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【Intelイスラエル訪問レポート】
Core 2 Duoの故郷を報道陣に公開

ハイファにあるIntelの研究開発施設

11月29日(現地時間) 開催



 米Intelは29日(現地時間)、同社の主要な拠点の1つであるイスラエルで記者説明会を開催し、同社のマイクロプロセッサにおける省電力の取り組みや、同社がイスラエルで建設中の新しい研究開発施設(IDC、Intel Design Center)ビルの環境配慮デザインなどに関する説明を行なったほか、Pentium M、Core 2 Duoなどが開発されたラボの見学会を開催した。

●米国以外ではIntelの最大拠点となるイスラエル

 世界中に拠点を持つIntelだが、国土や人口に対する集中度という点で、今回紹介するイスラエルを上回る地域はおそらくないだろう。Intelイスラエルの広報担当者によれば、Intelがイスラエルで雇用している従業員は実に7,000人にも及ぶという。イスラエルの人口が約650万人と言われているので、人口の0.1%がIntelの従業員ということになる。

 ちなみに、人口の0.1%を日本に当てはめてみれば、1億2千万人の0.1%は12万人ということになる。日本で、従業員12万人の企業といってもすぐには思いつかないが、トヨタ自動車の従業員が6万5千人と言えば、いかにイスラエルにとってIntelが大きな存在であるか、想像していただけるのではないだろうか。

 そのIntelだが、イスラエルでは3つの拠点を有している。うち2つはFab(生産工場)で、エルサレムにあるFab8(旧型のLSIとMEMSを生産する工場)、キリヤットガット(Qiryat Gat)にあるFab18(90nmプロセスルールを200mmウェハで生産する工場)が現在稼働している。なお、キリヤットガットには最新の45nm/300mmウェハの工場(Fab28)も建設中であり、まもなく生産が開始される予定という。

こちらがメインのビル。現在入り口は工事中だった ヘブライ語の“Intel” 消されていたが、旧Intelロゴ(ドロップe)のイスラエル版。ヘブライ語のIntelロゴになっている

●Banias、Dothan、Yonah、Meromの故郷となるハイファのIDC

 そしてもう1つが、ハイファ(Haifa)にあるIntel Design Center(IDC)だ。ハイファは地中海に面したイスラエル北部の都市の1つで、イスラエルでは3番目に大きな都市だ。ハイファはイスラエルのハイテク産業の一大集約地になっており、IntelのIDCの周辺には、Microsoft、Google、Philipsといった世界的にも有名な企業がビルを連ねている。

隣にあったMicrosoftのビル 同じく隣にあったGoogleのビル

 IDCは世界中に複数存在しており、Intel製品、具体的にはマイクロプロセッサやチップセット、無線LANなどさまざまなLSIの設計/開発を担当している(ちなみに、日本にも以前は筑波にあったのだが、今は廃止されている)。

 このハイファにあるIDCは、おそらく日本のユーザーにとって最も関係が深い場所と言っていいだろう。というのも、Intelのモバイル向け製品、具体的には2003年にリリースされたPentium M(Banias)、90nm版Pentium M(Dothan)、Core Duo(Yonah)、Core 2 Duo Tシリーズ(Merom)といった各製品がこのハイファで設計/開発されたのだ。

 よく知られていることだが、Intelの開発コードネームは、いずれもその製品が設計されている地域の地名がつけられることが通例だ。例えば、Pentium 4の開発コードネームである“Willamette”は、それを開発した米国オレゴン州ヒルズボロにあるIDCの近くを流れる川の名前であり、来年リリースされる予定の超低消費電力プロセッサ“Silverthorne”は米国テキサス州オースティンにあるIDCの近くの地名だ。

 それと同じように、Banias、Dothan、Yonah、Meromもいずれもこの地域の地名になっており、それらの製品がハイファにあるIDCの製品であることを示している。つまり、これらのマイクロプロセッサの故郷が、ここハイファなのだ。

●まもなく出荷予定のPenrynのバリデーションテストが現在進行中

 今回Intelが報道陣に公開したのは、開発/設計したマイクロプロセッサが仕様通りに動作するかを検証する「バリデーションラボ」と呼ばれる施設で、現在は来年(2008年)頭に出荷予定の“Penryn”の動作検証が行なわれていた。実際、動作検証を行なっている机には、まだオフィシャルには語られていないPenrynの3MB版や、PenrynのSFF向け小型パッケージ版などが無造作に置かれていたほか、テスト中のPenrynのクアッドコア版(ノートPC向けクアッドコアCPU)などが公開された。

 プロセッサの動作検証とは、実際にダイをパッケージに組み込んだ状態で、さまざまなテストを行なう。例えば、既定の仕様通りのクロック周波数で動くかどうか、そして実際に信号をやりとりさせて規定通りに動作するかどうかなどがチェックされる。ハイファのバリデーションラボでは、半導体検査装置メーカーのアドバンテストから購入した装置を利用してテストを行なっていた。利用されていたのは「T2000」と呼ばれる検査装置で、半導体にあわせて細かな設定が可能であるので、異なる種類のパッケージなどにも柔軟に対応することができるという。ハイファのIDCでは、この装置を複数台(ざっと見た限りは軽く10台を超える台数が用意されていた)24時間状態で稼働させており、装置を停止させるのは年にわずかに2日間だけだという。

 このほか、温度を上げてCPUの劣化速度を速めることで、耐久性を検査できる装置や、実際にマザーボードに組み込んだ状態での動作検証を行なう装置、WindowsなどのOSを走らせて動作検証を行なう装置などが用意されており、出荷前にさまざまな検査が行なえる体制が整っているという。

 このIDCは建物の1階(イスラエルではヨーロッパ的な数え方になるので、日本的な数え方をするなら2階)部分にあるのだが、その上の階にはBanias、Yonah、Meromなどを設計したチームがいるフロアがあるという(ちなみに会議室の名前はYonahとMeromだった……)。残念ながらそこを見学することはできなかったが、今頃はきっと2010年にデビューする予定の32nmプロセスルールの新アーキテクチャCPU“Sandy Bridge”(以前はGesher、さらにその前はGiloと呼ばれていた)の設計で忙しい頃ではないだろうか。とはいえ、まだ32nmプロセスルールは、最初のテスト生産となるSRAMの生産も行なわれていないので、もし動いていたとしてもシミュレーション上でということになるのだが……。

●45nmプロセスルールのPenrynではアイドル時の消費電力を大幅に削減

 バリデーションラボの見学会後には、Intel モビリティ事業部担当副社長兼モバイルプロセッサ事業部本部長のRon Friedman氏による、省電力マイクロプロセッサに関する説明会が行なわれた。

 Friedman氏はここ数年のIntelのマイクロプロセッサの歴史を振り返り、「Pentium II、Pentium III、Pentium 4と徐々に消費電力が大きくなりこのままではPCに収めることができなくなるような事態になってしまう可能性がある。それを防ぐためにもPentium M(Banias)を開発し、電力あたりのパフォーマンスで見た場合、平均して20%も改善することで、この問題を解決した」と説明した。

Intel モビリティ事業部担当副社長兼モバイルプロセッサ事業部本部長 Ron Friedman氏 Pentium II、Pentium III、Pentium 4と性能に比例して消費電力が増え続けてきたが、Pentium Mでその状況を改善した Pentium M(Banias)で電力あたりの性能を20%も改善した

 また、省電力は今後、ノートPCのみならず、デスクトップPCやPCサーバーにも求められる機能であることを説明し、例えば企業向けのデスクトップPCでは米国でのEnergyStarへの取り組みが1つのトレンドになりつつあり、サーバーの世界では1つのサーバーでどれだけ処理能力を高めることができるかや電気コストなどが注目されつつあることを説明した。

 そうした問題を解決するため、Intelは45nmプロセスルールで製造される新しいマイクロプロセッサの投入をしていると述べ、「新しい45nmプロセスルールの投入により同じTDP(熱設計時に想定される最大電力)で性能が大きく向上している。また、向上しているのはTDPあたりの性能だけでなく、平均消費電力(実環境での消費電力)あたりの性能も大きく改善している」と述べた。

今後は省電力のトレンドはノートPCだけでなく、デスクトップPCやPCサーバーにも 45nmプロセスルール製品の投入で電力あたりの性能を大きく改善 このように、Pentium 4に比べてBanias以降の各製品は大きく電力あたりの性能を改善している

 また「CPUはアイドル状態にあることが多い。というのも、ユーザーがキー入力を行なっている時、CPUはアイドル状態にあるからだ」(Friedman氏)とのことで、新しいPenrynではアイドル時の消費電力を削減するためにC6ステートを新設するなど、さらに消費電力を改善する仕組みが入っているという。こうした改善により、2005年当時のデュアルコアプロセッサ(おそらくPentium Dのことだと思われる)に比べて、2007年にリリースされたデュアルコアプロセッサやクアッドコアプロセッサのアイドル時消費電力が大きく削減されており、それが大きな効果があるのだとアピールした。

 イスラエルのIDCで作られた製品ではないものの、Intelが来年にリリースを予定しているMenlowプラットフォーム(米国オースティンのIDCで設計/開発)についても触れ、「新しいSilverthorneプロセッサと、チップセットのPoulsboにより、より小さなフォームファクタのPCや、ポケットに入るサイズのPCを作れるようになるだろう」(Friedman氏)と述べ、新しいMenlowプラットフォームのメリットをアピールした。

平均消費電力の改善にはアイドル時の消費電力の改善が大きく効いてくる 2005年のデュアルコア(Pentium D?)に比べて2007年のマイクロプロセッサはアイドル時の消費電力が大きく改善されている 来年投入される予定のMenlowプラットフォームにおいて、より小さなモバイル機器にもx86が入っていけるとアピール

●ハイファに建設される新しいIDCは環境に配慮した“グリーンビル”に

 IntelのDori Hershgal氏(EMEA CS エンジニアリング、LEED-AP & プロジェクトエンジニア)は、Intelがハイファに新たに建設中の「IDC-9」と呼ばれる9番目のIDCを、環境に配慮した建物にすることを説明した。

 現在米国では、そうした環境に配慮した建物である「グリーンビル」(GreenBuilding)の建設が注目されており、実際にLEED(Leadership in Energy & Environmental Design)と呼ばれる建築基準まで作られ、多くの会社がこうした基準に従って建設を行なっているという。IntelでもIDC-9の建設はこのLEEDの4つある基準(サーティファイ、シルバー、ゴールド、プラチナム)のうち、シルバー基準を採用して建設が行なわれているという。

 Hershgal氏によれば、IDC-9は地上5階建てで、1階にはデータセンターが、2階と3階は将来の研究開発ラボが、その上には社員が憩える食堂やジムなども入るようになるという。また、社員の健康のために、できるだけ日の光が入るように工夫したデザインにしたり、建物の上層部を吹き抜けにして、そこに沢山の緑を植えたりなどの取り組みを行なうという。

 IDC-9は、来年あたりの完成を目指して今後建築に取り組んでいく予定とのことだ。このビルから、将来のマイクロプロセッサが登場のするかもしれない。

建設中のIDC-9 完成予想のイラスト

□Intelのホームページ(英文)
http://www.intel.com/
□関連記事
【10月26日】Intel、Fab 32で45nmプロセスのCPUを製造開始
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1026/intel.htm
【3月26日】Intel、中国・大連に300mmウェハの「Fab 68」を建設
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0326/intel.htm
【2005年12月2日】Intel、イスラエルに45nmプロセスのFab 28を建設
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1202/intel.htm

(2007年11月30日)

[Reported by 笠原一輝]

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