日立製作所「Prius One type W」
~TVの外観に隠されたPCの高い実力



日立製作所のPrius One type W(AW37W5T)。20.1型の液晶を採用した液晶一体型PC

 日立製作所のPrius One type Wは、液晶ディスプレイにPCの機能を統合した、いわゆる液晶一体型PCだ。20.1型のワイド液晶ディスプレイを採用し、OSにはWindows Vista Home Premium、CPUはIntelのCore 2 Duo E4300を搭載し、Viiv Technologyにも対応するなど、最新のホームPC向け技術を盛り込んだ製品になっている。

 TVチューナには、アナログチューナに加えて、地上デジタル放送が受信できるデジタルチューナを内蔵しており、キーボードやマウスに加えて、リモコンでも操作が可能。、リビングやベッドルームなどにおいてTVの替わりとして利用できる手軽さも兼ね備えている。


●液晶TV級高輝度で広視野角な液晶を採用

 今回紹介するPrius One type W(AW37W5T、以下本製品)の特徴は、なんといっても液晶TVライクなデザインにあるだろう。前面にあるWindows VistaやViivのロゴシール、さらには光学ドライブのスロットなどがなければ、「これはPCだ」と言われても、多くの人が信じないだろう。それぐらいデザインは家電ライクであり、あまりPCであるように感じないというのが第一印象だ。

 それもそのはず。採用されている液晶は、もともと液晶TV用として開発されたSuper IPS方式の液晶パネルである“スーパーピュアカラー液晶”を採用している。スーパーピュアカラー液晶は、左右の視野角などが非常に広く色再現性が優れていると定評がある。実際、TVなどを表示すると、非常にクリアかつ広視野角で視聴でき、かなり横から見てもきちんと映像を見ることができる。実際、カタログスペックで上下/左右に178度の視野角を実現している。

 輝度に関してもかなり高めで、カタログスペックでは475cd/平方mとなっている。簡易輝度計で計測したところ、もっとも高い設定で445cd/平方m、もっとも低い設定で115cd/平方mなど、液晶TV並の輝度を実現している。なお、輝度の設定は本体に用意されているロータリースイッチを利用して設定可能で、ユーザーの好みの設定に柔軟に変えられる点はよい。

 PCとしての解像度は1,680×1,050ドット(WSXGA+)で、横方向の画面を広々と利用することができ。特に、Vistaでは、Windowsサイドバーのようにワイド画面を利用するような仕組みが標準で入っているため、ワイド液晶が適している。

光学ドライブはフロントローディング方式。DVD±R DL書き込みが最大6倍速、DVD±R書き込みが最大8倍速、DVD+RW書き込みが最大8倍速、DVD-RW書き込みが最大6倍速、DVD-RAM書き込みが最大5倍速となっている TVを再生していると、見た目はまさにTVそのもの。液晶パネルはSuper IPS方式のスーパーピュアカラー液晶を採用しており、高輝度で広視野角という特徴を備えている
液晶は90度まで回転するので、設置時の自由度は高いし、設置した後でも調整の範囲が広いのは使い勝手がよい

●細かな部分のデザインにも工夫があり液晶TVらしさが演出されている

 本製品は前面のデザインだけでなく、背面のデザインも液晶TVらしく見えるような配慮がされている。液晶一体型PCがPCらしくなってしまう最大の理由は、PCの入出力ポートにさまざまなケーブルが接続されているということではないだろうか。本製品では、それを隠すために、本体左側に用意されているI/Oポートに開閉式のフタを用意しており、ケーブルなどはそれにより隠すことが可能になっている。ただし、TVアンテナの部分だけはすぐにケーブルをさせるように露出しており、それもTVらしく見せることに貢献している。

 入出力ポートは、S/コンポジットビデオ入力、USB 2.0×4、モデム、Ethernet、オーディオ入出力(ラインアウトはS/PDIF出力兼用)、アナログTV入力(アンテナ入力、ビデオ入力)、デジタルTVアンテナ、B-CASカードなどの各ポートなどが用意されている。なお、前面にも入出力ポートは用意されており、ヘッドフォン端子、USB 2.0、IEEE 1394(4ピン)、メモリースティック(Pro)/SDカード/xD-Picture Card対応スロットなどが用意されている。

 キーボード、マウスはワイヤレス方式となっている。最近の液晶一体型PCでは、マウスが省略されて、タッチパッドがキーボードに統合されている例が多いが、本製品ではきちんとマウスが添付されており、マウス派のユーザーにはうれしいところだ。キーボードもテンキーまで用意されたフルキーボードで、Webブラウザやメールソフトなどが一発で起動できるボタンや、メディアファイルの再生ボタンが用意されており、使い勝手がよい。

本体の右背面。ポート類には開閉式のフタが用意されており、ケーブルなどは隠すことができる。TVアンテナだけは露出しており、それらもTVとしてのデザイン性を高めている 本体の右背面に用意されているI/Oポート。上からSビデオ/コンポジットビデオ入力、USB 2.0×4、モデム、Ethernet、オーディオ入出力(ラインアウトはS/PDIF出力兼用)、アナログTVチューナ(アンテナとSビデオ/コンポジット入力)、デジタルTVチューナ、B-CASカード
付属のキーボードはワイヤレス方式で、テンキーも用意されている 一体型PCにありがちなタッチパッドではなく、マウスが用意されているのはマウス派にはうれしいところ

●地上デジタルとアナログのデュアルチューナ構成

 TVとしての機能も、必要にして十分な機能が実装されている。TVチューナは地上デジタル放送とアナログ放送用の2系統が用意されている。

 デジタル放送のチューナとして採用しているのは、日立が独自に製造しているデジタル放送ボードだ。地上デジタル放送の視聴、録画が可能で、内蔵されているDVDスーパーマルチドライブを利用してCPRMに対応したDVDメディアにムーブ書き出しが可能になっている。ただし、対応しているのは地上デジタル放送のみで、デジタルBS/110度CS放送には対応していないので、それらを楽しみたいと思うユーザーは注意が必要だ。

 デジタル放送用には“ピクチャーエンハンス”と呼ばれる高画質化機能が用意されており、受信したデジタル放送の画像に対して、リアルタイムでさまざまな効果をかけることで、よりリアルな色や画像が再現できるような工夫されている。3Dノイズリダクションやコントラスト調整、シャープネス調整、デインタレース処理などが工夫されており、より高画質化が図られているのだ。

アナログ放送のビットレート設定。利用シーンに応じてビットレートを選択できる

 アナログ放送用のTVチューナカードは、ピクセラの「PIX-MPTV/P6W」が採用されている。PIX-MPTV/P6Wは、家電のHDDレコーダなどににも多数採用されているパイオニア・マイクロ・テクノロジー製の10bitビデオデコーダを内蔵しており、HDDレコーダ並の画質での録画が可能になっている。3次元Y/C分離やゴーストリデューサといった定番の高画質化回路も組み込まれており、画質に関して不満を感じることはないだろう。

 録画ビットレートは、以下のような選択肢から選択できる。

・HDD高画質モード 8Mbps(CBR)/6Mbps(CBR)
・標準モード 4Mbps(CBR)/3.5Mbps(VBR)
・長時間モード 3Mbps(VBR)/2Mbps(VBR)

 割と細かく設定することが可能であるので、空き容量などと相談して決められるのはうれしいところだ。

●10フィートでも2フィートでもTVの操作が可能

 そのTV関連のソフトウェアだが、非常にユニークな使い勝手になっている。本製品はOSとしてVista Home Premiumが採用されており、リモコンで操作するときにはWindows Media Center(以下メディアセンター)から操作することになる。現在のWindows Media Centerは、日本のデジタル放送を受信する機能が実装されていないので、アナログ放送の視聴、録画はメディアセンターの仕組みを利用し、デジタル放送はメーカー独自のソフトウェアを利用するという実装が一般的になっている。

 しかし、本製品では、「Prius Navistation 5」というアプリケーションが、メディアセンターのアドオンとして組み込まれており、メディアセンターのユーザーインターフェイスと全く同じ操作体系でデジタル放送、アナログ放送を受信することが可能になっている。それどころか、メディアセンター標準のTV機能はマスクされて使えないようになっており、TVの操作はすべてアドオンソフト経由で行なわれる。これにより、アナログだろうが、デジタルだろうが、統一された操作体系で操作することが可能であり、ユーザーにとって非常にわかりやすいといえるだろう。

 ただし、TV機能を起動するまでにはやや時間がかかる。実測で20~25秒程度もかかっているのはいただけない。また、デジタル放送のEPGの取得にもやや時間がかかる。取得時のメッセージには“1時間程度かかる”と表示され、実際1時間ではないものの20分~30分はかかっている印象だ。この点はいずれもソフトウェアでの改善が可能だと思うので、ぜひ今後のアップデートなどで改善していただきたいものだ。

 ユニークなのは、リモコンだけでなく、きちんとキーボードやマウスでも操作することを前提にした2フィートUI版のPrius Navistation 5も用意されていることだ。確かにリモコンで操作できると視聴する際には便利なのだが、番組予約やDVDへの書き出しなどの作業はマウスやキーボードで操作した方が便利だ。そうした時にきちんと2フィートUI版が用意されているのは大変ありがたいといえる。

 また、2フィートUI版では、全画面表示だけでなく、デスクトップの右側にサイドバーのように表示するモードも用意されている。こうしたモードでの表示はながら表示に適しており、例えばWordやExcelなどで文章を作りながらちょっとニュースを見たりといった使い方に適している。

 このように、リモコンでも、キーボードでもマウスでも、柔軟に操作することが可能で、かつ利用シーンにあわせた使い方が可能になっているのはありがたいところだ。

付属のリモコンはWindows Media Center用のボタンが用意されており、Windows Media CenterやPrius Navistation 5などの操作が可能に Windows Media Centerのメニューでは、Windows Media Center標準のTV機能はマスクされPrius Navistation 5のアドオンだけが表示されている
Windows Media Center版の地上デジタルのEPG画面や録画番組リスト。Windows Media Centerとの統一感があり、違和感なく操作できる 2フィート版Prius Navistation 5。キーボードやマウスで操作するときにはこちらの方が手軽に操作できる
デジタル放送とアナログ放送の両方を同時に表示することも可能 2フィート版Prius Navistation 5の録画番組リスト画面 サイドバーの横に表示されるPrius Navistation 5。何か作業をしながらの時はこれが便利

●CPUにはCore 2 Duo E4300

 むろん、PCとしての基本機能も十分満足できるものだ。CPUはIntelのCore 2 Duo E4300(1.8GHz)、チップセットはIntel 946GZ+ICH7-DH、メインメモリは1GB、HDDは320GB(HGST HDT725032VLA380、AHCIモードで動作)が採用されている。このほか、IntelのEthernetコントローラが採用されているので、Viiv Technologyに対応している。

 Core 2 Duo E4300とIntel 946GZに関しては若干の説明が必要だろう。一般的にCore 2 Duoのメインストリーム向け製品は、E6700(2.66GHz)のようにE6xxx系のプロセッサナンバが割り当てられている。このE4300はデュアルコア製品の中でエントリー向けと位置付けられており、FSBが800MHzに抑えられ(E6xxxシリーズは1,066MHz)、L2キャッシュが2MB(E67000と6600は4MB)、企業向けプラットフォームの「vPro」には未対応などが大きな違いとなっている。

 チップセットのIntel 946GZは、型番だけならIntel 945シリーズの延長線上にある製品に見えるが、ダイはIntel 965ファミリーのものが利用されており、ビデオ機能はIntel Q965/963に内蔵されているものと同じ、Intel GMA3000シリーズとなっている。エントリー向けにFSBが800MHz、DDR2のクロックが667MHzに制限されているほか、サウスブリッジがICH7シリーズであるなどの違いがある。

 Intel 946GZを採用している利点は、なんといってもグラフィックスコアにIntel GMA3000を内蔵していることだ。むろん、独立したGPUに比べれば性能は高いとはいえないが、統合型としてはそれなりの3D描画性能を持っており、もちろんWindows Vistaの新UI「Windows Aero」を利用できる。

 ただし、標準設定では、メインメモリのうち共有ビデオメモリが128MBに設定されていた。これは、AW37W5Tのメインメモリが標準では1GB搭載のため、ビデオメモリに大容量を割り振ると、3Dでの性能は挙がるが、システム全体としての性能は下がってしまうからだろう。なお、ビデオメモリの容量は、BIOSセットアップで256MBに変更できる。

 そうした意味では、性能重視であればメインメモリを増設したいところだ。本製品では、メインメモリは512MB(PC2-5300)が2枚で1GBとなっている。メモリスロットは2本だけなので、メモリ容量を増やすには1GB×2枚に交換する必要がある。なお、メモリの交換は、背面にあるフタを外すだけで簡単に行なえる。

デバイスマネージャの表示 背面の上部にはメモリスロットが用意されている。アクセスが容易なところに用意されており、メモリ交換は簡単に行なえる

●Home Premium搭載PCとしては十分な処理能力

 最後に、本製品の性能について触れておこう。Windows Vistaで利用できるベンチマークということで、FutureMarkの3DMark06(V1.1.0)、PCMark05(V.1.2.0)の2つを実行し、さらにVista標準のベンチマークといえるVistaエクスペリエンスインデックスのスコアについてもチェックしたので、あわせて掲載しておく。

 3DMark06に関しては、CPU関連のテストでなぜか必ずエラーが発生してしまい完走しなかった。このため、今回はスコアはない。本製品で採用されているIntel GMA 3000は、ピクセルシェーダ2.0に対応するなどDirectX 9世代のGPUとなっており、それ故にWindows Aeroもきちんと動作しているので、特に3DMark06の動作も問題ないはずなのだが、このあたりは新しいOSになったばかりである程度は仕方ないところだろう。

 PCMark05に関しても、Core 2 DuoベースのPCとしては標準的なスコアであると言っていいだろう。なお、Vistaエクスペリエンスインデックスに関しても3D周りの性能がボトルネックになって、総合スコアは3.5になってしまっている(Vistaエクスペリエンスインデックスの総合スコアは一番低いものに合わせられてしまう)。それがなければ4は確実に超えているので、Vista Home Premiumを利用するには十分な性能を備えているということができるだろう。

【表】ベンチマーク結果
Prius One type W
(AW37W5T)
CPUCore 2 Duo E4300
ビデオIntel 946GZ内蔵
メモリ1GB
PCMark05PCMark3797
CPU4475
Memory3575
Graphics1507
HDD6362
Vistaインデックス総合3.5
プロセッサ4.8
メモリ4.3
グラフィックス3.5
ゲーム用グラフィックス3.5
HDD5.6

Vistaエクスペリエンスインデックスのスコア

●液晶TV、HDDレコーダ、PCのすべてが必要な新社会人などにお奨め

 以上のように、本製品はまるで液晶TVのような液晶パネル、そしてデザインを採用し、かつWindows Media CenterやPrius Navistation 5などにより、10フィートUIを利用してリモコンでの快適な操作が可能であるなど、まさに液晶TVの使い勝手を実現していると言ってよいだろう。

 かつ、それに加えてPrius Navistation 5に、2フィートUI版を用意しキーボードやマウスで操作できる点、そしてOSにはWindows Vista Home Premiumを採用しているため、Windows用アプリケーションを自由に組み込んで柔軟に使える点は液晶TVなどにはないメリットといえる。

 本製品はMicrosoft Office Personal 2007が付属して市場想定価格が27万円となっている。液晶TV、HDDレコーダ、PCが液晶TV+デジタル放送受信可能なHDDレコーダの組み合わせは20万円を超えるが、それらの機能に加えてPCとしても利用できること、さらにはオールインワンで使えるということを考えれば決して高くはない。特に、これからワンルームでの生活をスタートしよう新社会人などであれば、必要なものがすべて1パッケージになっているという意味で、本製品はお奨めできる。

【3月6日追記】6日現在、AW37W5Tはメーカー完売となりました。

□日立のホームページ
http://www.hitachi.co.jp/
□Prius One type Wの製品情報
http://prius.hitachi.co.jp/prius/pc/2006dec/one_w/
□関連記事
【1月15日】日立、新デザインの一体型デスクトップPC「Prius One」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0115/hitachi1.htm

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(2007年3月6日)

[Reported by 笠原一輝]


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