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Microsoft Hardware Launch Event 2006
~ハードウェアラボツアーレポート

ハードウェアラボの入り口には、すでに今回発表された製品が展示されていた

9月14日(現地時間)開催



 米Microsoftは14日(現地時間)、Hardware Launch Event 2006において、ハードウェアの開発ラボを公開した。

 同社はデザインから試作、検証など、製品開発に関わる多数の分野における人材や施設を内部に抱えており、よりスムーズで強力な製品開発を行なえることを強みとしている。本レポートでは、コンセプト段階から製品化直前まで、どのような工程を経て製品が開発されていくのかを紹介する。

●ユーザビリティリサーチグループ

 PCが高級品でビジネスのみに利用されていた一昔前と違い、今ではPCは当たり前のものとなり、さまざまな場所、ユーザーに浸透し、その使い方や用途なども範囲を拡大している。そのため、製品開発にあたっては、それらを想定した広範な調査が必要となってくる。

 そこでMicrosoftでは、ユーザビリティリサーチグループを設置し、製品の使い勝手についての調査/研究を行なっている。同グループは、テスターを呼んだり、時にはユーザーが実際に製品を使っているオフィスや学校などに出向き、製品のフィードバックのみならず、ユーザーの際立った行動やニーズなどを把握し、製品開発に反映させている。

PCの利用環境調査の事例。これは極端な例と思われるが、PCが使われる場所にはPC以外のものもあるし、PCに適していない環境もある。こういったことを想定して開発は行なわれていく

 ツアーで紹介された場所は2部屋で構成されており、両部屋の壁にはマジックミラーが埋め込まれ、映画で見る取調室のような感じだ。ここでは、片方の部屋でテスターが、プロトタイプの製品などを渡され、もう片方の部屋からMicrosoftのスタッフが指示を与え、どれくらい早く作業を実行できるか、ソフトウェアの相互作用を理解できるか、そのツールが普段使うソフトウェアとうまく連携できるかなどを、状況を変えつつチェックする。

 テスターの様子はビデオに録画されており、表情を観察して、口には出さない不満がないかなども細かく分析するのだという。

 以降の段階でも言えることだが、1つ1つの作業は一度やれば終わりというものではなく、ユーザービリティリサーチで得られたフィードバックをデザイン担当者に渡し、修正されたものを再度検証するなど、試行錯誤を繰り返しながら少しずつ前進していく。

テスターが検査される側の部屋。隣の部屋からの指示はスピーカーを通じて聞こえる モニタールーム。照明の関係で黒くなっているが、こちらからはテスターの様子がマジックミラー越しに見える テスターの状況だけでなく、PCの画面もタイムスタンプ付きで録画され、作業にかかった時間なども加味して分析される

●インダストリアルデザインスタジオ

 インダストリアルデザインスタジオは、ハードウェア製品のデザインを担当する。プロセス0.1および0.2と呼ばれる段階では、製品についてのコンセプトアイデアなどを出す。1つの製品でも150~200ものアイデアを出し、おおざっぱなモックアップも試作する。

 プロセス0.3から0.8の段階では、漸次的にモデリングを進めていく。同社には人間工学を専門とするエルゴノミストもおり、見た目だけではなく、人間工学に基づいたデザインも随時加えられていく。

 プロセス0.3では、アイデアがより明確になり、リサーチグループと協業して、うまくいった点、いかなかった点や、マウスであればサイズの問題などを調査する。

 プロセス0.5では、形状やサイズを決定し、手へのなじみなどをより細かく調査し、より多数の人に合うものを作り上げていく。Natural Wireless Laser Mouse 6000では、3つのモデルをワシントン大学へ持ち込み、手への負荷などを検査したという。

 この後、色や素材といった、製品レベルでの要素を決定していく。

ずらっと並べられたマウスのデザインモックアップ。左側がNatural Wireless Laser Mouse 6000、右側がWireless Notebook Presenter Mouse 8000 Wireless Notebook Presenter Mouse 8000がプロセス0.1から製品へと進化していく様子 こちらはNatural Wireless Laser Mouse 6000のモックアップ。1つ1つ形状が大きく異なる
壁のボードに描かれていたNatural Wireless Laser Mouse 6000のスケッチ 同じくWireless Notebook Presenter Mouse 8000のスケッチ。機能などの説明も添えられている 別室にはLifeCam NX-6000のモックアップも飾られていた

●インタラクションデザインチーム

Wireless Notebook Presenter Mouse 8000のプレゼンキーもいろいろなパターンが提案/テストされた

 インタラクションデザインチームは、ハードウェアとソフトウェアのインタラクション(相互作用)の研究/開発を受け持ち、複雑なインタラクションを、簡単でシームレスなソリューションに落とし込むことを目的とする。

 初期段階では、ユーザーニーズを把握する。Wireless Notebook Presenter Mouse 8000では、マウス、そしてプレゼンターという2つの異なるニーズを1つの製品に融合する必要があった。

 同チームは、多くの局面でPresenterをマウスとして使うと想定し、その上でどういう機能がプレゼンテーションに便利かを考えた結果、小さなマウスに10も20もボタンをつけたのでは複雑になるだけで、手に持ちやすく、親指だけで操作できるところにボタンを配置することに決定した。

 ボタンについては、携帯電話にヒントを得て、実際に携帯電話のボタンを製造しているメーカーと協力することで、薄くて押しやすいボタンが実現した。また、一番使用頻度が高いと思われる「送る」ボタンをもっとも大きくし、輪郭なども変えることで、暗いところでも指先だけで分かるよう配慮した。

●モデルショップ

 モデルショップでは、デザイナーが描いたスケッチや設計図を元に、3次元のサンプルモデルを作り出す。最初は、直方体のブロックの角を削った程度のものだが、ある程度、形が決まったらシリコンモールドを作り、複数のプロトタイプを作る。この時、それぞれ、形状を微妙に変えて、どれが最適かを探っていく。

 製品化に近い段階になると、特定の機能を持った実動サンプルを作る。Wireless Entertainment Desktop 8000では、ポインティングデバイスが最初からタッチパッドに決まっていたわけではなく、トラックボールや、スティックタイプのものも試作された。

 製品の外箱に使う写真用のプロトタイプを作るのもモデルショップの仕事。量産前なので、これも手作りで行なうが、非金属のモックアップを金属のように見せるために特殊なペインティングを行なうなど、職人芸が要求される場面だ。

最初はスポンジのような直方体の素材を手で削っていっただけの単純なもの ある程度形が決まったら、シリコンモールドで同形状のモックアップを作り、これに微妙な変化を加えて、その際によるユーザーの反応を調査していく
形状が決定したら、モックアップをスキャナにかけ、CNCによる型を作る パーツ単位でのモックアップも作る
キーボードのポインティングデバイスをテストするために用意された試作機 カラーバリエーションモデルも作る これもモックアップ。キートップの刻印は4時間かけて手作業で貼っていったという

●信頼性テスト

 一般的に同社では、キーボードのキーなどのメカニカルテストや、マウス表面の摩耗などの化学テストなど、1つの製品につき24のテストを3~5日程度かけて行ない、3~5年分相当の耐久性を検証する。

マウス表面の摩耗を検査する機械。汗や香水などを染みこませて、化学反応も検査する バッテリ濃度の検査器
チップの表面温度測定器 マウスの回転部分のトラッキング能力を測定する機械。ボールやホイールを機械制御で回転させ、精度の変化を調べる
クリックボタンの反応圧力を測定する機械 クリックボタンを連打し、劣化を測定する機械 製品が高いところから落下するところを高速度カメラで撮影し、どのように壊れるかを調べる
今回紹介された機械で唯一人力で動かすもの。キーボードをセットして、左右にぐいぐいとねじって強度を検査する キーボードのキーの劣化を測定する機械 温度や湿度を変化させるチェンバー
マウスをケーブルが下を向くように設置して、揺らすことで、ケーブルの根本がすぐに切れたりしないかといったことまでチェックする

□Microsoftのホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0909/ms.htm

(2006年9月20日)

[Reported by wakasugi@impress.co.jp]

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