●ずっと前からビジョンはわかっている 比較的短距離にあるワイヤレスデバイスとの接続性に関するセッションに出てきた。誰もが悩みの種にしているのが、PC本体とその周辺機器を結ぶケーブルの煩雑さだ。快適な接続性が得られて、帯域幅が必要十分であれば、誰もがそれをワイヤレスに置き換えたいと思うだろう。それをサポートするのがBluetoothやワイヤレスUSBだ。 Vistaでは、Bluetoothに関して、多少の改善が行なわれていて、Microsoftでは、そのディスクリプターを使うように推奨している。だが、最終的にはワイヤレスUSBに置き換えたい意向も感じられ、このセッションでも、多くの説明は、ワイヤレスUSBに関するものに費やされた。 ワイヤレスUSBの普及はまだ始まったばかりだと但し書きをつけながらも、ストレージからHDクオリティのビデオをストリーム受信したり、デジカメから画像を受信したり、スマートフォンやポケットPCとのデータ同期、そして、ノートPCのドッキングステーションを接続するところまでを想定している。 自宅に持ち帰ったノートPCを充電するために電源アダプタを接続し、電源を入れるだけで、自動的にすべてのデバイスにワイヤレスに接続できるのなら、場合によってはデスクトップパソコンなどいらなくなるかもしれない。自室には、ディスクストレージやモニタ、キーボード、マウス、プリンタなどが置いてあって、それらが瞬時に使える状態になるわけだ。将来的にはUltra Wide Bandによって、そうしたことが可能になる。Microsoftとしては、Bluetoothの領域すらも、ワイヤレスUSBに置き換えたがっているようだが、消費電力などの点で、Bluetoothも、まだまだ併用され続けるだろう。 いずれにしても、今さらそんなことを説明されても困るわけだ。しかも、相手は、ハードウェアの開発者たちなのだ。いったい何年前から、そう言っているんだろう。そして、いったい、いつになったらそれが現実になるのか。
●未対応のデバイスが少なくない 新しいOSにとって、デバイスドライバのアップデートはきわめて重要な課題だ。個人的に、Vistaを使うようになって、あきらめざるを得なくなったデバイスとして、ノートPCで使っていたBluetoothアダプタがある。PCカードスロットに装着するアダプタをいくつか使っていたが、今なお、ベンダーからのVistaサポートがなく、仕方がなく、Microsoftのマウス等に付属しているUSBドングルタイプのものを使っている。Microsoftのドングルは、A2DPをサポートしていないため、ワイヤレスヘッドフォンでコンテンツを楽しむような使い方もできなくなってしまった。 もっとも、VistaプレインストールのBluetooth内蔵機では、デバイスベンダのサポートを待つまでもなく、ThinkPadやLaVieでのBluetoothは快適だ。マウスや携帯電話との接続がワイヤレスでできる便利さは何事にも代え難い。このうち、携帯電話との接続に関しては、イーモバイルのCFアダプタを導入してしまったのが、本当なら、ここもワイヤレスであってほしい。CFにしてもPCカードタイプにしても、ノートPCのボディから通信モジュールが出っ張ってしまうため、ノートPCの携帯性が著しく損なわれてしまう。通信のたびにカードを抜き差しするのでは、せっかくのワイヤレスが台無しだ。かといって、装着しっぱなしでは、外部からの圧力がかかった場合、内部基盤の損傷につながる危険性もある。 Vistaになってあきらめたものとしては、パナソニックのSDHCメモリーカード用CardBusアダプタ 「BN-SDDBP3」もある。ノートPC内蔵のSDスロットは、どうしても転送速度が遅いので、重宝していたのだが、これまた対応待ちである。 この他、個人的な常用デバイスとしては、ニコンのフィルムスキャナ「SUPER COOLSCAN 5000 ED」も未対応で、かなりニッチなデバイスだけに、これからどうなるか。このデバイスのためだけにXP機を残しておかなければならないのだろうか。
●Microsoftとサードベンダーの温度差 Vistaは過去との互換性を最大限に保っていると言われている割には、動かなくなってしまっているデバイス類が少なくない。XPのデビュー時を思い起こしてみると、デバイスベンダーは、その対応にもっと積極的になっていたように思うのだ。少なくとも、RTMから半年が経過しようとしても、未だにサポートがないデバイスが散見されるというのは、とても疑問に思う。これは、ハードウェアのみならず、ソフトウェアやウェブサービスにもいえることだ。カノープスにいたっては、ビジネス戦略の路線変更という事情もあるにせよ、TVチューナ、MPEGキャプチャ製品について、対応断念のアナウンスをしているくらいだ。今回のWinHECでは、基調講演に関しては、短期的、長期的なビジョンの提示に乏しく期待を裏切られるものが多かったし、各テクニカルセッションは、少なくとも、ぼくが出席したものに関しては、既知の情報の復習に近いものばかりで、RTMから半年以上たった状況で、ハードウェアベンダーが欲しいと思う情報満載とはとてもいえず、ディープな情報が得られない状況だった。選んだセッションが悪かったといえば、それまでだが、従来のWinHECが想定してきた出席者層への情報開示とは、ずいぶん変わってきているような印象を持った。 Microsoftの大規模カンファレンスとしては、今年は、まだ、6月に「Tech・ED」、10月に「PDC」が開催される予定だ。Windows Server 2008のリリースに向けて、Microsoftが開発者に対して伝えなければならない情報は、かなり多くあるはずだが、いったいどんな感じで展開されることやら。 少なくとも、現時点では、Microsoftとサードベンダーでは、その立ち位置や向いている方向に、明らかな違いがある。OEMとしてのPCベンダーは熱心だが、デバイスベンダーは醒めている印象を強く感じる。もう、個人がPCを拡張する時代ではないということなのか。
□Microsoftのホームページ(英文)
(2007年5月21日)
[Reported by 山田祥平]
【PC Watchホームページ】
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