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FMPF2006前日レポート

Fall Microprocessor Forumが10月9日に開幕
~メインテーマは「電力効率の向上」

カンファレンス会期:10月10日~11日(現地時間)

会場:米カリフォルニア州サンノゼ DoubleTree Hotel



 毎年秋に米国シリコンバレーで開催されるプロセッサ技術の講演会「マイクロプロセッサフォーラム」が今年も始まった。

 マイクロプロセッサ技術の専門誌「Microprocessor Report」を発行しているIn-Statは毎年、春に「Spring Processor Forum(SPF)」、秋に「Fall Processor Forum(FPF)」の名称でプロセッサ技術の講演会を主催してきた。2006年は10月9日にセミナー、10月10~11日(現地時間)にカンファレンスが開催される。

 なお講演会の名称が今回は「Fall Microprocessor Forum(Fall MPF)」と変更された。本稿ではFall MPFの中心であるカンファレンスの概要を、事前にお伝えする。

●10月10日:マルチコア技術やマルチスレッド技術が続出

 10月10日のカンファレンスは、米IntelでDigital Enterprise GroupのArchitect-at-Largeを務めるDileep Bhandarkar博士による基調講演で始まる。講演のタイトルは「Energy Efficient Performance: The Next Frontier」。消費電力あたりの性能を高める技術を概観する。IntelのCoreマイクロアーキテクチャが備える電力管理技術にも触れる予定である。

 続く一般講演は、サーバーアーキテクチャに関するセッションである。午前中に4件の講演が予定されている。最初に富士通が、SPARC64アーキテクチャでデュアルコア構成の「SPARC64 VI」に関して詳細を述べる。2005年のFall Processor Forumで富士通が講演した内容のアップデート版となる。続いて米IBMが、次世代マイクロプロセッサ「POWER6」の詳細を述べる。動作周波数は4.0GHz~5.0GHz。65nmのSOI CMOSプロセスで製造される予定である。

 米Sun Microsystemsは、同時に処理できるスレッド数をさらに高めたマイクロプロセッサ「Niagara2」の詳細を発表する。サーバー用に開発された現行製品のマイクロプロセッサ「Niagara」は、32個のスレッドを同時に処理できる。次期製品となるNiagara2は、CPU当たりで64個のスレッドを同時に処理する。またNiagara2はデュアルCPU構成のシステムをサポートしているので、システム当たりでは128個のスレッドを同時に処理できるようになる。

 午前中の最後は、ネットワーク対応外部記憶装置用プロセッサの開発企業である、米Emulexによる講演である。ARC Internationalのコンフィギュラブルプロセッサコアを11個集積し、広帯域のメモリインターフェイスを載せたプロセッサを発表する。

 昼食休憩後は、2つ目の基調講演が組まれている。EDA(電子回路の自動設計)ツールの大手ベンダーである米Cadence Design SystemsでCTOを務めるTed Vucurevich氏が、「Performance, Power and Function - Optimizing chip design for the new Generation」と題して講演する。

 それから一般講演が再開される。前半はプロセッサコアに関するセッションである。3件の講演が予定されている。最初はDSPコアベンダーのCevaが、CPUを使わずにVoIPシステムを構築するアーキテクチャを述べる。続いて台湾のITRI(Industrial Technology Research Institute)が、携帯型民生機器向けの32bit DSP技術を発表する。最後にFPGA大手ベンダーの米Xilinxが、同社のFPGAに埋め込む32bitソフトウェアプロセッサコア「MicroBlaze」の最新版を発表する。新しいコアは、従来のプロセッサコアに対して上位互換となる。同社のFPGA「Viertex-5」に埋め込んだときに、200MHz以上で動作する。

 休憩をはさみ、午後の後半は組み込み用マルチコアのセッションとなる。まず、プロセッサ開発企業のAmbricが、超並列プロセッサコアを搭載したチップを披露する。演算速度は1兆演算/秒に達する。続いてコンフィギュラブルプロセッサコアベンダーの米ARC Internationalが、マルチコアによる電力効率の高いメディア処理技術について述べる。

 プロセッサ開発企業の米Boston Circuitsが、マルチスレッドに対応した複数の32bit RISCコアを集積したチップを発表し、H.264ビデオデコーダへの適用例を示す。最後に画像処理チップ開発企業のEutecusが、ニューラルネットワーク技術を駆使した並列処理プロセッサを発表する。ビデオカメラによる監視用途や高速の物体認識用途などを想定した。

●10月11日:ハード処理とソフト処理の最適な分割を議論

 10月11日のカンファレンスは3つ目の基調講演で始まる。英ARMでProcessors DivisionのVice Presidentを務めるJohn Cornish氏が「Priorities in Energy-Optimized Processing」と題し、プロセッサの消費電力を最小化しつつ処理性能を最大化する難しさと解決手法を議論する。さまざまな解決手法が抱えるトレードオフについて述べ、どの手法が設計目的に適うかを評価する。

 続いて前日の夕方と同じく、組み込み用マルチコアのセッションが始まる。4件の講演が予定されている。初めにネットワーク用プロセッサの開発企業である米Cavium Networksが、MIPS64アーキテクチャのプロセッサコアを16個集積したチップを披露する。続いてEmulexが前日に引き続き講演する。レイテンシの低いマルチコアプロセッサについて述べる。

 カナダのセキュリティシステム開発企業であるOptosecurityは、セキュリティ用途に特化した超並列プロセッサを発表する。空港のセキュリティ・チェックで兵器や弾薬、禁輸品などを探索するシステムに使うことを想定して開発した。それから午前中のしめくくりとして、ルネサステクノロジが複数のSuperHコアを搭載した低消費電力プロセッサを発表する。同社のハイエンドSuperHコアである「SH-4A」を4個集積した。対称構成と非対称構成の両方をサポートする。

 昼食をはさんで午後の最初には、4つ目の基調講演がある。米MicrosoftでDevelopment Lead for Windows CE Driversを務めるKurt Kennett氏が「Balancing HW/SW for Power Efficiency」と題して講演する。携帯型機器で電力効率を最適化する、ハードウェアとソフトウェアの最適分割を議論する。ソフトウェアはハードウェアの能力を理解する必要があり、ハードウェアはソフトウェアに何を処理させるのが適切かを知っておく必要があるとする。

 基調講演後の一般講演も、ハードウェアとソフトウェアの分割がテーマである。マルチメディア処理におけるハード/ソフトの役割分担に関するセッションとなる。初めにDSPベンダーの米Analog Devicesが、オーディオ処理のプログラムコード作成を支援するツールを紹介する。続いて米Freescale Semiconductorが、ハイエンドDSP「MSC8144」のビデオ応用について述べる。MSC8144自体は、2006年の春に開催されたSpring Processor Forumで詳しく紹介されている。

 それからプロセッサコアベンダーの英Imagination Technologiesが、2次元/3次元グラフィックスAPIの「OpenGL ES」(OpenGL for Embedded Systems)に対応したグラフィックスプロセッサコアを発表する。米LSI Logicは、次世代のメディアプロセッサに要求される性能仕様を議論する。将来の符号化圧縮方式に対応することや、複数のストリーミングビデオの符号化/復号化を同時に実行することなどが必要となるという。

 そして米Texas Instrumentsが、高品位デジタルビデオ信号をDSPチップでトランスコーディングするときの課題を解説する。トランスコーディングのアルゴリズムを組むときには、外部メモリーとのデータ転送速度が大きな制約要因になる。各種の符号化圧縮方式や解像度、フレーム速度、ビットレートなどに対応しなければならないことも、処理を難しくする。

 最後に、基調講演の講演者4名によるパネルディスカッションが予定されている。

 これらの講演の内容をすべて紹介することは難しいが、PCユーザーにとっても興味深い内容は多い。順次レポートを予定しているのでご期待いただきたい。

 なお日本では、11月7~8日に東京で「Fall Mircroprocessor Forum Japan」が開催される。半分程度の講演が米国のFall Mircroprocessor Forumと重複しているので、興味のある向きは参加されると良いだろう。

□Fall Microprocessor Forumのホームページ(英文)
http://www.in-stat.com/FallMPF/06/
□関連記事
【2005年5月31日】【SPF】Sun Niagaraともう1つのメニイコア
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0531/spf07.htm
【5月24日】【SPF】高性能DSPに対する2つのアプローチ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0524/spf06.htm
【2005年10月28日】【FPF】Power旋風が吹いたマルチコアプロセッサ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1028/fpf04.htm

□Spring Processor Forum 2006レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/link/spf.htm

(2006年10月10日)

[Reported by 福田昭]

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