NECエレ、2倍の周波数性能で消費電力を同等に抑えた携帯電話向けLSI
7月4日 発表 NECエレクトロニクス株式会社は4日、同社前世代品から周波数性能を2倍にしながら消費電力を同等に抑えた携帯電話向けLSI「M2」のサンプル出荷を開始した。 2006年9月に市場投入した「M1」の後継製品。65nm製造プロセスを採用し、さまざまな低消費電力技術を組み合わせることで、消費電力を従来技術から約半分に低減することに成功した。
同日行なわれた記者発表会では、同社モバイルLSI事業部長の岡本俊之氏が技術の詳細を解説した。 日々進化する携帯電話向けアプリケーションや機能の要求に応えるには、LSIのプロセスや動作周波数の向上などにより性能を引き上げる必要がある。しかし、プロセスの縮小はリーク電力、周波数の向上は動作電力を増大させ、端末の動作時間や待ち受け時間が短縮されてしまう。 M2はCPU/DSP速度を2倍、システムバスを1.3倍に高速化。加えて、HSDPA、GSM/GPRS通信機能や、WVGA解像度、H.264のハードウェアエンコード/デコード機能、128和音の3D音源なども新たに盛り込んだ。 その一方で、前述の電力問題に対応するため、さまざまな低消費電力技術を採用している。 その1つが並列処理の採用。基本処理能力を上げるにあたり、パイプライン処理で周波数を2倍に上げるとFlipFlopが2倍になり元の2倍以上の電力が必要になるが、並列処理でロジックを2倍にすると、電力増加は2倍ですむ。 また、機能マクロにモニタ回路を内蔵させることで、クロック周波数の自動制御やクロックを停止でき、用途によって閾電圧(Vt)が異なる3種類のトランジスタを用いることで、性能/消費電力を最適化。さらに、数μs単位でON/OFFできる電源スイッチをオンチップで搭載し、基板バイアスを制御して不必要に高速動作するチップの速度を抑えることでリーク電力を抑える工夫も採り入れた。なお、基板バイアス制御にはTransmetaの「LongRun2」技術が適用されている。 これらの低消費電力技術の1つ1つは、他社でも同等のものを採用している場合があるが、同社では回路設計、レイアウト、その上流のシステムアーキテクチャレベルなど、製品化の全ての段階でも電力管理を考慮している点が、他社との差異および消費電力半減の要因だという。 今後は携帯電話以外にも、低消費電力が求められるデジタルコンシューマ分野や自動車分野にも展開を図る。
□NECエレクトロニクスのホームページ (2007年7月4日) [Reported by wakasugi@impress.co.jp]
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