富士通のノートPC、FMV-BIBLOシリーズの中でも、小型、軽量ボディで高いモバイル性を実現するマシンとして人気の高いLOOXシリーズ。そのLOOXシリーズに、本体重量約999g、最薄部18.2mmの薄型/軽量モデル「LOOX Q70TN」が登場。これまでのLOOXシリーズにはない魅力を持つ、意欲的なモバイルマシンとなっている。 ●最薄部18.2mm、重量約999gの超薄型/軽量ボディを実現 これまでのLOOXシリーズは、光学ドライブを内蔵するだけでなく、アナログTVチューナユニットやワンセグチューナカードを添付するなど、マルチメディア能力を重視したモバイルノートというイメージが強い。しかし、新たに登場したFMV-BIBLO LOOX Q70TN(以下LOOX Q)は、これまでのLOOXのイメージからはかなりかけ離れた印象を受けるマシンとなっている。 例えば、重量こそ1kgを切る非常に軽量なボディとなっているが、本体サイズは従来のLOOXシリーズよりもかなり大きくなっており、フットプリントはA4サイズの雑誌よりも若干大きい。加えて、光学ドライブを搭載しない1スピンドルモデルであり、ブラックを基調とした落ち着いたカラーリングやシンプルなデザインとも相まって、従来のマルチメディア能力を重視したモバイルノートというイメージはかなり弱められているように感じる。これはLOOX Qが、もともとビジネス向けのモバイルノートとして開発された「LIFEBOOK Q」を、コンシューマ向けモデルとして投入した製品だからだ。 ビジネス向けのモバイルノートに求められる機能は、軽量、コンパクトなだけでなく、軽快な入力が可能な扱いやすいキーボード、豊富な情報を表示でき、かつ視認性に優れた、ある程度の解像度とサイズを持つ液晶ディスプレイ、優れたセキュリティ機能など、マルチメディア能力を重視するモバイルノートに求められる機能とは若干異なっている。そのため、LIFEBOOK QをベースとするLOOX Qが、従来のLOOXシリーズと若干イメージが異なっていても当然というわけだ。 だからといって、LOOX Qが魅力のないマシンというわけではない。フットプリントはともかく、最薄部18.2mm、最厚部19.9mm(内蔵バッテリパック利用時)という20mmを切る薄さに加え、約999gと1kgを切る本体重量に関しては従来の「LOOX T」シリーズを完全に凌駕しており、モバイル性に関してはLOOX Qのほうが確実に上回っている。そう考えると、マルチメディア能力よりもモバイル性を重視する人にとって、LOOX Qは非常に魅力のあるマシンである。
●LEDバックライトや0.2mm極薄ガラスの採用で薄型化を実現 LOOX Qが20mmを切る薄型ボディを実現できているのは、本体素材として軽量かつ剛性に優れたマグネシウム合金を採用しているだけでなく、液晶ディスプレイにLEDバックライトや0.2mmの極薄ガラスを採用することなどにより実現している。 搭載されている液晶ディスプレイは、1,280×800ドット(WXGA)表示対応のワイド12.1型スーパーファイン液晶で、バックライトとして蛍光管ではなくLEDを採用。また、液晶パネルのガラスには0.2mmの極薄ガラスを採用。これによって、液晶ディスプレイ部の厚さを大幅に低減。液晶ディスプレイ部は実に約7mm(実測値)しかなく、薄型化に大きく貢献していることがよくわかる。 もちろん、薄型化されていてもスーパーファイン液晶ならではの高輝度や優れた視認性、発色性の良さは失われていない。液晶表面は光沢の強いグレアタイプではあるものの、反射を抑える加工が施されており、一般的なグレアタイプ液晶よりも映り込みが少なく見やすい点も嬉しい。ただし、上下の視野角はやや狭いようで、多少画面の角度を変えただけで色合いが大きく変わる点はやや気になった。 12.1型というサイズは、これまでのLOOXシリーズに搭載されている液晶ディスプレイと比較すると二回りほど大きく、当然本体サイズにも影響している。とはいえ、文字などの視認性は格段に有利であり、個人的にはこれぐらいのサイズがあった方が嬉しい。本体の薄さや重量を考えても、モバイル性は全く失われていないと言っていいだろう。
●薄型ながら200kgfの圧力にも耐える高い堅牢性も兼ね備える 超薄型/軽量ボディを実現するLOOX Qだが、タフなビジネスモバイルとしても対応できる高い堅牢性も兼ね備えている点も特徴の1つ。ボディ素材としては、本体天板と底面にマグネシウム合金を採用と、特殊な素材を採用しているわけではない。また天板部分も、堅牢性重視のモバイルノートで多く採用されているようなボンネット構造は採用されておらず、完全にフラットなままだ。見た目だけでは特に堅牢性を高める構造が取られていないように思える。しかし実際には、200kgfの圧力にも耐える、非常に高い堅牢性が実現されいている。 実際に液晶ディスプレイ部を開閉してみても、たわみは少なく、不安はあまり感じない。さすがに、ディスプレイ角を持って開閉しようとすると、ややたわむ感じもあるが、それは他のマシンでも感じる程度だ。ディスプレイ中央部付近を持って開閉していれば、不安は全く感じないと言っていいだろう。また、ヒンジ部分はチタン素材を採用しており、軽量化と強度を両立。ヒンジ部はかなりコンパクトながら、液晶ディスプレイがぐらつくことは全くない。
●高いセキュリティ性も特徴 LOOX Qのもう1つの特徴として、高いセキュリティ性がある。もともとビジネスモバイルとして開発されたマシンなので不思議なことではないが、LIFEBOOK Qで求められるセキュリティ性がそのままLOOX Qにも受け継がれている。 まず、スライド式の指紋認証ユニットの搭載。これは、LOOX Qに限らず、FMV-BIBLOシリーズのほぼ全てで搭載されているので、特に珍しいものではない。LOOX Qではこれらに加え、3次元加速度センサが搭載され、本体に加わる衝撃を関知してHDDのヘッドを自動的に退避させる機能も盛り込まれている。 この機能は、最近のビジネスモバイルマシンではほぼ標準的に搭載されつつある機能だが、コンシューマ向けのモバイルノートであっても持ち歩く頻度が高いことを考えると、必要な機能であり、LOOX Qで省かれることなく盛り込まれたことは素直に喜びたい。
●基本スペックの一部はカスタマイズ可能 LOOX Qは、富士通のWeb直販サイト「富士通WEB MART」でのみ購入できる、オンライン販売専用モデルである。そのため購入時には、メインメモリの容量やHDD容量など、基本スペックの一部をカスタマイズして購入可能となっている。 カスタマイズできる部分は、メインメモリ容量とHDD容量、外付け光学ドライブの種類、バッテリの種類など。CPUやチップセット、液晶ディスプレイなどは変更不可となっている。 搭載されるCPUは、超低電圧版Core Solo U1400(動作クロック1.20GHz)。チップセットはIntel 945GMS Expressで、グラフィック機能はチップセット内蔵のGMA 950が利用される。メインメモリは、PC2-4200対応のDDR2 SDRAMで、512MBまたは1GBとなる。メインメモリ増設用のSO-DIMMスロットは用意されず、全容量が基盤に直接実装される。そのため、最大容量の1GBを搭載するには、購入時に選択する必要がある。HDDは、30GB/60GB/80GBの3種類から選択可能。搭載されるHDDは1.8インチドライブで、本体底面から簡単に取り出すことが可能だが、1.8インチHDDは入手性が良くないため、できれば購入時になるべく大容量なドライブを選択しておきたい。 今回試用した製品では、光学ドライブとしてUSB接続の外付けCD-RW/DVD-ROMコンボドライブが添付されていたが、±R DL対応DVDスーパーマルチドライブを内蔵するドッキングステーションも選択可能となっている。このドッキングステーションには、光学ドライブに加え、Gigabit EthernetやミニD-Sub15ピン、USBコネクタなどが用意される。 これ以外には、IEEE 802.11a/b/g対応無線LAN、Bluetooth、IEEE 1394、Gigabit Ethernetなどを標準搭載。また、Type2 PCカードスロット×1や、SDカードスロットも用意されている。このうち、Gigabit Ethernetは、本体にRJ-45が用意されず、付属のアダプタを介して接続することになる。このアダプタにはミニD-Sub15ピンも用意されている。 ところで、本体底面からはMini PCI Expressスロットにアクセスするための窓も用意されている。これは、LIFEBOOK Q海外向けモデルの一部でワイヤレスWANアダプタを取り付けるために用意されているもので、LOOX Qでは利用されておらず、取り付ける周辺機器も用意されていない。LOOXシリーズとして投入するなら、アナログTVチューナまたはワンセグチューナユニットを搭載するなどの工夫があってもよかったのではないだろうか。
●キーボードはピッチが18mmで、上段キーは幅が狭い 12.1型液晶を搭載しているため、本体横幅は297mmと、A4サイズとほぼ同じほどの幅があるため、19mmフルピッチのキーボードも十分搭載できるサイズがある。しかし、実際に搭載されているキーボードはピッチが18mmと、やや小ぶりのものとなっている。そのため、キー入力時にはやや窮屈な感じを受ける。 キーボード左には電源ボタンや登録されたアプリケーションを呼び出せるプログラマブルキーが配置され、右にはHDDアクセスランプやバッテリインジケータが配置されているものの、できればそれらボタンの位置を変更して、19mmピッチのキーボードを搭載してもらいたかったところだ。また、キーボード最上列、ファンクションキーの部分が縦幅が狭くなっており、かなり使いづらく感じた。ピッチの違いや無理な配列などがないだけに、これらの欠点が少々残念だ。 ストロークは約2mmほどと一般的なノートPCに搭載されるキーボードとほぼ同じ。タッチは堅めで、しっかりとしたクリック感もある。ただ、筆者個人としてはもう少し柔らかめのタッチが好みなので、この点も少々気になった。 ポインティングデバイスは、パッド式のタッチパッドを採用。こちらの使用感は良好だ。左右のクリックボタンの間にはスライド式の指紋認証ユニットが配置されており、スクロール機能としての活用もできる。また本体手前には、内蔵の無線LANやBluetoothのON/OFFスイッチが用意されている。 標準添付の内蔵バッテリパックは容量1,150mAhで、駆動時間は約2時間となる。またオプションで、駆動時間が約4.5時間の「内蔵バッテリパック(M)」と、駆動時間が約9.5時間の「内蔵バッテリパック(L)」も用意されている。 ちなみに、内蔵バッテリパック(M)搭載時の本体重量は約1,095g、内蔵バッテリパック(L)搭載時には約1,230gとなる。また、付属のACアダプタは、モバイルマシン付属のものとしてはややサイズが大きく、同時に持ち歩く場合にはやや邪魔に感じるだろう。 ●モバイルマシンとしては必要十分なパフォーマンスを実現 いつものように、パフォーマンスを検証するためにいくつかのベンチマークテストを行なった。利用したソフトは、Futuremarkの「PCMark05」と「3DMark05」、スクウェア・エニックスが配布している「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」だ(3DMark03と3DMark06は測定中にエラーが発生して実行不能だった)。測定は、電源オプションプロパティの電源設定を「常にオン」に設定して行なっている。ちなみに、試用機のメインメモリ搭載量は1GB、HDD容量は30GBであった。 結果を見ると、CPUがシングルコアでやや動作クロックの低いCore Solo U1400ということもあってか、やや伸び悩んでいるように見える。とはいえ、重量1kgを切る超軽量モバイルノートであると考えると、十分妥当な結果であるとも言える。 パフォーマンスを求めようとすると、冷却能力を高めるなどの工夫が必要となり、どうしてもサイズや重量で妥協しなければならなくなる。LOOX Qに関しては、パフォーマンスを極めるのではなく、本体の薄さと軽量さを追求し、その範囲内でのパーツ選択となっているわけだ。少なくとも、一般的なビジネスソフトや映像再生ソフトなどを利用するには申し分ないパフォーマンスが確保されていることは間違いない。
【表】ベンチマーク結果
LOOX Qは、従来のLOOXシリーズと比較しても、また他のFMV-BIBLOシリーズと比較しても、一線を画すような、やや尖った仕様を持つマシンという印象を受けた。LIFEBOOK Qの仕様をほぼそのまま受け継いでいることもあり、LOOXブランドを与えられているにもかかわらず、ビジネスモバイルに近い仕様のマシンという部分からも、そういった印象を強く感じてしまうのかもしれない。また、マルチメディア機能を重視したLOOXブランドのマシンとして見ると、やや微妙な印象を受けるかもしれない。 加えて、最小構成で249,800円から、またメインメモリを1GBに指定すると60,000円高くなるという価格設定も気になるところだ。メインメモリやHDDを増量すると30万円を軽く超えてしまうため、コストパフォーマンスはあまり優れないと言わざるを得ない。 とはいえ、1kgを切る重量や20mmを切る薄型ボディを実現した高いモバイル性は非常に魅力が高い。また、超薄型ボディかつシンプルで落ち着いたカラーリングによって、見た目の印象は非常にスマートで、手にしたユーザーの満足感はかなり高い。少々価格が高くなっても、薄型/軽量ボディの非常に優れたモバイル性を持つマシンを探しているなら、現時点で最も注目すべきマシンだろう。
□富士通のホームページ (2006年10月20日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
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