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【IDF Fall 2007レポート】

ポール・オッテリーニCEO基調講演
~次世代プロセスの製品を多数紹介

Intel社長兼CEOのポール・オッテリーニ氏。手に持っているのは32nmプロセスで製造されたSRAMのシリコンウェア

会期:9月18日~20日(現地時間)

会場:San Francisco「Moscone Center West」



 IDF初日の朝は、米国開催のIDFでは恒例となっているポール・オッテリーニ社長兼CEOの基調講演が行なわれた。ここでは11月12日の発表が正式に予告された45nmプロセスの製品群や、マイクロアーキテクチャを変更する次世代CPU「Nehalem」の動作デモなどが実施された。

●32nmプロセスのSRAMシリコンを公開

 今回のポール・オッテリーニ氏の基調講演は「EXTREME to MAINSTREAM」と名付けられたもの。冒頭で示された例では、現在はスターバックスの店頭でPCを広げ、無線LANに接続し、MP3プレーヤーを利用するような光景は当たり前になったわけだが、これが5年前はEXTREMEな姿であり、10年前には想像すらできない姿であった。これがEXTREME……革新的なテクノロジーがメインストリームへ浸透した姿であり、講演内容は次にこうした流れを生むために登場する製品やテクノロジーが次々に飛び出すものとなった。

 最新技術を市場に普及させるにあたって、Intelが持つ能力の1つがプロセステクノロジーだ。今年(2007年)後半にも45nmプロセスの製品が市場に投入されることは、これまでのIntelの講演でも紹介されてきた。これは、ハフニウムを利用したHigh-kメタルゲートトランジスタにより、リーク電流を10分の1以下に抑え、20%のトランジスタパフォーマンス向上を達成したことによって生み出されたプロセスだ。

 そして、Intelは2年ごとに新しいプロセスを生み出しており、次は2009年の目標となる32nmプロセスとなる。このプロセスもすでに開発が進められている。今回の基調講演では、完全に機能するSRAMの32nmプロセスウェハを公開。19億個のトランジスタを持つ291MbitのSRAMアレイを持つもので、第2世代のHigh-kメタルゲートトランジスタが利用されるという。

●Penrynの11月12日発表を予告

 今回のIDFの大きな話題の1つが45nmプロセスの製品であるが、Intelはこの45nmプロセスの製品を「45nmプロセスのマジック」と呼びアピールしている。この“マジック”の意味するところは、ローパワーのSilverthorneから、マルチコアのLarrabeeまで、実に多彩な製品を生めることに由来している。

 オッテリーニ氏はこの45nmプロセスのPenrynベースの製品は、11月12日に発表されることを正式に予告し、この段階でも複数のSKUが用意されたうえで、来年(2008年)の第1四半期にはさらに15~20個のSKUが登場する見込みであるとした。

 そして現時点でハフニウムを用いた45nmプロセスで、これほど多数の製品を登場させることができるのはIntelだけであると、プロセステクノロジーの優位性をアピール。また、パッケージ技術についても、パッケージサイズの縮小化を図っているほか、2008年にはすべての45/65nmプロセスの製品をハロゲンフリーにしていくことを宣言している。

45nmプロセスでは非常に広い範囲の製品をカバーすることができ、これを45nmプロセスのマジックと呼んでいる パッケージング技術についても、小型化とハロゲンフリー化を推進していくとしている

●「I am Nehalem」……生後3週間のNehalemの動作デモ

 Intelはここ数世代、プロセステクノロジーの更新とマイクロアーキテクチャの更新を交互に行なうTick-Tockモデルと呼ばれる方式でマイクロプロセッサの開発を進めている。Coreマイクロアーキテクチャをベースにプロセスを更新するのがPenrynということになり、次はマイクロアーキテクチャの更新ということになる。

 それがNehalemだ。オッテリーニ氏は「Nehalemはダイナミックなアーキテクチャ」であるとする。Intelの視点ではNehalemはダイナミックに製品のコンフィグレーションを変更できるアーキテクチャとなる。モジュール方式のアーキテクチャにより、キャッシュ容量やI/Oの設定、電力枠を自由に設定して製品を作ることができる。これにより広範囲のシステムをカバーできるとしている。

 そしてデベロッパの視点からは、システムのニーズをリアルタイムに把握して、スレッドやキャッシュのON/OFFを切り替えてパフォーマンスをダイナミックに最適化できるアーキテクチャであるとした。

 Nehalemは2008年後半の登場を予定。最初の製品は8コアCPUとなり、SMTによって16スレッドを使用することができる。そして、すでにA0リビジョンのプロセッサが3週間前に完成。基調講演では「I am Nehalem」としゃべる動作デモを実施したほか、Windows XPやMac OS Xの動作も確認しているという。

 この45nmプロセスの立ち上がりの順調さについても言及。現在オレゴンとアリゾナの2つのFabで製造を行なっているが、2008年にイスラエルとアルバカーキ(ニューメキシコ)の2つのFabが2008年に稼働を開始する。このFabの建設にあたっては40億ドル以上の投資をしており、45nmプロセスに自信がなければできないことであるとしている。

Nehalemのウェハを持つオッテリーニ氏。トランジスタ数は7億3,100万個と述べている I am Nehalemと話す、Nehalemの動作デモ 45nmプロセスは現在2つの工場で生産中。来年はさらに2つのFabが立ち上がる

●市場のメインストリームであるモバイル

 続いては、次にくるメインストリームとすべき製品に関する話題で、最初に挙げられたのがモバイルである。すでにモバイルはメインストリームの存在になっていると前置きしたうえで、次のモバイルのメインストリームがWiMAXの統合であるとした。IntelのCentrinoがWi-Fi普及のきっかけを作ったが、それでもまだ接続性は不足しており、これまで北米を中心に120のサービスが提供されているWiMAXを、今後は世界へ浸透させていく意欲を示した。先日KDDIなどが中心となって日本で結成されたWBBも代表的な例として示された。そして、2008年登場予定のモバイルプラットフォームであるMontevinaのPCでは、WiMAXモジュールが用意され、すでに製品化を予定しているメーカーがある。

 そのMontevinaでは、25WのPenrynコアCPUが用いられ、Blu-rayなどのHD再生をサポートするグラフィック統合型チップセットを組み合わせたプラットフォームとなる。このMontevinaはすでにラボから消えており、来年の5月の出荷に向けて準備が進められているという。

 一方、さらに消費電力を抑えた製品も登場してくる。Intelは2005年のIDFにおいて、2010年までに10倍のパフォーマンスと10分の1の消費電力という目標を挙げたが、パフォーマンスはその軌道に乗っているものの、省電力に関しては目標を2008年に修正。2010年はさらにアイドル時の消費電力を10分の1へ抑制するとした。

 その軌道修正された2008年に登場する消費電力10分の1の製品が、「Menlow」と呼ばれるものだ。CPUのSilverthorne、チップセットのPoulsboで構成されるプラットフォームとなる。

 そして、2010年に向けてはMoorestownと呼ばれるプラットフォームによってアイドル時の消費電力を10分の1へと減らしていく。この詳細は翌日のUltra Mobilityに関する基調講演で詳細が発表される見込みだ。

モバイルプラットフォームの次の形は、IAアーキテクチャとWiMAXの融合であるとする KDDIが中心となって日本で立ち上がったWBB、WiMAX搭載ノートPCの登場など、WiMAXをメインストリームへ押し上げていく要素が揃いつつある 基調講演で利用されたMontevinaプラットフォームのデモ機。ここでHD映像の再生デモが行なわれた
2008年前半に登場するUMPCプラットフォーム「Menlow」。消費電力10分の1の達成を2年早めるプラットフォーム Menlowのデモ機を用い、ザイオン国立公園でWiMAXを利用してインターネットアクセスをしている様子

●Intel X38は10月10日に発表

 続いて語られたのは、エンターテインメントに関する話題だ。家庭ではインターネットを通じた対話型アプリケーションが消費者の間で流行しており、その代表にゲームを挙げた。全米で8,000万人以上、アジアでは1億1,400万人がPCによるゲームを楽しんでいるというデータを取り上げ、PCゲームはすでにメインストリームになっているとしている。

 ゲームユーザーは飽くことなきパフォーマンスの追及に没頭しており、ゲームは高いプロセッサとグラフィックのパフォーマンスを要求する。そこで壇上にはXtremeSystems.orgのオーナーであるチャールズ・ワース氏が招かれ、Intel X38を搭載したシステムでオーバークロックを行ない、世界記録をその場で次々に達成するデモを実施。

 このデモは、「Intel X38」とPenrynベースのクアッドコアCPU「Yorkfield」を利用したもの。Yorkfieldは先述した11月12日に発表されるPenrynベースのCPUの1つで、倍率アンロック状態で出荷されるという。

 そして、Intel X38は10月10日の発表が予告された。このチップセットに対しては、BIOSをWindows上から制御するようなチューニングツールが提供されることになる。

Yorkfield+Intel X38環境におけるオーバークロックデモの環境 ガス冷装置を使い、マイナス160度以下に下げてCPUをオーバークロック。Yorkfieldを5.56GHzで動作させていた Intel X38で提供されるチューニングツール

 グラフィック統合型チップセットについても言及された。Intelは1世代または2世代前のプロセス技術を用いてチップセットを製造することは広く知られている。2009年には45nmプロセスがグラフィック機能へも投入されるが、これはグラフィックとCPUを統合したものとなり、130nm世代から6倍のパフォーマンスとなる。

 そして、32nm世代ではCPUとグラフィック機能が同じタイミングでローンチされることを発表。これは2010年に予定されており、パフォーマンスは130nm世代のグラフィック統合型チップセットに対して10倍に達する見込みであるとしている。

 グラフィックスに関する話題として、オッテリーニ氏はメニイコアCPUであるLarrabeeについても言及。このデモを2008年に行なうと予告したが、ここではビジュアルコンピューティングセグメントに適用する方針を示した。パフォーマンスはTeraFlopsの次元になるが、このLarrabeはIAベースであるため、すでにさまざまなソフトウェア開発の場において使われている技術や知識をそのまま活用できるのがメリットであるとしている。

 そして檀上には先週の金曜日にIntelが買収することを発表したHavokのジェフ・イエイツ氏や、ゲームデベロッパであるPANDEMICのジョシュ・レスニク氏らが登壇。クアッドコアがゲーム開発における新しいスタンダードとなる存在であるとし、ゲームにさらに複雑な物理演算を組み込むことが可能となるであろうLarrabeeに期待を寄せた。

統合型グラフィックは45nm世代でCPUと統合。32nmプロセスではCPUと同じタイミングで最新のプロセス技術を適用し、パフォーマンスは130nm世代の10倍に達する見込み IAベースのメニイコアCPU「Larrabee」

●家電と企業に向けた取り組み

 家電においては、今後はインターネットアクセスの実装が当たり前になるとし、コンピュータのような製品の開発サイクルの短縮化が求められるようになるとしている。そこにおいてはソフトウェア開発の能力も求められるとし、家電産業におけるメーカーの力関係の変化を生む可能性があるとした。

 そこでIntelが貢献するのが、家電が必要とする機能を満たしたIAベースのプロセッサである。IAのプロセッサコアにグラフィック機能やAVパイプランなど実装したシステムオンチップ(SoC)を2008年に投入することと、このコード名が「Canmore」であることを発表。来年1月のInternational CESでデモを実施することを予告した。

 企業向け製品における取り組みとしては、消費電力に対する取り組みについて述べられた。ここでは、米環境保護局のEnergy Starチームのマネージャであるアンドリュー・ファネラ氏が登壇。CO2排出をより減らすためのコンピュータ仕様であるEnergy Star 4.0を7月にローンチしたことに加え、Intelなどの企業が取り組んでいる環境保護プログラム「Climate Savers」に期待を寄せた。

 また、Intelが開発したEco Rackを紹介。これはAC→DC変換に伴う損失を減らし、ラック内をDC電源で完結することでエネルギー効率を上げたサーバーラックである。エネルギー効率が18%改良され、それは環境だけでなくTCO削減にもつながることをアピールした。

家電機器向けに提供されるIAベースのSoC「Canmore」。2008年1月のInternatonal CESで発表/デモが行なわれる予定 環境保護プログラムへの取り組みである「Climate Savers」。IT企業を中心に行なわれている AC-DC変換のロスを削減し、18%の効率向上を達成したEco Rack

●人々が望むプロダクトがビジネスを作る

 最後にオッテリーニ氏は、これまでことあるごとに語られてきた成長市場における“次の10億人”のインターネット接続が達成されたことを発表し、さらに次の10億人の情報格差を埋めていくことへの取り組みを発表。Classmate PCやASUSTeKのEeePCを、政府と協力して教育機関へ配布していく取り組みや、サービスプロバイダと協力してインターネット環境を整えていくと述べた。

 最後にオッテリーニ氏は、発明家のチャールズ・ケタリング氏がデルコ・エレクトロニクス在籍中の不景気のときに語った言葉を引用。「人々が買うことを望む製品を我々が作り上げれば、ビジネスが戻って来ると信じる」という言葉は、インターネットバブルが弾けて業界全体が不景気になった2001年のIDFでも引用したもので、そこから人々が望むものを作り続けた結果、6年間で業界は2倍に成長した。とくにモビリティに関しては4倍も成長したとしている。

 そして、今は6年前よりも成長を感じさせるにあたって楽観視できる状況であるとしている。今回のオッテリーニ氏の基調講演でも見られるとおり、今回のIDFでは45nmプロセスの製品が大々的にアピールされている。そして、次世代のマイクロアーキテクチャや32nmプロセスのSRAMなど発表されている。Extremeなアイデアをメインストリームへ現実的にしていけるほどの生産力を見通すことができ、さらにそれが楽観視できる状況であるほど、今のIntelは短期的に見てテクノロジーの土台がしっかり整っているということなのだろう。

□IDF Fall 2007のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/fall2007/
□関連記事
【9月20日】【IDF】Intel、45nm製品の11月12日投入を正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0920/idf02.htm
【9月19日】【IDF】Intel、SkulltrailやNehalemの実働デモなどを初公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0919/idf01.htm
【9月19日】KDDIとIntelら、モバイルWiMAX推進に向けた新会社を設立
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0919/kddi.htm
【9月18日】Intel、物理演算エンジンメーカーのHavokを買収
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0918/intel.htm

□IDF Spring 2007レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/link/idfs.htm

(2007年9月20日)

[Reported by 多和田新也]

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