日立とNEC、第4世代のPC用水冷ユニットを開発
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7月30日 発表
日立製作所、NECおよびNECパーソナルプロダクツの3社は30日、CPUに加えHDDの冷却も可能にしたPC用「静音水冷システム」を共同開発したと発表した。
日立は2002年に世界初のノートPC用水冷モジュールを開発し、同社のノートPCに搭載。その後、2003年にNECが、日立のライセンシーが開発した水冷ユニットを搭載したデスクトップPCを発売した。
今回発表された水冷ユニットは日立の第4世代となるもので、両社が直接協力して開発を行なったもの。基礎技術とキーコンポーネントは日立が開発し、PCへの実装においては両社で協業した。
改良点の1つとして、0.09mm間隔でフィンを並べた「Micro Channel」と呼ばれる流路を形成した銅製のCPU水冷ジャケットを開発。各々のフィンは、機械でジャケットの表面を削り起こすことで縦に向けており、世界でも日本国内にある部材メーカーのみが持つ技術を利用している。
日本HPがデュアルOpteronワークステーションに採用した日立製CPU水冷ジャケットは第3世代のもので、Micro Channelの間隔は0.15mm。これと比較すると第4世代のジャケットは、放熱の性能を示す熱抵抗値が摂氏0.14度/W程度から摂氏0.09度/Wに向上した。これにより、今後登場するより高性能なCPUにも対応できるという。
0.09mm間隔のMicro Channelを実現した第4世代のCPU水冷ジャケット | 第1世代から第4世代までの形状と性能の比較 |
もう1つの改良点はHDDの水冷ジャケットを新たに搭載した点。本来、HDDには専用の冷却機構は不要。しかし、NECパーソナルプロダクツの小野寺忠司氏(PC事業本部 開発生産事業部 統括マネージャ)は、新たな水冷搭載PCを開発するに当たり、PCの水冷に対するニーズが、冷却性能から静音性へと移っていることから、HDDの静音化に着目。
そこで、HDD全体を防音材でくるみ、金属製のケースで完全に囲い込むエンクロージャを開発。HDDはケースにゴム製のワッシャーを挟んで固定されるフローティング構造で、ヘッドのシークやディスクの回転から発生するノイズに加えて、振動によるノイズも抑え込み、10dBA以上のノイズカットを実現した。
ただし、このままではHDDの排熱ができないため、HDD用の水冷ジャケットも新規に開発し、エンクロージャに内蔵させた。自作向けの製品を除き、HDDにも対応する水冷ユニットはこれが世界初。
HDDエンクロージャ内部。HDDは内部で浮くように設置され、周囲を吸音材で囲まれる | メーカー製PCで世界初の採用となるHDD水冷ジャケット | ジャケット内部は隆起を設け、水がふれる部分の表面積をかせいでいる |
搭載PCの騒音レベルはフル稼働時でもDVDレコーダー並 |
このほか、ピストンポンプはシナノケンシ製の新型を採用し、ラジエータも高効率化させた。ファンは1,000rpm以下の等速回転タイプのものを搭載。その結果、PC全体のノイズレベルは一般的なDVDレコーダーに相当する約22~24dBAにまで引き下げられた。これは、CPU最大負荷、HDDランダムアクセス時のもので、従来のNEC製水冷PCは、CPU最大負荷/HDDアイドル時の騒音レベルが約30dBA、CPU最大負荷/HDD動作時は約32~33dBAだった。
NECでは当初からAV機器を超えるレベルの静音PCを目指しており、「TVや映画の視聴や、予約録画といった用途に十分応えられる」(小野寺氏)としている。この水冷ユニットは、年末商戦向けの秋冬モデルの個人向け液晶一体型PCに採用される予定。加えて、加速度センサーでPCの振動から異音を検出するシステムによって、全個体の騒音をチェックした上で出荷する体制を整えている。
NECパーソナルプロダクツの松原清隆氏(PC事業本部 開発生産事業部長)は、「今回の水冷は、“極上の質”、“環境配慮”、“楽しむ”という3つの付加価値戦略における取り組みの1つで、冷却性能改善、防音/消音、静音品質という3つの静音技術軸を具現化したもの」と紹介。また、静音技術軸について放熱性能を向上させる新材料の開発にも取り組んでいることを明らかにした。
また、日立製作所の源馬英明氏(コンシューマ事業グループ ソリューションビジネス事業部 サーマルソリューション事業センタ長)は、第4世代製品は他社にライセンス供与せず、自社製造していく方針であることを明かすとともに、今後高性能ノートPCや、非PC製品にも適用分野を拡大していきたいとの意気込みを示した。
NECパーソナルプロダクツ小野寺忠司氏 | NECパーソナルプロダクツ松原清隆氏 | 日立製作所源馬英明氏 |
第4世代の水冷ユニット | 第4世代搭載PCの実機も展示されたが、未発表のためカバーがかけられていた | 過去の水冷搭載機も展示 |
第1世代の水冷ユニット | 第2世代の水冷ユニット | 第3世代の水冷ユニット |
□日立製作所のホームページ
http://www.hitachi.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2007/07/0730.html
□NECのホームページ
http://www.nec.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.nec.co.jp/press/ja/0707/3001.html
□NECパーソナルプロダクツのホームページ
http://www.necp.co.jp/
□関連記事
【7月30日】【本田】第4世代の水冷モジュールをコンシューマPCに投入するNEC
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0730/mobile387.htm
【1月30日】日本HP、日立製水冷システム採用ワークステーション
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0130/hp.htm
【2003年5月16日】NEC、水冷採用の静音デスクトップPC「VALUESTAR FZ」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0516/nec1.htm
【2002年7月17日】日立、世界初の「静音水冷システム」搭載ノートPC
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0717/hitachi.htm
(2007年7月30日)
[Reported by wakasugi@impress.co.jp]