●古い機器から動画をiPodに持ち出す 前回は、すでにPC上にある動画をiPod classicやnanoで持ち出す話をした。データが横長であれば、iPod側の設定1つでフルスクリーン表示OFF状態(上下に黒帯のついたレターボックス表示)と、ON状態(横長動画の左右をカットしたパンスキャン表示)を切り替えることもできる。 だが、ひょっとすると、iPodで持ち出したい動画はPCの中にはない、という人もいることだろう。VHSテープの中だったり、カメラ撮りしたテープの中のビデオをiPodで持ち出したい、という人も少なくないハズだ。 こうした場合、やり方の1つは、適当なキャプチャカードをPCにインストールして、PC上に取り込んでしまうことである。こうすれば、後はDVDに焼こうが、前回のような手順でiPodに転送しようが気の向くままだ。ただしこの手順では、iPodにちょっとした動画を取り込むのに、まずテープからアナログキャプチャして、それをさらに別ソフトでiPod用に変換し、iTunesに登録してiPodと同期する、という手間がかかる。こうやって文章で読むだけでもイヤになってしまう人がいるかもしれない。 ●iLuv-i182WHTを試す
この手順を楽に行なう方法は、最初からそれ専用に販売されている製品を使うことだろう。というわけで、今回試してみたのは、IMJ(icube Marketing Japan)が販売する「iLuv-i182WHT」という製品だ。“リアルタイム・ダイレクトビデオレコーダー”と称されるこの製品は、アナログビデオ出力(コンポジットおよびSビデオ)から直接iPodあるいはUSBデバイスにキャプチャするデバイスである。実際には第5世代iPod(iPod with Video)および第5.5世代iPod(iPod 5.5G)に対応したレコーダ本体「iLuv-i180WHT」と、専用の拡張コネクタである「i182Connector」を組み合わせた製品となる。 iLuv-i182WHTおよびi180WHTは、iPod classic/nanoの発売以前に、ビデオ再生可能なiPodに対応した製品として販売されていたが、最新のファームウェアおよびアプリケーションソフトウェア(Ver 2.1)で、iPod classicとiPod nano(3G)への対応を行なった(iPod touchへの直接録画は非対応)。ここでは、この最新版ファームウェアおよびアプリケーションソフトウェアを前提に紹介する。既存の製品も、IMJのWebサイトからのダウンロードにより最新版への更新が可能だ。 本体とも言えるiLuv-i180WHTは、110×110×27mm(幅×奥行き×高さ)の、ちょっと大きめのiPodドックといったスタイル。上面の前方よりにドックコネクタがあり、ここに付属のドックアダプタをセットして、厚型(iPod 5.5Gの60GB/80GB、iPod classicの160GB)あるいは薄型(iPod 5.5Gの30GB、iPod classicの80GB)のHDDタイプiPodをセットするか、拡張コネクタ(i182Connector)をセットすることになる。 要注意なのは、このドックアダプタが、Apple純正のアダプタに似ているにもかかわらず、微妙にサイズが異なることで、iPodに付属するアダプタを用いることができない。アダプタなしでiPodを接続することは、電気的には可能なハズだが、万が一、余計な力が加わった際に、iPodあるいは本機を破損することになるので避けた方が良い。このため、iPod nano(3G)を利用する際は、拡張コネクタのUSBポートに、nanoに付属するUSBケーブル経由で接続しなければならない。 本体が備えるコネクタは、電源(ACアダプタを接続する)を除くと、アナログビデオ入力(コンポジットおよびSビデオ)とアナログオーディオ入力のみ。言い換えると、本機をPCに接続するコネクタはなく、その必要もない。本製品はアナログビデオをデジタイズし、そのファイルを直接iPod、あるいは拡張コネクタに接続されたメディアに書き込む。
以前のファームウェアでは、iPod 5.5Gに直接ファイルを書き込み、プレイリストを作成していた。この状態でiPodで直ちにキャプチャしたビデオの再生が可能だったものの、PC上のiTunesライブラリにはビデオは存在しないため、自動同期するとビデオが削除される、といった不整合が生じた(これを避けるため、iPodの音楽とビデオは自動的に「手動管理」に設定されていた)。 classicとnanoに対応した最新のファームウェア(Ver 2.1)では、iPodを単なるマスストレージデバイスとして扱い、iPodとPCを1度接続し、iPod上の動画ファイルをiTunesライブラリに登録、それをiPodへ同期する、という手順を踏む。したがって本機と組み合わせるiPodは、ディスクとして使用可能に設定されていなければならない。この理由で、現時点でマスストレージデバイスとして利用できないiPod touchを本機に接続して動画をキャプチャすることは不可能だ(本機でキャプチャした動画ファイルそのものはiPod touchで再生可能だが、iPod touchを録画デバイスにできない)。 以上のような手順を踏むことにより、動画データは常にiTunesのライブラリと整合されることになるため、iTunesの同期設定が自動であるか手動であるかは問わなくなった。データをiTunesで一貫管理するというのは、おそらくApple的には望ましい方向なのではないかと思う(最新版のファームウェアで以前と同じ利用方法を行なうためのソフトウェアも提供されているが、対象はiPod 5.5Gのみ)。 本機でキャプチャした動画は、いったんiPodのストレージ領域に書き込まれるが、これをPC(あるいはMac)上のiTunesライブラリへ転送するのが付属のソフトウェア、iRec Managerの役割だ。iRec Managerはタスクトレイに常駐し(Windowsの場合)、iRecフォルダを持つiPodが接続されるのを監視している。またiRec Managerは、動画のキャプチャ設定(ビットレート、解像度、アスペクト比)を行なったり、本機のファームウェアアップデートにも用いる。iRec Managerで変更された設定情報はiPodに書き込まれ、次回iPodを本機に接続した際に反映される仕組みだ。 ●シンプルな操作性、画質は十分 さて使い方は、本機に接続されたビデオ機器の再生をスタートさせ、キャプチャしたいシーンがきたら本機のREC/STOPボタンを押し、もう1度REC/STOPボタンを押してキャプチャを終了させる、というもの。TIMERボタンにより、キャプチャの終了を30分後、60分後、120分後、180分後に設定することもできるが、基本的にはこれだけ。間違いようがないシンプルな操作だ。キャプチャが終わったら、iPodをPCに接続し、ライブラリに自動登録されたビデオをiPodに同期すれば良い。 録画の設定は、解像度、ビットレート、アスペクト比別に計10種類の中から選ぶことができる(録画デバイスがiPodの場合。用いる録画デバイスにより設定可能なパラメータは変化する)。が、iPod classicやnanoの小さなディスプレイでは、設定の変更による画質の違いはあまり大きくない。最も低画質な「とても低い」の設定でも、そのビットレートは512kbpsあり、YouTubeなどの動画に比べれば十分高画質だと思う。サンプルは、DVカメラで撮影した猫の動画を本機でアナログキャプチャしたものだが、ちょっと暗くなったことを除けば、十分な画質だ。
ディスプレイの大きなiPod touchに比べると、サイズの小さなiPod classicやnanoで見る動画は、あくまでも余技という印象が強い。ディスプレイサイズという点では最近の携帯電話にも負けるわけだが、動画ファイルの作りやすさや動作の安定性、転送の容易さという点ではiPodに分がある。携帯電話は機種毎の違いが大きい上、ちょっとした設定パラメータの違いで不正なファイルとして撥ねられたり、早送りや巻き戻しができなくなったりすることが多い。それに比べると、iPodの動画は作成が簡単で、ホイールによる早送りや巻き戻しも安定している。iPodの容量に余裕があるのなら、ちょっと試してみるのも悪くないのではないかと思う。 □IMJのホームページ (2007年11月5日) [Reported by 元麻布春男]
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