ウィルコムのW-ZERO3(WS003SH)は、わが国で初めてOSにWindows Mobileを搭載したスマートフォンとして、2005年10月に発表された。 Palm OSやWindows Mobileといった汎用OSを搭載したPDAが苦戦する中、WS003SHは同年12月の発売時点において、熱狂的な支持を受けた。発売日にウィルコムのWebサイトに接続できなくなったり、量販店に行列ができるといった「騒ぎ」になったのは、記憶に新しいところだ。 もちろん、これほどの熱気がずっと続いているわけではない。最近では売り場の方もだいぶ落ち着いている。が、この2月に新色を追加したのに加え、6月にはメモリ容量を倍増し電子辞書機能を搭載したハイスペックバージョン(WS004SH)を追加するなど、ラインナップの拡充につとめていることを考えると、予想以上の売れ行きであることは間違いないのだろう。 このW-ZERO3シリーズの最新作として7月4日に発表されたのがWS007SH(W-ZERO3[es])だ。OSの基本バージョン(Windows Mobile 5.0)、プロセッサ(XScale PXA270 416MHz)、メモリ容量(フラッシュ128MB、SDRAM 64MB)は従来のWS003SHと同じ。最大の違いは採用する液晶ディスプレイが2.8型に小型化した点にある(解像度は同じ640×480ドット)。ディスプレイの小型化によりWS007SHは、ストレートバータイプのケータイに近いフォルムになった。
3.7型の液晶ディスプレイを備えるWS003SHは、表示が大きくて見やすい一方で、本体サイズも大きく、PDAとして使っている場合はともかく、電話として通話に用いるのがちょっとためらわれるサイズであった。WS007SHは、とりあえず電話として手に持っても違和感が少ない。 WS007SHが電話機っぽいもう1つの理由は、ディスプレイの下にケータイと同タイプのテンキーが用意されていることだ。それでも、本体をスライドさせるとちゃんとQWERTY配列のキーボードが出てくるところがW-ZERO3シリーズのDNAを感じる。個人的にはもっと薄くできるのなら、思い切ってQWERTYキーを省略するのもアリだと思うのだが、それではW-ZERO3シリーズではない、ということなのだろう。 とりあえず発表会の会場でちょっと触った感じでは、どちらのキーもそれなりに使いやすかった。特にQWERTYキーの方は、キートップがかなり小さくなっている割には、プニプニとした触感で押したかどうかの判別がつけやすく、個人的にはVAIO type Uより好ましく感じたほどだ。
もう1つ好ましく感じたのは、価格がリーズナブルなこと。価格は契約形態によって異なるが、機種変更(10カ月以上)および新規(年間契約込み)で29,800円というのは、手が出しやすい。同じ条件のWS003SHが39,800円であるのと比べても値頃感がある。2万円台後半というのは、ハイエンドケータイの初期価格といい勝負だが、中身的にも決して見劣りしないと思う(汎用性の高いOSやプロセッサをどう評価するか、にもよるが)。 とはいえ、WS003SHと全く同等の中身を小さな筐体に詰め込んで価格を安くできた、とは残念ながらいかない。WS003SHが持つ機能のうち、無線LANの機能がWS007SHでは省略されている。これについては、後から追加できる外付けオプションとして提供される見込み(現在ワンセグチューナ等とともに開発中)だが、オプションというのは何かと高くつくもの。外付けすることによる携帯性の低下と合わせ、これらの機能の使用頻度が高い人は、やはりWS003SH(あるいはWS004SH)を選んだ方が良いだろう。
発表会場で実物を触って気がついたのは、本体の背面に、Intel Insideのロゴがあること。それもシール等ではなく、透かしのような形で樹脂にモールドされている。ご存じのようにIntelはモバイル機器向けのXScaleプロセッサ事業をMarvellに売却すると発表した。筐体の金型を起こしたのはしばらく前だったのだろうが、売却が完了したら(もうしばらく時間がかかると思われる)この底面のロゴがどうなるのかちょっと気になるところだ。 プロセッサそのものは、Marvellに売却されたからといって、供給が絶たれるハズもなく(それでは買収した意味がなくなる)、作るのも当面はIntelの工場だろうから、少なくともWS007SHについては心配する必要はないだろう。ちなみに、2005年10月のWS003SHの発表会では、来賓としてインテルの町田取締役の挨拶があったのだが、今回の発表会ではインテル関係者による挨拶はなかった。 さて、実は筆者はウィルコムのリアルユーザーである。今使っている端末はWX310Kで、auのW21Tと併用している。どちらかに一本化したいと思い、Bluetooth付きの端末を2台持っているのだが、最近の持ち歩きの傾向は、PCを持って出る時はW21T、PCを持って出ない時(PDAしか持っていない時)はWX310Kとなっている。要するに画面が広く(情報量が大きく)、添付ファイルを受信する可能性があるPCにはデータ転送速度の高いW21Tを組み合わせ、メールの受信が中心で添付ファイルを取らない場合はWX310Kにしているわけだ。 しかし、PDAとW21Tの組み合わせも当然可能であることを考えれば、auへ一本化した方が合理的。そう思って、auの端末更新も含めて考えていたところだったのだが、どう考えてもケータイの音楽機能を筆者は使わない(基本的にiPodを持ち歩いている)。どうしようかと悩んでいる時に、このWS007SHである。今は方向を変えて、WS007SHへの機種変更を考えているのだが、さて。 □ウィルコムのホームページ (2006年6月28日) [Reported by 元麻布春男]
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