1,333MHz FSBに対応したCore 2シリーズが7月21日発売された。本連載でも過去、Intel P35+Core 2 Duo E6750、Core 2 Extreme QX6850と、2度に渡って1,333MHz FSB環境におけるベンチマーク結果を紹介しているが、今回は、非Intel製チップセットにおける1,333MHz FSBにフォーカスを当ててチェックしてみたい。 ●1,333MHz FSBを正式にサポートするnForce 680i SLI 現時点で1,333MHz FSBを正式にサポートするチップセットは、Intel製品ではIntel P35 ExpressとIntel G33 Expressの2製品である。ほかのメーカーに目を向けてみると、もっと古くから1,333MHz FSBへの対応を表明していたチップセットがある。それが、NVIDIAのnForce 600iシリーズの4製品。「nForce 680i SLI」と「nForce 680i LT SLI」、「nForce 650i SLI」、「nForce 650i Ultra」である。 これらのチップセット登場時には、当然ながら1,333MHz FSB対応のCPUは存在しなかったが、チップセットとしては1,333MHzというクロックでシステムバスを利用できる設計になっており、あとはBIOSのアップデートのみで1,333MHz FSBのCPUを動作させられる状態だったのである。 Intel製チップセットの場合、今四半期中に予定の「Intel X38 Express」が登場するまでは、ハイエンド向けの1,333MHz FSB対応チップセットが存在しない。nForce 680i SLIは、現時点で唯一のハイエンド/エンスージアスト向けの1,333MHz FSB対応チップセットといえる。 その1,333MHz FSB対応CPUをサポートするBIOSの提供もようやく動き始めたようで、今回テストしたXFXの「MB-N680-ISH」では、“Version P30”からサポートを開始しており、すでに今月の中旬からXFXのWebサイトでダウンロードできる状態になっている(写真1、画面1)。今回試用した製品のノースブリッジのリビジョンは従来と同じく「Revision A2」となっており、現在ユーザーの手に渡っているマザーボードでも、BIOSのアップデートさえ行なえば動作させられる(画面2)。
このチップセットの大きな特徴としては、NVIDIA SLIを構築できるという点と、SLI Ready Memoryを利用できるという2点が挙げられる。前者は、述べるまでもなく、現時点ではIntel製チップセットでNVIDIA SLIを構築することはできないわけで、ゲームユースでの利用に関しては本チップセットが有力候補に挙がるのではないだろうか。 もう1つのSLI Ready Memoryに関しては、少々未知数な面もある。というのも、メモリ帯域幅とFSB帯域幅のバランスという点に着目すれば、DDR2-800のデュアルチャネル利用時の帯域幅は12.6GB/secとなる。一方のFSB帯域幅は1,066MHz FSBの場合に8.5GB/sec。1,333MHz FSBへと向上しても10.6GB/secと、まだまだFSB側の帯域幅が不足している状態だ。そのため、SLI Ready Memoryを利用してメモリクロックをさらに向上させるというアプローチは、1,333MHz FSBになったとしても効果は薄いかも知れない。このあたりはパフォーマンス検証のところでチェックしてみたい。 今回テストに利用するSLI Ready MemoryはCorsair Memoryの「CM2X1024-9136C5D」である。このメモリでSLI Ready Memoryを有効にした場合、EPPに登録された1,142MHzのパラメータを用いて動作する(画面3、4)。 これらのチップセット以外でも、マザーボードベンダーが独自に対応を表明している製品もある。例えば、先日ASUSTeKが公表した1,333MHz FSBへの対応リストを見ても、本来は1,333MHz FSBをサポートしないIntel P965などがリストアップされている。 こうしたマザーボードベンダー独自対応製品の中から、今回はASRockの「4Core1333-FullHD」を利用して、参考までにベンチマークテストを行なうことにした(写真2)。ここまでに紹介したIntel製でもNVIDIA製でもない、AMD製チップセットの「ATI Radeon Radeon Xpress 1250」を搭載するマザーボードである。 この製品は、入手時にBIOSバージョン1.00が適用されており、これは出荷時バージョンと思われるが、この状態でもCore 2 Duo E6750を正しく認識できることを確認している。ただし、テストにおいては最新バージョンとなる1.10を適用して実施した(画面5)。 なお、これらの製品とともに、Intel P35 Expressを搭載した、ASUSTeKの「P5K Premium」もテストに加えている(写真3)。
●1,333MHz FSB対応CPUを3種類のチップセットで比較 それでは、ベンチマークの結果を紹介していきたい。用意した環境は表の通りで、先述した3製品のマザーボードに、同じ動作クロックとなる、1,333MHz FSBのCore 2 Duo E6750と1,066MHz FSBのCore 2 Duo E6700を組み合わせて使用した。また、nForce 680i SLI環境については、SLI Ready Memoryを有効にした場合のテストも実施している。
【表】テスト環境
まずは、CPUの演算性能が正しく引き出されているかを確認するため、「Sandra XI SP4」の「Processor Arithmetic Benchmark」と「Processor Multi-Media Benchmark」(グラフ1)、「PCMark05」のCPU Test(グラフ2、3)の結果から見ていきたい。 ほんのわずかながらIntel P35の成績が良く、ASUSTeK P5K Premiumのチューンが行き届いていることを感じさせるが、それほど大きな差ではなく、CPU演算性能に関しては各環境とも同等レベルに引き出されていると判断していいだろう。
次にメモリ性能をチェックする、Sandra XI SP4の「Cache & MemoryBenchmark」(グラフ4)と「PCMark05」のMemory Test(グラフ5)、「EVEREST Ultimate Edition 2006 Version 4.0」のCache & Memory Benchmark(レイテンシの項のみ、グラフ6)の結果である。 ここではメインメモリの性能を中心に触れていきたいが、まずSandraの結果では、ブロックサイズが4MBを超えるとIntel P35がもっとも良い性能となる。nForce 680i SLIは非常に低いスコアに留まってしまっている。これはSandraでは毎回でる傾向であるが、ここではSLI Ready Memoryについては、非常に高い効果が表れている。 続いて、PCMark05の結果であるが、こちらはnForce 680i SLIが全般に良い性能である。Write性能に関しては各製品とも横並びで、FSB向上によって性能も伸びていることが分かる。 一方、Read性能はチップセットによってかなりバラつきがあるが、Intel P35とRadeon Xpress 1250は近い傾向を見せている。ただし、Radeon Xpress 1250は1,066MHz時に大幅に落ち込む結果を見せている。 nForce 680i SLIは非常に高い性能を見せている。同一クロックのDDR2-800同士でメモリレイテンシも低く抑えられており、メモリの負荷が高いアプリケーションにおける性能は期待できそうだ。 また、PCMark05においては、1,066MHz FSB環境でSLI Ready Memoryの効果がRead/Copyともにほとんど出ていないのに対し、1,333MHz FSBになると大幅に性能を伸ばしている点も注目できる。帯域幅に関しては前述の通りFSB側がボトルネックになっている。動作クロックの向上に伴うレイテンシの低下がパフォーマンス向上の一番の理由だと思われるが、SandraのようにFSBの帯域幅とは関係なくきっちりスコアが伸びるケースもあれば、PCMark05のように伸びが見られないケースもあるわけで、1,333MHz FSBになったことでSLI Ready Memoryの効果が安定して発揮されるようになったと見ることはできるだろう。
ここからはアプリケーションを利用したベンチマークテストである。テストはSYSmark 2004 Second Edition」(グラフ7)、「CineBench 9.5」(グラフ8)、「動画エンコードテスト」(グラフ9)である。 大局的な傾向として、同一チップセットであれば1,333MHz FSBの性能が良好な傾向にあるといえる。このあたりはチップセットを問わずFSB帯域幅の向上の恩恵を得られることを示している。 ちなみに、SLI Ready Memoryによる効果だが、全般にSLI Ready Memoryを有効にした時の方がパフォーマンスが高いことが確認できる。ただし、1,066MHz FSBと1,333MHz FSBで効果に違いがあるかというと、SYSmark 2004 SEのOffice Productivityで、1,333MHz FSBの方が無効時から有効時へのスコア上昇率が大きい結果を見せており、データ処理系のアプリケーションで素行の良さは見せているものの、大きな差ではない。ほかの結果を見ても、1,333MHz FSBの方が効果が大きいという判断は難しい結果で、SLI Ready Memoryに関して一定の効果は認められるが、これはFSB帯域幅に関係なく得られると考えておくのが妥当といえる。
続いては、「3DMark06」のCPU Test(グラフ10)、「3DMark06」(グラフ11)、「3DMark05」(グラフ12)、「F.E.A.R.(SoftShadowsは無効に設定)」(グラフ13)、「Splinter Cell Chaos Theory(HDRは有効に設定)」(グラフ14)、「LOST PLANET EXTREME CONDITION(DX9版)」(グラフ15)の結果を見ておきたい。 まず気に留めておきたいのが、Intel P35のF.E.A.R.のスコアが非常に低かったり、Radeon Xpress 1250もF.E.A.R.で1,333MHz FSBの時にスコアを落とすといった現象であるが、このあたりの理由は不明である。 nForce 680i SLIは、1,333MHz FSBでスコアを伸ばし、SLI Ready MemoryはFSB帯域幅に関係なく一定の向上を見せている結果が多く、とくにビデオカードがボトルネックにならない低解像度の条件でこうした結果が色濃くでている。 なお、普段の本連載では最後に消費電力のテストを紹介しているが、チップセットごとにマザーボードが異なるうえ、今回用意した各マザーボードは、製品の性格や対象ユーザーが大きく異なっており、チップセットの消費電力比較の参考にもしづらいため割愛する。 ●すでに選択肢が広がっている1,333MHz FSB 以上の通り結果を見てくると、チップセットとして正式に1,333MHz FSBをサポートしているnForce 680i SLIはもちろんのこと、マザーボードベンダーの独自対応であっても、1,333MHz FSBの効果が発揮されている。 また、nForce 680i SLIに関しては、1,333MHz FSBと組み合わせることによるプラスアルファは感じられないものの、SLI Ready Memoryというパフォーマンス向上手段を持っているという点で、ハイエンドCPUと組み合わせるには面白い選択肢だろう。 1,333MHz FSBのCPUが出た一方、Intel製チップセットのラインナップについては出足が悪く、Intel P35/G33のみという状況である。しかしながら、nForce 680iシリーズのほか、マザーボードベンダー独自の1,333MHz FSBサポート製品を含めると、nForce 680i SLIのようなハイエンドから、Intel G33やRadeon Xpress 1250などを搭載するバリュー製品まで集まってきている。 登場したての1,333MHz FSB対応CPUではあるが、組み合わせのバリエーションは豊富で、価格やニーズに合わせてマザーボードの選択肢も揃いつつあるといっていいだろう。 □関連記事 (2007年8月6日) [Text by 多和田新也]
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