大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

MacBookキックオフインタビュー




 アップルコンピュータが、Core Duoプロセッサを搭載したMacBookを発表した。発表即出荷ということもあって、アップルストア銀座には熱心なカスタマーが訪れ、初日から黒山の人だかりとなっていた。

 MacBookのマーケティングを担当する米Apple Computerワールドワイドハードウェアプロダクトマーケティング担当のテビッド・ムーディ バイスプレジデントに話を聞いた。

-- アップルストア銀座の発売初日の様子を見てどうですか。

混みあうアップルストア銀座店内

ムーディ 夕方になって初めて、その光景を見たのですが、すばらしいですね。興奮しました。カスタマーにとって、すばらしい製品を提供できたという実感を得ました。

-- 2月に出荷を開始したMacBook Proは、発売直後から品薄となりましたが、MacBookの供給体制はどうなりますか。

ムーディ 製品はちゃんと準備しています。さらに生産を進められる体制となっていますから、安心してほしいですね。


-- 今回のMacBookは、どういう位置付けの製品と捉えればいいですか。

左がiBook、右が新製品のMacBook。「女性からは、iBookは持ち運ぶにはちょっと大きいと言われてきたが、MacBookならば大丈夫」とアップルコンピュータの前刀禎明代表取締役は語る

ムーディ 個人向けのノート製品ラインであり、従来のiBookの後継製品であるとともに、PowerBookの12インチモデルの後継機種であります。そして、これによって、ポータブルラインにおけるIntel CPUの搭載がすべて完了したことになります。

-- 最大の特徴はなんですか。

ムーディ やはり、Core Duoを搭載している点が最大の特徴ですね。iBookに比べて5倍のパフォーマンスを実現していますし、PowerBookの12インチモデルと比較しても4倍以上のパフォーマンスを実現している。バンドルしているiLifeを使って、音楽や映像の処理を行なう場合にも、4倍もの高速化を実現している。iLifeを使いたいというユーザーにとって、優れたパフォーマンスを提供できる製品です。

 それと、Core Duoそのものが消費電力の削減とパフォーマンスの向上を実現していますから、デスクトップ並の性能を、これだけ薄い筐体の中に閉じこめ、それを持ち運んで利用できるようになった。この変化も大きい。

 また、13.3型のワイド型液晶ディスプレイの採用や、1,280×800ドットの解像度によって、従来製品に比べて、表示面積を30%も増やしています。また、従来の液晶ディスプレイの輝度は、140cd/平方cmでしたが、今回は250cd/平方cmのものを採用している。映像などを、よりクオリティの高い環境で見ることができるようになっています。

 それだけではありません。デザインへのこだわりも徹底しています。

-- どんな点ですか。

ムーディ 例えば、iBookに比べて20%程度の薄型化を実現していますが、これだけの薄型化を図るには、設計を最初からやり直さなくてはなりません。つまり、単に薄く削ったというものではなく、最初からデザインしなおしたものといえます。

 加えて新たなことにもチャレンジしている。

 ラッチ部分は、マグネットを採用して片手で開けられるようにしている。構造的にもシンプルで、部品点数も少なくて済む。この設計は、ラッチ部分を壊れにくくしているとも思いますよ。しかも、小学生でも簡単に開けられるようになっている。

 キーボードも大きく変化しています。米国の小学生はPCの使い方が手荒いですから、キートップを外したりしてしまう(笑)。これを防ぐために、キーボードの形状を大きく変化させた。ちょっと埋め込むようにしたんです。外せないということはないが、小学生にはちょっと難しい(笑)。構造的にも堅牢になったといえます。

厚さは約20%ほど薄くなった。「iBookのボトムケースとほぼ一緒の厚さ」とムーディバイスプレジデント キーボードも新開発のもの。「小学生がキートップを外すといったいたずらができないようにした」とジョークを飛ばす

 それと、このブラックカラーですが、クリアコートマット仕上げを施し、下の素材も黒としていますから、塗装部分を、爪や何かにひっかけてはがしてしまっても、その下の筐体は黒いままです。そこは他社のPCとは異なります。

 加えて、USB 2.0ポートやFireWire 400ポート、Gigabit Ethernetポートなどの部分を見てほしいのですが、これらのポートの奥の部分は、ブラックモデルは奥まで黒く、ホワイトモデルは奥まで白です。こうしたところにもこだわりました。まぁ、アップルリモートやケーブルが、ブラックモデルでも白いのままなのは、標準添付品だからなんですけどね(笑)

ブラックモデル(左)はポートの奥まで黒。ホワイトモデル(右)はポートの奥まで白にするとい徹底ぶり

-- なぜ、今回、ブラックカラーを追加したのですか。しかも、なぜ、上位機種だけなのでしょうか。

ブラックモデルは高性能モデルの象徴というイメージを持たせることを狙ったという

ムーディ 今回のMacBookのデザインは、大変いいデザインになっていると私は思います。このデザインの美しさを生かすためには、ブラックカラーの採用が適切だったといえます。また、なぜ、上位機種だけブラックなのか。それは、MacBookには、iBookの後継製品という役割とともに、PowerBookの後継製品であるという役割もある。PowerBookの後継という役割を明確にするために、上位モデルはブラックを採用した。プロフェッショナルにも使っていただくための意味合いを持たせているのです。

 プラックカラーの採用に関しては、いつ頃から検討していたということはいえませんが、私が、このブラックカラーのデザインを最初に見たときには、これならば顧客も喜んでくれるだろうと思いました。将来に関して何も言えませんが、今回の製品では、高機能モデルについてはブラックモデルにするという選択をしました。

 個人的にいうと、ホワイトモデルもブラックモデルも、両方好きですよ。

-- 話は変わりますが、MacBook Proの売れ行きはどうですか。

ムーディ 財務的なことはいえませんが、MacBook Proは、クリエイティブ分野のプロフェッショナル、あるいはハイパフォーマンスを必要とするエンジニアリング分野のユーザーなどに高い評価を得ています。ハイパフォーマンスに注目しているユーザーたちの要求に応えられる製品を提供できたと感じています。

 一方で、今回のMacBookは、家庭内のコンシューマユーザーや、学校で使うといった人たちが多いですね。それらのユーザーに満足できる製品が提供できるという自信があります。

-- Intel CPUによるノート製品のラインナップが揃いましたし、BootCampのパブリックβ版もリリースされています。Windowsユーザーに対する仕掛けはなにか考えていますか。

ムーディ MacBookは、既存のiBookユーザーやPowerBookユーザーをはじめ、すべてのMacユーザーに、ぜひ使っていただきたいマシンですが、もちろんWindowsユーザーにも使っていただきたい。新しいMacBookは、Core Duoプロセッサのパワーによって、デジタルライフスタイルをより現実のものにできるようになる。日本では、Macは一部のプロフェッショナルの製品という見方がありますが、MacBookは、そうした認識を払拭できるかもしれないと考えています。そして、iLifeや優れたアプリケーションが買ったその日から、快適な環境で利用できるという事実を知ることができるチャンスだともいえます。

 また、MacではWordやExcelが利用できないと思っている人もまだいるようです。本当は動作するのだけど、それさえも知らない人がいる。これが、BootCampによって、そうした間違った認識を根本から変えることができる。Macの上で、Macの優れたアプリケーションも利用でき、Windowsのアプリケーションも利用できる。ほとんどのことがMac上でできるようになる。MacBookは、Macユーザーにとっても、Windowsユーザーにとっても、ベストコンシューマノートブックだといえますよ。

-- ところで、ノートの製品ラインがすべてIntel CPUとなり、これで一段落ですね。次は、なにをやりますか?(笑)

ムーディ いつも、新しいことを考えていますよ。やることがなくなったなんてことはありませんから(笑)

【編集部注】ムーディ氏本人の強い意向により、顔写真は掲載しておりません。

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(2006年5月18日)

[Text by 大河原克行]


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