6月29日 発売 価格:オープンプライス シャープの電子辞書「PW-TC920」は、ワンセグ放送に対応したカラー電子辞書だ。新たに手書きパッドを搭載したほか、従来モデルを細部にわたってブラッシュアップし、ワンセグ機能の使い勝手をさらに高めた製品だ。ヨドバシカメラでの購入価格は54,800円だった。 ●「ワンセグ対応電子辞書」のマイナーチェンジモデル ワンセグ放送が観られる電子辞書として話題になったシャープ「PW-TC900」。量販店でも、電子辞書売場とワンセグ機器売場の両方に置かれるなど、電子辞書としては店頭のかなり広い範囲で目にすることができた。発売以来、BCNランキングでもほぼ常時5位以内につけており、一定のシェア獲得には貢献したと思われる。 しかし、この製品が発売されてからの数カ月間で、電子辞書は「手書き入力対応」がスタンダードとなってしまい、手書きに対応しない「PW-TC900」は、電子辞書としては一世代前のモデルに見られてしまう不運な状態にあった。コンテンツ面で決して見劣りしないものの、今回の手書き入力ブームを作ったシャープとしては、春商戦以降、やや売りづらい状況にあったのではないかと推測される。 そんな経緯からも、今回紹介する、手書き入力対応のワンセグ辞書「PW-TC920」の登場は、必然の流れだったと言えそうだ。 ●外観、基本機能は従来モデルと変化なし 従来モデルのPW-TC900はブラックおよびホワイトの2色だったが、本製品はブラックおよびレッドの2色展開。今回試用したのがレッドということで、従来モデルと違った印象を受けるが、外観上の差はほとんどない。本体が従来モデルより微妙に厚くなっているが、これにしても両モデルを並べてようやく分かる程度だ。
連続使用時間は20時間、ワンセグ使用時は5時間と、従来モデルと変わらない。本体重量は従来モデルから若干増え、約300gとなっている。 ワンセグ辞書の大きな特徴であった、画面が180度回転する「テレビスタイル」、折りたたんで手持ちで使用する「ハンドスタイル」といったギミックは本製品でも健在。スピーカーや電源スイッチ、選局ボタンがヒンジ部にレイアウトされている点も、従来モデルを踏襲している。 音量の調整は、上記のヒンジ部ボタンか、本体のメニュー上で行なう。ワンセグ利用時には瞬時にミュートしたい場合もあるだけに、個人的にはダイヤル式のほうが使いやすいのではと感じる。もしくはミュートボタンの実装を望みたいところだ。
タッチペンは右側面に収納される。見た目が左側面のアンテナとほとんど変わらないため、タッチペンを取り出そうとしてうっかりアンテナを引き出してしまうことが多々ある。見た目の違いをつけるか、つまんだ際の感触で判断できるといった工夫を望みたい。 搭載コンテンツについては、OXFORD現代英英辞典が第6版→第7版に変更されるなど、いくつかのコンテンツが最新版に差し替えられている以外は、大きな変化はない。コンテンツの総数も40のままだ。 【お詫びと訂正】初出時、「スーパー大辞林が3.0→4.0」としておりましたが、3.0のまま変更されていませんでした。ご迷惑をおかけした関係者の方にお詫びするとともに、訂正させていただきます。
そのほか、従来モデルから引き継がれている機能として、SDカードスロット装備で簡易MP3プレーヤーとして使えること、コンテンツカードで好みのコンテンツを追加できるといった点が挙げられる。これらの機能の詳細は、「PW-TC900」のレビューをご覧いただきたい。
●手書きパッドを新たに搭載。2マス入力には非対応 本製品では新たに手書きパッドが搭載されたわけだが、前回の連載で紹介した手書きモデル「PW-AT760」に搭載済みの1マスと2マスの切り替えに対応しておらず、1マスでの入力しか行なえない。PW-AT760に比べると手書きパッドの面積が狭く、実装が難しいのかもしれないが、同一メーカーの製品としてちぐはぐさを感じる。
手書きパッドの搭載により、QWERTYキーは上下方向に圧縮されている。キートップのサイズに至ってはタテ方向でわずか5mm弱しかなく、手が大きな人がスムーズに入力するのは非常に困難だ。キーピッチもタテ方向でわずか9mm弱と、従来の電子辞書に慣れた人が使うと、かなり戸惑うことだろう。 従来モデルで特徴的だった「辞書/テレビ」の切替ボタンは、丸型から一般的な角型に改められている。位置的に押し間違えることはないのだが、QWERTYキーと同じサイズで押しづらい。 【お詫びと訂正】初出時、必ず辞書モードで起動すると表記しておりましたが、ヒンジのボタンを押すとワンセグで起動します。ご迷惑をおかけした関係者の方にお詫びするとともに、訂正させていただきます。
このほか、各種ファンクションキーのレイアウトも再編されている。中でも、最上段にあるメニューキーが数字キーと一体化し、「大辞林」、「英和/和英」といったシルク印字がキーボード上から消滅したのは大きな変化だ。これにより、電子辞書らしさが弱まり、AV機器的なスタイリッシュな印象が強くなっている。
●ワンセグ関連機能にブラッシュアップの跡あり 新搭載された手書きパッドの陰に隠れがちだが、ワンセグ関連の機能が細部にわたってブラッシュアップされていることは、本製品の大きな特徴だ。 新たに搭載された機能としては、選局設定機能が挙げられる。初期設定時に必ずチャンネルをサーチしなければいけなかった従来モデルと違い、本製品は地域別のチャンネル設定がプリセットされており、スムーズに使い始められるようになった。旅行先などで利用する際、いちいちチャンネルをサーチしなくても、手軽に切り替えが行なえるのは便利だ。 また、ワンセグの画面において、新たに番組名が表示されるようになった。従来モデルでは、チャンネル名こそ表示されるものの、番組名を表示することはできなかった。ワンセグ製品としては基本の機能であるが、細かい部分をブラッシュアップしてきた点は評価できる。
細かいブラッシュアップとしては、もう1つ、キーボード盤面のシルク印字の強化が挙げられる。本モデルではワンセグ関連の操作がキーボード盤面上に赤字でシルク印字されており、直感的な操作が可能になった。チャンネルの切り替え1つとっても、これまでであれば上下キーでなければ行なえなかったのが、本モデルでは上部の数字キーを用いて操作できるようになっている。 上記のように、ワンセグ視聴時の使い勝手は大幅に改善されているが、EPGやデータ放送、録画といった機能に対応しない点は、従来モデルと変わらない。実際にこれらの機能が使われるかどうかはともかく、セールストーク上はややマイナスだ。個人的には、データ放送や録画機能はともかく、EPGへの対応は望みたい。 ちなみに、ワンセグの受信感度であるが、試用した限りでは、従来モデルとの違いは見られなかった。従来モデルと2台並べてテストを行なっている際、本製品だけが受信できるというシチュエーションもなかったわけではないが、ほとんど誤差と言ってもいいレベルに感じられた。もともと従来モデルも、ワンセグ製品としては十分な感度を持っていたわけで、これは特に問題にはならないだろう。 1つ惜しいのは、新たに搭載された手書きパネルが、ワンセグ機能利用時にまったく活かされていないこと。ワンセグ視聴中にタッチペンを握って何かをするというのはナンセンスだが、データ放送の一部や番組名を表示するといった支援用途には使えるかもしれない。今後なんらかのメリットを打ち出してほしいと感じる。 ●基本的に従来モデルのマイナーチェンジ版。ワンセグ重視派におすすめ 従来モデルとの違いを一言で言えば「手書き入力対応」なのだが、そもそも手書き入力が標準となった現在、ようやくスタートラインに立っただけというのが正直な印象だ。実際に使った限りでは、むしろワンセグ関連機能のブラッシュアップのほうが目立つくらいだ。ワンセグ重視派であれば、使い勝手の面からも、従来モデルではなく本製品を選ぶべきだと思う。 今回のマイナーチェンジモデルの投入は、同社がワンセグ対応電子辞書をこれからも展開していく決意の表れだとも言える。あまりサプライズと言える新機能こそなかったわけだが、次回以降で同社ならではの新機軸の機能が打ち出されることを期待したい。
【表】主な仕様
□シャープのホームページ (2007年7月19日) [Reported by 山口真弘]
【PC Watchホームページ】
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