昨年(2006年)秋にアイ・オー・データ機器が発売したLANDISK Tera(HDL-GTシリーズ)は、同社としては初の普及価格帯向けRAID 5対応NAS製品だった。大きな特徴の1つは、同社がRelational HDと呼ぶカートリジッジタイプのHDDを採用し、この価格帯のNAS製品としては初めてドライブのホットスワップをサポートした点にある。全体のサイズも比較的小型にまとめられており、魅力的なNAS製品の1つに間違いない。 問題があるとしたら、価格的に若干割高であることだろう。ホットスワップという機能と引き替えとはいえ、HDDを専用カートリッジに収めることは、どうしてもコスト高となる。特にコンシューマ用途の場合、ドライブ交換時にNASをシャットダウンできない状況というのは、あまり考えられないし、そもそもドライブを交換しなければならない状況自体、それほど頻繁に遭遇するものではない。
そう考えたのかどうかは分からないが、アイ・オー・データはHDL-GTシリーズとは別に、コンシューマ向けの新しいNAS製品をリリースした。それがHDL4-Gシリーズだ。HDL-GTシリーズとの最大の違いは、カートリッジタイプのHDDを止め、シリアルATA HDDを直接バックプレーンに接続する形式を採用した点にある。 これによりRAID 1やRAID 5といった冗長性のあるRAID構成を採用した場合も、障害の生じたHDDをホットスワップすることはできなくなったが、その分、本体をさらに小型化し、価格を引き下げることが可能になった。HDL4-Gシリーズには総容量1TBのHDL4-G1.0(77,700円)と、同2TBのHDL4-G2.0(142,800円)の2モデルがあるが、同等の容量を持つHDL-GTシリーズに比べ、それぞれ21,600円、32,200円分価格が引き下げられている。今回試用したのは1TBモデル(HDL4-G1.0)だが、本稿執筆時点での実売価格では5万円台も見られるなど、価格面での値頃感は大きい。 ●ビデオカセット4本分のサイズ 外形の小型化も追求されており、大きさはVHSビデオカセットを4本束ねた程度。3.5インチHDDを4台収めていることを考えれば、これ以上の小型化はほとんど不可能ではないだろうか。HDDは、シリアルATAコネクタが下になるよう、垂直にマウントされており、天板部に排熱用の小型シロッコファン2基が搭載される。回転制御されていることもあって、ファンのノイズは気にならないものの、冷房なしの部屋で日本の夏に耐えられるのか少し気にかかる。
この小型化により電源も内蔵からACアダプタへと変更されてしまったが、この大きさを見ればやむを得ない。むしろACアダプタにした方が熱対策上は有利だ。ただ、小さいとはいえ、HDD4台を内蔵していることに変わりはないから、持つとズッシリした重みを感じる。持ち運びしやすいよう、天板分に取っ手代わりのくぼみが用意されているのが、デザイン上のアクセントにもなっている。 外形の小型化は、内部プリント基板の小型化にもつながっている。プリント基板はほぼ本機の底面積サイズで、非常にコンパクトだ。基本的なコンポーネント(CPU、シリアルATAコントローラなど)はHDL-GTシリーズと同じで、MarvellのOrionをベースにした構成。LinuxベースのNASソフトウェアも、基本的に同一であろう。
この小型化とコストダウンにより、拡張用のeSATAポートが省略されてしまったが、これもやむを得ないこと。eSATAポートが省略されたことで、HDL-GTシリーズが備えていた本体側のデータを自動的にeSATAディスクにコピーする自動ミラーリング機能も、本機では利用することはできない。ただし拡張用のUSBポートは前面に1ポート、背面に1ポートが確保されており、USB HDDの拡張用以外に、前面ポートはデジタルカメラからの自動データコピー用に用いることができる。 さて本機の利用法だが、最近のNAS製品の例に漏れず、DHCPサーバーのある環境であれば、本機をネットワークに接続した後に電源を投入すれば、それだけで基本的に利用可能となる。本機は基本的なネットワークストレージとしての機能以外に、DLNAサーバー機能とiTunesサーバー機能を備えており(いずれも設定で無効にすることが可能)、Windows VistaであればDLNAサーバー機能をビジュアル的に確認することも可能だ。
ワークグループ名の設定や共有フォルダの設定、あるいはジャンボフレームや省電力といった各種の設定も、Webブラウザから簡単に行なうことができるし、LAN上の本機を検索するためのユーティリティ(Magical Finder)も添付されており、IPアドレスを直接入力する必要もない。本機で使われているソフトウェアは、CPUを始めとしたコアコンポーネントが同一であることから考えて、HDL-GTシリーズで使われたものをベースにしていると考えてまず間違いないだろうが、画面を見れば分かる通り、UIはコンシューマ向けの本機に合わせて一新されている。
一方、本機の性能だが、基本的にはHDL-GTシリーズと大きな違いはないようだ。昨年秋にテストしたHDL-GTと比べてみたが、ほとんど違いはない。今回テストしたHDL4-G1.0の方が若干読み出しの性能が良いのは、使っているドライブに起因するのではないかと思われる。当初、Windows Vistaでテストを行なっていたのだが、用いたオンボードNIC(D975XBX2上のIntel PRO/1000PL)のVista用ドライバがジャンボフレームをサポートしていないため、Windows XP SP2でのテストとなった。Windows VistaではNASからの読み出し(ローカルドライブへの書き込み)が遅い点が気になったが、これはNAS側の要因ではないだろう。
【表1】クライアントPCの構成
【表2】Windows XP SP2でのテスト結果
【表3】昨年(2006年)秋に行ったHDL-GT1.0のテスト結果
【表4】Windows Vistaでのテスト結果
●夏場の温度にやや不安あり 本機で気になるのは、やはり日本の夏に耐えられるかどうか、ということだ。DLNAサーバー機能を備えた本機は、東芝のREGZAなどと組み合わせて番組録画を行なうこともできるが、この場合パワーマネージメントを無効にすることが推奨されている。本機は電源負荷を考えて、スリープ状態からウェイクアップする際、1台ずつ時間差をおいて4台のHDDがスピンアップするため、復帰にある程度時間がかかる。これにより、録画の冒頭が欠ける、といった事態を回避するためではないかと思うが、エアコンがOFFになった陽当たりの良いリビングルームに、HDDが回りっぱなしの本機を放置しておいて大丈夫なのか、ちょっと心配だ。 この点を除けば、すでに実績のあるHDL-GTシリーズをベースに低価格化を図った製品だけに安心感もある。HDL-GTシリーズに対し、ホットスワップができないこと以外、大きな機能差はないし、性能差も見られない。製品としてのコストパフォーマンスは高い。
□アイ・オー・データ機器のホームページ (2007年6月8日) [Reported by 元麻布春男]
【PC Watchホームページ】
|