日立製作所の個人ユーザー向けノート「Prius Note type K」シリーズに新モデルが登場した。仕様の異なる3モデルが用意されているが、今回はその中から、地上デジタル放送の視聴/録画が可能な最上位モデルとなるPN36K5Uを取り上げる。 ●USB接続の地デジチューナが付属 Prius Note type K PN36K5U(以下PN36K5U)の最大の特徴は、外付けの地上デジタルチューナユニット(以下、地デジユニット)が標準で付属し、地上デジタル放送の視聴および録画が可能になっているという点だ。 付属する地デジユニットは、PN36K5U本体とUSB接続して利用する。地デジユニット側にはUSB端子のほかに、D3映像出力端子とステレオ音声出力端子も用意されており、D3端子を持つTVと接続して地上デジタル放送を視聴することも可能。だたし、D3端子からの映像出力は、地デジユニットをPN36K5Uに接続し、Windows Vista上で番組を視聴している場合にのみ有効となるため、この地デジユニットを単体でTV用の外付け地デジチューナとして利用することは不可能。つまり、基本的にはPN36K5Uに接続して利用するものというわけだ。 Vista上での地上デジタル放送の視聴や録画は、プリインストールされている「Prius Navistation 5」を利用する。このPrius Navistation 5は、地上デジタルチューナ内蔵の液晶一体型デスクトップ「Prius One type W」で利用されているものと同じだ。ただしPN36K5UではWindows Media Centerと統合されておらず、基本的に単体利用となる。これは、Media Centerが地上デジタル放送の視聴や録画に対応しておらず、さらにPN36K5Uには地上アナログTVチューナが搭載されていないからだ。そのため、地上デジタル放送の視聴や録画は全てPrius Navistation 5で行なう必要がある。 Prius Navistation 5の使い勝手は、一般的なTV視聴ソフトと変わらない。電子番組表を利用した録画予約やキーワード指定による自動録画予約、TV画像のウィンドウ表示や全画面表示などが可能。また、録画したデータの再生機能や、内蔵DVDスーパーマルチドライブを利用したCPRM対応DVDメディアへのムーブ記録機能も用意されている。 ただ、操作に対する反応は比較的遅い。例えば、ソフトの起動からTVの映像が表示されるまでに40秒ほど、チャンネル切り替え時にも映像が表示されるまでに5秒ほどかかる。とにかく動作はかなりもっさりしている。 また、Prius Navistation 5で視聴する地上デジタル放送は常にSDとなる。これは録画についても同様で、放送信号をそのまま記録するTS録画には対応しておらず、SDでの録画となる。TS録画に対応していないのはともかく、HDでの視聴ができない点は残念。これは、地デジユニットがUSB接続の外付けになっているための仕様上の制限と思われるが、せっかくの地デジチューナもHDで楽しめないのはやはり悲しい。ただし、地デジユニットに用意されているD3映像出力からはHDの映像信号が出力されるので、D3入力端子を持つTVと接続すればHDの地上デジタル放送の視聴が可能となる。 加えて、せっかくのノートPCでありながら、地デジユニットをUSB接続しなければ視聴できない点も残念だ。無線LAN接続での視聴ができるようになれば、より使い勝手が向上することになるため、今後のモデルでぜひとも実現してもらいたい。 ちなみに、前モデルとなるPrius Note type K PN39K5Tでは、Windows Media Center用のリモコンが付属していたが、PN36K5Uには付属しない。そのため、TV関連機能の操作は全てキーボードまたはポインティングデバイスを利用することになる。リモコンがあればTV視聴ももっと楽に行なえたと思うが、ノートPCでは離れた場所から操作することはほとんどなく、リモコンが付属しなくとも大きなマイナスではないだろう。
●高輝度液晶搭載で鮮やかな映像が楽しめる
PN36K5Uに搭載される液晶ディスプレイは、1,280×800ドット(WXGA)表示対応の15.4型ワイドスーパーラスタービューEX2液晶だ。バックライトが2灯式となっており、約500cd/平方mと輝度が高い点が特徴で、一般的な液晶TVに匹敵する明るさが実現されている。また、色再現範囲もNTSC比で約72%と、一般的な液晶パネルと比較して色再現性に優れており、グレア処理された表面パネルと合わせ、非常に鮮やかな映像表示が可能となっている。 実際に表示される映像を見ると、ややまぶしく感じるほどの明るさと、TVと比較しても遜色のない鮮やかな色が表示されていることがよくわかる。光沢のある表面処理のためやや映り込みが気になるものの、非常に広い視野角が確保されている点と併せ、液晶ディスプレイに対する不満はほとんどない。地上デジタル放送も、液晶TVと遜色のないクオリティで楽しめる。 ちなみに、液晶ディスプレイのアスペクト比は16:10となっているが、地上デジタル放送を全画面表示させた場合には、放送側のアスペクト比である16:9を保ち、上下に黒い帯が表示されることになる。 画面描画は、チップセット内蔵グラフィック機能、Intel GMA 950が利用される。3D描画能力はそれほど高くはないが、Aeroの動作は問題ない。実際にWindows Aero利用時に画面描画のもたつきを感じることはなかった。 ●基本スペックは前モデルからほとんど変更なし PN36K5Uの基本スペックは、前モデルであるPN39K5Tとほぼ同じだ。 CPUは、Intel Core 2 Duo T5500(1.66GHz)を、チップセットはIntel 945GM Expressを採用しており、新Centrino Duoである“Santa Rosa”ベースではなく、旧Centrino Duo準拠となっている。メインメモリはPC2-4200対応DDR2 SDRAMを1GB搭載する。本体底面にSO-DIMMスロットが2個用意されており、標準で512MBのSO-DIMMが2枚搭載され、デュアルチャネル動作となっている。標準で1GBのメインメモリが搭載されているため、Vista Home Premiumの動作も十分快適だ。メインメモリの最大搭載量は2GBだが、そのためには標準搭載されているSO-DIMMを外さなければならないので注意しよう。 HDDは、シリアルATA仕様の120GBドライブが搭載されている。前モデルでは160GBドライブが搭載されていたことを考えると、容量が少なくなっている点は残念。HDDは本体底面からネジ2本外すだけで簡単に取り外せるため、交換は容易だ。TV録画のために大容量のHDDが必要になった場合でも、簡単に大容量HDDに交換できる。 光学ドライブは、DVDスーパーマルチドライブを本体左側面に搭載。DVD-RAMやDVD±R DLへの書き込みにも対応しており、全DVDメディアが扱える。 本体右側面には、Type2 PCカードスロット、SDカード/MMC/メモリースティック/xD-Picture Card対応スロット、USB 2.0×2、IEEE 1394ポートなどが用意される。また本体背面には、USB 2.0コネクタ×2、ミニD-Sub15ピン、モデム、Ethernetが用意されている。 ネットワーク機能は、有線LANがEthernet、無線LANがIEEE 802.11a/b/g対応。有線LANがEthernetにとどまっている点は少々残念だ。
●キーボード/ポインティングデバイスの使用感は申し分なし キーボードは、19mmピッチのフルサイズキーボードを搭載。無理な配列やピッチが狭くなっている部分はなく、比較的しっかりしたタッチとクリック感で、扱いやすさは申し分ない。また、ポインティングデバイスにはタッチパッドを用意。こちらも使い勝手に問題はない。キーボード上部には、電源ボタンとともに、液晶ディスプレイの表示映像モードの変更ボタンと、タッチパッドのON/OFFを制御するボタンが用意されている。付属の外付けマウスを利用する場合を想定しているのは嬉しい配慮だ。 バッテリは、容量4,400mAhのリチウムイオンバッテリを採用。バッテリ駆動時間は約3時間とあまり長くないが、PN36K5Uはモバイル性重視のノートではないため、この程度のバッテリ駆動時間でも大きな不満はない。また、ACアダプタは、比較的小型のものが付属している。
●地デジ視聴や録画に魅力を感じる人におすすめ では、いつものようにベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したソフトは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と「3DMark05(Bulid 1.3.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」の3種類。Windows Vistaに用意されているパフォーマンス評価の結果も加えてある。 結果を見ると、やはり描画能力はかなり低く、特に3D描画能力は、最新チップセットとなるIntel GM965 Expressに内蔵されるIntel GMA X3100に遠く及ばない。Santa Rosaが登場した今となっては、Santa Rosa準拠にパワーアップされていない点はやはり残念。とはいえ、実際に利用する上でパフォーマンスに不満を感じることはほとんどない。実際に、いくつかのアプリケーションを利用してみても、特に動作の重さを感じることはなかった。そういった意味では、Santa Rosaが採用されていないとしても、それほど問題ではないだろう。 PN36K5Uは、前モデルから仕様面での変更がほとんどないばかりか、HDD容量が少なくなっていたり、Media Center用のリモコンが付属しなくなるなど、やや仕様が後退してしまっている。とはいえ、実売価格は25万円未満と比較的安価ながら、地上デジタルチューナが標準添付され、地上デジタル放送の視聴や録画が可能になっている点、高輝度かつ高品質な表示が可能な液晶ディスプレイの採用など、魅力の多いノートであることも間違いない。家庭でデスクトップ代わりとして利用するノートを探している人で、地上デジタル放送の視聴や録画に魅力を感じるなら、十分満足できる製品と言っていいだろう。
【表】ベンチマーク結果
□日立のホームページ (2007年6月27日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
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