、標準添付のキーボードおよびマウスともにBluetooth接続で使用する。加えて、IEEE 802.11a/b/g/nドラフト準拠の無線LANモジュール「Intel Next-Gen Wireless-N」も標準搭載され、ネットワーク接続も無線LANの使用が前提となっている(Gigabit Ethernetも搭載)。つまりXPS Oneは(無線LAN環境が整っている必要はあるが)、標準で電源以外のケーブルを一切接続することなく利用可能なようにデザインされているのである。しかも、電源ケーブルはコネクタ部が本体と一体化するように設計されている。電源コネクタは背面にあり、正面からは全く見えないが、こういった部分にまでこだわってデザインされている部分も見逃せないポイントだ。
●コネクタ類は正面から見えない側面および背面に配置 XPS Oneは、電源さえ接続すれば利用できるようにデザインされているとはいえ、もちろん必要となるコネクタ類はしっかり用意されている。 本体左側面には、CFやSDメモリーカード、メモリースティックなどに対応するカードリーダ、IEEE 1394(4ピン)、USB 2.0ポート×2、ヘッドフォン/マイクの各端子を搭載。また背面には、IEEE 1394(6ピン)、USB 2.0ポート×4、S/PDIF出力(光角型)、音声出力、Sビデオ入力、Gigabit Ethernetの各ポートが用意されている。欲を言えばeSATAポートがあれば完璧だったかもしれないが、必要となるポート類は網羅されていると考えていいだろう。
搭載されている液晶パネルは、WSXGA+(1,680×1,050ドット)表示対応の20型ワイド液晶だ。表面が光沢処理されており、鮮やかな映像を表示できるよう配慮されている。表示品質も特に問題を感じるところはなく、動画再生もしっかりこなしてくれる。できることならフルHD解像度(1,920×1,080ドット)対応のパネルを搭載していると最高なのだが、このあたりはサイズと価格のバランスを考えると大きな不満とはならないはずだ。また、液晶パネル上部には、200万画素Webカメラも搭載されている。 本体右側面には、スロットイン仕様の光学ドライブが配置されている。現在日本で販売されているXPS Oneは、DVD±R/RWドライブが搭載されている。ディスクが挿入されていない状態ではスロット部分が青く光り、ディスクが挿入されている状態では右スピーカの下部が青く半円形に光る。ちなみにこの半円形の光も、ベゼル右下のメディアコントロール用アイコン同様、10秒ほどで消えるようになっている。
XPS Oneのターゲットを考えると、Blu-ray Disc(BD)ドライブが標準搭載されていてもいいほどなのだが、日本仕様のXPS Oneでは、仕様詳細に掲載されているにもかかわらずBDドライブが選択できないのが残念だ。北米モデルではBDドライブの選択が可能となっていることを考えると、日本でもBTOメニューへのBDドライブ追加は比較的早い段階で実現されるべきだろう。 また、BDドライブが選択できない点だけでなく、TVチューナが搭載されない点も少々気になる。北米モデルではTVチューナが標準搭載のため、日本向けチューナユニットの調達が遅れているだけかもしれないが、他のデル製品でオプションとして用意されているエスケイネット製の小型地デジチューナ「MonsterTV HDU」が選択できないのも非常に残念だ。BDドライブ同様、TVチューナやMonsterTV HDUも早い段階でBTOメニューに追加してもらいたい。 ●デスクトップ用パーツを多数採用 液晶一体型マシンでは、発熱を抑え省電力性を高めるために、ノートPC用パーツを採用する例が多い。しかしXPS Oneでは、デスクトップPC用パーツを数多く採用することで、汎用性とコストパフォーマンス性を高めている。 チップセットには、Intel G33 Expressを採用し、CPUは、Core 2 Duo E4500を搭載した。ちなみに、下位モデルとなるベーシックパックでは、Celeron 440を搭載する。メインメモリは、PC2-5300 DDR2 SDRAMを2GB搭載(1GB×2)。HDDは500GBの3.5インチシリアルATAドライブを採用。光学式ドライブは、先ほど紹介したようにスロットイン式DVD±R/RWドライブ。グラフィックはチップセット内蔵機能が利用されている。 ただし、ビデオ機能についても、米国仕様ではMobility Radeon HD 2400が選択可能になっているが、日本ではこちらも用意されていない。BDドライブがBTOメニューに用意されていないことによる措置とも考えられるが、パフォーマンスを重視するユーザーを獲得するには、当然選択肢として用意されているべきだろう。こちらも早い段階でのオプション追加を期待したい。 ●スタイリッシュな液晶一体型マシンを探している人におすすめ では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したソフトはいつものとおり、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と「3DMark05(Bulid 1.3.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」の3種類。Windows Vistaに用意されているパフォーマンス評価の結果も加えてある。 結果を見ると、チップセット内蔵のグラフィック機能が利用されていることもあり、グラフィック関連の結果があまり芳しくないものの、それ以外の結果に関しては十分満足できるものと言っていいだろう。 ただ、“XPS”というブランド名を冠している製品としては、パフォーマンスに少々物足りなさを感じる人もいるかもしれない。確かにXPSといえば、ハイエンドゲーマーをターゲットとしたフラッグシップマシンというイメージがあり、XPS Oneのスペックを見ると物足りなく感じるのも事実だ。北米モデルで用意されているMobility Radeon HD 2400を搭載すれば、描画パフォーマンスの改善が期待できるが、その場合でも最新3Dゲームを余裕でプレイできるほどの大幅なパフォーマンス向上は期待できない。 やろうと思えば、XPS Oneにハイエンドパーツを詰め込むことも不可能ではないだろう。とはいえその場合には、より大がかりな冷却機構を取り入れる必要が出てくるため、当然ボディは大きく、騒音も大きくなってしまうだろう。それでは、せっかくのスマートなデザインが失われてしまう可能性が高くなり、XPS Oneのコンセプトが崩れてしまう。そういった意味では、XPS Oneは、XPSシリーズのマシンではあるものの、従来までのXPSシリーズとはターゲットが異なっていると考えるべきだ。
【表】ベンチマーク結果
現状の仕様では、TVチューナが用意されていなかったり、BDドライブや外付けGPUを選択できなかったりというように、やや中途半端な印象もある。それでも、リビングに置いても全く違和感のないスマートでスタイリッシュなデザインや、電源以外ケーブルレスで使用できるように配慮されている点など、特筆すべき魅力を備えていることも事実だ。 また、販売価格が179,800円(12月5日時点ではさらに10,000円引きとなる)と、20型ワイド液晶採用の一体型マシンとして比較的安価な点も魅力の1つだ。TVチューナ搭載など機能面の充実は早急に実現してもらいたいが、現状でも十分魅力のある製品であることは間違いない。スタイリッシュな液晶一体型マシンを探している人や、省スペースPCを探している人におすすめしたい製品だ。
□デルのホームページ (2007年12月13日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
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