Apple Special Event詳報 iMacをはじめ、コンシューマ向け製品を
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Apple スティーブ・ジョブズCEO |
8月7日(現地時間) 開催
米Appleは8月7日(現地時間)、カリフォルニア州クパチーノの同社内ホールにおいて、報道関係者向けにApple Special Eventを開催した。イベントには同社のスティーブ・ジョブズCEOが登場。リニューアルされたiMacをはじめとして、iLife '08、iWork '08のアプリケーションスイートを発表。他にも多数のMac関連製品の発表、更新が行なわれた。
最初にジョブズCEOは、簡単にMacの市場での成長について触れた。PC市場全体の成長率が8~13%にとどまったこの1年のなかで、Mac関連単独で見ればほぼ3倍となる28~36%の成長率を達成した。曰く「Macにとってすばらしい12カ月だった」という。
「今日はMacのプロダクトラインのなかでiMacにフォーカスする」として、同氏はあらためてiMacのコンセプトを振り返った。携帯電話や音楽プレーヤー、さらにノートブックPCまで、現在の市場は「オール・イン・ワン」、つまり単体で完結する製品で溢れている。現実、PC市場の40%はノートブックタイプが占める。iMacはオール・イン・ワンのデスクトップコンピュータというデザインを早期に開拓し、そして成功を収めてきた。
そのiMacをさらに良くするためにどうするか? ジョブズCEOは「プロフェッショナル向けの製品で使われる2つの素材に注目した」。その2つとは、アルミニウムとガラス。前者はプロフェッショナル的なイメージがあり、軽量で丈夫。後者はエレガントなイメージと擦り傷に強いという特性がある。さらに、ともに「リサイクルが容易」であることを強調した。ちなみにアルミニウムはMac ProやMacBook Proでお馴染み。先日発売されたiPhoneは、アルミニウムとガラスの両方を採用している。
PC市場全体の成長率が8~13%にとどまったこの一年のなかで、Mac関連単独で見ればほぼ3倍となる28~36%の成長率を達成 | 現在の市場で評価の高い製品は、オール・イン・ワンのプロダクト | プロフェッショナル向けに評価が高く、注目をした2つの素材。「アルミニウム」と「ガラス」。いずれもリサイクルが容易 |
背面はジョブズCEO曰く、高品質なプラスチック素材 | 背面下部に集中するインターフェイス | 内蔵iSightカメラは目立たなくなった |
そしてスライドに登場した新しいiMacは、その言葉どおりのデザインとなっていた。新iMacのスクリーンサイズは2つで、20型と24型になる。いずれも液晶パネルは「Glossy Displayを採用した」。消費者はこうした光沢のあるパネルを好むという。「(画像が事前にネットに流出していたため)もうすでにWebで見たかも知れないが(笑)、キーボードも新しくなった」とジョブズCEOは続けた。キーボードは従来のものに比べ、手前の高さが0.89インチ(約23mm)から0.33インチ(約8mm)へとおおよそ3分の1程度まで薄さが強調されたデザインとなった。
キーボードはExpose、Dashboard、そしてメディアコントロールキーがファンクションキーにアサインされた。従来製品ではほぼ同一のデザインだったワイヤレスキーボードもあわせて新しくなった。Bluetooth 2.0に対応する新ワイヤレスキーボードは、10キー部分のなくなったコンパクトサイズだ。
ネジ1本の着脱で、簡単にメモリの増設が可能 | 採用される液晶パネルは20型と24型。従来存在した17型は廃止された | 消費者は光沢のあるつやつやした画面を求めているとのこと。グレアパネルを採用 |
本体に合わせてアルミニウムベースとなった新キーボード。従来製品と比べるとこんなにも薄い | Expose、Dsahboardのホットキーが追加された | 巻き戻し、早送り、再生/停止といったメディアコントロールキーも追加 |
「それでは中身の方はどうか?」ジョブズCEOは続ける。最大2.4GHzのCore 2 Duoプロセッサを搭載、そしてBTOオプションとして(Core 2 Extremeの)2.8GHzも用意される。メモリは最大で4GBが搭載可能。IEEE 802.11n + Bluetooth 2.0の無線機能がビルトインされ、HDD容量は最大1TBまでカスタマイズできる。
従来モデルは17型、20型、24型で構成され、それぞれ1,199ドル、1,499ドル、1,999ドルだった。これを新iMacでは20型、20型、24型のラインナップとして、それぞれ、1,199ドル、1,499ドル、1,799ドルで提供する。ミッドレンジの価格は据え置きとなるが「エントリーモデルは300ドル分の価値が付加され、ハイエンドは200ドルの値下げとなる」と価格面でのメリットを強調した。なお、国内のAppleStore価格は159,800円、199,800円、239,800円となる。
3モデルの差異は写真のとおり。いずれもATI Radeon HD 2000シリーズを搭載するが、エントリーモデルのみ2400 XT、他の上位モデルは2600 PROが採用されている。
なお、ジョブズCEOの紹介やニュースリリースでは3モデルのラインナップが紹介されているが、日米のAppleStoreでは、BTOオプションとされているCore 2 Extreme 2.8GHzを搭載するiMacがあらかじめコンフィグレーションされて販売されている。CPUのほかには、2GBメモリを標準搭載、HDDも500GBのものが搭載されている。そのほかの仕様は他のラインナップと同一だ。米AppleStoreでの価格は2,299ドル、日本のAppleStoreでは299,800円となっている。
すべてがNVIDIA製のGPUとなったMacBook Proとは対照的に、iMacのGPUはすべてAMD(ATI)製のATI Radeon HD 2x00シリーズになった | BTOによるHDDの最大搭載容量は1TBに達した |
コンフィグレーションは3モデル。コストパフォーマンスの向上をアピール | 標準的な3つのコンフィグレーション。日米のAppleStoreでは、Core 2 Extremeを搭載する最上位モデルも用意されている | 更新されたMacのラインナップ。イベントでは詳しく触れられなかったが、Mac miniもCore 2 Duo搭載モデルへとリニューアルされている。 |
●iLife '08、iWork '08がデビュー
この日のイベントにはおよそ1時間30分を費やしている。うち15分が最後のQ&Aセッション、そして最初の15分が新iMacの紹介となっている。つまり、残りの1時間ほどはiLife '08とiWork '08というアプリケーションスイートに割かれていたことになる。ある意味、このイベントでもっとも伝えたかった内容はこれらのアプリケーションにあると言えなくもない。
発表したばかりの新iMacに向かい、iLife '08とiWork '08のデモをするジョブズCEO |
「デジタルライフスタイルをサポートするスイート。これはAppleが生み出したカテゴリだ」とジョブズCEOは、iLifeでは最大規模のアップデートになるという「iLife '08」を紹介した。今回は、スイートに含まれる全てのアプリケーションが更新されるという。
最初に紹介したのは「iPhoto」。これまでデジタルカメラから取り込んだ写真は日付単位のロールで管理していたが、新たに『Event』という概念を導入。1日の間に異なる目的の写真があったり、日付をまたがる催しなどでも目的に応じた分類が可能になる。また、こうしたイベント内容に応じたサーチも可能にしている。また一時的に写真を非表示にしたり、レタッチ情報を他の写真にも一括適用するといった機能が付加されている。家庭内でのプリント機能や、カレンダー、写真集作成機能も強化された。
iPhotoに関連して、.Macも強化されている。紹介されたのは「.Mac Web Gallery」。iPhotoで管理する写真を簡単にWeb上にパブリッシュでき「リッチなWeb2.0を体験することができる」と言う。また許可されたユーザーは、印刷品質の写真をダウンロードできるほか、iPhoneと連携して写真の追加や、iPhoneでの参照もできるようになっている。
.Macの現在の登録者数は170万人。Web Galleryの追加に伴い、標準で提供されるストレージ容量が1GBから10GBへと10倍になった。オプションで追加できる最大容量も30GBに到達。「今日の発表で、さらに登録者数は増えるだろう」とは、ジョブスCEOの言葉だ。.Macの年間登録料は99.95ドル。登録用の新しいパッケージが同日から発売になる。
新しくなった「iPhoto」。イベントという概念が追加された | iPhoto機能強化の一覧 | ジョブズCEO曰く「Web2.0のリッチな体験」ができるWeb Galleryへパブリッシュする |
ユーザーは共有されている写真を自由に参照できるほか、許可されたユーザーは印刷品質でのダウンロードも可能 | iPhoneとのデータ共有や、iPhoneで撮影した画像の追加も自由に行なえる |
システムを一新したという「iMovie」は、アイコンまでが一新された。映像編集に特化したアプリケーションから、iPhotoのように撮り貯めた映像ライブラリの管理までを含めたアプリケーションとなっている。iPhotoと同列に、映像もWeb Galleryでパブリッシュできる。またAVCHDカムへの対応など、対応機器も増加している。
制作した映像は、Web GalleryのほかiTunesライブラリへの追加や、YouTubeへのアップロードがメニューから簡単に行なえるようになっている。
まったく新しいアイコンとなった「iMovie」。システムを一新し、iPhotoの映像版のように、撮り貯めた映像ライブラリーの管理も可能になった | デジカメで撮影したムービー、HDV、そしてAVCHDなど多様な映像フォーマットに対応 | 作成したムービーは、iTunesライブラリに追加したり、YouTubeへのアップロードも簡単に行なえる |
iMovieの画面。下に位置するのが映像ストックの数々 | 映像ストックと、編集クリップの位置を一瞬で入れ替えることもできる |
iWeb、iDVDは前述した2つのようにデモは行なわれず新機能のみが紹介された。iWebではWeb Widgets機能が追加。Google MapやYouTubeの映像などを簡単にWebページに貼り付けることができる。Googleとの連携は他にもあり、Google AdSenseを簡単に導入できるようになっている。他にも、独自ドメインのサポートなどが行なわれている。iDVDはエンコーディングの高画質化や10種類のアニメーションテーマの追加、パフォーマンスの向上などが新機能として紹介された。
GarageBandは、イコライザのビジュアル化、マルチテイクレコーディング、24bitオーディオのサポートなどが追加されている。
iLife '08は、新たに出荷されるMac製品にバンドルされるほか、既存のユーザー向けには79ドルで提供される。日本における価格は9,800円で、出荷は同日から行なわれる。
iWebには、GoogleMapのデータやYouTubeの映像が簡単に貼り付けられるようになった | Web Widgets機能の追加で、任意のHTMLをクリッピング | 今回のアップデートのなかではやや地味な感のあるiDVD |
iDVDに追加された10種のアニメーションテーマのうちの1つ | GarageBandに追加された新機能の数々 |
Magic GarageBandはライトユーザー向けの機能。好きなトラックをビジュアルで選択して、自由にセッションを組み立てることができる | 同日から79ドル(日本では9,800円)で販売を開始。iMacをはじめ、新たに出荷されるMacには無償でバンドルされる |
ジョブズCEOがプロダクティビティスイートと紹介する「iWork '08」も同日にアップデートされた製品の1つだ。Mac本体にフルパッケージがバンドルされるiLifeとは異なり、iWorkは30日間の体験版のみがバンドルされている。そうしたなか、これまで180万本を販売したという。
従来バージョンであるiWork '06を構成していた2つのアプリケーション、「Keynote」と「Pages」はそれぞれアップデートされた。Keynoteは、ジョブズCEOが「もっともヘビーなユーザーのひとり」と自ら言うように、今回のイベントで必ず利用されている。今回アップデートされた新たなテキスト効果やトランジション、A to Bアニメーションなどは、当日のプレゼンテーション内でも随所に散りばめられていた。ジョブズCEOに匹敵するKeynoteユーザーであれば、この新機能紹介の前に、そのエフェクトが新しい機能であることがわかっただろう。
Pagesの機能強化は、レイアウトモードと文書を作成するモードの切り替え、コンテクストフォーマットバーなど。イベントではほかに140のテンプレートが追加されたことが紹介されているが、日本国内では80の新しいテンプレートと紹介されている。
そしてiWork '08の目玉が、スプレッドシート「Numbers」の追加となる。1つのシート上に、自由にサイズを変更できる表を複数作成できるインテリジェントテーブル機能。オブジェクトを自由に配置できるフレキシブルキャンバス機能、テンプレートのカスタマイズ、印刷時のインタラクティブな操作など、使いやすさに重点を置いた機能を搭載。テンプレートを多用して、ドキュメントを作り上げるスタイルはPagesと同じ方向性を持つ。もちろん、Excelファイルの読み込みと書き出しに対応し、Office 2007とのデータ共有も可能とのこと。
Numbersの追加で「Appleのプロダクティビティスイートは完成した」とのこと。米国では79ドル、日本では9,800円で同日から販売が行なわれる。
まとめとして、これらのスイートはいずれも現行のMac OS X 10.4 Tigerと、10月に出荷が予定されている次期Mac OS X 10.5 Leopardに対応することがあらためて紹介されている。
これまでiWorkは、180万本が販売されたという | Keynoteにおける追加機能。Keynoteリリース時は、ジョブズCEOのプレゼンテーションにふんだんに新機能が盛り込まれていることが多い | Keynoteの新機能、A to Bアニメーションの例 |
Pagesの新機能は、スライドで一覧のみ紹介された | 新たに加わったスプレッドシート「Numbers」。待望の表計算ソフトが追加された | シート上でチェックボックスやスライダが利用可能 |
複数の表を1枚のシート上に自由に配置できる | 画像やテキストファイルを貼り付けて、見栄えのよいドキュメントに | iWork '08も同日より79ドル(日本では9,800円)で販売を開始。Macには30日間の体験版がプリインストールされるほか、既存のユーザーは体験版のダウンロードも可能 |
Q&Aセッションに加わったティム・クックCOO(左)と、プロダクトマーケティングのフィルシラー上級副社長(右) |
最後にティム・クックCOO、そしてプロダクトマーケティングのフィルシラー上級副社長を加えて行なわれたQ&Aセッションの概要を紹介しておく。
Intelプロセッサを搭載しながら、ペイバックのあるステッカープログラムに参加していない理由を問われると「Intel(とプログラム)に対して不満があるわけではない。Intelとは非常にうまくいっている。今ではMacがIntel製のCPUを搭載しているという認知度も高いため、製品の中身など他の要素の紹介を優先しているだけ」とのこと。
CPU関連ではほかに、AMDのプロセッサに興味はあるか? という問いもあったが、シンプルに「Intelのプロセッサを使っている」とのみ回答されている。
ほかにもGoogleとの連携強化について、バックエンドのサポートとしてさらに協力を深めていく方向性を示唆した。
iPhoneやAppleTVについての質問も少なくなかったが、今日のイベント自体がMacに特化した内容ということで、いずれの質問にもさほど明確な回答は示さなかった。唯一、iPhoneで採用されているマルチタッチインターフェイスのMacへの導入については、可能性をみながらも研究課題としているとのことだった。
最後に、少数の選ばれたユーザーに好まれるというイメージのMacだが、最終的にはPCをマーケットシェアで抜くことを目指すのか? という問いに対して、ジョブズCEOは「最高のPCを作ることと、友人や家族にすすめてもらえる製品を作ることが目標。(業界内のシェアを占めるジャンルによっては)Appleが販売するには至らないものも多い」と、数よりもあくまで価値ありと評価される製品の開発を重視していく方向性を示し、Special Eventを締めくくった。
□Appleのホームページ(英文)
http://www.apple.com/
□関連記事
【8月8日】Apple発表会現地速報
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0808/apple3.htm
【8月8日】アップル、ディスプレイ一体型のiMacをモデルチェンジ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0808/apple1.htm<
(2007年8月8日)
[Reported by 矢作晃]