Microsoftは、米国で5月23日より開催されているWinHEC(Windows Hardware Engneering Conference)の会場において、Windows Vistaのβ2を公開した。公開されたWindows Vistaのβ2は、英語版のみならず、日本語版、独語版など各国語対応版が用意されており、今後βテスターやMSDNなどを通じて開発者などに配布されることになる。 出荷候補版(RC版:Release Candidate)の最初のバージョン(RC0)にも相当する今回のβ2は、ビルド番号としては5384になり、開発者のみならず、エンドユーザーも含めたより広い層にも配布され、テストが続けられることになる。 そして2007年1月に予定されている正式リリースに向け、以後RC1、そして出荷版となるRTMへの開発が続けられることになる。 ●これまでのβよりも安定性が増し、より広範囲なテストへと提供されるβ2 今回、WinHECの会場で公開されたWindows Vistaのβ2は、ビルド番号で言えば5384で、4月に開発者に提供されたビルド番号5381からわずかにビルド番号が上がっている。ただし、2月に提供されたCTPから、英語版のみのアップデートとなっていたのに対して、このβ2では日本語版、独語版など各国語版が用意されているのが特徴と言える。 Microsoftの関係者によれば、2005年のPDCで公開されたバージョンから、βテスターのフィードバックを元に開発が続けられてきており、安定性も徐々に上がってきているという。今回のβ2でのフィードバックを元に、より安定性を増したRC1の開発が行なわれることになる。 今回のβ2の特徴は、これまで開発者やMSDNの登録ユーザーなど、一部に限定して配布されてきたβ版が、今後はより範囲を広げ一般のユーザーなどにも配布されることだ。たとえば、日本では新規ハードウェアと同時購入できるWindows XPのDSP版を購入すると、Windows Vista β2のDVDがもらえるキャンペーンなどが行なわれており、こうしたキャンペーンなどに参加することで、一般のユーザーもβテストに参加できる。 ●新しいユーザーインターフェイス「Windows Aero」を搭載 エンドユーザーにとってのWindows Vistaの最大の特徴は、“Windows Aero”と呼ばれる新デザインのユーザーインターフェイスを搭載していることだろう。 Windows AeroとはVista用にデザインされたユーザーインターフェイスで、Windowsのスタートメニューの構成が変わり、従来のXPまでのようにメニューから登録したプログラムがはみ出すということはなく、スタートメニューの中に表示されたり、デスクトップ検索の機能がスタートメニューに統合され、より検索しやすくなるなどの拡張が行なわれている。このほかにも、アイコンの大きさをスライドで変更する“Live Icon”の機能など多数の拡張も行なわれている。
さらに、Windows Vista Premium Edition、Ultimate Edition、Business Edition、Enterprise Editionの4つのSKUのうちどれかを利用していて、DirectX 9のシェーダモデル2.0に対応したGPUが搭載されているGPUの場合、“Aero Glass”と呼ばれる3D表示のデスクトップが利用できる。これは、Windows Vistaが、Direct3DのAPIを経由して画面を描画するモードを持っているためで、GPUの3Dエンジンを利用してWindowsデスクトップの描画が行なわれる。
そうした3Dエンジンによる描画のメリットは、1つにはWindowsデスクトップやアプリケーションなどで3D表示が行なえることだ。たとえば、Windowsキーとタブを同時に押すことで現在デスクトップに開かれているウインドウが3D表示され、タスクスイッチとして利用できる機能(Flip 3Dと呼ばれる)などが実装されているほか、従来のWindows XPのように、動画再生中にそのウインドウを動かすと後ろに画面のゴミが残ったりしたが、Windows Vistaではスムーズに画面が表示される。
Aero Glassを有効にしている環境では、複数の3Dサーフェスが表示されるが、Windows VistaではGPUのスケジューラが導入されており、複数のサーフェスがGPUのリソースをシェアすることが可能になっている。ただし、Direct3Dのサーフェスとは共存できず、Aero Glassが有効になっている場合にはオーバーレイを利用できない。実際、オーバーレイを利用するソフトウェアの代表格と言えるDVD再生ソフトウェア、たとえばCyberLinkのPowerDVD 6をインストールしてみたが、起動できなかった。 ●Internet Explorer 7を標準で搭載 インターネット関連の機能としては、Internet Explorer 7がWebブラウザとして標準で搭載されている。Internet Explorer 7は、Windows XP SP2用のβ2が配布開始されているが、Windows Vistaに搭載されるのもそうしたWindows XP SP2用のVista版となる。 Internet Explorerの新しい機能としては、悪質なWebサイトへの保護を提供する「Phishing Filter」などのセキュリティ関連のアップデート、タブ機能のサポートやRSSフィードの提供など、使い勝手の向上が目玉になっている。
このほか、Windows XPでは「MSNデスクトップ検索」として提供されていたデスクトップ検索機能は、最初から統合されている。デスクトップ検索の機能は、スタートメニューから利用できるほか、各ウインドウの右上にもボックスが表示されており、ここに文字を入れるだけでPC内のコンテンツや文章とインターネットの両方をシームレスに検索できる。 また、検索した結果を保存しておくことが可能だ。たとえば、あるキーワードを何度も検索するような場合、いちいち検索するのは面倒だ。そこで、一度検索した結果を保存しておけば、次からはその結果を呼び出すだけで済んでしまう。
●WindowsサイドバーやWindowsサイドショーではガジェットをサポート Windows Vistaでは、デスクトップの右側に表示される「サイドバー」と呼ばれる新しいアプリケーションが搭載されている。サイドバーの最大の特徴は、「ガジェット」と呼ばれる、アプリケーションを追加していけることだ。ガジェットは、MicrosoftのWebサイトからダウンロードして利用可能なほか、サードパーティやオンラインソフトウェアの作者などがガジェットを作成することも可能だ。 標準では、PCのリソースメーター、時計、電卓、ゴミ箱、RSSフィード、付箋紙などのガジェットが用意されており、自由に追加できる。今後、オンラインソフトの作者などがガジェットの作成などに乗り出すだろうから、より魅力的なガジェットが続々登場する可能性に期待したい。
ガジェットは、「Windowsサイドショー」と呼ばれる、ノートPCの液晶の裏側に追加されるもう1つの液晶ディスプレイでも利用することができる。サイドショーは当初は、ノートPCでの利用が想定されていたが、WinHECではサイドショーの液晶を搭載し、それを利用してメディアセンターのコントロールを行なうためのリモコンなども公開されている。今後は、たとえばEntertainment PCの前面に小さな液晶を搭載して、チャネルや再生中のコンテンツを表示するという使い方なども考えられ、こちらも期待したい機能の1つだ。 ●新しいバージョンのWindows Media Playerとメディアセンターを搭載 Windows Vistaでは、メディア関連の機能も強化されている。Windows Media Playerは、XP用のβ版が公開されたばかりのバージョン11が搭載されている。 Windows Media Player 11では、いくつかの使い勝手の改善がなされている。たとえば、アルバムのジャケット写真がない場合、Windows Media Player 10では、かなり面倒な手続きを踏まないとジャケット写真を貼り付けられなかったのだが、Windows Media Player 11では、用意したジャケット写真をWindows Media Player 11にドラッグ&ドロップするだけで、貼り付けられる。このほか、従来はWindows Media Connectとして独立していた、Universal Plug and Play(UPnP)のメディアサーバーがWindows Media Playerに統合され、Windows Media Playerの設定パネルから設定できる。
これまで、Windows XP Media Center Editionで提供されていたメディアセンターの機能は、Windows VistaではHome PremiumとUltimate Editionという上位グレードに標準で提供される。メディアセンターも、開発コード“Diamond”(ダイヤモンド)として開発されてきた最新バージョンで、メニュー構成が上下左右を利用する階層に変更されるなど、ユーザーインターフェイスが大きく変わっている。また、ビデオを再生しながらそれに重ねてメニューを表示するという使い方も可能になっており、よりリッチな構成になっている。
ただし、TVの録画機能やビデオの再生機能などは、基本的に現行バージョンと同じで、特に拡張はない。日本での家電のHDDレコーダなどでは、ダイジェスト視聴機能などどんどん新しい機能を拡張していることを考えると、この点はやや寂しい。また、日本のデジタル放送への対応は、当初のバージョンでは実装されない。こちらはVistaのリリース後となる2007年中が予定されている。 ●より格好が良くなったWindows Vista、今後もRC1に向けて開発続く 実際、PCにインストールして使ってみると、デスクトップが格好良くなったなというのが第一印象だ。特にフォントが“メイリオ”に変更されたことで、とてもすっきりした印象を持った。また、3Dの描画エンジンを利用した画面描画の機能も、従来カクカクと動いていた印象のウインドウが、スムーズに表示されるのを見ると、割とよいかなと思っている(ウインドウが3Dに表示されるタスクスイッチャーはともかくとして……)。 インストールしてしばらく使ってみたが、オーバーレイ使用のアプリケーションなど一部のアプリケーションではまだ問題があるものの、原因不明のエラーなどは特に起こらなかったし、β2として安定性はそれなりにすでに実現されているなと感じた。 冒頭でも述べたように、β2はこれまで開発者などに限定されていたβテスターが、一般のエンドユーザーも含む大規模な範囲に広げられる。それにより、さまざまなフィードバックがMicrosoftにもたらせられ、そうしたフィードバックを元に、今後出荷候補版がRC1、RC2、そして最終出荷バージョン(RTM)へと近付いていくことになる。 Microsoftのクリス・ジョーンズ氏(Windowsクライアントコア開発担当上級副社長)によれば「Windows Vistaのリリースは予定通り11月に大規模顧客向けを、そして2007年の1月にコンシューマ向けとOEM版を出荷する」とのことで、3月末に発表されたスケジュール通りに今のところ進んでいるようで、今度こそ予定通りリリースされることに期待したいものだ。
□マイクロソフトのホームページ (2006年5月24日) [Reported by 笠原一輝]
【PC Watchホームページ】
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