富士通から登場した「FMV-BIBLO LOOX P70U/V」(以下P70U/V)は、コンバーチブルタイプのタブレットPCである。コンバーチブルタイプのタブレットPCも、数社から登場しているが、LOOX P70U/Vは8.9型ワイド液晶を搭載しており、コンパクトで軽いことが特徴だ。旧モデルのLOOX P70T/VではOSとして、Windows XP Tablet PC Edition 2005を搭載していたが、P70U/Vでは、Windows Vista Home Premiumを搭載する。 なおP70U/Vの筐体は2006年秋冬モデルのP70T/Vと同じであり、基本的にはマイナーチェンジモデルである。 P70U/Vのサイズは232×167×34.5mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1kgであり、コンバーチブルタイプのタブレットPCとしてはトップクラスの携帯性を誇る。ボディには軽くて丈夫なマグネシウム合金が採用されており、天板への200kgf全面加圧試験をクリアするなど、堅牢なボディを実現している。 CPUは、同じ超低電圧版Core Solo U1400(1.20GHz)を、チップセットは、統合型チップセットのIntel 945GMS Express(ビデオ機能内蔵)を搭載する。メモリ容量は、P70T/Vの512MBから1GBに倍増している。512MBでは、Vista Home Premiumを快適に使うには不足だが、1GBあればとりあえずは満足できる。ただし、メモリはオンボードで実装されているのではなく、MicroDIMMとして装着されており、メモリスロットは埋まっている。また、最大メモリは1GBとされており、増設はできない。 HDDは、1.8インチの60GBで、旧モデル(30GB)に比べて2倍に増えている。CPUやチップセットは旧モデルと同じだが、メモリとHDDがそれぞれ倍増したことで、Vista Home Premiumを快適に動かせる基本スペックになったといえる。
●半透過型液晶を搭載し、バックライトをOFFにすることも可能 液晶ディスプレイとして、8.9型ワイドの半透過型液晶(モバイルファイン液晶)を採用していることが特徴だ。LEDバックライトの搭載により、省電力化に貢献しているほか、液晶右下にあるバックライトON/OFFボタンによって、バックライトをOFFにすることも可能だ。一般的な透過型液晶では、バックライトをOFFにすると表示が読めなくなってしまうが、半透過型液晶を採用したP70U/Vでは、外光を利用して表示が可能なので、直射日光下など、明るい屋外ではバックライトをOFFにしたほうが視認性が向上する。また、ペン操作による傷などから液晶を保護する「プロテクションシート(反射低減タイプ)」も付属している。 液晶ディスプレイの表面は、感圧式のタッチパネルになっており、付属のペン(スタイラス)や指先で触って操作を行なえる。液晶ディスプレイは、2軸のヒンジで本体と繋がっており、液晶を開いて180度回転させることで、ピュアタブレットタイプとして使うことができる。液晶左下には、「PageUp」や「Page Down」などいくつかのタブレットボタンが用意されているが、その中の「ローテーション」ボタンを押すことで液晶の表示方向を変えることができる。ピュアタブレットとして使う場合は、本体を縦にして利用することも可能だ。Fnボタンが用意されていることも特徴であり、2回押すことで、富士通メニューが表示されるほか、Page UpボタンやPage Downボタンと同時に押すことで、Windows JournalやWebブラウザの起動が行なえる。 また、液晶左側にスライド式指紋センサーを搭載。WindowsのログオンやWebサイトのID/パスワード入力などの認証が行なえ、セキュリティ面でも安心だ。
●ワンセグチューナを内蔵、Bluetoothもサポート P70U/Vは、ワンセグチューナを内蔵していることも特徴である。ワンセグ視聴/録画用ソフトとして「InterVideo Mobile TV」がプリインストールされており、ワンセグ放送の視聴や録画が行なえる。もちろん、EPGを利用した予約録画にも対応する。本体にワンセグ受信用アンテナが内蔵されているが、電波状況があまりよくない場合は、付属のヘッドフォンアンテナを利用するか、RF変換ケーブル経由で外部アンテナを接続すればよい。 キーボードのキーピッチは約16mm、キーストロークは約2mmである。筐体サイズが小さいのでキーピッチはやや狭めであり、「む」などの右側の一部のキーピッチがさらに狭くなっている。ただし、キー配列は標準的なので、戸惑わずにタイピングが可能だ。ポインティングデバイスはスティックポイントを搭載。3ボタンタイプで、左右クリックボタンの中央にスクロールボタンが用意されている。 1スピンドルモデルなので、光学ドライブは内蔵していないが、USB経由で接続する外付けCD-RW/DVD-ROMドライブが付属している。ただし、USBバスパワーでは動作せず、ドライブ利用時には専用ACアダプターを接続する必要がある。 インターフェースとして、USB 2.0×2や外部ディスプレイ、LAN、モデムなどを装備するほか、PCカードスロットとSDメモリーカードスロットが用意されている。ワイヤレス機能も充実しており、IEEE 802.11a/b/g対応無線LAN機能とBluetooth 2.0+EDRをサポートする。左側面に、ワイヤレススイッチが用意されており、素早くワイヤレス機能のON/OFFを行なえるのも便利だ。
●ペンフリック機能で、ペン操作も快適 ご存じのようにWindows XP世代は、タブレットPC用OSは別製品として提供されていたが、Vista世代では、標準でタブレットPC機能が組み込まれている(Vista Home Basicは除く)。また、新たにペンフリックと呼ばれる機能も追加されており、よりペンでの使い勝手が向上している。ペンフリックとは、ペンのジェスチャーによって、「進む」や「戻す」「スクロールする」などの操作を行なえる機能だ。 標準付属のバッテリパックは10.8V/2,600mAhの3セル仕様で、公称約4.3時間の連続駆動が可能だ。また、オプションのバッテリパック(L)を装着すれば、駆動時間は約8.9時間に延びる。ACアダプタもコンパクトで、携帯性は優秀である。
●携帯性重視で、ペンを使いたい人にお勧め 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark05(Build 1.2.0)」と「3DMark06(Build 1.1.0)」の2種類だ。また、Windows Vistaに用意されているパフォーマンス評価(Windowsエクスペリエンスインデックス)の結果も加えてある。省電力設定は「高パフォーマンス」モードにして行なった。 結果は表にまとめた通りである。シングルコアCPUを搭載しているため、CPUスコアはあまり高くはない。Windowsエクスペリエンスインデックスでも、プロセッサのスコアが2.7で一番低くなっている。また、統合チップセットを採用しているので、グラフィック周りのスコアも低めだ。しかし、このクラスのノートPCとしては、標準的なスペックであり、Vista Home Premiumの動作もそれほど重いという印象は受けなかった。 LOOX P70U/Vは、コンバーチブルタイプのタブレットPCであり、一般的なノートPCとして使えるだけでなく、ピュアタブレットタイプとして使うことも可能だ。ハードウェア的にはマイナーチェンジであるが、OSがVistaになったことで、ペンによる操作性もさらに向上している。ペンを使いたいが、携帯性も重視したいという人にお勧めだ。
【表】ベンチマーク結果
□富士通のホームページ (2007年3月14日) [Reported by 石井英男]
【PC Watchホームページ】
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