元麻布春男の週刊PCホットライン

iMacに見るIntelとAppleの関係




 8月8日、Appleはクパチーノの本社で、「スペシャルイベント」を開催した。このイベントの冒頭を飾ったのはモデルチェンジしたiMacだったが、それがイベント全体に占める割合は5分の1程度。残りはiLife '08、.Mac、iWork '08で占められていた。同日付でMac miniのマイナーチェンジも行なわれたにもかかわらず、ほとんど触れられなかったことを考えると、ソフトウェアに対する比重が相当に高いイベントだったことが伺える。

 確かにIntelプラットフォームへ切り替わったことで、例え新製品であってもハードウェアそのものにサプライズがある可能性はグンと減った。PCだろうとMacだろうと、Intelのプラットフォームロードマップから外れた製品が出てくる可能性は極めて低いからだ。逆に独自のプラットフォーム開発を行なっていては、プラットフォームをIntelに切り替えたメリット(競争力のあるCPUの採用、プラットフォーム開発コスト負担からの解放)の半分が消し飛んでしまう。プラットフォームはIntelに任せて、それ以外の部分にリソースを投入するとなると、その対象が外観デザイン(今回のiMacではアルミニウム筐体や、Mac Bookライクなキーボードということになるだろう)であったり、ソフトウェアであったり、サービスであったりするのはある意味当然のことだ。

●未発表のIntel CPUを載せた理由

24型(写真右)の新型iMacでは、Intel未発表の2.8GHzのCore 2 Extremeを搭載可能

 とはいえ、iMacのハードウェアに全くサプライズがなかったわけではない。その最たるものは、CTOオプションとして提供される「2.8GHz Intel Core 2 Extremeプロセッサ」だ。が、FSB 800MHzで動作クロック2.8GHzというデュアルコアプロセッサは、現時点でIntelのカタログには掲載されていない。

 iMacの中身については、現時点でそれほど細かい情報がない(まだ分解記事を目にしていない)ので、100%断定するわけではないが、従来モデルのスペック、公開されている新モデルのスペック等から考えて、新しいiMacもモバイルプラットフォームをベースにしているものと考えられる(GPUもモバイル向けRadeonである可能性が考えられる)。先頃Intelは、モバイル向けにもExtremeラインのCPUを発表したばかりだが、ラインナップは2.6GHz動作のCore 2 Extreme X7800のみ。CTOで選択可能なプロセッサは、おそらく未発表のX7900とでもいうプロセッサだろう。

 こうしたIntelがまだ発表していないプロセッサをAppleが採用した事例は、過去にもある(3GHz動作のXeon等)。AppleがIntelからなにがしかの特別待遇を受けているというのは、否定しがたいことだ。実際、IntelにはApple担当の副社長(Deborah Conrad執行役副社長)さえいる。Conrad副社長は、「Team Apple」の責任者であり、IntelとApple両社間のすべてを統括する。もちろん主要なOEMにはそれぞれ担当者がいるし、DellとSun Microsystemsの両社についてはグローバルアカウントを統括する執行役副社長がついている。だが、世界市場でのシェアを考えると、Appleが特別な扱いを受けているという印象は否めない。

 だが、ほかにもIntelからある種の厚遇を受けている会社はある。例えばソニーは、未発表の超低電圧版プロセッサの提供を受けたことがあるし、オンキヨーはIntel Capitalの出資を受けている(Intelからの出資を受けることは、必ずしも良いことばかりではないかもしれないが)。Apple、ソニー、オンキヨーといった会社に共通するのは、コンシューマ向けの製品を主力にしている会社である、ということだ。

 元々Intelは半導体メーカーであり、消費者向けの最終製品を持たない会社である。本質的にコンシューマから比較的遠い会社であり、コンシューママインドが分かる会社ではない。コンシューマ向けブランドとして立ち上げたViivは順調とは言い難いし、一時期展開していたコンシューマ事業(顕微鏡やデジタルカメラ、デジタルオーディオプレイヤーといった、コンシューマ向けの最終製品を手がけていた)もすべて撤退してしまっている。

 逆に企業向けコンピューティングについては、iAMTなどの技術開発とそれをプラットフォームレベルに引き上げるvPro、ブレードサーバーの共通仕様策定など、比較的うまくいっている。企業向けコンピューティングであれば、何より自分自身がユーザーでもあるのだから、話が早い。

 シェアにかかわらず、Appleやソニー、あるいはオンキヨーといった会社をIntelが支援しているように見えるのは、これらの会社がコンシューマに特化したPCを創っている会社だからではないか、という気がしている。まぁAppleは、コンシューマに特化したPCなど作った覚えはない、というのかもしれないが、実質的にiMacはコンシューマと教育市場向けという位置づけであろう。いずれにしてもコンシューママインドが分かる会社に対して、Intelはある種のコンプレックスがあるのかもしれない。

●サービスや周辺機器でMacユーザー数を拡大

 さて、今回の発表で比重が置かれていたものの1つは.Macだ。Appleが提供する有償のオンラインデータ共有サービスである.Macは、今回容量が10倍の10GBに拡張された。何せ、Google Mailが2GBを超えるメールボックスを無償で提供する時代、1GBの容量で有償サービスを行なうのは、いかにサービスの内容に違いがあろうと少々無理があった。10GBへの拡張で、面目を保った格好だ。

新たに提供される「ウェブギャラリー」サービス

 この拡張と同時に新しく提供されるサービスがウェブギャラリーだ。iMacにバンドルされるiLife '08に含まれるiPhoto '08と連携して、静止画や動画を公開するサービスである。WindowsやiPhoneからも利用できるのがウリだが、iPhoto '08が利用できるMacから利用するのが最もエレガントであるのは言うまでもない。

 iPod同様、iPhoneのユーザーも多くはWindowsユーザーだと思うが、iPhoneを使い、iTunesを使い、.Mac上のウェブギャラリーにアクセスすることで、徐々にMac的な使い方に慣らされる可能性は高い。慣れてしまえば、WindowsからMacに移行する障壁は低くなるし、逆にiPhoneを使うのであればMacの方が良いと思うようになるかもしれない。

 米国ではiPodはデジタルオーディオ市場の7割を占める。Macの市場シェアは、世界中で最も高い米国でも6%程度に過ぎないから、大半のiPodユーザーはWindows版のiTunesを利用していることになる。このWindows版のiTunesがWindows領内に築いたApple第一の橋頭堡であるとしたら、iPhoneや.Macは第二、第三の橋頭堡になる可能性がある。ここからユーザーがMacへと流れる可能性は否定できないところだ。

 日本の場合、当面iPhoneのリリースもなさそうだし、それほど神経質になる必要はないのかもしれない。が、米国では少しずつだが着実にMacのシェアは伸びている。ノートPCのメーカー別シェアでは、すでに4位まで上昇したともいう。にもかかわらず、Microsoftからは特段の動きは見られない。かつてはそうでもなかったと思うのだが、最近のMicrosoftからはあまりコンシューママインドを感じない。そう懸念するのは筆者だけだろうか。

□Appleのホームページ(英文)
http://www.apple.com
□製品情報
http://www.freescale.co.jp/products/mram.html
□関連記事
【8月8日】iMacをはじめ、コンシューマ向け製品を一気にリニューアル
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0808/apple5.htm
【8月8日】アップル、ディスプレイ一体型のiMacをモデルチェンジ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0808/apple1.htm

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(2007年8月9日)

[Reported by 元麻布春男]


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