7月25日 発売 メーカー希望小売価格:54,600円 カシオの電子辞書「XD-SW6000」は、筆順大字典を搭載した電子辞書だ。外国語のコンテンツが主である売れ筋の電子辞書とは一線を画し、国語系のコンテンツを前面に打ち出しているのが特徴だ。 ●ひっそりと登場した「筆順大字典」搭載モデル 今回取り上げるのは、筆順大字典を収録したカシオの「XD-SW6000」だ。手書き入力モデルの普及が一段落し、さて次は何が来るか、というタイミングで、ひっそりと投入されたのが本製品である。同社の総合カタログでも扱いは小さく、注目していないとなかなか気づかない地味な製品である。 そもそも電子辞書というのは、医学用など専門性の高いラインナップなどを除き、外国語コンテンツの豊富さが大きなセールスポイントになっている。本製品もそうした外国語コンテンツを搭載していないわけではないが、あえてそれらを前面に出さずに、筆順大字典、さらにシソーラスといった国語系のコンテンツを大きくアピールしている。これは電子辞書としてはやや異例だ。 XD-SW6000のメーカー希望小売価格は54,600円、ヨドバシカメラでの販売価格は39,800円だった。 ●筐体は従来モデルと共通。日本語コンテンツを重視したメニュー構成 まずはざっと外観およびスペック、コンテンツの紹介をしていこう。 筐体は現行の他モデルと同一で、手書きパネルを採用する以前のモデルと比べると、やや厚ぼったく感じられる。電池は単4電池×2で、電池寿命は約130時間と標準的なスペックだ。カシオの特徴であるバックライトも健在で、暗い場所での視認性も高い。
SDカードスロット、コンテンツの追加機能は、従来の同社製品の機能をそのまま踏襲しており、大きな違いはない。本体メモリ容量は春モデルと共通の50MBと、十分な容量を持っている。音声出力機能は本体内蔵のスピーカーとイヤフォンを選択できる。
本製品で特徴的なのは、キーボード上段のファンクションキーの割当だ。7つ並んだファンクションキーのほとんどが、新しく追加された筆順大字典をはじめとする日本語関連のコンテンツに割り当てられている。英和辞典(ジーニアス)に至っては、収録こそされているものの、デフォルトでファンクションキーに割り当てられていないなど、かなり思い切った構成だ。
コンテンツ数は50と、多くもなく少なくもなくといった部類だ。筆順大字典ばかりに目が行くが、従来は上位モデルにしか搭載されていなかったシソーラス系のコンテンツ(日本語大シソーラス)が搭載されているのも珍しい。筆者の場合、自分で電子辞書を選ぶ際には、シソーラス、つまり日本語の類語辞典の有無を1つの選択基準にしているので、これは個人的には嬉しいポイントだ。 まあ、これは筆者がモノ書きであるという事情に起因するので、すべての人に当てはまるわけでないと思うが、製品を所有している間に1回見るか見ないかといったニッチなコンテンツに比べ、お金を払う価値のあるコンテンツであることは間違いないと思う。いずれにせよ日本語重視の方向性はかなり顕著であると言える。
●楷書1書体/行書2書体/草書2字体が表示できる「筆順大字典」
さて、筆順大字典である。1つの漢字について、楷書1つ、行書2つ、草書2つと、あわせて5つの筆順を表示できるというコンテンツだ。これらを参考にすることで、各字体ごとの漢字の書き順を効率的にマスターできるわけである。メーカーは「書道に役立つ」というキャッチコピーをつけている。 一般的な国語辞典、さらに漢和辞典においても、漢字の筆順を調べるというのはなにかと面倒なものだ。それが楷書だけでなく、行書、草書となるとなおさらである。その点、本製品であれば、とにかく元の漢字を入力するだけで、各書体の書き順をまとめて表示してくれる。さらに旧字体と新字体も収録しているというおまけつきだ。 5つの筆順は、1画面にまとめて表示され、どれか1つを拡大することはできない。また、漢字につけられている追い番号の表示をON/OFFすることもできないので、筆順が複雑な漢字ではやや見づらく感じられることもある。現状では、電子辞書ならではのメリットというのは、あまり感じられない。
また、せっかく手書きパネルを搭載した製品でありながら、この筆順大字典とはうまく連携できていない点も課題として挙げられる。具体的に言うと、以前本連載でもレビューしたキヤノンの電子辞書のように、タッチペンで筆順を学習できる機能が搭載されていないのだ。要するに「ただ筆順を表示するだけ」なのである。 文字の入力そのものは手書きパネルから行なえるものの、これだけではやや心もとない。次期モデルでの進化に期待したいところだ。
●シームレスな使用感が望まれる。漢字の字数増も急務 漢字の筆順を調べる機能について、もう少し詳しく考察してみたい。 カシオの電子辞書においては、今春のモデルから、英単語のネイティブ発音機能がコンテンツに依存しないように改良された。つまり、従来は特定の英語コンテンツの中に発音機能が含まれていたのが、外部の発音機能を呼び出す形に変わったわけである。 このメリットとして、どのコンテンツからでも同一のネイティブ発音機能を利用できることが挙げられる。これまでは、例えば英和辞典Aから調べた場合はネイティブ発音、英和辞典Bから調べた場合は合成音による発音、ということがあったが、発音機能だけを別コンテンツとして持つことによって、それがなくなったわけである。 漢字の筆順を調べる機能というのは、位置付けとしてはこの英語コンテンツにおける発音機能に近い。漢字はあらゆる日本語コンテンツに含まれているわけで、「この漢字の書き順を知りたい」と思った時に、どのコンテンツからでもシームレスに利用できるのが望ましいわけだ。 そうした意味では、今回の「筆順大字典」が各日本語コンテンツで共有できるようになれば、日本語専門の電子辞書としてかなり手堅い製品になると思う。現状でもスーパージャンプ機能を使えば近いことはできるが、現状の「音声」ボタンのような専用ボタンを用意して、もう一歩シームレスに使えるようになれば、非常に面白いと思う。 ちなみに、「筆順大字典」の収録字数は2,700字だが、小学校で習う漢字の数が1,000字ちょっとであることを考えても、やや物足りなく感じる。本製品に含まれるコンテンツ「漢字源」にしても13,000字以上が収録されており、難しい漢字、例えば「鬱」などは筆順大字典には掲載されていなかった。筆順対応を大きく謳うのであれば、こうした部分の充実も期待したい。 ●「小学生向けモデル」への布石? 国語機能を重視した電子辞書というのは、個人的に非常に面白い切り口だと思う。電子辞書の市場自体が飽和状態にある中、新たなターゲット層を開拓したいメーカーの意図は少なからずあると思うが、電子辞書らしくない別の機能をつけて需要の拡大を狙うのではなく、直球勝負で来たところは好感が持てる。 漢字の筆順が調べられる機能ということで、当初は小学生向け市場を狙った製品なのかと思ったが、試用した限りではメーカー側にそうした意図はなさそうである。とはいえ、そうした層への訴求も今後の展開次第で十分ありうるだろう。手書きパネルや音声機能といった派手さはないものの、今後注目すべき機能の1つであると感じた。
【表】主な仕様
□カシオ計算機のホームページ (2007年9月26日) [Reported by 山口真弘]
【PC Watchホームページ】
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