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Perlmutter上級副社長基調講演レポート
IntelのUMPCは離陸寸前会場:米San Francisco Moscone Center West 会期:9月26日~28日(現地時間)
IDFの2日目。最後の基調講演は、モビリティグループのDavid Perlmutter上級副社長が行なった。 現在モビリティグループには大きく2系列の製品がある。1つは、CentrinoブランドのノートPC、もう1つは、UMPCことUltra-Mobile PCである。 ●モバイルPCは25周年 Perlmutter氏は、最初に、2006年はモバイルPCができて25年目になると言い、「OSBORNE 1」('81年)を紹介した。これは、8bit CPUで2台の5インチFDD、5インチの小型CRTを搭載した可搬形のCP/Mマシン。持ち運びが可能だったが、小型のスーツケースぐらいの大きさ、重さは12kgほどあった。 蛇足ながらOSBORNE 1は、最初のモバイルコンピュータではなく、開発者のAdam OsborneがXEROX PARCで開発された「Notetaker」('78年)に触発されて作ったといわれている。とはいえ、可搬形のコンピュータに25年以上の歴史があることはたしかだ。 そして、話は現在に戻る。ガートナーの調査によれば、世界中でノートPCの出荷比率が増えているという。日本はもともと半数がノートPCだが、この調子で増えていくと、2008年には、米国やヨーロッパでも半数近くがノートPCとなると予想されている。また、その原動力になるのはパーソナライゼーション(個人化)であり、そのためには特徴のあるノートPCを作るべきだと述べた。また、このためにIntelは、これまでにいくつものコンセプトPCを提案してきたのだという。
●無線はMIMOへ、次にWiMAXへ さて、話は、いよいよ技術面に入る。まずは、バッテリである。現状では、ノートPCの消費電力が1W下がると、25~30分程度バッテリ寿命が延びるといわれる。Intelは、バッテリ寿命を延ばすために、さまざまな取り組みを行なっている。HDDアクセスを削減する「Robson」やディスプレイの省電力化技術、などを積み重ね2W近くの削減が今後可能になり、バッテリ寿命が40~60分程度また延びることになるという。 無線関連では、MIMOであるIEEE 802.11nを取り込む。つまり、無線モジュール(コード名Kedron)は、IEEE 802.11a/b/g/n対応になるわけだ。IEEE 802.11nについて、Intelは、バッファローやLINKSYSなどと相互接続の検証プログラムを開始する予定。これは、Wi-Fiアライアンスなどが行なう認証プログラムを補完し、Centrinoプラットフォームでの接続性を高めることが目的だという。
また、EU圏を想定して、NOKIAと提携、PCに組み込める3G通信モジュールを開発した。米国では、WiMAXのモバイル版の普及が予想されているが、EU圏での普及は無理と見たのか、常に接続できる環境を提供するために用意されるようだ。 米国では、WiMAXのサービスが年内にも開始される予定。すでにClear WireとSprintが名乗りを上げている。気になるのは、これに「US 4G Mobile internt Network」といっていること。携帯電話でいう3GはすでにCDMA2000があるから、その次はWiMAXということなのだろうか。たしかにWiMAXでどこでも接続できる環境ができれば、インターネット接続という点で、携帯電話とは競合することになるだろう。 Intelは、WiMAXのモバイル版仕様であるIEEE 802.16eに対応したPCカードを年内に投入する予定であり、さらに固定局用のIEEE 802.16dとIEEE 802.16eの双方に対応したベースバンド用デバイス、「Rosedale 2」を2006年後半に出荷する。 また、ノートPCへの内蔵を考慮し、無線LANとWiMAXを1つのチップにまとめたRFチップ「Ofer-R」を開発中だ。 WiMAXは、最初固定局版でサービスが始まり、その後、基地局をモバイル対応にしていくと考えられている。もっとも、都市部では、先にモバイル版が導入される可能性もある。 米国では、モバイルインターネット用に2年ぐらいのレンジで普及する可能性は高そうだ。Santa-Rosaの次のプラットフォームでは、無線モジュールがWi-FiとWiMAXに対応するのではないかと思われる。
●IntelのUMPCは離陸直前 Perlmutter氏は、その後、UMPCの話題に移った。前回のIDFでは、かなりモックアップに近かったUMPCも、もう少し製品に近づいたものになっている。また、かつてCentrinoキャンペーンを成功させたチャンドラシーカ副社長が着任、いよいよ本格的な市場立ち上げが始まったようだ。 このUMPCは、Low Power IA(LPIA)と呼ばれている低消費電力用のプロセッサを採用することが決まっている。ただし、これはCore 2アーキテクチャではない。2007年の前半には、消費電力を現在の半分に、サイズを1/4にしたプロセッサを用意し、さらに2008年には、消費電力を最大で1/10にまで下げる予定だという。 以前の計画では、2010年に1/10ということだったので、少し計画が早まっているようだ。さらに将来的には、SoCつまり、System On a Chipとしてさらなる小型化を目指すという。 ここで、Yahoo! のMarco Boerries上級副社長が登場、UMPC向けに開始する「Yahoo! GO for UMPC」サービスのデモを行なった。これは、UMPCで利用することを想定したYahoo!のサービスであり、位置情報を利用して、地域検索などが可能になるもの。
次に紹介したのは、教育向けUMPC。本体とキーボードがカバーでつながっており、肩から提げて持ち歩くことができる。カバー部分は、本体を保護するという目的もあるようだ。 対象は、K-12と呼ばれる、幼稚園から高校生までの学生である。ちなみにK-12は、“K through 12”と言い4~5才の子供を対象にしたKindergartenから第12学年までという意味。米国では州によって教育制度に違いがあり、Kindergartenは義務教育となっていることが多いという。 最後にPerlmutter氏は、今後のモバイルPCのロードマップを示した。2年サイクルのプロセス変化に合わせて、縮小化とアーキテクチャの更新を交互に毎年繰り返すTick-Tock Modelである。次の新アーキテクチャとなるプロセッサのコードネームは、Nehalem、これはオレゴンのチームが担当しているといわれている。さらにその2年後には、Gesherが予定されている。こちらはイスラエルチームが担当しているが、モバイル担当のムーリー・エデン氏によれば、地名ではなく「橋」の名前なのだという。 □IDF Fall 2006のホームページ(英文) (2006年9月29日) [Reported by 塩田紳二]
【PC Watchホームページ】
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