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ついに仕事用環境をVistaに移行:その2




●腹ただしきはVistaアップデート

 何はともあれ、ようやく仕事環境をVistaへ移行させた。とりあえずGUIはWindows Aeroのままで、怒りの余りフルクラシック仕様にするには至っていない。が、Windows XPを最後までフルクラシックで使っていた筆者のこと、いつAeroをOFFにしないとも限らないのだが、UACを無効にすることでだいぶ心が穏やかになった気がする。

 今回、Vista上に今まで使ってきたWindows XP相当の環境を作っていて辛かったのは、やはりソフトウェアのアップデートだ。これまでXP上で使ってきたバージョンがそのまま使えないものが多く、結局、すべて最新版を集めることとなった。Windows Vista自身も、このマシンをセットアップした時点からはだいぶアップデートされているため、Windows Updateを行なうわけだが、1度ですべてのアップデートが完了せず、ダラダラとアップデートが送られてくるのが面倒だ。

 こちらからアップデートをチェックしにいって、見つからないから終わったのかと思うと、しばらくしてごそごそWindows Updateが動き出すという具合で腹立たしい。サーバーの負荷を考えてのことかもしれないが、アップデート完了後にリブートしなくてはならないことも、相変わらず少なくないため、作業の中断を余儀なくされる(後から再起動を選んでも良いのだろうが、それでは落ち着かないタチである)。1回のアップデートにかかる時間が長くなって良いから、せめてWindows本体分だけでも、一気に最新の状態までアップデートさせて欲しいものだ。

 画面1は、この10日間あまりの期間で発生した障害だが、残念ながらいずれも解決策はない、という答えが返ってきている。どれも特に致命的(ブルースクリーン)ではなかったのだが、結構、先が思いやられる気がする。

 Windows Vistaを使って良かったと思うのは、音を出すアプリケーションの音量を、アプリケーション単位で設定可能になったことだ(画面2)。音楽を聴くためにボリュームを上げたところに、Windowsのシステム音が大音量で鳴る、というのは勘弁して欲しいことだった。Vistaなら、1度それを体験すれば、ミキサーの設定で次回からは回避することができる。

【画面1】この10日間あまりに生じた障害。解決策の確認を実行したところ、79件の障害が送信された 【画面2】Windows VistaのMixier。従来のデバイス毎ではなく、アプリケーション毎に音量を設定する

 Vistaではサウンドドライバ自体がユーザーモードに移されたため、サウンドがらみでブルースクリーンに落ちることがないのも安心感がある。オマケについてくるゲームもスパイダソリティア以外は、おおむね良くなっていると思う。チェスも強すぎず、筆者でも勝てる程度の弱さに設定できるのがグーである。

 一方、どうしても使い勝手が悪いのがWindows Media Centerだ。本来、10フィート用に作られているアプリケーションを、デスクトップで、しかもウィンドウ状態で常用しているのが間違いだということは分かっている。が、現状、Vista上で使えてAeroと共存可能なTVチューナカードの多くが、TV視聴アプリケーションとしてMedia Centerを使わざるを得ないことを考えると、もう少し何とかならないかと思う。マウスのスクロールホイールを使ってくれないユーザーインターフェイス、狭苦しくて見通しの悪い番組ガイドは特に不満だ。

●プラットフォーム移行とDRMの寿命

 Windowsそのもの以外の部分で一番がっかりしたのは、これまでずっと遊んできた、Windows版風来のシレン「月影村の怪物」(インターネット版)と別れる時が来たことかもしれない。ソフトウェアそのものはVista上でもとりあえず動いているのだが、発売元のチュンソフトが新規のオンラインでユーザー登録(認証)をやめてしまったため、XPからVistaへ移行する際に体験版としてしか使えなくなってしまった。

 筆者にとって風来のシレンは、GB版からの移植である最初の「月影村の怪物」だけで、後にでた外伝はもはやシレンではない。rogueと同じH、J、K、Lの4つのキーで操作できないシレンに、筆者にとっての価値はないからだ。2007年になって、またキャラクタベースのrogueに逆戻りである。

 「月影村の怪物」は、今から5年前の2002年にリリースされたタイトルだ。5年も前のタイトルなんだから、という見方もあるかもしれない。だが、見方を変えればたったの5年前でもある。

 先日、音楽CDが25周年を迎えた、というニュースがあった。筆者も'82年の秋に、晴海で開催されたオーディオフェアで試作機を見て、翌'83年春にローンを組んで第一世代のCDプレーヤーを購入したことを今でも覚えている。購入したプレーヤーは当時の価格で20万円以上したため、社会に出たばかりの筆者はポンとは買えなかったのである。その時に購入した音楽CDは、今でも聞くことができるし、そこからリップしたデータがiPodに入っている。音楽CDであれば25年前の作品が今も利用できるのだ。

 これまでPCのゲームは、プラットフォームの陳腐化により互換性を失い、舞台から去ることを余儀なくされた。しかし、現在注目されている仮想化技術が普及すれば、古いプラットフォームとの互換性を容易に構築することが可能になる。理屈の上では愛着のあるPCゲームを長期に渡ってプレイし続けることも可能になるハズだ。特にパズル系のゲームなら、ずっと楽しめるものは少なくない。それを阻むものの1つが、オンライン認証を含む、コピープロテクション技術だ。

 現在、わが国で配信されている音楽データの大半は、DRMという名のプロテクションが施されている。DRM付きの音楽データをいつまで利用できるかは、プラットフォームの寿命に依存し、必ずしもユーザーの思い通りにはならない。

 今回、Windows Vistaへの移行に伴い、筆者はiTunesのライブラリを新しい環境へと移行させた。筆者のライブラリのうち、DRMについたデータは14,000曲中の80曲程度(iTunes Storeエクスクルーシブのコンテンツが大半)だが、これらDRM付きのデータも問題なくVistaで利用できている。しかし、CDのように25年後に、これらDRM付きのデータを再生することは可能だろうか。

 25年という歳月は、デジタルの世界では無限とも感じられる長さだが、音楽の世界では決して超えられない時間ではない。筆者のライブラリで最も古いのは'83年に購入したCDから取り込んだものだが、音源そのものは'60年代や'50年代のものもある。映画や文学なども含め、コンテンツの寿命は25年よりもっと長く、時間の淘汰を経たものこそが名作と呼ばれる。

 MP3やAACがそう簡単に再生不可能になるとは思えないが、万が一CODECが陳腐化しても、DRMがなければトランスコードしながら、予期しうる将来にわたって再生し続けることが可能だろう。だがDRM付きのデータではそうはいかない。DRMのついたデータをコンバートすることは事実上できないし、現在のDRMをサポートしたプラットフォームの寿命がそれだけ続くとも思えない。

 DRMが付与されることで、コンテンツは時間の淘汰を受ける資格を失う。それは作品が消費される商品に成り下がってしまうことではないか。極端に言えば、筆者はそう思っている。

□関連記事
【8月20日】【元麻布】ついに仕事用環境をVistaに移行
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0820/hot501.htm
【2006年12月4日】【元麻布】VistaでMCE対応TVチューナカードを試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1204/hot458.htm

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(2007年8月28日)

[Reported by 元麻布春男]


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